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魔王退治は要件定義から!  作者: 荒井清次
王都滞在編 -新しい仲間と共に王都での生活基盤を整え強くなる-
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銀琴の異名で知られる先輩冒険者が仲間入りを希望してきたので、日本式圧迫面接で対応します

前回のあらすじ:スキル気配感知は嘘の気配も感知できることを知った。新たな力を使って、先輩冒険者である銀琴(ぎんごと)竹調(たけしらべ)、ササラ幻樂団(げんがくだん)の五名の面接が始まる。


「本日はお越しいただきありがとうございます。おかけください。」


「やっぱり圧迫面接かよー…。しかも、個人面接かー…。」


面接の一人目として、まずは銀琴(ぎんごと)のヤクモの異名で知られるトウカさんを、私達の宿泊している部屋に呼び出した。

ラクレさんとレトチさんに許可を取り、私達が普段寝ているベットを片付け、簡易的な面接会場を作らせてもらった。

宿屋の一室とはいえ緊張感に包まれる中、私とシロ君の目の前の椅子にトウカさんが座る。


「早速ではございますが、トウカさんのレベル、ステータス、取得スキルを確認させてください。」


面接に先立って、銅等級冒険者であるトウカさんがどのくらいのステータスかを確認することにする。

これから先、もしかしたら銅等級冒険者以上の強敵と戦う機会があるかもしれない。


その際、今のトウカさんのステータスを知ることで、相手の能力が今の私とどのくらい離れているかの目安を持つことが出来るだろう。

そう思ってのトウカさんのレベルとステータスの確認だ。


「レベルは72で、ステータスは…。説明するのがめんどくせえなぁ。特別にマグカを見せてやるよ。」


トウカさんは新品の10円玉のような色のマグカを取り出して、いくつか操作をした後、私の目の前に置く。これが、銅等級冒険者のマグカの色か…。


表示されるトウカさんのステータスを確認する前に、比較のために自分のステータスを確認することにする。


名前:ミユキ・ユヅル

レベル:33

HP:1767

MP:2264


攻撃:94

防御:165

魔力:408

魔防:171

速さ:401

スタミナ:233

状態異常耐性:91

スキル:必中、転生者、倹約、自動回収、眼光威圧、魔力促進、気配感知

使用可能魔法:風魔法、爆発魔法、温度操作魔法


最初の頃に比べて、大きく成長したな…。成長を数値化して確認できるのは、良いなぁ…。

攻撃が低いから筋トレするかな…?それとも、得意な魔力を伸ばすために、日課の魔法使用を増やすかな…?っていけないいけない。今はトウカさんのステータス確認だ。


さぁ、この私のステータスに対して、トウカさんのステータスはどうか?少しドキドキしながら、トウカさんのステータスを確認する。


名前:トウカ・ヤクモ

レベル:72

HP:4932

MP:7348


攻撃:621

防御:645

魔力:1321

魔防:616

速さ:611

スタミナ:631

状態異常耐性:981

スキル:転生者、攻撃促進、防御促進、魔力促進、速さ促進、スタミナ促進、打撃強化、技巧、範囲拡大、治癒、奮起、視界拡大、貫通、魔力昇華(マジック・ブースト)

使用可能魔法:風魔法、暴風魔法、音支援魔法


わー、思ってたよりも差があるー。

どのステータスも私より倍以上離れてるなー。

想像以上のステータスの差に少し落ち込んだが、レベルアップの時のステータスアップの法則を思い出し、このくらいの差が離れていることに納得する。

例えば、一桁レベルの時は攻撃が1アップしてたけど、レベル10を超えたら攻撃が2アップ、レベル20を超えたら攻撃が3アップ、といった具合でレベルが上がるごとにステータスの上がり幅も大きくなった。

そのため、レベルが離れれば離れるほど、ステータス差が大きくなる。

レベル33の私と、レベル72のトウカさんの間では、倍以上のステータス差が離れても仕方ないだろう。


ステータス差について納得したところで、見覚えのないトウカさんのスキルの効果を確認することにする。


打撃強化…武器での打撃攻撃の威力が上がる。

技巧…手先が器用になる。

範囲拡大…範囲魔法の範囲を広げる。

奮起…味方の士気を上げる。

視界拡大…目が良くなり視界が広がる。

貫通…魔法が遮蔽物の先に届く。


ステータスとスキルを確認したところで、疑問が湧き上がってくる。


「トウカさん、ステータスとスキルを確認させていただき、誠にありがとうございます。質問となりますが、喧嘩っ早いヤンキー気質のトウカさんの割には、ステータスが防御と魔力よりの気がします。転生時に、基本ステータス適正は自分で振れたはずですが、トウカさんの性格を考えると、攻撃と速さを高くしたはずです。こちらはなぜでしょうか?」


