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魔王退治は要件定義から!  作者: 荒井清次
王都滞在編 -新しい仲間と共に王都での生活基盤を整え強くなる-
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パーティ名決定の祝賀会が開かれる①

前回のあらすじ:美雪(みゆき)の悪酔い、再び。


ラクレさんのお父さんの手違いで提供されたフルーツサワーにより、私の視界はふわふわ幻想なものに変わった。気分はふわふわ、なんだか楽しく陽気になってくる。


「酔っ払い美雪だー!!わーい!!」


ふわふわしてる頭に、愛の大きな声が聞こえてくる。

声のする方を確認すると、愛が私に向かって両手を広げて立っていた。ん?なんだ、やるのか?


「愛は前回の美雪さんの酔っ払いで、たくさんの感謝の言葉を言ってもらって、たっぷり甘やかされたからな…。前回ので味を占めて、今回も甘やかしてもらおうと思ってるんだな…。」


「まさに、我先にって感じでしたね…。愛さんの思惑通り、うまくいくでしょうか…。ひとまず、僕はお水をもらってきますね…。って、なんでレトチさんはフルーツサワーのお替りを美雪さんに渡してるんですか!?」


「あちらのお客様からです…。」


「うわ…。トウカさんが面白そうだから焚きつけようって顔してる…。」


レトチさんから渡されるフルーツサワーのお替りを受け取る。

シロ君とユウジが何かを呟き、トウカさんがグッと親指を立てているけど、よく聞き取れないため無視をすることにする。

なにせ、目の前には鬼火流剛術(おにびりゅうごうじゅちゅ)の申し子が、臨戦態勢をとってるんだからね…!!

これは警戒せざるを得ない。気を緩めたら、ドーンでズバーンのバターン、クラクラキューだ。

レトチさんが持ってきてくれたフルーツサワーのお替りで、緊張感の喉に潤いを与えながら、血気盛んな愛と対峙する。

なんだー?にやにやしちゃってー!?余裕たっぷり、野菜マシマシかー!?

何かを待ってる様子の愛を見ていたところ、私はとあることを思い出す。

あ、そうだ。説教しなきゃ。今日のサっちゃんとのクエストの暴走のこと、説教しなきゃ。


「愛、ここに座りなさい!!」


「はい!!」


びしっと片手を上げて、私の隣にちょこんと座る愛。

ん?いつも説教の時には逃げようとするのに、今日はやけに素直だな。

まぁ、良いか。疑問を感じながらも、私は愛への説教を始める。


「こら!!愛、サっちゃんに聞いらけど、今日のクエストでも暴走したんだって!?サっちゃんが戦っちゃダメって言った強いモンスターにも、えいやーって戦いを挑んだんだって!?強敵がいたら、即座に挑む暴走をしちゃダメ、仲間に迷惑をかけちゃダメって、何度も言ってるでしょ!!こら!!もう、こら!!」


「あれ、説教…?」


「え?さっき、後で説教と言ってたでしょ?なーにをポカーンとしてるの?」


信じられないという表情で、両目を見開いて私を仰ぎ見る愛。

しゅんとする愛に、少し可愛いと思ってしまったが、私の説教は止まらない。


「愛!!さっき、サっちゃんに聞いらけど、ミスリルゴーレム相手に、終の型使って倒せなくて、スタミナ切れで倒される手前まで追い込まれたんだって!?そんら、ぽっと出のモンスターごときにやられそうになってるんじゃないの!!もっと強い敵と戦わせてあげるって、いつも言ってるでしょ!?強くなるために、より強敵と戦うために、時には逃げるのも肝心!!分かっら!?」


「逃げるなんて、軟弱なこと…、鬼火流は認められない!!」


私の言葉に反論するためか、グッと立ち上がる愛。私はそんな愛を、ぎゅうっと抱きしめる。

声のトーンをすとーんと落として、私は愛の耳に囁くように語りかける。


「認めなさい、バカ。倒されるくらいなら、逃げなさい、バカ。バカ。私は愛を失いたくないの。私の目標の達成には、超強い愛が絶対に必要なんらから。って言うと、目標達成のために愛を利用してるように感じるわね…。ごめん、訂正。私は愛との日々が、毎日楽しくて、もう妹みたいな、下手したら娘みたいな…、とにかく、大事な家族に感じてるんだから。だから、簡単に倒されないで。私に寂しい思いをさせらいで。愛を失ったことを…、家族を失ったことを考えさせないで…。」


