スキル気配感知の可能性を探ろう!
前回のあらすじ:美雪達のパーティ入りを希望する五人に、美雪は困惑を浮かべる。個性豊かな仲間入り希望者に、場はより混沌なものへと変わる。
「ユウキ、今日は自分よりも大柄な敵を相手にした時の対応方法を教えていくわよ!!ママとパパに色々聞いてきたんだから、ありがたく聞きなさいよね!」
頬を撫でる風が心地良い草原の中、私の耳に少女の声が聞こえてくる。
あ、この感じは見覚えがあるな。歌姫の護衛クエストの中で、ペトラさんと戦ってる時に夢に見た状況と一緒。
シークレットスキルが覚醒してから、私は数日に一回、こうして始まりの草原の中、無口な少年ユウキの意識の中に入り、少女と一緒に戦闘訓練を積む夢を見ていた。
今日の講座は、大柄な敵を相手にした時の対応方法か。なるほど、これはタメになる。
私の気持ちに答えるように、ユウキは静かにうんうんと頷く。
「大柄な敵と言っても、どのくらいのサイズか、二足歩行か四足歩行かそれ以上か、空を飛んでるか地上にいるかなどなど…。様々な相手によって状況が変わるけど、今日はここから近くの、焼け焦げた森林跡に登場したダンジョンのボス、巨竜ことジャイアントドラゴンを相手に想定するわよ!」
ユウキは首を傾げる。ジャイアントドラゴンってどんなモンスターっていう質問かな?
「巨竜をどう想定するの?って表情ね、ユウキ。大丈夫!想像の敵と戦いなさいなんて言わないわ!今日は想定巨竜として、タツヒロさんに来てもらってるから!」
「紹介にあずかったタツヒロでござる。」
少女の紹介に、いつの間にか私の隣に立っていたタツヒロさんが自己紹介をする。
私が転生してすぐ、シロ君と出会った日に馬車の上にいた侍こと魔王軍幹部のタツヒロさんが、着物、袴、羽織、マフラーといったあの日と同じ出で立ちで、なぜか私の隣で腕を組んでいる。
え、なんでこの少女とユウキがタツヒロさんと一緒に?意識でしかない私の疑問は届くことなく、目の前の少女はタツヒロさんを呼んだ理由の説明を始める。
「竜人族であるタツヒロさんには、今日は本来のドラゴンの力を取り戻してもらうわ!ジャイアントドラゴンより、速さと強さとか諸々、竜化したタツヒロさんの方が桁違いに強いけど、巨竜の大きさは再現できると思うの!だから、今日はタツヒロさんを相手に、想定ジャイアントドラゴンとして、戦闘訓練を積むわよ!」
にっこり笑顔で人差し指を立てる少女に、タツヒロさんは少し困った表情に変わる。
「竜人族がドラゴンの力を取り戻す竜化は、拙者にとって秘技中の秘技なんでござるが…。まぁ、良いでござる。手加減はするでござるが、お二人は拙者に踏みつぶされないように注意するでござるよ。」
タツヒロさんは腰に差していた黒い刀を抜く。
私と愛が始まりの草原で会った時には腰に差しっぱなしだった黒い刀を、両手に構えたタツヒロさん。
異様な力を感じる刀を天高く構えたタツヒロさんは、大声を上げる。
「この刀は拙者の角で作られた刀!!拙者の魔族の力と、竜人族の力を濃縮したこの刀を再び拙者の中に戻す時、拙者は古の竜の力を取り戻す!!解放せよ、竜の力!!竜化!!」
タツヒロさんの持っていた刀が消え、両耳の少し上の部分から黒い角が生える。
魔族である証の黒い角。どうやらタツヒロさんは二本の刀に、その力を委譲していたようだ。
魔族としての本来の力を取り戻したタツヒロさんの体が大きく膨らむ。着ていた服は破れ、その姿は大きなドラゴンへと変わる。
目の前の大きなドラゴンの前足は、指一本が私くらいの大きさ。竜化をしたタツヒロさんは、頭から尻尾の先が視界に収まらないくらいの巨大なドラゴンだった。
そんな巨大なドラゴンから、重く低い声が聞こえてくる。
「申し訳ないでござる。拙者はジャイアントドラゴンより倍以上の大きさでござるな。」
「大丈夫!大は小を兼ねるから!それじゃ、訓練のために攻撃するけど、良いよね?タツヒロさんにとっては蚊に刺されたくらいのダメージだと思うから、私達が死なない程度の反撃をお願いね!」
「了解でござるー。」
タツヒロさんの重く低い声に、目の前の少女は少しも慌てることなく、メイン装備と思われる弓を取り出し、巨大なドラゴンに向かって走り出す。
あれ?巨大な敵を相手にどう対応するかって訓練内容じゃなかったっけ?まさかの即座の実戦形式!?
