20話 楽しみにしている
それからは村長の家とか集会所とか井戸とか結構事細かに村の説明をされた。住むと決まった訳じゃないと説明をして以降は人の紹介は無くなった。そして一通り説明されて、後は帰るだけとなる。
「凄く詳しいですね」
「この村は小さい時から長いからな」
「この村の生まれじゃないんですか?」
「ああ、記憶はほとんどないんだが、結構遠い場所だと聞いている」
「小さい頃に引っ越してきたんですか。大変ですね」
「自分では分からないからな」
「それもそうですね」
そういう彼の横顔は何でもなさそうだ。
「今夜の料理はどうするつもりなんだ?」
「今夜ですか? そうですね。まだ材料とか決まっていないのでどうしましょうか」
「なら今からばあさんの所に戻って買っていくか?」
「あそこはどれくらいで閉まるんでしょうか?」
「ばあさんはあそこに住んでるからな。夜遅くじゃない限りは大丈夫だったはずだ」
「では家に帰って食材を見てからでもいいでしょうか?」
「ああ、大丈夫だ」
私たちはフリッツさんの家に帰り着いた。
「あら、お帰りなさい。早かったわね」
家の中ではカルラさんが椅子に座って編み物をしていた。私たちが入ると立ち上がって出迎えてくれる。
「母さん。夜ごはんはクロエが作ってくれることになったんだ。任せてもいいかな?」
「本当? 好きに使ってくれていいわよ。材料が足りなかったら買ってきて頂戴」
「分かりました」
「クロエこっちだ」
「はい」
フリッツさんに案内されたのは居間とつながっているちょっと奥まった所だ。そしてさらにその奥に調味料とか材料が置いてある。
「何か足りないものがあれば言ってくれ、直ぐに買い物に行ってくるからな」
「はい! 出来る限り頑張りますね」
「楽しみにしている」
そう言って彼は居間に戻って行った。ここまで楽しみにされたのであれば張り切らない訳にはいかない。私の本気を見せてあげよう。
「よし!」
私は腕まくりをして気合を入れて調理に向かった。
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