2話 追放決定
私は大量の食器を抱えてテントまで戻った。そこではパーティメンバーである全員が焚き火を囲って座っている。
「ただいま、戻りました」
「おせーよ。皿洗いくらいでどんだけかかってるんだ」
テントに帰るなり、両脇に女二人を脇においた勇者が言ってくる。
「そうよ、攻撃魔法どころか回復魔法も使えない聖女なのに、自分の立場分かってる? お荷物なんだからそれくらいしっかりやってくれなきゃ」
そう言うのは魔法使いのサラだ。魔法学院をトップの成績で卒業してきた天才。彼女はバインバインな体をいつも勇者の右側でくっつけている。
「そうよ、聖女なのに付与術師の私に回復をさせて恥ずかしくないの? それ以前に聖女の役割って知ってる?」
そう言うのは付与術師であるディーナ。元々Aランクパーティで活動してきたが、いつの間にか勇者パーティに参加していた。彼女は勇者の左側で、女の私から見ても羨ましくなる綺麗なスタイルを勇者の体に当てている。
「その癖言いがかりだけはつけてくるんだから最低だぜ」
そういう最低野郎はさっき私を襲ってきた盗賊のハブルールだ。勇者ランドが気が合ったとかで仲間に誘った一人。
「そんなことより鍛えさせろ。少しは戦闘で役に立つかもしれない」
最後にそう言ったのが剣士のルーカスだった。彼は勇者パーティを選ぶ大会で勝利しここにいる。
「そんな、私だって一生懸命に頑張ったのに」
今日の戦闘で皆に防御の魔法をかけていたのに、皆には全くと言っていいほど理解してもらえない。何度説明しても使ってみても気のせいだなんだといって馬鹿にされるのが私の魔法だった。院の皆は凄いって褒めてくれたのに……。
実力者度揃いであるはずのこのパーティでは、一度たりとも喜ばれることもなかった。
曰く、そんな良くわからん防御魔法なんかに命を預けられるわけがない。
曰く、聖女なのだからそんなものより回復魔法を使え。
曰く、お前は飯だけ作っていればいいんだ。
などと言われる始末。そんな事があったのものだから、それまで院で褒められて喜んでいた私の自信は徹底的に粉々にされた。
それから勇者には最後の言葉を言われる。
「クロエ。お前が院でレベルの低い事をしている間に、俺達はもっと上の実力に入っていたんだよ。それがこれまでの旅でハッキリしたのを分かっただろう? 最後に入ったハブですら既にお前よりも優秀だ」
そんなことない! 私は叫びたかったけど口をつぐんでしまう。ハブルールは取り繕うのは上手いと知っているから。何かあったときも出来るだけ逃げて安全な所に行こうとしたり、人任せにしようとする奴だった。そんな男だというのは後ろから見ていればわかる。
でも、それを言ってもきっと理解されないだろうというのも分かった。
「……」
「という訳だ。反論もないようだしな。早速今から……は流石に可哀そうだから、明日の朝一にしよう。勇者パーティから抜けろ」
「そんな!」
これまで皆の為に頑張ってきた。食事の料理とか、夜の見張りとかそう言ったことを押し付けられてきたけどこれも世界の為だって、頑張ってきた。それなのに。
そこへ追撃をするようにサラが言ってくる。
「アンタの居場所はここにはないの。見てみなさい、皆の顔を。誰もアンタに残って欲しいなんて言ってる人はいないでしょう?」
私はじっと一人一人を縋るような目で見ていく。だが、その誰もがサラと同じ顔をしている。私の味方は誰もいなかった。
「クロエ。お前があの力を使えてればまだ可能性はあったのにな。今夜の見張りはやらなくていい。お前にもう守ってもらうのも嫌だからな。話は以上だ」
「……」
私はそれから何も言わずに自分のテントに帰った。本来は3人で使うように買ったものだったが、サラもディーナも今ではほとんどランドのテントで寝泊りしている。だからいつもここで寝るのは私一人。それなのに今思うと大分狭く感じる。今更見回してもそこには誰も居ないのに何でだろう? と思うと私の荷物、パーティの荷物も全て私が持っていたので、このテントの中は狭く感てしまうのだろう。
「ごめんね。院長、皆……」
私はこれまでの事を思い返す。孤児として教会に拾われて、魔法の才能があったから院に行くことになった。この院では魔法の才能が集められて様々な教育がされていた。いい思い出ばかりではないが、それでも優しい友達や尊敬出来る先生に出会うことが出来たのは感謝している。その皆に申し訳なかった。
そして、私は最近の疲労のせいか、泥のように眠りについた。
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