25話 新人冒険者
ダラスの街への道中は特に何事もなく進んだ。大体4日位かかる。
しかしダラスまでの道のりは辛いものではないけど、意外と魔物が出てくる。それもそのはずでここら辺は魔族との国境、兵士たちがそれなりの数出張ってきてはいても、全て開拓出来る訳ではないからだ。
むしろ彼らは極力戦闘は避け冒険者に任せるようにする。彼らの相手は兵士であって魔物ではない。
それなのになぜ私たちの道中が何事もなかったのか。それは簡単な話でフリッツさんが桁違いに強かったからに他ならない。
「せいっと」
気迫を込めたようで剣を片手で一振り、刃は飛び出てきたゴブリンの首を切り飛ばす。群れると厄介なゴブリンだが、近寄ってくるたびに一薙ぎで首が飛んでいく。
「数だけは多いから厄介なんだよな」
「そうですね。どれだけ間引いても1月後には直ぐに次の群れが生まれていますから」
「まぁ、そのお陰で新人冒険者がいるといっても過言ではないからな」
「そうですね。初心者の方々には丁度いい相手かもしれません」
ゴブリンはそれだけ数がいるので流石に弱い。1対1であれば大の大人であれば7割は勝てるだろう。それが武装をした人間なら9割5分はかたい。それでも5分の人間はそこで命を落とすし、ゴブリンを狩った人もその感触がダメで辞めてしまう人がいない訳ではない。
話しながら一緒に歩いていると遠くから戦闘音が聞こえてくる。
「この戦闘音はもしかして?」
「分からん。取りあえず近くまで行ってみよう。手が必要があれば助けに入ればいい」
「分かりました」
私たちは走って森を抜け近くの草原まで行く。そこまで行って確認するのは手出しをしないようにだったり、横取りを疑われないようにする為だ。
「あの感じは……」
「まずいかもしれないな」
そこでは新人と思われる冒険者がゴブリン数匹と戦っていた。冒険者が持っている剣は中ほどで折れていて、ゴブリンに対する攻撃力は持っていないようだ。今は剣を振り回していてゴブリンが近づかないように何とかしているがそれもいつまでもつか。
「行ってくる!」
「お願いします! プロテクト!」
私は一応冒険者の人に防御魔法をかけておく。少し遠いかと思ったが何とかなって良かった。
そんなことを考えている間にフリッツさんは初心者の所へ既に辿り着いている。
「手助けはいるか!」
そう言いながら剣を抜いている。冒険者はそれに気付き声を返した。
「お、お願いします!」
「任せろ!」
そこからは一方的だった。フリッツさんが剣を振るえばゴブリンの首が飛んでいき、ものの数秒でゴブリン達は沈黙した。
「す、凄い」
「大丈夫か?」
「あ、は、はい。助けて頂いてありがとうございます」
私が近づく頃には既に終わっていて、冒険者の人は疲れからか地面に座り込んでいる。
「大丈夫ですか?」
「え? あ、はい。大丈夫です。ありがとうございます」
「どこの街の冒険者だ? ダラスか?」
「はい僕の名前はレントと言います。ダラスの街の冒険者になったばかりなんです」
彼の名前はレントというらしい。見た目はかなり背が低くて体型も華奢だ。なぜこんな子がゴブリン退治を一人で? と思わせられる。髪は短髪の茶色で眼鏡をかけていた。眼鏡をかけているということはそれなりのお金持ちだろう、一般人が持てるような物ではないからだ。装備は皮だがそこそこしっかりしているようで、いいものをつけていることがわかる。
「そうだったのか、初心者だからって無茶はするなよ?」
「はい。肝に命じておきます」
「その武器じゃもうダラスに帰るだろ? 一緒に来るか?」
「いいんですか?」
「クロエもいいよな?」
「はい。勿論です」
「それじゃあ行くか」
「分かりました」
一応ゴブリンを討伐した証拠として耳だけを切って持っていく。私たちはケルベロスの素材が売れればいい為、レント君に上げることにした。
「いいんですか?」
「ああ、俺達は別にいいからな」
「ありがとうございます! これで怒られずに済む!」
「どういうことだ?」
「いえ、ちょっと親の言いつけでゴブリンくらいは倒せるようになっておけと言われて来たんですが、トロルに驚いて逃げてきた所に、さっきのゴブリンと出会ってしまったわけです。なのでどうしてもゴブリンを討伐した証が欲しくって」
「そう言うことだったのか」
「はい……」
「それじゃあその付き人の人も探さないといけないんじゃないですか?」
「これまでそんな人はいなかったよな?」
「だと思いますけど」
「彼は街の方にいますので、そっちでトロルが出てきてしまって、それで逃げ出しちゃって」
「そういうことか。だったら戻りながら行けばいいだろ」
「ですね」
そうと決まった私たちは戻りながらダラスの街を目指す。
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