【番外2-終】竹調のササラは変わらずポンコツだけど夢叶う
この物語は竹調のササラ目線で語られる番外編です。
本編の圧迫面接の前日談と当日の裏側です。長くなってしまった番外編も今回が最終話です。
話し方が安定しないエセ京都弁のササラ、長くなってしまった番外編に、不快に感じた場合は申し訳ございません。
歌姫の護衛クエストを終えたササラは、冒険者ギルドを訪れたんやけど、偶然にも意中の相手であるトウカはんに出会うた。
「それじゃ、これは美雪達の取り分な!護衛クエストの報酬四千ゴールドの半分!二千ゴールドな!確認してくれー!」
どうやら、サポーターの美雪はん達にクエストの報酬金を支払ってるとこやな…って、ん?おかしいなぁ。なんで、報酬金?
今回、トウカはんのサポーターの美雪はん達がやった、闘技場の特別席や廊下の修繕費で、クエストの報酬金はゼロどころかマイナスのはずなんやけど…?
無いはずの報酬金が、トウカはんから美雪はん達に払われたんかえ?
なぜか支払われる美雪はん達への報酬金に疑問に感じるササラ。
やけど、ササラはすぐにトウカはんの真意に気付いた。
「あぁ、そういうことなんか。」
トウカはんが何をしたんか気付いたササラは、思わず小さな声で呟いとった。
トウカはん、あいかわらずやな。
トウカはんがしたこと、誰も気づかないままなんて、あまりにも可哀想やな。
気付いたササラだけでも、何か言うたらなあかん。
ササラは勇気を振り絞って、トウカはんに近付く。
幸運なことに、トウカはんも美雪はん達から離れて、冒険者ギルドの受付へと向かうとった。
これ幸いとばかりに、ササラはトウカはんに声をかける。
「ほんっま、トウカはんは美雪はん達に優しいんやな。」
「ん?なんのこと?」
「今回の護衛クエストの報酬や。ササラが気付いてないと思うたんか?ライブ自体はアドリブでなんとかなったけど、闘技場の特別席に、そこに続くまでの廊下、ついでにペトラはんの眼鏡を滅茶苦茶にしたんや。ペトラはんから法外な弁償金を請求されたんやろ?今回の報酬なんて吹き飛んだんちゃう?それどころか、マイナスやない?弁償金に身銭を切ったんかえ?」
「んー?ササラがいつにも増して何を言ってるか分かんないなー。」
ササラの質問に、分かりやすくしらばっくれるトウカはん。
そんなトウカはんの言葉やけど、ササラには引っかかるポイントがあった。
「いつにも増して、ってなんなん?その言い方やと、いつもササラが変なことを言うてるみたいなんやけど…?」
「ごめんごめん。ごめんついでに、なぜか財布事情が厳しいから、飯おごって?」
ササラの質問を無視して、上目遣いでお願いしてくるトウカはん。う、可愛い…!!可愛すぎる…!!
トウカはんからしたら、ダメもとでのお願いやったかもしれん。でも、トウカはん大好きササラには、効果抜群や。
顔が赤うなってくるんをバレんように、つーんとトウカはんから目線を逸らせながらササラは答える。
「仕方ないなぁ。トウカはん、可哀想やしおごったるわ。」
「まじ!?ラッキー!ありがと!ササラ!」
子供みたいに喜ぶトウカはん、可愛すぎまへん?
あ、喜びいっぱいって感じで抱きつこうとするんはあかんで。ササラ卒倒するで。
トウカはんの抱擁攻撃に負けんように、トウカはんの両肩をササラは両腕で抑える。
「ちぇー。せっかく感謝の気持ちを全身で伝えようとしたのにー。」
ご飯おごるくらいで抱擁なんて…。トウカはん、チョロ過ぎまへん?ササラ、心配。
でも、すぐにササラは大事なことに気付きます。無邪気に喜ぶトウカはんの可愛さに、顔を真っ赤にしとる場合やあらへん。
夕食をご馳走するって、これ、トウカはんとのディナーデートやないの!?