「か、家族…!!美雪、そんなに私のことを大事に思ってたんだ…!!」


「もちのろんよ。」


「み、美雪…!!」


「愛!!」


愛と私はお互いの顔を見合った後、ひしっと抱きしめ合う。


「なに、この茶番?お前ら、いつもこんな感じなの?」


「普段はこんな感じじゃないですよ…。酔っぱらった美雪さんですから…。こういう謎展開は想定内です。」


「想定内なんですか…?」


「あぁ…、流れるように、愛が美雪さんの膝枕で寝始めた…。寝るなら、自分の部屋で…って、まぁ良いか…。愛は風邪ひかないからな。大人しくなるだけ良いか…。」


「「尊い…。」」


「うぅ…。美雪はんと愛はんの、友情いうんか、そういう信頼関係がえぇなぁ…。ササラ、仲間の大事さとか、そんなんを感じてまうわ…。」


「いや、なんでササラは、ほろっと涙してんの?え?今の茶番で感動してんの?え?」


「あ、サっちゃん、ハンカチおおきに…。洗って返すなぁ…。」


「「尊い…。」」


「お姉様と愛さんの濃厚な百合シーンに、嫉妬心が湧き上がってくるんですが…、同時に私の百合を好む心が、二人の邪魔をしちゃいけないと警鐘を鳴らしやがる…!!これが、NTR百合…!?あぁ、お姉様は私の新しい扉を、どんだけ開いたら満足なさるんですか…!?お姉様、お姉様ー!!」


私の膝枕で、すぅすぅと寝始めた愛の髪を撫でていたところで、ユリが両手を広げて突進をしてくる。

とっさにユリの頭を掴んだところで、私に電流走る。

閃いた。私はユリにお願いをする。


「ユリ!!私は今日加入した新入りに歓迎の旨を伝えないとなんらけど…、愛が私の膝枕で寝始めたこの状況らと、私は自由に動けない。らから、ユリ。私の代わりに愛を膝枕してもらって良いかな?こんなころ、ユリにしか頼めないんらけど…、良いかな?お願い!」


「お、お姉様…!!」


私の言葉に、瞳をうるうるとし始めるユリ。なぜか感極まった表情で、ユリは自分の胸を叩く。


「ままかせてください、お姉様!!わたくし、ユリ!!お姉様のために、愛さんの膝枕という大役を仰せつかります!!最愛の相手に、ほかの女性の面倒を見ろと言われるこの状況に、私の中の何かがゾクゾクしますが、不思議と嫌な気持ちはありません!!愛さんのことは任せてください、お姉様!!」


