パーティ名決定の祝賀会が開かれる②
前回のあらすじ:まだ美雪の酔っ払いの夜は続く。
「ササラさん。最初に会った時はお堅い真面目な高飛車な人、ってイメージだったんですけど、面接を通して、隙の多い可愛らしい人にイメージが変わりました。頼りになるようで頼りにならない…、でも、いざって時にはすごい頼りになる、世話を焼きたくなるお姉ちゃんってイメージかな?これからも、トウカさんと一緒に得意の支援魔法だけでなく、冒険者としての在り方等をご指導ご鞭撻いただけたら幸いです。あ、あと、ササラさんには闘技場でペトラさんとの戦いを支援してもらったのをお礼出来てなかったですね。あの時はありがとうございました。ササラさんのおかげで、私は冒険者として更なる高みへと上ることが出来ました。」
「美雪はん…。その話な…、今じゃないとあかんかったん?なんでササラの胸をふにふにしながら話すん?胸を揉まれながらやなかったら、すごい嬉しい話なんやけど…。」
ササラさんの胸をふにふにしながら、私は本来の目的である、新入りのササラさんへの挨拶を済ます。
「あれだな、美雪。ササラの胸は大きくなく、小さくなく、ちょうど良いサイズだな。柔らかいけど、柔らか過ぎない…。うん、良い感じ。良い感じのおっぱい。」
「トウカはんも、冷静に感想を言わんでくれへんか…。は、恥ずかしいんやけど…。」
「「尊い…。」」
ユリスキーさんとレズメッグァナーイさんの呟きで、私は二人にも挨拶が必要なことを思い出す。
ササラさんの胸ふにふにも飽きてきた私は、まだ揉み続けるトウカさんの頭にチョップをし、勢いよく立ち上がる。
さーって、それじゃ、ユリスキーさんとレズメッグァナーイさんに挨拶をしようか。フルーツサワーで喉を潤しながら、周囲を確認する。
「美雪さんが酔っ払って少しの時間で、このカオス…。」
「前回はすぐに寝てしまったと聞いていますが…。レベルが上がってステータスが上がったから、お酒への耐性も上がったんでしょうか?」
困った表情を浮かべるシロ君とユウジをとりあえず無視して、私はまだ挨拶を出来ていない新入りを探す。
「いた!ユリスキー!!お前に決めた!」
「!?」
ガタイが良く、いかにも冒険者という見た目のユリスキーさんに、私は近付く。
挨拶をする前に、少し緊張した様子のユリスキーさんを、私は観察する。
「ど、どうしたんすか?そんなに俺のことをにら…、観察して?」
「髪は深い茶色で、あごひげが無くて、私ほどじゃない切れ目ってところが、向こうの大男との違いかな?向こうは、深めの青髪で、あごひげはやして、少したれ目だもんな…。」
「え?いや、向こうの大男って?え?」
「いや、そんな呑気にしてたらダメれすよ、ユリスキーさん。大男の前衛キャラ。あなた、あっちにいるユウジとキャラ被っれますよー。」
「!?」
なぜか言葉を失うユリスキーさんに、どすどすと近付いて来たユウジが声を荒げる。
「いや、美雪さん!?俺とユリスキーさんのことをそんな風に思ってたんですか!?ってか、挨拶回り早々にだいぶ失礼ですよ!!」
「ユリスキーさん。これがユウジれす。」
「え、あ、知ってますが…。」
「雑な紹介やめてくれよ。もっと何かあるだろ。」
いつものツッコミを繰り出すユウジに、私は親指を向けながら、ユリスキーさんに耳打ちする。
「ユリスキーさん。こんな感じれ、ユウジはツッコミキャラを確立させつつあるんれすよ。このままらとユリスキーさんは、ユウジとキャラ被りのまま、鳴かず飛ばずで終わってしまいます。こんなユウジに遠慮せず、がんがんキャラを立てていけー!むしろ、超えちゃって、ユウジのポジションを奪っちゃえー!期待してるぞ、ユリスキーくん!」
「何を言ってるんだ、美雪さん!!このパーティのタンク役は俺だかんな!!」
「ありがとうございます、美雪さん…、いや、姐さん!!男、ユリスキー!!百合を愛しながらも、長年冒険者をやってきた経験を活かし、精進していきます!!」
「「姐さん…?」」
「うむ、ヤル気よし!!余は満足じゃー!!ラクレさん、お酒おかわりー!!我が舎弟の分もー!!」