い、いつの間にか、トウカはんと二人っきりでご飯の約束が出来とる!!ササラ、む、胸の鼓動が早まってまう!!
あ、あかんで、ササラ、落ち着くんや。いつも、ここで慌てて失敗するんや!!お、落ち着くんや。ひっひっふー。ひっひっふー。って、これ違うんやない!?
混乱しとったササラを無視して、トウカはんは更に無邪気な笑顔を向ける。
「なー、ササラー。何を奢ってくれんの?私いっぱい食べたい!」
「ほ、ほんなら、ササラのお気に入りの和食の店を紹介するで!」
「えー、和食?ササラのことだから、どうせ味薄いんだろー?今日は肉の気分なんだけどー。肉にしよう。焼肉にしよーう?」
「図々し…、って、はぁ…。分かったわ、肉やな。それなら、ギルド対抗戦での勝利セールしてはる、洋食屋くろばらでえぇか?」
「洋食屋くろばら!オッケーオッケー!私、デラックスゴージャスフライセットなー!」
「デラックスゴージャスフライセットって、あそこで一番高いメニューやないの…、って、まぁ、えぇわ。ほな、はよ行くで?」
「良いのかよ!?気前良いなぁ!なんか良いことあったの?」
「そんなとこやな。お祝いや。」
「お祝い?なんの?」
「秘密や。」
「かーっ!秘密かー!相変わらず、ササラちゃんはつれないなー!まぁ、良いや!デラックスゴージャスフライセットをおごってくれるってんなら、なんでも良いや!ほら、早く行こうぜー!」
お祝い。
トウカはんとの初めてのディナーデートのお祝い。…って言いたいとこやけど、今日のお祝いは、それやないねん。
あの滅茶苦茶なコンサートでの、トウカはんと一緒にした美雪はんへの支援し合い。
ちょっとやけど、ササラの夢のトウカはんと並び立っての共闘が叶ったねん。それのお祝いや。
恥ずかしうて、トウカはんには言えへんけど。
「デラックスゴージャスフライセットー!あのぷりっぷりのオーガシュリンプのフライが絶品なんだよなー!当分、貧相な食事を覚悟してたけど、ラッキー!ササラ、ありがとうな!」
「ほんま、こういう時だけ調子良いんやから。」
「はっはっはー!!」
共闘はほんま短い間の、夢のような出来事やったけど、今のササラにはこうして笑顔のトウカはんと肩を並べられるだけで満足や。
それに、護衛クエストを通して、こうして一緒にご飯を行けるほど仲を深めることも出来た。ササラのおごりやけど。
ポンコツササラにとっての大きな大きな一歩。大事な大事な一歩。
にやにや笑いそうなるんを堪えて、トウカはんと並びながら、洋食屋くろばらに向けて歩を進める。
あぁ、トウカはんと一緒に並んで歩いてる。
これ他の人から見たらデートと思われてまうんやない?照れてまうなぁ。
そんな浮かれササラに気付くことなく、トウカはんは空を見上げながら呟く。
「しかし、美雪たちは規格外だよなー。あれで転生して二か月もしてないんだって。」
「はえ!?そうなんか!?なんであの実力で黒等級やろ思うとったら、転生したばかりやからか!?」
美雪はん達の驚愕の事実に、ササラは思わず大きな声を上げてまう。
道行く人が怪訝な表情で、ササラを見てくるんに恥ずかしくなるけど、トウカはんは気付かず話を続ける。
「レベルアップが早いのは、パーティに三人も転生者がいるからだろうな。ほら、スキル転生者って経験値の取得量上がるじゃん?パーティ組んでるササラなら分かると思うけど、あれってパーティ全体に効果あるんだよな。多分、重複して効果三倍とかになってるぞ、あれ。」
「やからレベルアップが早いんか…。最初の方はレベルアップに必要な経験値が少ないとはいえ、もうレベル30超えは異様な早さやな。」
「レベルアップが早いと、戦闘の基礎がなってないことが多いけど、昨日の秘密の力ってのの覚醒後は、ちゃんと基礎を押さえてた戦いに変わってた。あの時のことは、後でちゃんと聞いておかないといけないな。同じ転生者として、私達にも関係ある話だし。」