「よく分かんないけど、ありがとう、ユリ。愛に変なことをしたら、承知しないからね。それじゃ、申し訳ないけど…、ユリ、頼んだ!」


「頼まれました、お姉様!!」


びしっと敬礼をする私に、ユリもびしっと敬礼で応える。

熟睡中の愛が起きないように、頭を優しく持ち上げ、ユリの膝へと誘導する。


「あ、あぁ…、美雪さんが自由になって、野に放たれた…!!」


ユウジが何かを言ってるけど、無視する。愛の移行作業が完遂したところで、自由になった私は周囲をキョロキョロと確認する。

そんな私に、トウカさんが声をかけてくる。


「おい、美雪ー!!こっちの高級日本酒、めっちゃうまいぞー!!一緒に飲もうぜー!!」


「美味しい日本酒ー?飲むー!!」


「「!?」」


「なにを驚いた顔してんだ、男共。こんなに面白い美雪、なかなか見れないぞ!!せっかくなんだから、もっと、ヒートアップさせようぜ!!」


「やめたほうが良いですよ、トウカさん!!これ以上、美雪さんを酔わせるのは危険です!!」


「美雪さんは、爆発魔法も使うんですからね?怪我しても俺らは知らないっすよ…。」


「大丈夫だよ!いくら酔っ払ってても、自称常識人の美雪なら、さすがに王都の中で魔法はぶっ放さないって!」


「トウカさーん、あーだこーだ言ってないで、美味しいっていう高級日本酒を、早く私にもくださいよー。んー!」


シロ君とユウジが何かを言ってるのを無視して、私はラクレさんにもらった小さなおちょこを、トウカさんに向けて伸ばす。


「わりぃわりぃ。それじゃ…、よっと…。」


「あらがとうございますー。」


トウカさんの差し出すとっくりから、おちょこになみなみに注いでもらった私は、ゆっくりと口をつけて唇の先を潤す。

高級な日本酒を、くいっとあおったりはしない。舌先でゆっくりと味わって、日本酒の香りを楽しむんだ、と思っていた私の鼻先を、芳醇な日本酒の香りが突き抜ける。


「ふわぁ…。ほのかな甘さが喉を流れていくけど…。なにこれ?うんま…。」


「な!高級ワインとか、高級シャンパンはいまいち舌に合わなかったけど、この高級日本酒は、自然と美味しいって感じられるよな!!」


「うんまー…。」


トウカさんに注がれるまま、私は高級日本酒の美味さを堪能する。

頬の熱さが強くなってくるのを感じながら、高級日本酒一杯目を飲み終えたところで、私は本来の目的を思い出す。

そうだ、新入りに挨拶回りをするのが、今の私の任務だった。銅等級冒険者のトウカさんも、先輩だけど新入りだ。ちゃんと挨拶をしないといけない。表情を引き締めて、私はトウカさんに向き直る。


「トウカさん。私達パーティへの参入、本当にありがとうございました。」


ぺこりと頭を下げる私に、トウカさんは疑問の表情を浮かべる。


「急にどうした?」


「トウカさんな何も言わないらめ、ここからは推測れすが…。私達のパーティは、冒険者として危なっかしいところが多いのは事実なんですが…、そんな私達を、トウカさんが先輩冒険者として、目をかけてくれてるのは感じます…。今回のパーティへの参入も、そういうところからですよね?」


「ん…。い、いや、そういうのじゃねぇ…。」


「照れて否定しても、私は分かります。まだまだ未熟な私達れすが…、先輩であるトウカさんの期待に応えられるよう、私達は精進をしていきます。ご指導、ご鞭撻のほど…、よろよろでーす!!」


「いや、急にチャラいのなんでだよ…。」


おでこに手を当てにやける私に、困り顔を浮かべ、気まずそうに鼻先をかくトウカさん。

困った中に、どこか嬉しそうなトウカさんの表情からは、私の言葉が間違っていないことを感じられる。

やっぱりトウカさんは、世話好きな優しい先輩なんだな。

トウカさんの私達への思いやりに、頬と胸が熱くなってくるのを感じながら、私は話し始める。


「トウカさんって、身長150くらいれすか?体は小さいれすけど、態度はでかいですよね?最初にフィーネさんと会った時は丁寧な感じらったれすけど、あっという間に先輩風びゅうびゅうの、大物感がすごいっすよね。」


「なんだ、美雪。喧嘩売ってるのか?」


指をパキパキ鳴らしながら睨んでくるトウカさんに、私は誤解を解くために弁解をする。


「いや、喧嘩売ってるんじゃなくて、私はトウカさんを褒めてるんれすよー。小さい体れも、物怖じしない感じがすごいなーって…、純粋に驚いてるんすからー。トウカさんは可愛い系の見た目で、強敵が跋扈する異世界の中れ、周囲の荒くれに負けず、猛虎のような睨みをもっれ、我を貫き通してるんらから。真似できないなー、すごいなーって私は評価してるんれすよ?本当れすよ?」


「ん…?なんで急に褒めてきてんだ…?」


困惑の表情を浮かべながらも、少しずつ赤みが増すトウカさんの顔。

あれ?今ならいける?と思った私は、出会った時から気になっていたことを聞いてみることにする。


「トウカさんって、体は小さいれすけど…、おっぱい大きいれすよね。」


「ん!?急に何を言ってんだ、お前!?」


ぼっと顔を真っ赤にするトウカさんだけど、今日の私は止まらない。

両手をクロスして大きな胸を抱え込むように睨むトウカさんに、私は隣で睨むササラさんを巻き込みながら、にじり寄る。


「いや、大きいれすよー。特盛って感じれす。れすよね、ササラさん?」


「な、なんでササラに意見を求めるん!?ササラを巻き込まんで!!」


「えー?らって、存在感がすごいじゃないですか。トウカさんのおっぱい。何かの拍子に、ぽいんぽいんと跳ねてるのが、すごいなーって常日頃、感心しれるんでれすからー。ほら、私は小さいじゃないですか。だから、そのぽいんぽいんが羨ましいんですよ。触っていいれすか?いいれすよね?ありがとうございまーす!!」


