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魔王退治は要件定義から!  作者: 荒井清次
王都滞在編 -新しい仲間と共に王都での生活基盤を整え強くなる-
87/150

竹調の異名で知られる先輩冒険者が仲間入りを希望してきたので、日本式圧迫面接で対応します

前回のあらすじ:銀琴(ぎんごと)のヤクモことトウカさんが仲間入りをした。


この面接の後にはトウカさんとの地獄の特訓が待っている…、という現実から目を逸らし、次なる面接相手である竹調(たけしらべ)の異名で知られるササラさんを私達の部屋に呼ぶ。

ちなみに、先ほどまで私のフォローをしてくれていたシロ君は、腹が減ったから美味いものを食わせろ、と言うトウカさんに連れられていってしまった。

私にはシロ君が無事に帰ってくることを祈ることしか出来ない。


程なくして、コンコンと扉が叩かれる音が聞こえてくる。


「どうぞ。」


私の呼びかけに応じて部屋の中に入ってきたのは、面接相手であるササラさん。

彼女は普段の落ち着いた凛とした雰囲気はなく、どこかオドオドととしている。


「本日はお越しいただきありがとうございます。おかけください。」


「そ、その前に、ひとつ良ぇやろか!?面接始まって早々にお願いやなんて、失礼なことは分かってるんやけど、これはササラにとって、重要なことなんどす!!」


面接の前にお願い?疑問に感じつつも、額に汗まで浮かべ始めたササラさんを落ち着かせるため、私は彼女のお願いを確認することにする。


「ササラさんのお願いの内容が、私達にとって不利益なことでなければ受け入れさせていただきます。お願いの内容について、説明をしてください。」


「おおきに!!ササラのお願いはひとつ!!面接中に、あの美雪はんの凶悪なスキル、眼光威圧(がんこういあつ)を使わないことを約束してほしいんや!!あれを使われてまうと、ササラは恐怖のあまり、おかしくなってまうんやから!!」


今にも土下座するんじゃないかってくらい慌て始めるササラさん。

最初に出会った時の、竹取物語のかぐや姫を思わせる、ほんわかと笑う上品な女性はどこへ行ってしまったのだろう?

試しに眼光威圧を発動してみたい衝動に駆られるが、シロ君がいないため、恐慌状態になっても回復することが出来ない。ここは衝動を抑えて、ササラさんの提案を受け入れよう。


「分かりましたので、落ち着いてください。ササラさんが恐慌状態になってしまっても、面接に支障をきたすだけですので、こちらとしても眼光威圧の使用は望むところではございません。この面接の中では眼光威圧は使いませんので、ご安心ください。」


