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鮮血の修道女と異端なオリエンテーション

初回授業開始まで書きました。


アカデミアについたフィリアは入学式の会場である講堂へと向かった。

広間の時計を見て時間を確認する。


「もう、こんな時間!入学式の日に遅刻なんてできません。あの先生の言っていたことは気になりますが、今はとにかく急がないと!」


ようやく講堂の前にたどり着く。広間の噴水の音と一緒に講堂の中から拍手が聞こえた。どうやら式がはじまったようだ。フィリアはあわてて講堂の扉を開け中へ入る。


すると、フィリアの姿を見た生徒たちは驚き悲鳴をあげた。


「お、おい、なんでこんなところにアンデッドがいるんだ!」


「え、みなさん...はっ!」

(ど、どうしましょう...色々なことで頭がいっぱいで気がつきませんでした。)

フィリアは自分が血まみれなことにようやく気がついた。

「ここれは..違うんです!!」

状況を否定しようと首を横にふると帽子についた血が客席に飛散した。


「ひぃっ!!」

生徒たちは驚いて逃げていく。


「貴様!人間か?なんだその格好は!!」

教師の一人が剣を抜き、フィリアへと近づいてくる。どうやら騎士道科の教員のようだ。


「すみません、私は白魔導科の入学生で...こ、これは先ほど...」

説明しようにもなかなか説明ができない。


「お、キタキタ!お〜い、フィリア!お前、こっちきて座れ!」

聞いたことのある声がした。


(や、やっぱりあの男だ。)


先ほどの黒い装束の男が立ってこちらに手をふっていた。

「はっはっはっ!お前、あのまま来たのか。てっきり浄化魔法で綺麗にしてくると思ってたんだけどな。でもやっぱりはじめはインパクトが大事だし、これでお前のことは少なくとも学校中の人が覚えただろう。さすが俺の見込んだ生徒だな!」


「おい、アラン、これは貴様の生徒か?」

騎士道科の教員がいきりたって聞く。


「うん、さっき学校の裏で拾ったんだ!なかなか面白いやつだろ?」


「貴様の酔狂もたいがいにしろ!今は静粛な式典だぞ。それをこんな余興で汚しおって!!」


「わかったわかった。」


(ど、どうしましょう...こんな騒ぎになってしまうなんて...)

フィリアがあたふたしていると座席から修道士と見られる生徒がフィリアの元に来た。


「君、白魔道科だよね?」

するどい目つきで聞く。


「は、はい。そうです。」


「そうなんだ。じゃあ僕と一緒だね。僕はエル。よろしく。」

「う、うん、フィリアです。こちらこそよろしくお願いします...」


「それより君、汚い格好だけどそれは趣味?」

「いえ!違います!これはさっき事件に巻き込まれて...」


「そうなんだ。じゃあ綺麗にしないとね。汚れは悪だから...」

そういってロザリオを手にして詠唱をエルは始めた。


「女神アリア様、あなたの慈悲をもって、かの者の汚れを払いたまえ...キュア...」


フィリアが青い光に包まれ、血まみれの服があっという間に綺麗になった。


「わあっ、すごい!汚れる前よりも綺麗になってる!ありがとう!とても助かりました。」

「浄化魔法だけは得意なんだ。なんでも綺麗じゃないと気が済まない。まあ、他の魔法はほとんど何もできないんだけどね。」


「おー、これはなかなかのキュアだな!お前、エルとかいったかな?俺のクラスに入れ!」

アランが身なりに合わない笑顔をしながらエルに声をかける。


「あんたのクラス?どんなメリットがあるの?」

「ん〜、そうだな。俺のところにくればとりあえず浄化魔法だけ極めておけばいいぞ。お前、他の魔法に興味なだろ?それにこいつも俺のクラスだ。どうだろう?」


「へぇ、よくわかったね。悪くない。いいよ。」


「よ〜し決まり!やっとこれで二人目の生徒ゲットだ!」



(私入るなんて一言も言ってないんだけどな...というより、私が一人目だったんですね...)



「おい、アラン!式を再開したいのだが、事は済んだか?」

壇上から講堂に声が響き渡る。


「あ、学校長さん、もう大丈夫です!」

「ったく、あいかわらず騒がしいやつだ。」


「おい、アラン!学校長の招待教師だかなんだかしらんが、白魔導の分際で私は認めないからな。こんな無礼な真似事許されていいはずがない。」

騎士道科の教師がアランに告げる。


「わかったわかった。この辺にしておくよ。これ以上続けると学校長に怒られちゃうしね。」


「フンッ、当たり前だ!」

怪訝そうな顔つきで席につく。



「さあ、お前ら、ちょうど俺のクラスの席は閑古鳥が鳴いていてな。空いてるからこの変に座りなよ。」

エルとフィリアは席につくと、学校長の話が再開された。


王立アカデミアではジョブごとに学科がある。騎士科、黒魔導科、白魔導科、召喚科、義賊科などだ。近年では隣国である帝都との戦争の激化や、周辺地域の魔物の活性化により、戦闘系のジョブが重宝されている。逆に、後方支援に徹する白魔導科は臆病者の学科と言われ風当たりがよくない。とはいえ、回復がなければ多少の怪我を覚悟で思い切って攻め込むこともできないわけで、騎士や黒魔道師など前線で戦うものたちの勇気の支柱こそが白魔道の役割であるというのが学校長の主張だった。スピーチの中であからさまにフォローされていたあたりを見ても、どうやら差別的な扱いを受けているのは確からしい。現に白魔導の役割を話している最中の他学科の面々はあまり良い顔をしてなかった。





入学式が終わると生徒たちは指示に従い、それぞれの教室に移動し始めた。もちろん、移動の順番も白魔導科が最後だ。


フィリアとエルが教室の前に着き扉を開ける。するとアランが中から彼らを迎えた。


「お、来たな。じゃあ始めるか!」


中に入るとアラン以外にもう一人生徒がいた。制服を見る限りどうやら騎士道科の生徒のようだ。フィリアと目があうと彼はにっこりして声をかけた。


「おっす!俺の名前はライル!さっきの君、すごかったね。みんなお前のこと鮮血の修道女とかいってたけど、何があったんだ?」


「あれは..その...アラン先生が騎士道科の先生から私を守ってくれた時に浴びてしまった血なんです。」

(それより鮮血の修道女って何ですか!?私そんな名前で呼ばれてるんですか!?もう、アリア様に顔向けできません...)