「なんで美雪は酔っ払うと、ボディタッチ過多になるんだよ!!おい、ササラ!!そんな顔で私のことを睨んでないで、酔っ払った美雪の相手をしろ!!」


両手をワキワキしながら、目の前の大きな双丘に、がばーっと攻め入る私に、トウカさんは大きな声でヘルプを出す。

トウカさんのヘルプに応じたササラさんに両脇を押さえられる中、私は振り返って和風美女のササラさんに笑顔を向ける。


「ササラさん。指先に、この世の物とは思えない柔らかさを感じました。きっと、少しだけ触れたんらと思います。トウカさんのおっぱいには、夢と希望と特大スライムが詰まってると思うんれすが…、ササラさんもいかがですか?」


「そ、そうなんか…?そんな柔らかいんか…?と、トウカはん、良ぇか?」


「いや、なんでだよ!!普通にダメに決まってんだろ!!美雪に毒されるな、ササラ!!お前は美雪のことをしっかり押さえとけ!!」


トウカさんの声で、ハッとしたササラさんの羽交い締めの力が強くなる。

ちっ、ダメだった!!ササラさんを味方にしよう作戦、失敗!!

しかし、私は後に作戦失敗で落ち込んでいる場合じゃないことを思い知ることになる。

羽交い締めされて動けない私に、トウカさんが急接近し、不敵ににやりと笑う。


「やられたらやり返す、えいっ!!」


「!?」


トウカさんは勢いよく両手を伸ばし、私の小さな双丘をわしっと掴む。

この反撃は仕方ないこと。私だってトウカさんの大きな双丘を揉もうとしたんだから。

おっぱいを触ろうとする者は、相手に触られる覚悟が無ければいけない。

恥ずかしいのを我慢し、私はトウカさんの攻撃を甘んじて受けることにする。

どう揉みくちゃにされるんだろうと思っていた私だが、トウカさんはスッと私の胸から手を離す。


「えっと…、その…、ごめんな…。」


突然のトウカさんの謝罪に、私は首を傾げていると、ササラさんが羽交い締めを解きながら、解説をしてくれる。


「と、トウカはんが、美雪はんの胸のあんまりな小ささに、申し訳ない気持ちになってもうてる…。そ、それはさすがに失礼やで、トウカはん…。」


「うん、ごめんな…。」


そうか。私の胸があまりにも小さかったから、攻撃を防ぐことが出来たんだ。

私は両足を大きく開き、右手を胸の中央に、左手を腰にあてて胸を張って、むっふーと笑う。


「いや、なんでドヤ顔!?」


「なんでそんな誇らしげなん!?」


トウカさんとササラさんのツッコミを聞きながら、私はあることに気付く。


「トウカさんの胸は私が揉んだ。私の胸はトウカさんが揉んだ。じゃあ、ササラさんの胸は私とトウカさんが揉まないといけないんじゃないかな?」


「いや、なんでなん!?その理論はおかしいで!!って、なんでトウカはんも、確かに…って表情しとるん!?」


ササラさんの言葉に、私とトウカさんは無言で互いの顔を見て頷き合う。


「なんで二人とも無言で近付いてくるん!?もしかしなくても、トウカはんも酔うとるな!?酔っ払い二人なんな!?さ、ササラの胸なんて、トウカはんみたいに大きくないし、揉んでも楽しくないでぇ!!楽しくないでぇー!!」


ササラさんの声に、ユリスキーさんとレズメッグァナーイさんが私とトウカさんの隣に並び立つ。

救世主の出現とばかりに、ササラさんは二人に手を伸ばす。


「助けてー!!ユリスキーはん!!レズメッグァナーイはん!!」


「「尊い…。」」


百合が好きなユリスキーさんとレズメッグァナーイさんは、満足気に頷くだけだった。


「んなー!?」


誰の助けを得ることも出来ないササラさんの声は、宿屋金字塔の食事スペースに虚しく響くだけだった。

美雪の酔っ払いの夜は、まだまだ続く。

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