ユウキが抗議の声を上げようとするが、どこまでも無口キャラを貫き通すためか、声は出さずに背中の大剣を構える。
巨大なドラゴンと化したタツヒロさんを相手に、私はユウキの意識の中で戦いを挑む。
振り回したタツヒロさんの尻尾が直撃し、死ぬかと思う程のダメージを受けたりもしたが、自分より大きい敵を相手にした場合の戦闘経験と技術を入手した。
「はい、今日はこんなとこね!大事なのは、巨大な敵を相手にした場合は、その大きさに怯えて自暴自棄にならず、相手が何をしてくるか冷静に全体を確認して対応すること!相手が何をしてくるか、行動の前兆を見落とさず、冷静にダメージを与えるのが大事よ!観察をすることで、大きなダメージを与えることが出来る弱点も見つけられるしね!長期戦は確実だけど、慌てず確実にダメージを与えれば、やがて勝機は訪れるから!」
ボロボロになって地面に倒れ伏すユウキに対し、少女はにししと笑いながら、今日の訓練のまとめを話す。
巨大な敵を相手にすることは滅多に無いだろうけど、少女の話はとても参考になった。
実際に体を動かし、ダメージを受けるのがユウキだから冷静に言えるのかもしれないけど…。
タツヒロさんが竜化を解き、侍の姿に戻る中、私に浮遊感が襲ってくる。
そうか、夢からの目覚めの時間か。
無口な少年ユウキと今日も名前を知ることが出来なかった少女、タツヒロさんにお礼を言いながら、私は意識を覚醒する。
「んー…。朝か。」
「おはようございます、美雪さん!」
目覚めると、昨日仲間入りしたサっちゃんが、寝間着を折り畳みながら身支度を整えていた。
「昨日はごめんね、めちゃくちゃになっちゃって。」
「いえ、気にしないでください!むしろ、楽しかったくらいです!」
薄幸のエルフ少女ことサっちゃんが仲間入りした昨日の食事会は、途中から色々あって大混乱のままお開きとなった。
肝心の暴走少女である愛は、豪快ないびきをかきながら爆睡をしている。寝顔は年相応の少女って感じで可愛らしいのに、なんであんな戦闘狂なんだろ?
