23話 貸しておく
次の日、私とフリッツさんでお話をすることになった。その内容は。
「あの、やはり一度ダラスに行きませんか?」
「ダラスに?」
「はい、いつまでもこうやって居る訳にはいきませんし、当面のお金も欲しいので」
「そう言えばそうだな。じゃあ前に話していた上手く商会に売るというのも一緒にやってくれるか?」
「はい。勿論です。ですけど、フリッツさんもやるんですからね?」
「わ、わかった。取り分は半分でいいか?」
「へ? 何の取り分ですか?」
私は何か倒した記憶はないんだけれど、何の事だろう?
「何を言ってるんだ。ケルベロスの代金に決まっているだろ?」
「え? でもあれはフリッツさんが倒したじゃないですか」
私がそう返すと彼は私を正面から見つめてくる。
「クロエ、前にも言ったが、お前がいなかったら俺は死んでいた。だからお前のその力はちゃんと誇っていい。俺はその力を知っているから言うんだ。分かったか?」
「は、はい」
フリッツさんがドンドン近づいてくる。
私はその圧力に押されて頷いてしまう。
そして、彼は圧力を感じさせていたかと思うとその顔をふっと緩めて優しい笑顔になった。
「分かってくれたならいい。俺の命の恩人だからな」
「い、いえ、そんなことは」
「それじゃあ街に向けて行くか」
「え、今からですか?」
「ああ、母さんには会ったし、これ以上この村ですることもない。だったら行く方がいいんじゃないのか?それとももう少し休んでから行くか?」
「そうですね……」
自分の体調を鑑みると控えめに言ってすこぶるいい。なぜなら今までは重い荷物持ちだの、夜の見張りをほとんど一人でやっていたりだのだったが、重い荷物はフリッツさんが持ってくれたし、見張りも半分ずつぐらいでやったから軽いくらいだ。休む必要がないどころかこれから出掛けると言われても何の問題もない。
「行きましょうか」
「そうこなくっちゃな」
こうして行くことになったのでカルラさんに挨拶に行くと。
「そう、行ってらっしゃい。わかってはいると思うけど気を付けて」
「ああ、それじゃあ行ってくる」
「い、行ってきます」
「ええ、いってらっしゃい」
それだけかわしてサッサと家から出てしまう。
「あれでいいんですか?」
「あれって?」
「もう少しこう、何か会話があるかと思っていたんですが」
「? いつもあんな感じだからな。それに無事に帰ってくるならいいだろ?」
「それもそうなんですかね」
「そうだよ」
こうして私たちは道中の食料などを準備した後に出発することになった。
「そうだクロエ」
「はい? なんでしょう」
「この鞄を、んー貸しておく」
そう言って差し出されたのは白い鞄で私にピッタリのサイズで持ちやすそうだ。それだけではなくワンポイントで柄も入っていてとても可愛らしい。そんな見た目をしているのに中を見るとかなり頑丈に作られている事が分かり、かなりの物だと思う。
「これは何ですか?」
「鞄」
「それはわかりますけども」
「だから鞄を持ってなかっただろ? 今もそうやって着替えとかを紐でくくってる」
「これでも結構動きやすいので問題ないですよ?」
最初は自分の着替えをそのまま持って歩くのはどうかと思っていたが、これはこれで持ちやすいのでいいかなと考え始めていた。流石に考えが男らしすぎるだろうか。
「そんなこと言うな。それに貸すだけだから。要らなくなったら返してくれればいい。雑に扱ってもいいしな」
「いいんですか?」
「ああ、昔の荷物を整理してたらあったと母さんが持ってきてくれてな。使えってことらしい」
「いいんですか?」
「ああ、使われないのは可哀そうだ。使ってやってくれ」
「ありがとうございます」
私は鞄を自分の肩からかけてそこに荷物を入れる。
私の為に作られたのか? とでも言わんばかりのピッタリさで驚くほど体に合う感じがした。
「凄い。これ、物凄くいいです」
「そうか、それなら喜ぶだろ」
「誰がですか?」
「あーいや、その鞄、そう鞄がだよ」
「そうだといいですね」
私はそっと鞄を撫でた。
「それじゃあ行くか」
「はい」
こうして私たちはダラスの街へケルベロスの素材を売りに向かう。
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