「いや、姐さん、さすがに飲みすぎですよ!!今日はこのくらいにしておきましょう!!」
「なんらー?私の酒が飲めないって言うのかー?私は、ユリスキーと一緒に飲みたーい。」
「飲めます!!ごちになりまーす!!」
ユリスキーさんと一緒にコップを天に掲げ、大声で笑い合う。
楽しい酒らけど、私は周囲の確認と警戒を怠らない。私は狩人だからね。
「ササラ、あれは私のいた頃の日本じゃ、パワハラ、アルハラって言うんだ。そして、さっきササラにしたのがセクハラ…。ハラスメント地獄…、あいつ酔っ払うとヤバいなぁ…。」
「いや、セクハラはトウカはんもやん…。ササラの胸を揉んだん忘れたんか…?ま、まぁー…、さ、ササラはトウカはん相手やったら、嫌やないどころか…、む、むしろ嬉しいんやけどな…。」
「あ、何か言った?小さい声過ぎて聞こえない。もっと大きい声で、もう一回。」
「なんでもあらへん!!あほう!!」
「痛いっ!?いや、何で!?」
なにかトウカさんとササラさんが話しているけど…、と思ったらササラさんがトウカさんの頬ぱちーんだ。
「「尊い…。」」
うんうん、いつもの光景だ。とりあえず無視する。
「おい、シロ。次はレズメッグァナーイさんへの挨拶だから、お前も標的にされるかもしれないぞ。貴族の男キャラっていうので、レズメッグァナーイさんと被ってるって言われるかもしれないぞ。」
「だ、大丈夫です…。僕はみ、美雪さんを信じてます。」
なぜかシロ君とユウジが私に期待を込めた視線をそれぞれ送ってくるが、とりあえず無視する。
「お姉様に愛さんを押し付けられて放っておかれ…。お姉様、トウカ様、ササラ様の濃厚な乳繰り合いの百合にも参加できないなんて…。でも、こんな扱いも…、存外、悪くないと感じている私もいる…!!わ、私はやはり…!?お姉様ー!!私の新しい扉が開きそうですー!!」
「うるさい!!私が寝てるでしょうが!!」
「んごふ!!」
なんかユリが頬を赤らめてくねくねしてるなーっと思ったら、寝てるのを邪魔された怒りの愛さんに腹パンされている。
ちーんという音と共にユリは大人しくなり、愛も寝やすくなったからか、にっこり笑顔でスヤスヤ寝始める。とりあえず無視する。
様々な表情の仲間を確認したところで、私はレズメッグァナーイさんへ接近をする。
シロ君とユウジの、緊張と期待が入り混じったような視線が強くなるが、とりあえず無視して私は、レズメッグァナーイさんに伝えたかったことを伝えることにする。
「レズメッグァナーイさん!!私からあなたにお願いがあります!!」
「は、はい。何でしょうか…?」
私のお願いという言葉に、なぜかレズメッグァナーイさんは身構える。
身構えてしまうのも仕方ないらろう。なぜなら、私が一番挨拶をしたいと思っていた相手らから。
私はレズメッグァナーイさんを高く評価している。
なんらったら、ササラさんの仲間三人衆…、いや、ササラさんを加えた四名の中で、一番仲間にして良かったと思っている。
「美雪はん…、ササラよりもレズメッグァナーイのこと評価してるんか…?」
おっと、どうやら声に出ていたようだ。
ササラさんが少し悲しい表情を浮かべているが、トウカさんの励ましで元気を取り戻したから、とりあえず無視することにする。
「美雪様、評価していただけるのは嬉しいことですが…。なぜ評価されてるのか分からない現状では、手放しで喜ぶことは出来ません。評価の理由をお教えください。気分が優れないのであれば、明日でも構いませんが…。」
「レズメッグァナーイさん、あなたは貴族として博識高いとササラさんから聞いれます。それが評価の理由れあり…、私がさっき話したお願いにも関係があることれす。」
「お願い…。シロ様の支援でしょうか?」
「おー!!さっすが、レズメッグァナーイさん!!私達のパーティの問題に、すぐ気が付いてくれる!!そういうとこだよ、私が評価しれんの!!」
「僕の支援?」
支援先であるシロ君が疑問の表情を浮かべているため、私は解説をすることにする。
