使い魔:グラ
「マオーさまの忠実なるしもべであるこのワタシを頼るのですぞー」
魔神グラシャボラス。
名に魔神とついているところから分かるとおり、魔王の配下の一体。
その姿はオオカミを模し、漆黒で5mを超える巨大な体躯を誇り、接近戦では強靭な膂力をもって鋭い牙や爪で獲物を切り裂く。
また、グリフォンの翼を背に生やしてるため自由に空を飛びまわる可能で遠距離攻撃にも長けており、口から咆哮のように発せられるブレスは対空対策出来てない敵を一方的に嬲り、何百もの村を焼き、人々を阿鼻叫喚させ恐怖を刻んでいった。
災厄をもたらす魔王の僕。魔王ソロモンの狂犬。空飛ぶケルベロス。獣に堕ちた堕天使。などと呼び名は多く、今でもグラシャボラスのことを調べれば様々な文献を発見できる。
人型の魔神が多い中、獣の姿をしたグラシャボラスは人々に記憶に残りやすいのだろう。
そんな人類の脅威であるグラシャボラスではあるが、現在は……、
「ダメだよ、グラくん。まーくんはあたしを頼るんだから」
「なにを言ってるんですか?ミリティさま?マオーさまと一番仲が良いでワタシが頼られて当然」
「グラくんこそ何を言ってるの?あたしの方が付き合いが長いんだから、一番仲がいいの」
「ふっ、何も知らない小娘が」
「あっ!?今あたしのことを小さいって言った!?グラくんのほうがもっと小さいのに!」
ただの癒し手である村娘と争い合っている。
「ガルルルル」
口げんかでは埒があかないと判断したのか、グラシャボラスことグラは、威嚇しようとミリティに対して唸る。
今にも獰猛な魔獣が少女を食い殺さんとする光景。
のだが、傍からみたら、少女と子犬がプンプンケンカしているような仲睦まじい光景。誰も止めることなく咎めない。この階層に残っていたわずかな人たちはじゃれ合いだと思ってスルーする。
「ふっふ~ん、吠えちゃってかわいいなもう」
渦中の人であるミリティは動じることなく、顔をにやけさせる。
可愛い子犬が唸ってるだけだしな。
「グラくんかわい~~~」
グラがミリティに抱きしめられた。
「あっ!?ワタシを抱いていいのはマオーさまだけだと何度言えばいいのですか、あなたは」
口でこそ嫌がってるが、尻尾は嬉しそうに振られている。
何度も見た光景だ。俺を巡って争う1人と1匹。
昔は俺とミリティの2人だけでよく遊んでいたいのだが……今ではグラもいるのが当たり前だ。グラとの再会、あれは3年も前の話だ。
魔王の元僕のグラシャボラスが、俺の使い魔になった日を思い出していった。