「そうやな。トウカはんやササラはんの中にもあるんやもんな、秘密の力…、たしかシークレットスキルやったか?」
「そう、シークレットスキル。美雪はあの戦闘の中でシークレットスキルが覚醒したのは間違いない。しかし、シークレットスキルの覚醒ありきとはいえ、あのペトラをやっつけちまうとは…。美雪に先越されちまったな。」
老騎士の弟子やったペトラはんは、同じく老騎士の弟子やったトウカはんにとっては、姉弟子的な存在。
喧嘩上等なトウカはんは、事あるごとにペトラはんに勝負を挑んだんやけど、その度にボコボコにされたらしい。
いつか見返してやる言うてたんやけど、自分では過去にボコボコにされたトラウマを拭いきれなかったそうや。
そんな時に、サポーターの美雪はんがトウカはんの支援魔法を受けて、ペトラはんに勝利を収めた。
内心複雑やろうな思うたけど、トウカはんは笑っとった。
「私の支援魔法を受けた美雪が勝ったんだから、私が勝ったと言っても過言じゃないな。」
いや、三対一やけど良ぇんか?
そう言いそうになったササラやけど、すっきりした笑顔でえへへと笑いかけてくるトウカはんに、口をつむぐしか出来んかった。
ササラは今日もトウカはんに射抜かれてしもうたな。
もう、毎日トウカはんへの好きが更新されとるんやけど、こんな幸せでササラどうなってまうんや。
幸せを噛みしめとったところで、ササラ達は目的の洋食屋くろばらに着く。
二人で注文を終え、席に座ったところでササラはほっと一息を吐く。
今日のササラ、調子良ぇんやないか!?
まだポンコツ出ず、こうして一緒に食事出来るとこまで来たんやで!!大奮闘や!!
注文しとった料理も運ばれ、緊張しながらも粗相が無いように上品に食うとったところで、トウカはんが何気なく尋ねてくる。
「あ、そうだ。なぁ、ササラ。良い大工の伝手とか無い?」
「大工かえ?急にどうしたん?」
「姫さ…、じゃなくて、冒険者フィーネが、私の家の引き籠っていた部屋までの扉を全部壊しやがったんだよ。ファストの町から帰ってきても、扉は壊れたまま。外から風が吹き込んで、辛いのなんのって。フィーネ許すまじ。…って、どうした、そんな汗かいて?」
ぐぬぬと怒りの感情を剥き出しにするトウカはんに、ササラは冷や汗が流れ始める。
フィーネはんが引きこもりから脱出できるよう頼んだのはササラ。
つまり、トウカはんの家の扉を壊したのはササラのせいと言っても過言やあらへん。
この事実はトウカはんには伝えられへんな。無事に店を出ることが出来へんくなる…。
フィーネはんがトウカはんの家を壊したことの真実は、ササラん胸の中に秘めておくことにする。
「な、なんでもないで…。ササラの知り合いの、腕の良い大工を紹介したるわ。」
「お、ありがとう!」
トウカはんの無邪気な笑顔とお礼に、ササラん中に罪悪感が込み上がってくる。
フィーネはんのことは絶対に墓場まで持っていこう…。そう思うとったところで、トウカはんがぽんと手を打つ。
「よく考えたら、修理だけじゃダメだな。ササラの知り合いの大工って、増築もできる?」
「増築?トウカはんの借家って、部屋充分あったやろ?なんで、増築が必要なん?」
ササラの質問に、あれ、言ってなかったっけ?いう感じの表情になるトウカはん。
夕食のメニューを言うくらいの何気ない表情で、トウカはんは今日一番ササラを驚かせることを言う。
「私、美雪達のパーティに入る予定だからな。どうせなら、美雪達を含めて、あと四人が住めるくらいのホームにしようかなって思っての増築。」
「んえ!?トウカはん、美雪はんのパーティに入るんかえ!?」
突然のトウカはんの宣言に、ササラは今日一番の大声を上げてまう。
「うわ!?びっくりした。どうした、そんな大声出して?そんな驚くことか?」
そんな驚くことや!!