「私達のパーティは、サっちゃん加入前は、転生者が半分じゃん。らーから、常識が無いことが多いんらよ。愛なんて非常識の最たるものらし、ユウジはツッコミナンパ野郎らし、トウカさんは喧嘩上等ヤンキーらし、ササラさんはなんかアホっぽいし。転生前は常識人らった私も、この世界じゃ非常識人扱いじゃん。らーから、この世界出身かつ知識いっぱいの博識な常識人のシロ君には、常日頃おーきな負担がかかってらんよ。らーから、レズメッグァナーイさんには、パーティの管理とかー、この世界の生活基盤の管理とかー、色々な部分をお任せして、シロ君の支援をしてもらいたーいんら!お願いできるかな?かな?」
私の言葉に、驚いた表情を浮かべるレズメッグァナーイさん。
なんかトウカさんとササラさんが睨んできてるけどとりあえず無視して、私はレズメッグァナーイさんの言葉の続きを待つ。
「分かりました、美雪様。美雪様が他の女性との百合を私に提供してくれるのであれば、私は美雪様の期待に応えてみせます。」
「百合好きキャラ、ブレないねー!オッケーオッケー!レズメッグァナーイさんが手伝ってくれるってなら、私は愛とサっちゃんを精一杯かわいがるし、トウカさんは…怖いからほどほどにー、その分、ササラさんを面白おかしくいじるよー!」
「お願いします。」
なぜかトウカさんとササラさんの睨みが強くなったけど、とりあえず無視して、フルーツサワーをぐいっと飲み干す。
「ラクレさん、ラクレさん、お酒おかわり!!レズメッグァナーイさんの分も!!」
「ありがとうございます。いただきます。」
お酒を飲むというよりは嗜む、といった感じのどこか上品な雰囲気で、レズメッグァナーイさんはレトチさんが差し出したお酒を嗜んでいく。
うん、私の評価は間違いじゃなかったな。お酒を上品に飲む人は、仕事も出来る。
よし、これでレズメッグァナーイさんへの挨拶も完了だな。私は最後の挨拶の相手を探す。
「だ、大丈夫ですか…?美雪さん?顔、真っ赤ですよ?」
最後の挨拶の相手として探していたサっちゃんが、不安げな表情で目の前に現れた。
ん?サっちゃんが手を伸ばしてくるぞ!?まずい、先制攻撃だ!!私はサっちゃんの伸ばす手をバシッと弾き、彼女の細い体をぎゅうっと抱き締める。
「んー!?」
あっという間に赤い顔になり、驚きの声を上げるサっちゃん。
サっちゃんが大人しくなったのを良いことに、私はサっちゃんの体の確認をすることにする。
「サっちゃん、細いらー。ちゃんとご飯食べないとダメらよー。大きくなれないよー…って、私は自分より、干支二十回り程度も離れてるおばあちゃんに何を言ってるんら?サっちゃん、いや、サっ老師は、とっくに成長期終わってるじゃん。」
「おばあちゃん扱いやめてください!!心はティーンです!!」
ぷくーっと頬を膨らませ、子供のように抗議するサっちゃん(236歳)。
そんなサっちゃんの髪を撫でながら、私はサっちゃんにも挨拶をすることにする。
「ごめんね、冗談冗談。本当はおばあちゃんなんて思ってないよー。むしろ、サっちゃんは私より何十倍も年上だけど、不思議と妹の感じがするんらよー。なんらろうなー、守ってあげたい感じ?サっちゃんの目的より、私達の目的を優先するーなんて、面接では少し厳しいこと言っちゃっらけろ、私はサっちゃんの姫様探しも協力するからね。」
「美雪さん…!!」
「サっちゃん…!!」
私とサっちゃんはギュッと抱きしめ合う。
背後からの尊い…という言葉を聞きながら、私はサっちゃんへの挨拶の続きを始める。
「らから、サっちゃんにお願い。私達の目的と、サっちゃんの目的の両方を叶えるための、大切なお願い。」
「お願い?何ですか?あ、エッチなことはダメですからね!!」
朝のことと、さっきのササラさんの胸揉みを気にしてか、サっちゃんはエッチなことを警戒する。
ギュッと抱きしめられていることにも危機感を感じたのか、サッとサっちゃんは私から離れる。サッとね。
サっちゃんがサッとね。
そんなサッとサっちゃんが離れたのはどうでも良い。私はさっきのサっちゃんがサッと離れる前の言葉に、疑問を感じざるを得ない。