「ほんまか!?ほんまやんな!?約束したからな!!」


必死なササラさんに、私の目つきの悪さを再実感して少し落ち込む。

スキル眼光威圧を使わないのに納得したササラさんは、用意した椅子に座って、懐から取り出したハンカチで額の汗を拭う。

ササラさんが落ち着きと上品さを取り戻したところで、私は面接を開始する。


「早速ではございますが、ササラさんのレベル、ステータス、取得スキルを確認させてください。」


参考にする上位冒険者の数を増やすため、トウカさんのステータス情報に加えて、ササラさんのステータス情報も手に入れることにする。

警戒心が緩んだササラさんは、はんなりと笑いながら私の質問に答える。


「ササラのレベル、ステータス、取得スキルかえ?それなら、マグカを見せた方が早いな。これがササラのステータスどす!」


トウカさんと同じく、新品の10円玉のような色のマグカを取り出したササラさんは、少し操作をした後、私の前にマグカを置く。

表示されたササラさんのステータス画面に、少しドキドキしながら確認する。


名前:ササラ・タケナカ

レベル:61

HP:2764

MP:4540


攻撃:233

防御:481

魔力:721

魔防:463

速さ:455

スタミナ:231

状態異常耐性:246

スキル:転生者、防御促進、魔力促進、魔防促進、状態異常耐性促進、技巧、範囲拡大、視界拡大、貫通、隠密、共鳴

使用可能魔法:地魔法、岩魔法、闇魔法、音支援魔法


隠密:敵の攻撃の対象になりづらくなる。

共鳴:同じ魔法を他者と同時に発動することで効果を上げる。

闇魔法:相手のステータスを下げ、状態異常を誘発する魔法。


「トウカさんと同じ楽器を使った支援キャラだからか、ステータスも似てますね。」


「ぐ、偶然どす!!」


私の呟きに、ササラさんは慌てて回答する。

落ち着きのないササラさんを不審に感じながらも、ステータスとスキルの確認も終わったので、面接を始めることにする。


「それでは、面接を始めさせていただきます。まずは、あなたが私達のパーティ入りを志願する理由を教えてください。」


「ササラが美雪はん達のパーティに入りたい理由は、トウカはんと一緒や!支援キャラなササラは、冒険者としての能力が高くなる見込みが高い、美雪はん達を支援したいんや!」


ササラさんが志願理由を言った瞬間、私の右手にピリリと電流が流れる。

ん?スキル気配感知が、嘘の気配を感じた?

ササラさんがパーティ入りを希望する理由がトウカさんと一緒、って部分で嘘の気配を感じたな。

これはいけない。確認しましょう。


「ササラさん、このままではあなたのパーティ入りを認めることが出来ません。」


「な、なんでや!?」


私の言葉に、ササラさんは勢いよく椅子から立ち上がる。

掴みかかってきたトウカさんとは違い、ササラさんは驚いた表情を浮かべて私を見るだけだ。さすが、ササラさん。トウカさんと違って、上品。

おっと余計なことを考えている場合じゃない。私がササラさんのパーティ入りを認めることが出来ない理由を伝えよう。


「私が昨日取得したスキル気配感知ですが、嘘の気配も感知することが出来るんです。ササラさんがパーティ入りを希望する理由がトウカさんと一緒、って部分でスキル気配感知が嘘の気配を感知しました。ササラさんが本当の理由を話すまで、ササラさんの仲間入りを認めるわけにはいきません。」


私の質問に対して、分かりやすくびくっと反応するササラさん。

微笑みながらも私から視線を逸らし、額からは滝のように汗が流れ始める。視線を左右に揺らしながら、ちらちらと私の表情を伺ってくる。

いや、分かりやすく動揺してるな…。


困った表情を浮かべたササラさんは、ゆっくりと椅子に座り、うるうると目を潤ませながら小さな声で答える。


「ほ、ほんまに言わなあかん?」


「はい。説明をお願いします。」


「お、乙女の秘密なんやけど?」


「知りません。説明をお願いします。」


うるうる瞳で、困惑いっぱいの表情を浮かべるササラさん。儚い系の美少女を思わせるササラさんに、保護欲が湧き上がってくる。これは世の男たちは放っておかないわ…。

ササラさんが王都で大人気というのも分かるなぁ…なんて考えていると、ササラさんはついに観念したのか、小さな声で私に確認をしてくる。


「ササラが、美雪はん達のパーティに入る本当の理由を言うけど…、誰にも言わんでよ?と、特に、トウカはんにはな…?」


「面接内で知り得た個人情報は、面接内にてササラさんの仲間入りを判断するためだけに使用します。私だけで仲間入りを判断することが出来ず、シロ君やサっちゃんに相談をするようなことになることがあっても、必ずササラさんの許可を取らせていただきます。悪用等はしないよう、細心の注意をさせていただきますので、ご安心ください。」


「そ、そうかえ?それなら、美雪はんを信じて、話すで…。ササラが美雪はん達のパーティに仲間入りをしたい、本当の理由…。」


真っ赤な顔で周囲をキョロキョロと見回したササラさんは、すーはーっと大きく深呼吸をした後、小さな声で呟く。


「さ、ササラ、トウカはんのことが、す、好きなんどす…。」


ぽつりと呟いたササラさんの顔は、頭から湯気が出そうな程真っ赤になり、しおしおと小さくなる。


「好き、というのは尊敬的な意味ではなく、恋愛的な意味ですか?」


「そ、そうどす…。」


ほう。ササラさんはトウカさんを好きなのか。

スキル気配感知も反応しないし、ササラさんはトウカさんと一緒のパーティに入りたいくらい好きなようだ。それで、あんなに慌てていたのか。なるほど。

うんうんと頷いていると、ササラさんが真っ赤な顔で、不安げに見上げながら呟く。


「や、やっぱり変やろか…?」


「ご安心ください。私は女性同士の恋愛について、偏見はございません。むしろササラさんの恋を応援させていただきます。」


「ほ、ほんまかえ!?お、おおきにな!美雪はん!!」


椅子から立ち上がり、満面の笑みを浮かべるササラさん。

王都中に絶世の和風美女で知られるササラさんの笑顔は、女の私から見ても大変素敵で、私の中の何かが浄化されると思わせるものだった。

この笑顔を見たら、喧嘩上等なトウカさんも思わずキュンとしちゃうんじゃないの?