私の質問に、トウカさんは怒られた子供のようなバツの悪そうな顔になる。少しの逡巡の後、トウカさんはポツリと呟く。


「ノアに適当によろしくって決めさせた。」


「すみません、声が小さいのでよく聞こえませんでした。まさか、転生後の人生を左右する、大事な大事な基本ステータス適正を、適当に他人に決めさせたなんてことは無いと思いますが…、もう一度説明してもらえないでしょうか?」


「聞こえてるじゃねぇか!!そうだよ!!私のステータスは、ノアに適当に決めさせた!!しょうがねぇだろ!!死んだと思ったら、急に変なやつによく分からないこと色々言われて!!夢かと思ったんだよ!!私だって後悔してるわ!!なんで私が支援キャラなんだよ!!私だって、剣を片手に戦いたいわ!!」


キレたトウカさんは立ち上がって、私の胸元を掴む。

あぁ、やっぱり喧嘩上等のヤンキー…。シロ君に怒りを鎮める光魔法を使うことを目線で訴えながら、トウカさんに言葉をかける。


「落ち着いてください。今は面接中です。」


「ひ、光の精霊よ!!我が声に応じて、目の前の女性から状態異常を取り除きたまえ!!リカバー!!」


シロ君の光魔法リカバーの発動によって、トウカさんの体は白い光に包まれる。

状態異常の怒りが回復したことにより、トウカさんの目つきが戻る。掴んでいた私の胸元も放してくれた。一安心。


「わりぃ。取り乱した。」


「いえ、こちらの発言にも非があったことは認めます。そのため、今回は不問といたしますが、くれぐれも面接中だということをお忘れ無きよう、お願いいたします。」


私の言葉にシロ君はびくっと反応をし、トウカさんはむすーっとした表情をしながらも、椅子に座る。


「それでは、面接に戻らせていただきます。あなたが私達のパーティ入りを志願する理由を教えてください。」


「美雪達のパーティに入りたい理由は、私が支援キャラだから。」


「理由になっておりません。詳細をお聞かせください。」


私の言葉に、トウカさんはチッと舌打ちをした後、説明を始める。


「私は支援キャラだから、支援する相手がいないと戦えないんだよ。それで、物理攻撃バカの愛ちゃん、何するか分からない…じゃねぇ、爆発魔法なんつう高火力魔法を自在に使える美雪、地味だけど魔力が高いシロ坊、デュランダルなんて超レア剣を持つユウジを支援したいと思ったんだよ。だから、仲間入りを希望。以上。」


「高火力な冒険者を、支援キャラとして支援したい。なるほど。とても良い心がけかと思いますが、それが私達のパーティでないといけない理由は何でしょう?高火力な冒険者パーティは、他にもいると思います。私達のパーティが後輩冒険者で、頼めば簡単に入れる、という気持ちからでしょうか?」


「ちげぇよ!!そんなんじゃねぇ!!」


勢いよく椅子から立ち上がるトウカさん。しかし、さっきの私の言葉が効果あったのか、掴みかかってくることはなかった。


「それでは、なぜかをお教えください。」


「なぜって…。お前…。」


「お教えください。」


私の連続質問に観念したのか、トウカさんは口を開く。


「お前らのことが気に入ったから、仲間になりたいと思ったんだよ!!言わせんな!!」


大声で理由を説明した後、真っ赤な顔になるトウカさん。

普段は乱暴な言葉遣いが目立つ、サバサバ系のトウカさんだけど、そっかー、私達のパーティのことが気に入ってたのかー。

思いがけないトウカさんの告白に、私とシロ君も照れてしまう。思わず頬が緩みそうになるのを堪え、恥ずかしそうにしているトウカさんに声をかける。


「なぜ私達のことを気に入ったのでしょう?仲間になりたいというのも、最初から知っております。そのための面接なのですから。言わせんなと言わず、理由の詳細をお教えください。」


え、まだ聞くんですか!?って表情で、シロ君は私を見てくる。

そんなシロ君の視線を気にせず、茹でたタコのように赤くなっていくトウカさんに、私は詳細の説明を求める。

本当は私だって今すぐにでもトウカさんの仲間入りを認めたい。でも、この面接は今後のパーティの命運を握っているんだから、感情論に流されちゃいけない。

確認できることは、しっかりと確認しよう。


「理由の詳細をお教えください。」


真っ赤な顔で、いーっと歯を剥き出しにしていたトウカさんだが、説明しないと話が進まない状況に観念したのか、ぽつりぽつりと話し始める。


「私は師匠が死んでから、パーティに所属せずにソロ冒険者を続けてた…、いや、正確には師匠の死がショックで引きこもってた。それでも良いかなと思ってたけど、今思うと、やっぱりどっか寂しかったんだな。そんな中で、お前らと出会った。まだまだひよっこ冒険者達だけど、これが、毎日わぁわぁぎゃあぎゃあ楽しそうにしてんだよ。実際、私もお前らと一緒に行動してると、楽しかった。冒険者になったばかりのワクワクを思い出したな。」