トウカはんと一緒のパーティで冒険するいうササラの夢が、目の前で美雪はんに叶えられてしまう!?
「な、なんでなん!?美雪はんって、トウカはんのサポーターやったよな!?サポーターのパーティに入るんかえ!?レベルも等級も下やん!?まだ冒険者歴一か月なんにゃろ!?なんで美雪はんなん!?惚れたんか!?美雪はんに惚れたんかえ!?それとも愛はんかえ!?」
「質問が多いなぁ。」
「早う答えてや!!」
いつもとは逆に、今日はササラからぐいっとトウカはんに近付いてまう。
驚いた表情を浮かべるトウカはんやけど、すぐに真面目な表情でササラの質問に答える。
「美雪と愛ちゃんは、アホかってくらいの防御を捨てた火力タイプじゃん。それが理由だな。」
「それが理由?美雪はんは爆発魔法なんて高火力な魔法を使うし、愛はんは適正討伐レベル36のミノタウロスに、一対一で楽勝な火力やけど…。それがなんで、トウカはんが美雪はんの仲間になる話につながるん?」
「支援魔法が生業の私達には、高火力な仲間が必須だ。なにせ、私達は誰かをサポートをしなきゃ戦えないだろ?私は師匠が死んだ時に感じた。どんなにレベルを上げても、どんなに経験を積んでも、自分の火力じゃいざって時に大事な人を守れない。それなら、誰か高火力の冒険者を支援してやればいいって。それが一年間も引きこもっての結論。」
「だから、美雪はん達のパーティに入るんか。」
ササラの言葉に、トウカはんはその通り言うて無邪気に笑う。
本当はトウカはんも自分自身で戦いたいんやろな。喧嘩っ早いから。
でも、支援魔法キャラになってもうたから、それが叶わん。トウカはんは何も言うてくれんけど、引きこもっとった時は、そういう葛藤で悩んでたんかもしれん。
無言で見つめとったササラに、トウカはんはにこりと笑うて話の続きを始める。
「本当は王都最強の矛とも言われる冒険者フィーネとパーティを組むってのも考えたんだけど、あいつには色々としがらみが多いからな。」
「しがらみ?そんなんあるんか?フィーネはん、大変やな。」
「いや、大変やなって、お前…。フィーネは…。いや、知らない方が幸せか。」
トウカはんが信じられない物を見るような目でササラを見てくる。
フィーネはんって、そんな有名な人なんか?気になるけど、トウカはんが知らない方が幸せ言うなら、ササラは気にせんことにする。
「でも、火力の高い冒険者のパーティに入りたいって理由だけなん?それだけなら、他に高火力な冒険者なんて、いっぱいおるやん。ササラが知っとるだけでも、鉄波、黒剣、王属騎士団とかおるやん?」
「確かにな。その質問に対しての回答としては、私が美雪達の先輩冒険者だからってのがあるな。あいつらこの世界の知識無いのに、目標のためにごり押しで突き進もうとするだろ?見てて危なっかしいんだよ。だから、先輩として色々教えてやりながら、サポートをしようかなと思って。」
「ほんっま、トウカはんは美雪はん達に優しいな。」
ササラの言葉を聞いて、照れくさそうに笑うトウカはん。
面倒見が良い、姉御肌のトウカはんらしい理由。あかん、ササラ顔赤うなってないやろか?