そばでニコニコしてるだけで、どんどんと印象が上がっちゃうんじゃないの?


っと、いけない、いけない。今は面接中だ。ちゃんと質問をして、ササラさんのパーティ入りを判断しなければ…。

恋する乙女オーラが溢れ出すササラさんに、質問の答えの再確認をする。


「落ち着いて、お座りください。ササラさんのパーティ入りの目的は、大好きなトウカさんと一緒にいたい、ということで間違いありませんね?」


「だ、大好き、って、そないはっきり言われると、照れてまうけど…、そうやな。間違いないどす。ササラは…、トウカはんが、大好きどす…。一緒のパーティに入りたいくらい…。」


真っ赤な顔で視線を泳がせるササラさんは、ゆっくりと椅子に座る。

ササラさんが椅子に座ったのを確認し、次の質問へと移る。


「それでは、次の質問に移らせていただきます。ササラさんはトウカさんのどこが好きなのでしょうか?」


「ど、どこが好き!?って、この質問は面接と関係あるんか!?」


慌てて取り乱すササラさんに、私は真面目な表情で返答をする。


「関係大ありです。ササラさんの目的が、大好きなトウカさんと一緒にいたい、ということであれば、私達はその好きな理由を理解する必要があります。私達が無意識にササラさんの大好きなトウカさんを歪めてしまい、それでササラさんがトウカさんのことを嫌いになってしまっては、ササラさんがパーティから離れてしまう可能性があります。貴重な戦力の喪失を未然に防ぐためにも、ササラさんがトウカさんを好きな理由を知る必要があります。」


「そ、そうなんか?ちゃんと理由があったんやな。美雪はん、ニヤニヤ笑とるし、興味本位で聞いてると思うてしまったわ。堪忍なぁ?」


ぺこりと頭を下げるササラさんに、私は表情を引き締める。面接中にニヤニヤ笑っちゃいけない。

決して、甘酸っぱい恋バナに、興味本位で質問をしているわけじゃないんだから。

あくまでも面接の一環なんだから。


「構いません。それでは、トウカさんのどこを好きになったかお聞かせください。」


「ササラがトウカはんの好きな理由なー…。改めて考えると、一言にはまとめられんなー…。」


「まとまっていなくても構いません。トウカさんとの思い出を交えていただいても構いませんので、ゆっくりお話しください。」


「そ、それなら、ササラがトウカはんと出会った時…、いや、ササラが恋に落ちた時やな。そこから話させてもらうわ…。」


「出会った時が、恋に落ちた時…。一目惚れだったんですか?」


私の質問に、真っ赤な顔になったササラさんは、小さくこくりと頷く。

実は恋バナが好きな私は、面接席から乗り出して、ササラさんの言葉の続きを聞く。


「トウカはんと初めて会うた時、ササラはダンジョンの中で、危険なモンスターに囲まれとった。もうダメやなと思うた時に、トウカはんが助けに来てくれたんや。そん時に、ササラの胸は大きく高鳴った。ササラはトウカはんのことを好きになったんやと思う。」


「危機に助けに来てくれた人を好きになる…。物語ではよく聞く話ですね。」


「そうやな…。トウカはんはササラにとって白馬にのった王子様やったんや。トウカはんに助けられてからは、ササラはトウカはんのことしか考えられなくなってもうた。トウカはんと少しでも一緒にいたいって気持ちが膨れ上がってくるねん…。」