「えっと...あなたは騎士道科の生徒さんですか?」


「うん!さっきまで騎士道科の生徒だったんだけど、そこのアラン先生に声をかけられて気づいたら白魔導科になってたんだ!おかしな話だよな〜」


「あ、そうそう、こいつはさっき帰り道で拾ったんだよ。騎士のジョブのクセにプロテクトが使えるみたいでな。珍しかったから三人目の生徒にした。」


「珍しかったからって...ライルくんそれでいいの??」


「まあ大丈夫っしょ。なんか本当に人を守れるのは白魔道士の使える防御魔法だってアラン先生言ってたし。それに騎士道の戦神ゲルド様も憧れるけど、白魔導の女神アリア様も俺は大好きなんだ。癒しの力や守護の力もなんかかっこいいし何よりアリア様はかわいい!ほら見て、ちゃんと聖典ももってる!」


「まあ、見ての通り素直で扱いやすいやつだから、いいやつだ!」


(ライルくん、バカにされてるの気づかないのかな...)



「んじゃあ、三人揃ったし早速授業のオリエンテーションでもやるか。あ、その前に軽くみんなで自己紹介でもしてくれ。んじゃあ、フィリア!お前から時計回りな。」


「はい!えっと..フィリアです。町外れのエレノーア修道院から来ました。白魔導の力をしっかりと身につけて、女神アリア様に胸をはれるような立派な神官になることが私の夢です!よろしくお願いします。」


「僕はエル。南の大聖堂から来た。得意なのは浄化魔法。世界中を綺麗にしたい。よろしく。」

(南の大聖堂と言えば王都の南部を統括する教皇直轄の機関ですよね。この人そんなにすごい人だったんですね。確かにさっきの浄化魔法はジンの浄化魔法にも劣らない魔力でした。さすがは大聖堂出身の修道士です。)


「俺はライルな。フロード家の次男です!父さんみたいにたくさんの人を守れるような騎士になりたいんだ!あと、アリア様の大ファンです!絵画でしかみたことないけど、いつかアリア様に認められるような人になって会うことができたらなって思ってる!」

(え、フロード家といったら騎士家系の貴族ですよね。というかライルくん、騎士目指してるのになんで白魔導科に来てるのでしょう...それにプロテクトが使えるって話だけど騎士のジョブでありながらアリア様への信仰があるということですよね。信仰は一つしか持てないはずなのに...よほどアリア様が好きなのでしょうか...)


「じゃあ最後に俺だな。改めまして、俺の名前はアランだ!アラン先生って呼んでくれ。学校長さんに呼ばれてアカデミアの教員になった。ここに来る前はエルドリア戦線の白魔導隊を率いてたんだが、訳あってこっちに来た!」

(エルドリア戦線といえばもっとも危険な戦線じゃないですか!そんなところで救援部隊を指揮してたなんて、さっきの事件をみて怖い人だとおもっていましたが、すごい実力の持ち主なんですね。)



「さて、みんな紹介がおわったみたいだし、授業はじめるか。とりあえず教科書配るぞー」


「アラン先生、ちょっと待ってください!」

ライルが手を上げて話をとめる。


「どうしたライルー?」


「そろそろ12:00です。祈りの時間ですよ!」

アリア教の戒律では12:00にアリア様の聖地の方角に向けてお祈りをする習慣がある。これを欠かさずに行うことで信仰を表現することができ、アリア様の加護が強まる。

(ライルくん、ナイスです。いつもと生活が変わっていたので忘れるところでした。)


「おう、そうか、お前らは律儀にお祈りなんてやってるのか。まあ好きにやってくれて構わないけどあんまり時間かけすぎるなよ。」


「えっ?」

3人がおどろく。


「アラン先生、お祈りを忘れたらアリア様の加護が弱まってしまいますよね。先生はやらないのですか?」


「あー、アリアの加護ね。そんなもん俺にはいらねーよ。勝手にやってくれ。」


(ア、アリア様のことを呼び捨てに...なんて不遜な...)

フィリアは唖然とする。


「まあ、今日はお祈りしても別にいいけど、俺の授業はこれまでお前らがやってきたことは全部忘れてもらうからな。堅苦しい戒律なんてクソ食らえだ。」


「俺はアリア様に嫌われたくないからお祈りちゃんとやるからね!」

ライルが答える。


「僕も、加護の力が弱まると浄化の力が弱まる。」


「わかったからさっさとやれやれ。」



「天にまします女神アリア様、願わくば私たちに加護をお与えください...」

もどかしさを感じながらも3人はお祈りを済ませた。



「よーし、やっと終わったか。じゃあ授業に入るが、今日の授業のテーマは女神アリアはクソビッチだったって講義をしようと思う。異論はないなー?」


(ガタッ)

「おい、誰がクソビッチだって?」

ライルが席を立ち、アランの首を掴んだ。











次回から異端授業の内容に入っていきます。授業のテーマは「女神アリアはクソビッチ」です。

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