あれ?サっちゃんの中で、私ってエッチな人扱いされてる?誤解を解かなければ。
「エッチなことじゃらいよー!私、エッチじゃないし!お願いっていうのは、サっちゃんの得意な鍛冶に関するころー!」
「鍛冶ですか!何でしょう!?」
サっちゃんの目がキラキラしたものに変わる。生粋の職人なんだろうな。
サっちゃんの期待に応えるためにも、私は笑顔でお願いの内容を告げる。
「サっちゃん、人引き車の改造って出来る?」
「人引き車って、今日クエストに向かう移動手段として使った車ですよね?大きな炉があれば、出来そうですが…。人数増えたから、大きくするって感じですか?」
「大きくするのは勿論らけろー…、まずは、自動で走るようにしてほしいなー。現状、愛とユウジに漕いでもらってるけろー、突然モンスターに襲われた時に、二人がスタミナ切れらと、ピンチらからね!」
「じ、自動で走るようにですか…!!魔石を使って、自動化は出来そうですが…。って、自動化が、まずは、ですか?次があるんですか?」
「うん。最終的には空を飛ばして。」
私の言葉に、サっちゃんが目を見開く。なんで、こんな驚いてるんだろ?私だって戦闘中に風属性魔法で飛んでるっていうのに。
私の疑問に答えるように、トウカさんが説明をする。
「おい、美雪。私達にとっては飛行機は見慣れたもんだけど、こっちで空飛んでんのは、飛竜とかのモンスターだぞ。車が空飛ぶなんて発想は、まだ受け入れられねぇよ。飛躍し過ぎだ。」
「飛躍?飛行機だけに、っすかー!ふぅー!」
「…。あー、くそー。酔っ払い美雪めんどくせー…。」
苦虫を噛み潰したような顔のトウカさんはとりあえず無視して、サっちゃんとの真面目な話に戻る。
「サっちゃん、実際ね、移動手段は必須なんらーよ。エルフの姫様を探すのもそうらけっろ、私達は南大陸にある魔王城に行って、魔王と戦争を止めるらめの交渉をしなきゃいけないんらかーらー。海を越える必要があるなら、空を飛ぶ必要があるれっしょー?らって、私は魔族との戦争を止めれー、この世界をー、平和にするんらからー。」
「この世界を、平和に…。」
私の言葉で、サっちゃんの表情が真面目なものに変わる。
ん?ろうしたんらー?って思っらろころれ、サっちゃんは三人に分身しれ、私の肩を掴んれー、何か言葉をかけるー。
んー?魔族との戦争を止めるのはー、エルフの姫様も悲願らっらー?
そうらろな、戦争はぜっらいに起こしちゃいけないよなー。戦争にいっら、ひいじいちゃんも言っれらし、じいちゃんと、ばあちゃんも言っれら。戦争は、みーんな、不幸になるっれ。
戦争で得するのは、らったの一部の人れ、その一部の人のらめに、罪の無い人が、みーんな不幸になるっれ、じっちゃとばっちゃが言っれら。
「おい、美雪ー。急に語り出したけど、大丈夫かー?」
あっれ、まら声に出しちゃっれら?なーんら、心配そうなひょうじょうのトウカさんに、私はぐーっと両手の親指を上にしれ、ばっちぐーなことをつらえーる。
「んー、ろうかさーん、わらしは、べんべん、らいじょー…、ぐぅ…。」
ふっと体の力が抜けた私は、その場にたおれーる。あー、睡魔がー、私を襲うー。
なんか皆が駆け寄っれくる気配を感じるけろ、今の私にはどうでも良いことー!
ちゃんと、新入りみんなに挨拶周りできたもんなー!今日の任務は、ばっちりこなしらもんらー!!
朝にサっちゃんとスキルの確認しれー、トウカさーん、ササラさーん、他三人の面接をしれー、その裏でクエスト行っれ色々あっらサっちゃんを慰めれー、新入りへの歓迎会ー。なんら、こののーこーな一日はー?いろいろあり過ぎらろー!!
そりゃあ、転生前は無限に働けると豪語ゴーゴーしれっら私らって、こんらハードゥな一日は、疲れれ、ばったんきゅーっれなっるよー。
なーんか、色々と失礼なこっろを言っら気がするけろー、明日、迷惑をかけら人には謝ればモーマンタイ!!たぶん!!
そんな言い訳をしながら、私は意識を失う。
こうして、私は酩酊の中でパーティ新入りの歓迎会を終えた。