愛の寝顔を見つめていた私の視界の端に、ちらちらと光が入ってくる。
窓から外を見ると、太陽が少し上がってきたくらいの早朝だった。
「まだ早朝…。やっぱりサっちゃんは朝が早いんだね。」
「やっぱり朝が早い?」
老人は早起き。236歳という超高齢のサっちゃんなら尚更かな?と思っての発言だったが、サっちゃんは気付かなかったようだ。
くりっとした純粋な瞳で、小さく首を傾げるサっちゃんに、老人扱いしたことを反省する。
「ごめんごめん。それじゃ、早速で悪いけど、ここに座って。」
「え?あ、はい!」
ちょいちょいと私の手招きに応えるように、サっちゃんは私のベットに腰掛ける。
私のすぐ隣に腰掛けたサっちゃんと向かい合い、表情を引き締めた私はゆっくりとサっちゃんに質問をする。
「サっちゃんの鍛冶に必要な物を教えて。」
「鍛冶に必要な物?って、すぐに鍛冶をやらせてもらえるのですか!?」
サっちゃんが身を乗り出して、ぐいっと私に近付く。
玩具を前にした子供のようなキラキラしたサっちゃん(236歳)を前に、少しドキッとしながらも、私は質問に答える。
「うん、サっちゃんには準備が出来次第、鍛冶をしてもらうわ!私達は数日後にはダンジョンに潜って、レベル上げや素材集めをするけど、サっちゃんにはそれに役立つ装備品を作って欲しいんだよね!」
「ありがとうございます!鍛冶に必要な道具はいっぱい持ってきていますので、必要なのは場所ですね!高火力な火が使える炉があれば、モンスターの素材と鉱石から武器、防具、装飾品といった装備品を作ることが出来ます!!」
私の質問に、サっちゃんは早口で必要な物を告げる。
今までにないサっちゃんの無邪気な様子に、やっぱり彼女は鍛冶が好きなんだなってことを実感する。
「炉って、高温で金属を溶かすやつよね…?必要な物のハードルが高いなー…。」
「炉は私がゴーレムと一緒に作りますので、ある程度の広さのスペースがあれば大丈夫です!美雪さんのホームには、そんなスペースがありますか?」
「あー、ホームねー…。」
サっちゃんが言うホームとは、パーティを組んだ冒険者が生活の拠点とする、居住スペースのことだろう。
ゆくゆくは私達のパーティも王都内にホームを築こうと思っていたが、現状としてホーム設立の目途は立っていない。
気まずい気持ちを感じながらも、サっちゃんにはちゃんと事実を伝えないとな…と気持ちを引き締める。
「サっちゃん、私達のパーティはまだホームを持っていないの…。お金が貯まり次第、購入を検討してるけど…、当分は宿屋暮らしかな…。お願いしていたところ申し訳ないけど、すぐにサっちゃんに鍛冶をお願いできなさそう…。」
私は真摯に頭を下げる。そんな私の謝罪に、サっちゃんは両手をバタバタしながら慌てた様子で答える。
「大丈夫です!!炉が無くても作れる武器や防具はありますし、ほとんどの装飾品の作成は炉が必要ありません!ホームの取得に必要な金額を稼ぐお手伝いをさせてください!」
あ、サっちゃんすごい健気。
健気なサっちゃんに対して、愛おしい気持ちが爆発した私は、思わずぎゅうっと抱きしめてしまう。
「ふえ!?美雪さーん!!急にどうしたんですか!?えー!?」
耳元で聞こえてきたサっちゃんの悲鳴に、思わず取り乱して失礼なことをしまったことを謝る。
なんでも許してくれそうなサっちゃんに、失礼ついでにひとつお願いをしてみる。
「サっちゃん、ひとつお願いがあるんだけど良いかな?」
「ひとつお願い?えっちなことはダメですからね!!」
さっき私が抱きついたからか、サっちゃんは両手を胸元にクロスで警戒する。
そんなサっちゃんの頭を撫でながら、私はお願いの内容を伝える。
「ごめんごめん、そんなに警戒しないで!えっちなことじゃないよ!サっちゃんにお願いしたいのは、昨日取得したスキル気配感知の可能性の探求について!」
「スキル気配感知の可能性の探求?どういうことですか?」
疑問に小首を傾げるサっちゃんに、私はゆっくりと説明を始める。
「スキル気配感知だけど、このスキルに私は大きな可能性を感じるんだよね。」
「大きな可能性?」
「風魔法ってイメージを固めることで、空気の中の酸素だけを抽出する…って具合に、風だけじゃなく特定の気体を操れるんだ。魔法やスキルはイメージを固めることで、更に追加効果を得ることが出来る。だから、気配感知も相手の警戒心の気配を感知するだけじゃなく、他の気配も感知できるようになると思うんだよね。どうかな?」
