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犬?いえ魔神です その1

 今から3年前。

 畑を耕しに行った両親に代わって自宅で留守番しながら、父親に頼んで買ってもらった"魔王の書”(かつて魔王であったときの俺が書いた魔術書であり、俺が生み出した魔法についてが書かれている。俺の偉功を示すために一般に流布したので、現代では本屋に行けば普通に買えたりする)を読んでいたときだった。


 「大変、大変、大変だよアルくん!大変なんだよ、大変なの!」

 「何が大変なのかはっきり言ってくれよミリティ」


 バタン!と勢いよく扉を開け、ミリティが慌ただしくやってきた。

 俺に諭されたからか、ふぅ、一旦深呼吸し、何を話そうかと頭を冷静にさせ、再びミリティは小さな口を開ける。


 「それがね、大変なの!」

 「だから何が大変なんだよ!?」


 こうして過去を振り返ってみるととわかるが、この3年間でミリティは背丈こそ伸びたもののあまり成長してないな。


 「え、え~と、たい……へん、なの」


 ダメだこりゃ。

 自分で飲むために用意していたレモネードをカップに注ぎ、手渡す。


 「ゴクゴクゴク……ぷふぅ」


 豪快な一気飲み。渡したレモネードには脳をリフレッシュできるようにと魔法をかけている。

 俺が読書を集中するためにかけたものだが、これで少しは頭が冴えてくれただろう。

 

 「あのねアルくん、さっき森で遊んでたんだけど……」


 話に寄れば、どうやら木の実やら薬草をとりに近所の森に行っていたらしい。弱いとはいえ魔物が生息していて危ないから1人で森には行くなって言ってるのに、ったく。で、森の中で血で真っ白な体毛を紅く染めている犬が倒れているのを発見し、俺に助けを求めにきたという。


 「たぶん魔物に襲われたんだと思うの、今にも死にそうで……回復してあげようと思ったけど、ぜんぜん魔法が効かなくて……」


 ミリティの適正職はヒーラー。

 まだ魔法学園に通う資格のない子供とはいえ、ただのヒーラーよりかは断然強い。なにせ、才能があり、小さい頃から俺の母に回復魔法を教わっているんだからな。その実力は魔王であった俺の太鼓判つきだ。

 だけど、そんなミリティでも、癒やせなかったらしい。


 「このままじゃワンちゃんが死んじゃうよ……助けてあげてアルくん」


 いくらミリティに才能があるとはいえ、俺のほうがスゴイ。

 人間とはいえ1000年に1人の逸材と自負しているほどの天才だ。これほどの天才の噂を聞きつけた国が目をつけないわけがない……のだが、周囲は両親が凄いからって認識になってるので天才扱いされず、噂は流布されないので国は目をつけてくれない。魔法学園に通わされるまでの間はゆっくりと読書に勤しめるからいいけどさ。


 「しかし死にかけの犬か……」


 その犬には悪いが、懐かしい思い出に浸ってしまう。

 昔にもそんなことがあったな、と。


 「助けてくれないの?」


 すぐさまイスから立ち上がり現場に急行しようとしない俺に対し、うるうると「今から泣きますよ」とミリティ目が潤む。

 俺はミリティの涙に弱い。


 「そんな顔するなって、行くからさ」

 「ほんと!?アルくん!」

 「行くから、行くから安心しろよ」


 留守番という任を両親から大任を仰せつかっているのだが……許してくれるだろう。

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