恥ずかしそうにしつつも、しっかりと説明を続けるトウカさん。説明を聞いている私達も、だんだん恥ずかしくなってくるが、トウカさんは気付かずに説明を続ける。


「あー、こいつらと一緒だと楽しいな。でも、レベルアップが早すぎて、知識や経験が追い付いてないな。危なっかしいな。しょうがねぇ、先輩として私が面倒を見てやっかー。なんて、考えるようになった。でも、お前らと離れてると、寂しくなるし不安になってきやがった。私の知らない内に、どっかで強敵に出会って死んでんじゃねぇだろうな。しょうもない罠にかかって無駄死にしてんじゃねぇだろうな。なんて考えちまうんだよ。」


トウカさんからの私達パーティへの思いやりが止まらない。

普段そんなこと言わない人が、急に思いの丈を伝えてくるため、すごくソワソワしてしまう。

しかも、嘘の気配も感知するスキル気配感知が、全く反応しない。トウカさんの言葉が、嘘偽りの無い本音であることが分かってしまう。


あ、もう充分です。仲間入りを認めまーす、と言って話を切り上げたいどころだが、真剣に話すトウカさんを前に、そんなこと出来ない。

変な気まずさを感じながらも、私とシロ君はトウカさんの話を聞く。


「お前らに久しぶりに会った時は、良かった無事だったなんて安心するんだよ。そんな自分に、片想い中の女々しいやつかよってイライラする。なんだこの気持ち?とか考えてる内に、あー、もう面倒くせぇってなってよ。どうせ私はソロ冒険者だし、もう仲間に入っちまえって思った。だから、美雪達のパーティ入りを希望する!!これが私のパーティ入りの希望理由!!これで満足か!?」


「はい、ありがとうございます。」


もうこれ以上、聞きませんよね?とハラハラした表情のシロ君、真っ赤な顔でふーっふーっと威嚇するトウカさん。


二人の表情を確認し、私は面接の最後の言葉を告げる。


「それでは、本日の面接結果は、後程郵送にてお送りさせていただきます。」


「なんでだよ!!!」


「なんでですか!!?」


場の空気を和ませるため、サっちゃんの面接の時にも使った冗談を言ってみたが、効果は無かった。

これ以上変なこと言うと、殴られそうなので真面目に面接結果を伝える。


「すみません、冗談です。トウカさん。これから、私達パーティの先輩冒険者として、未熟なところを戒め、引っ張っていってください!」


「って、ことは?」


「先輩にこんな言い方しちゃいけないと思いますが…、私達のパーティ入りを認めます!よろしくお願いします!」


「やったー…って、喜ぶところなんだろうけど、喜ぶ気力が湧かないわ…。疲労感がすげぇわ…。よろしくな…。」


私の差し出した片手と、トウカさんの片手ががっちり結ばれる。

こうして、私達のパーティに先輩冒険者であるトウカさんが仲間入りをした。


「それじゃ、さっそく先輩冒険者として、ササラ達の面接が終わったら特訓な!びしばし容赦なく、しごいてやるからよー…!!覚悟しろよ…?」


「痛っ、痛い痛い、握手の力がどんどん強まってる…!!」


トウカさんは、私の手を握る力を強めながら、にししと無邪気に笑う。目は笑ってるけど、目の奥は笑っていない。あ、トウカさん、完全にキレてる。


「私は心が広いから、別に面接のことは気にしちゃいない。全然、気にしてないけど、激アマな美雪たちには、特訓は少し厳しくなっちまうかもしれないなー。悪いな、これも美雪たちを思ってのことだから。だから、許せよ?なぁ?」


「あー!!手が痛い!!ごめんなさい、ごめんなさい!!痛い痛い痛い!!」


固い握手を結ぶ私とトウカさん。巻き込まれないように沈黙を続けるシロ君。

こうして、トウカさんの面接は採用という結果で終わった。

激痛が走るトウカさんとの握手から逃れるため、大声で助けを乞いながら、次の面接のことを考える。


残りは竹調(たけしらべ)って異名で知られるササラさんと、その仲間である三名。

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