トウカさんとの出会いを思い出し、恋に落ちた時の感情が湧き上がってきた様子のササラさんは、赤い顔のまま、大きく艶っぽい溜息を吐く。

その表情はまさに恋する乙女そのもの。

あぁ、本当にササラさんはトウカさんのことが好きなんだな…と思っていたところで、ササラさんは少し愚痴っぽく話し始める。


「でもな、ササラはトウカはん可愛すぎると思うねん!!なぁ、美雪はん!?」


「え?あ、あぁ、そうですね…。」


トウカさんが可愛すぎる、と謎の理由で怒り始めたササラさんのあまりの気迫に、私は思わずうんうんと頷いてしまう。

面を食らった私を、ササラさんは気にかけることなく、畳み掛けるようにトウカさんの可愛らしさについて話し始める。


「なん、あの無警戒で無邪気な可愛らしさは!?反則やと思わへん!?トウカはん、ササラに比べて身長低いからな、トウカはーんって後ろから声かけると、くりっとした瞳で見上げてくんねん!!あれ、すっごい可愛いやん!!そんで、そんで、そん見上げる時に、トウカはんのさらさらの銀髪も流れるんやけど、そん時にふわっと良ぇ香りもするんやで!!あんなん、反則やん!?」


先ほどまでの恥ずかしそうな様子は身を潜め、ササラさんはスイッチが入ったかのようにトウカさんへの愛を語り始める。

振り返って見上げる編から始まった、ササラさんによるトウカさんの可愛いとこ話は、無邪気な笑顔編、触れてくる手が温かいのは心が優しくて温かいから編、背は低いけど胸は大きい編と、数々のポイントを押さえながら、十分以上続いた。

黙ってうんうんと頷いていた私に気付いたササラさんは、ぽんっと手を打って、話題を変える。


「あ、こう言うと、ササラがトウカはんの見た目の愛らしさで惚れとるように思われてまうけど、ちゃうからな!!ササラ、トウカはんの外見だけが好きじゃないんやで!!トウカはんの性格も大好きや!!普段はどこか面倒くさそうにしとるトウカはんやけど、後輩の面倒見が良いやん!?あの頼りになる姉御肌な感じが、見た目とのギャップで堪らないやん!!あと、どんな相手にも物怖じしなくて、常に本音で全力で生きてる感じが、人見知りで引っ込み思案なササラは真似できないなー思うて、尊敬してまう!!でも、トウカはんの良いところは、それだけやない…。」


「ストッープ!!ササラさん、ストーップ!!」


ササラさんの両肩を掴んで、落ち着かせる。

このままではずっとササラさんは、トウカさんへの愛を語り出しそうだったため止めたが、ササラさんの勢いは少しも止まらない。


「なんでや、美雪はん!?まだトウカはんの好きなところを、全然言えてへん!!止めんでや!!」


「いや、止めます!!まだこっちはササラさんがトウカさんを好きってことが受け止めきれてないんですから!!」


「なんでや!?こんなに愛を語ったやないか!?」


「だって、喧嘩ばっかりだったじゃないですか!?好きな人に、あんな喧嘩腰になれます!?」


「んな!?」


歌姫の共闘クエストの際、喧嘩ばかりだった二人を思い出しての私の言葉。

その言葉に衝撃を受けたのか、ササラさんの体がふらりとよろめく。先ほどまでの勢いを失ったササラさんは、ゆっくりとトウカさんと喧嘩ばかりだった理由を話し始める。


「トウカはんとササラが喧嘩ばっかりになってまう理由は…、ササラがポンコツやからや…。トウカはんと少しでも一緒にいたいって気持ちが膨れ上がって、暴発して、気合いばっかり空回りしてしまうんや…。ササラのポンコツ脳は、トウカはんのことを好き過ぎて、照れて熱暴走してしまうんや…。好きって気持ちが舞い上がる程、ササラの空回りに拍車がかかってまう。美雪はんも見たやろ?ササラがトウカはんの頬をパチーンと叩いて逃げてまうところを。ほんま、ササラはポンコツなんや…。」


「ポンコツですか…。」


先ほどまでの勢いがどこに行ってしまったのか、ササラさんはしおしおと小さくなっていく。

ササラさんに聞いた話によって、喧嘩ばっかりだった歌姫の護衛クエストでの二人のやり取りの意味が分かってくる。

ササラさんはトウカさんにからんでは言い争いをしていたけど、あれは好き故の照れ隠しだったのか。

好きな人につい意地悪したり、素直になれなかったり、でも少しでも一緒にいたい。そんな感じかな?

