36話 バルドご乱心
「あれ? ふりっもが」
「レント君。ちょっとおに、お姉さんたちと話しをしようか。クロもさっきの場所でいいかな?」
「あ、ああ」
「じゃあこっちだよ。大丈夫。酷いことはしないからね」
「もがもが!?」
そう言って誘拐まがいにレント君をさっきの裏路地に連れ去った。その間レント君は暴れようとしていたが、リフちゃんにがっしりと掴まれていることを悟ったのか諦めて既に動かない。
そしてさっきの場所まで戻って来るとリフちゃんは彼を放す。
「な、何をするんですかいきなり!」
「ちょっと口を封じておこうと思って」
「そ、そんな。この前は助けてくれたのに……」
彼の顔が絶望的になっている。勘違いは解かなければ。
「口を封じるって言っても物理的とかではないですよ。私たち、ちょっと目立ちたくないのでこんな格好をしているんです」
「え? でも凄く人の目を集めてましたよ?」
「「え?」」
「僕もすれ違う時に綺麗なおねえさんと男の人だなって思いましたから。他の人の視線も見てみましたけど、同じような感じでしたよ?」
「そんな……」
「まじかよ……」
私の作戦は完璧だと思っていただけに彼の指摘は心に来るものがある。それと男の姿が似合うと言われたことも何だかんだで辛い。
「でもそんな恰好をしてどうしたんですか? 僕で良ければ力になりますよ?」
「その気持ちは嬉しいが……」
「私たちは出来れば大きな商会に行きたいんだけど、どこか知り合いというか、口の固い商会の人はいない?」
何とか気持ちを入れ替えて話始める。
「商会ですか? 父さんの所でもいいですか?」
「お父さんは商会をやっているのか?」
「あれ? 言ってませんでしたっけ? 僕の父はファティマ商会をやっています。僕はそこに次男ですよ」
「そうだったのか」
「知りませんでした……」
確かに商会の子供かもねとか言ってたがまさか本当だったとは。
「失礼しました。この街ではそれなりに知られていると思っていたので」
「そんなに有名なのか?」
「一応この街1の商会の息子ということで結構知られています」
「あれ? それじゃあさっき攫うように連れてきたのはまずかったのかな……?」
「「……」」
3人の沈黙を破ったのはその中にいただれかではなかった。
「ぼっちゃーん! 今行きますよー!」
遠くから聞こえてきたのは昨日。レント君のお付きをしていた冒険者のバルドさんのだったと思う。
「この声って」
「まさか」
「多分バルドの声だと思います」
「坊ちゃん!」
レント君が言った瞬間に通路から飛び出してきたのは全身フルプレートで堅め、両目に当たる部分からは射殺すような視線を放つバルドさんだった。
彼は入ってくるなり剣を抜き放ち言い放つ。
「貴様らああああ! 覚悟は出来てるんだろうなあああああ!」
「バルド! ちょっと待って!」
「うるせえ! 坊ちゃんは引っ込んでろ!」
「ええええ」
「バルドは切れると見境が無くなるんです! 少しの間でいいので逃げてください!」
「わたし、俺が相手をしてやるよ! 丁度いい相手だ!」
リフちゃんがスカートをはためかせながら剣を抜きバルドさんとつばぜり合いを始める。
「プロテクト!」
私もリフちゃんが怪我をしないように支援魔法を飛ばして守る。一応レント君にも飛ばしておく。
「おらおらおらおらおら! あの世で死んだレント様に詫びろや!」
「そんなキャラじゃなかっただろう! てかレントは死んでない!」
「うるせえ! 纏めて死ね!」
「護衛としてどうなんだ、よ!」
フリッツさんが彼を蹴り飛ばして壁にぶつける。バルドさんは壁にめり込みながらも抜け出してくるが、その闘志は収まっていない。
そこへレント君が立ちはだかった。
「バルド! いい加減目を覚まして!」
「ぼ、坊ちゃん!? なぜ生きて!」
「勝手に殺さないでよ!」
レント君はバルドさんのヘルメット越しに思い切り殴る。そしてレント君の拳は綺麗に入り、彼はそのまま地面に倒れてしまった。
「あれ?」
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