そんなトウカはんに、ササラは美雪はんか愛はんに惚れたなんて、つまらん嫉妬心を抱いてもうた。
反省をしつつ、赤くなっとるであろう顔がバレんように平静を装っとったササラに、トウカはんは笑顔で話し始める。
「まぁ、色々と理由つけてみたけど、一番はあれだ。なによりも、あいつらのこと気に入ったんだ。あいつらには言うなよ。恥ずかしいから。」
やっぱ惚れとるやないか!!
気に入ってるって、遠回しな大好き宣言よな!?
パニックになったササラのポンコツ思考は、ひとつの結論に辿り着く。
虎穴に入らな、虎子は得られん!!
「ササラも!!ササラも美雪はん達のパーティに入る!!」
「え?お前すでにササラ幻樂団っていう、クソださくて痛い名前のパーティあんじゃん。どうするの?」
「ササラが必死に考えたササラ幻樂団…、クソださくて痛いんか…。」
「おい、取り巻き達。ササラが落ち込んじちまったから、お前らが答えろ。パーティのリーダーがあんなこと言ってっけど、お前らどうすんの?」
パーティ名をクソださ言われて落ち込んどるササラん代わりに、いつの間にか背後におったユリスキーはん、レズメッグァナーイはん、ユリ・シンジョウはんが順に回答する。
「私はササラ様に従います!!」
「私もです!!むしろ望むところです!!私達にとっては、最高の環境になります!!」
「美雪ちゃんと愛ちゃんの関係も、私的には有りなんだよねー…!!ササラ様に加えて、さらにあの二人まで…!?酒池肉林…、いや、酒池肉百合ん…!?」
「いや、何言ってんの、お前?大丈夫か?」
両腕を頬にあて、うっとりハァハァしとったユリはんに、トウカはんが急接近する。純粋に心配いう表情で、トウカはんはユリはんの顔の前で、ひらひらと手を振る。
良ぇなぁ思うとったササラを気にせず、ユリはんは真っ赤な顔で大声を上げる。
「大丈夫です!!ありがとうございます!!」
「いや、大丈夫なら良いけど、なにかあったらササラに言えよ。倒れてからじゃ遅いからな?」
ユリはんを心配するトウカはん。あかん、優しすぎ。ササラ、トウカはんのこと大好き。
「ササラの仲間達が良いなら、私は美雪達のパーティ入りは止めないけど…。五人か…。数が多くなったな…。数の多さで断られたら、お前らのことは容赦なく切り捨てるからな。」
トウカはんの冷たい目線に、ササラは背筋がぞくっとする。でも、嫌やない。ササラ、トウカはんのこと大好き。
って、そんなん考えとる場合やない。トウカはんに確認しなきゃあかん。
「でも、どうやって美雪はんたちの仲間入りするん?なんか策あるんか?」
「ふっふっふ。私が策無しで、あの美雪に挑むわけがないだろ。」
自信たっぷりで笑うトウカはん。策があるんか!?