うん、甘酸っぱい。

束の間の青春話に、うんうんと頷いていた私に、いつの間にか勢いを取り戻したササラさんが話し始める。


「でもな、ササラがポンコツになってまう理由は、トウカはんにもあるんやで!!基本的にトウカはんは、距離が近いねん!!なんで、あんな無警戒に無邪気に、ササラの懐に入ってくるねん!!トウカはんが好きなササラからしたら、すっごい嬉しいんやけど、突然の不意打ちやから、ササラの許容できる範囲を簡単に超えてくんねん!!」


「そ、そうですね…。トウカさんは距離が近いですね…。」


私の言葉に、ササラさんは更に勢いを増す。


「そうやねん!!流石に男性には距離を取るんやけど、女性にはぐいぐい近付いていくんよな!!トウカはん大好きササラからしたら、嫉妬心が燃え上がってしまうねん!!この間も、美雪はんに抱きついとった…、って、そうや、それや!!美雪はん、トウカはんにあんなんされて、好きになってしまってんやないか!?そうや、美雪はんもトウカはんにダンジョンに助けられた言うてたな!!お、同じやん!!ササラがトウカはん大好きになったんと同じやん!!美雪はんもトウカはんのこと好きなん!?その辺、どうなん!?さ、ササラのライバルなんか!?負けへんからな!!」


赤い顔のまま、私を睨んでくるササラさん。怖いというより可愛らしい睨みだが、念のためにも彼女の誤解を解いておく。


「ご、ご安心ください。私はトウカはんに対して、そのような感情は一切持ち合わせておりません。面倒見の良い先輩止まりです。」


「ほ、ほんまやんな!?ササラ信じるで!?嘘ついたら、ハリセンボンやからな!?」


ササラさんの独特なアクセントだと、針千本じゃなくて、魚の方のハリセンボンに聞こえるな。

なんて考えてる場合じゃない。ソワソワ落ち着きの無いササラさんを安心させてあげよう。


「本当です。命を賭けます。嘘だったら、ハリセンボンどころか、針一万本飲んでみせます。」


「ハリマンボンかえ!?それなら、嘘やないな…。ふーっ…。一安心や…。」


ササラさんは、私がトウカさんを恋愛的な意味では好きではない、ということを聞いて一安心したようだ。


「ササラ、取り乱してもうた。あかんな、またポンコツになってたで…。美雪はん、堪忍な?」


ササラさんは取り乱した自覚もあるらしく、深々と上品に私に頭を下げる。

さっきまでの慌てて暴走していたのとは異なる、ササラさんの上品な所作や立ち振る舞いに、私は彼女がとびっきりの美女であることを再度気付かされる。


気付かされたけど、んー…?っと呟きたくなる疑問の感情が湧き上がってくる。

最初にササラさんに会った時は、上品でおしとやかな落ち着きのある女性だと思ったんだけどなー…。今日の面接でだいぶ印象が変わった。

今のササラさんを一言で表すなら…、残念美人?