驚くササラの様子に、満足気な表情を浮かべたトウカはんは、策の説明を始める。
「実は美雪たちには少し前から、美雪たちのパーティに仲間入りしたい冒険者を紹介するって伝えてあるんだよ。」
「それがトウカはんってことかえ?」
「そう、その通り!事前に布石は打ってたってわけだ!」
「さ、さすがやん、トウカはん!!」
ササラの驚き声に、トウカはんは大満足といった様子で、にんまりと笑う。
ちっちっち、といった感じでトウカはんはササラに説明の続きをしてくれる。
「しかも、それだけじゃないぜ!!」
「それだけじゃないんか!?な、なんなん?」
「私の独自の調査で、美雪達は王都に来たばかりで、パーティのホームを探しているってことが分かった。そこに、借り家とはいえ、パーティのホームには充分な家を持ってる私が、仲間に入れてくれればホームも提供する、って言ったら美雪達はどう思うかな?」
「そ、そんなん仲間入りしたい思うてまうやん!!さすがすぎるで、トウカはん!!」
ササラの賞賛の声に、トウカはんは大きな胸を張る。
完璧なトウカはんの作戦と、胸を張るトウカはんの可愛らしさに、ササラがくらくらしてたところで、とある人物が話しかけてくる。
「あ、あの…。突然すみませんが、お二人は美雪さん達のお知り合いなんでしょうか?」
質問をしてきたんは、人の名前と顔を覚えられんササラでも、見たことがあるエルフの少女。
間違いない。王都の中央通りでエルフの姫様いう人を探しとる薄幸の少女や。
「うん、そうだけど、何かな?」
「実はご相談がありまして…。」
突然のエルフの少女の登場に警戒心が高まる中、面倒見が良いトウカはんは少女を隣に座らせ、彼女の話を聞き始める。
「突然すみません…。私の名前は、サチウス・マルール・スフォルトゥーナって言います。」
「サチウス・マウ…。長いな。サっちゃんで良い?」
「あ、はい。構いません。」
あっという間に、突然の来訪者と心の距離を詰めるトウカはん。さすがやな、と思いながら、目の前のエルフの少女の話を聞く。
エルフの少女ことサっちゃんの説明をまとめると、彼女はエルフの姫様を探すのに、美雪はんの仲間入りをしたいらしい。
「オッケー。サっちゃんのことを美雪達に紹介する。」
「い、良いんですか!?あ、ありがとうございます!!」
簡単な打ち合わせの後、頭をペコペコ下げて走り去っていくサっちゃん。
サっちゃんの背中を見送ったササラは、すぐにトウカはんに質問をする。
「な、なんですぐにオッケーしたん、トウカはん!?」
「いや、考えろよササラ。美雪達にとって見ず知らずのエルフの少女サっちゃんの仲間入り希望に、どう美雪達が対応するかで、私達の仲間入りの指標になるだろ?もし簡単に仲間入りを認めるなら、私達だって余裕だろうし、難航を示すなら、焦らずに時間をかけて仲間入りを認めさせれば良い。つまり、サっちゃんってジャブを、先んじて打っとくってわけだ。」
「トウカはん…。なんでそんな名案がドンドン思い浮かぶん!?完璧な策やん!!」
「そうだ、完璧な策だ!!」
「トウカはん、ほんま天才!!」
「そうだ、私は天才だ!!もっと褒めても良いんだぞ、ササラ!!」
トウカはんとササラの、明るい未来の実現に盛り上がる二人。
その日はササラもポンコツを出すこと無く、トウカはんとの明るい未来に夢をはせながら、楽しい食事を満喫した。
二人で称賛しとったトウカはんの策やけど、結果としてはそない簡単にいかんかった。
簡単にいく思うとった美雪はん達のパーティ入りやけど、悪魔的な怖さの美雪はんの個別圧迫面接が待っとった…。
歌姫の護衛クエストん時に、スキル眼光威圧でササラを絶望の底に突き落とした美雪はんやけど、今回もササラを恐怖の底に突き落とした。
トウカはんとササラの前座としてセッティングしたサっちゃんに待っとんたんは、圧迫面接いう美雪はんの恐怖の再来やった。
そんな恐怖の圧迫面接やったけど、サっちゃんは気丈な態度で美雪はんの質問に答え、見事に仲間入りを掴んだ。