以前は一国を揺るがすほどの美人だったはずなのに、トウカさんと出会ってしまったばかりに…。

そんな私の憐憫の表情にササラさんは気付いたのか、私に微笑みながら首を傾げる。


「それで、面接の結果はどうなん?ササラはトウカはんと一緒に冒険できるんかえ?」


トウカさんに負けないくらいのササラさんの無邪気な笑顔。

本当は色々と質問したかったところだが、ササラさんの勢いと、トウカさんへの愛で押し切られてしまった。微笑むササラさんに、私は面接の最後の言葉を告げる。


「それでは、本日の面接結果は、後程郵送にてお送りさせていただきます。」


「なんでなん…?」


サっちゃんとトウカさんの面接の時にも使った冗談を言ってみたが、効果は無かった。

うん、次の面接ではやめよう。トウカさんにもキレられかけたし、ササラさんの目も怖い。

これ以上変なこと言うと、どこかから取り出した包丁とかで刺されそうなので、真面目に面接結果を伝えることにする。


「すみません、冗談です。ササラさん。これから、トウカさんと一緒に、私達パーティの先輩冒険者として、支援してください!私達のパーティ入りを認めます!!」


「ご、合格なんかえ!?や、やったで、やったでー!!」


喜びいっぱいの様子のササラさんは、私の前ということを気にすることなく、にこにこ笑顔で大きくバンザイをする。

そんなに喜んでもらえるなら、こっちとしても良かった、なんて考えていると、ササラさんは笑顔のまま私に質問をしてくる。


「ち、ちなみに聞いて良いか!?なんでササラはパーティ入りを認められたん!?」


「それは、ササラさんならトウカさんと一緒に、支援魔法で私達パーティの大きな力になってくれると思ったのですが…。」


「なんか美雪はんにしては歯切れが悪いなぁ…。嘘かえ?」


スキル気配感知でササラさんの嘘を見破った意趣返しとばかりに、ササラさんは私の困惑を見抜く。


「え、えーっと…、怒らないで聞いてもらえます?」


「お、怒るような理由なんかえ?」


不安な様子で質問をしてくるササラさん。

ソワソワし始めるササラさんに、言っても怒らなそうだなと思った私は、ゆっくりと彼女の仲間入りの理由を告げる。


「ササラさんはトウカさんのことが好き過ぎて…、ここで仲間入りを認めないと、トウカさんのストーカーになりそう…。いえ、逆恨みで私達のパーティに害をなしそう…。いえ、トウカさんと一緒になれなければ包丁を取り出して差し違える覚悟を…、いえ、今言ったことは忘れてください。」


「物騒な単語がいっぱい飛び出し…、って、ササラ、犯罪者扱いされてるんか!?そんなことするわけないやん!!言い過ぎやで!!」


無い無いと手を振るササラさんに、私は真剣な表情で質問をする。


「本当ですか?試しにトウカさんが他の人と一緒に…、いえ、はっきり言いますが、トウカさんが誰かと結婚をしたところを想像してください。」


「トウカはんが他の人と結婚…?」


んー?と右上に視線を向けるササラさん。彼女の顔は少しずつ青くなっていき、額から滝のように汗が流れ始める。


「あ、あかん…。ササラ、犯罪者予備軍かもしれん…。」


全身が震えだし、光を失った目で私を見つめるササラさん。

この人はもうダメかもしれない。彼女を仲間にして本当に良かったのか?という疑問が湧き上がってくるが、首を左右に振り、疑問を振り払う。

大きな戦力ってことは間違いないんだ…。それに、彼女が好きなのはトウカさん…。

なにかあっても、それは先輩冒険者二人の問題…。私は関係ない…。


自分の心にそう言い聞かせながら、ササラさんに右手を伸ばす。


「ササラさん。私達と一緒に、トウカさんと真っ当な道を歩けるように頑張っていきましょう。」


「今のササラって、真っ当やないんかえ…?」


「今はまだ真っ当ですが、今後は分かりません。」


「そ、そうか…。でも、そうやんな。ササラはトウカはんと一緒なら、真っ当でいられるんや…。美雪はん、ササラが暴走しそうになったら、よろしおすな…。」


ぎゅうっと私の右手を両手で包み込むササラさん。

トウカさんと同じパーティに入れて本当に嬉しいんだろうな、ってことが伝わってくる満面の笑みのササラさんに、私も笑顔で答える。


トウカさんとササラさんの戦力は、彼女らの支援魔法を受けてペトラさんと一緒に戦った私が一番よく知っている。

大きな戦力が仲間になったのは間違いない。

同時に大きな爆弾も、パーティの中にいれてしまったような気もするが、私はメリットの方を尊重する。


こうして、無事に(?)竹調(たけしらべ)の異名で知られるササラさんが、私達のパーティに仲間入りをした。



「あー…。疲れたー…。」


二人の先輩冒険者の面接を終えた私は、緊張と疲労から机に突っ伏して、大きく溜息を吐く。


残りはササラさんの仲間である三名。

もうササラさんと一緒に合格で良いんじゃないかな?って気持ちになるが、これからのパーティのことを考えると、そうは問屋が卸さない。

でも、三人まとめてでも構わないよね…?同じササラさんの仲間だし…。


次の面接に向けて、頬を叩いて気合いを入れ、私はササラさんのパーティ仲間である、ユリスキーさん、レズメッグァナーイさん、ユリ・シンジョウさん三人を面接部屋へと呼び出す。


程なくして私は、この三人もなかなかキャラが濃いことを知ることになる。

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