自分達にも同じ恐怖が待っとるんかと震えとったトウカはんとササラやけど、なんとか美雪はんに仲間入りを認めてもらうことが出来た。
面接で疲れ切ったササラは宿屋金字塔の食事スペースに戻り、同じく面接を終えたトウカはんの隣に座る。
「お疲れ、ササラー。結果どうだった?」
「ササラは認められたで…。トウカはんは?」
「私もなんとか仲間入り出来たけど…、あいつ私のこと嘗めてるな…。後でしばく。」
「優しくしてな…。美雪はん、ササラがいっぱい話したせいで疲れとったから…。」
トウカはんも、ぷんぷん怒っとるけど、ササラと同じく仲間入りを認められとった。
ほっと胸をなでおろす。しかし、怒ってるトウカはんも変わらず可愛いな。
って、だらしなく笑うてる場合やない。気を付けないとあかんな…。
美雪はんの面接ん中で、ササラはひとつの衝撃的な事実に気付いてしもうた…。
ササラは、下手したらトウカはんへの愛が暴走してまう犯罪者予備軍らしいからな…。
「うぅ…、これからのことを考えると、ササラ、手が震えるわ…。」
美雪はんに対する恐怖と、ササラは将来逮捕されてまうんやないかいう恐怖で、ササラの手は冷え切り、震え始めた。
そんなササラの手やけど、急に柔らかい温かさに包まれる。
「ほんとだ、ぷるぷる震えてる。しかも冷てぇな!どんだけ美雪が怖かったんだよ!ササラ、涙目じゃん!」
いつの間にか隣におったトウカはんの温かい手が、ササラの手をぎゅうっと包んどった。
な、なーん!?
い、いや、ちゃうねんで!!美雪はんが怖くて涙目になっとったわけやないんやで!!
弁解しようとするササラやけど、頭はポンコツ空回りして、言葉が出てこんくなった。
突然のことに慌てとったササラやけど、握手のようにササラの手を包んだトウカはんは、パニックササラを少しも気にすることなく、悪戯な笑顔を浮かべる。
「あ?何だ、お前。泣いてるのか?」
そん言葉は、トウカはんとササラが初めて会うた時の言葉。
ササラがトウカはんにダンジョンの中で助けられ、トウカはんと一緒に冒険したいいうササラの夢の第一歩になった言葉。
そんな言葉を、どこか楽しそうに、意地悪な笑いを浮かべながらトウカはんは言うた。やから、ササラは言う。
「な、泣いてまへん!!」
「ぶふっ!!あの日と同じ言葉!!」
ツボに入ったんか、大声で笑い出すトウカはん。
いや、笑うんなら手を離してくれへんやろか?ぐいんぐいん上下に振られて、ササラの肩が外れそうなんやけど…。
トウカはんはひとしきり笑うたところで、急に真面目な顔になって、ササラの顔を真っ直ぐに見る。
な、なんや?と警戒するササラに対して、トウカはんはにこりと笑う。
「ササラとは色々あったけど、今日からパーティの仲間だな!よろしくな!」
トウカはんがにこりと笑う。ササラの手を優しく包みこんだまま。
そうやった、ササラはトウカはんと一緒に冒険するいう夢が叶うてたんや。
トウカはんと一緒なら、ササラは道を踏み外すことが無い。大好きなトウカはんと一緒なら、ササラは真っ当でいられる。
にっこり笑うて、ササラの返答を待つトウカはん。
これからササラが伝えるんは、トウカはんとの夢の第一歩になる言葉。
ササラはこれから一緒に冒険するトウカはんに、よろしくお願いしますと伝えなあかん!
高鳴る胸と緊張を抑えて、ちゃんと言わなあかん!!よろしくお願いしますって!!伝えるんや、よろしくお願いしますって!!
気合いいっぱいササラは、よろしくお願いします言うため、大きく口を開く。
「よ、よろちくおねがちんつ、つちゅ!!」
「めっちゃ噛んでるじゃん!!まさかの全噛み!!ぶははははは!!!」
トウカはんとの夢の第一歩は、緊張で気合いと滑舌が空回りしたポンコツササラの言葉で始まった。
最後までササラは、ポンコツササラやった。
でも、ポンコツはこれから治せば良ぇ。
大好きなトウカはんの隣に、並び立つことが出来たんやからな!