「どうかなと言われましても、魔法やスキルをイメージで追加効果を得るってことは噂には聞いたことがある程度で、実感したことはないので…。スキル気配感知が他の気配も感知できるというのはどういうことでしょう?」
サっちゃんの質問に答えるため、私は人差し指を立てる。
「私が直感的に感じられると思うのは、嘘の気配。」
「嘘の気配?」
「スキル気配感知は、モンスターの位置や警戒心だけじゃなく、相手が嘘を吐いてるかも、気配で感知できると思うんだよね。それをサっちゃんに試したいんだけど、協力してもらえる?」
「嘘の気配を…。試してみる価値ありですね!良いですよ!私は何をすれば良いですか?」
私の提案に、すぐに了承してくれるサっちゃん。
それでは遠慮なく試させてもらおうと思ったが、どうしたら嘘を発見できるだろう?下手な質問をして、協力してくれるサっちゃんを傷つけたくないしな…。
嘘発見の方法を考えていたところで、サっちゃんが笑顔で提案をしてくれる。
「美雪さん!嘘発見の方法をお悩みなら、私から提案があります!」
「提案?」
「はい!私がこれから出身地のエルフの里の紹介をしますが、その中にひとつ分かりづらい嘘を入れます!それを検知できるか試すってのはどうでしょう?」
「なるほど、名案。それ採用。」
私の言葉に、サっちゃんはにこりと笑う。提案を受け入れられて嬉しいようだが、私の方が良い案をもらえて嬉しい。
それでは…と、声の調子を整えたサっちゃんはエルフの里の説明を始める。
「私の出身地であるエルフの里は、西大陸の大森林フェアリーズガーデンの中にあります。自然豊かなエルフの里は、私が探す姫様ロックォーヌ・ティルノシリア様のお父さんであるエルフ王が統治しており、西大陸の中では、帝都の次に大きな国です。エルフ王は1000年を超える長い年月を生きているため、能力も高く、西大陸唯一の金等級冒険者なんです!」
「はい、ダウト。エルフ王が金等級冒険者ってところで、嘘の気配を感じた。合ってるかな?」
サっちゃんが金等級冒険者と言った時に、ピリッと指先に電流が走ったような感覚を感じた。
これが嘘の気配を感じるってことかな?と思って確認をすると、サっちゃんはにこりと笑う。
「はい、その通りです!エルフ王が金等級冒険者は嘘です!それでは、本当はどうかまで分かりますか?」
「エルフ王が金等級冒険者ってところで嘘の気配を感じたから、本当は銀等級冒険者ってこと?」
私の質問に、サっちゃんは両手をクロスしてバツマークを作る。
「ブッブー!正解は、エルフの王妃が金等級冒険者です!王妃は私が探す姫様のお母さまですが、とっても強いのです!エルフ王も銅等級冒険者くらい強いですが、異常な強さの王妃に尻に敷かれちゃってます!」
「嘘の気配は感じられるけど、その嘘が何かまでは分からないってところか…。なるほど。」
スキル気配感知は、予想通り嘘の気配を感知することも出来た。
ただ、嘘に対しての正解までは分からないか。まぁ、気配感知をイメージで拡張しての使い方だから仕方無いか。
「でも、嘘の気配が分かるってのは、今日の面接に役立てるんじゃないですか?」
「あー…。そうね、そういえばそんなイベントがあったね…。」
サっちゃんの言葉で思い出したが、今日は先輩冒険者であるトウカさんとササラさん、他三名のササラさんの仲間入り希望者の面接という予定があった…。
先輩冒険者のことを面接か…。トウカさんにもササラさんにも恩があるから、面接無しで仲間入りにオッケーを出したいところだけど…。
格下冒険者の私達に、このタイミングでトウカさん達が仲間入り希望をすることに何かしらの策略が無いか疑ってしまう。そこは確認をしなければいけない。
それに、サっちゃんの仲間入りの時には面接という形式をとったのだから、トウカさん達にも同じことをしないと、サっちゃんに申し訳ない。
面倒なイベントに溜息を吐いたところで、隣のベットのかけ布団が大きく吹き飛ぶ。
「んあー…。」
愛の目覚めだ。愛は剛を極めた少女のため、目覚めた瞬間、布団なんて軟弱な物は吹き飛ばす。
「布団が…、吹っ飛んだ…。」
「…え?」
思わず呟いてしまったことを後悔、といった表情のサっちゃん。
突然のダジャレに何も言えなくなってしまった私。男性は歳を重ね、親父ギャグを言うようになるが、236歳のサっちゃんもやはり…?
そんなことを考えていたら、サっちゃんの顔は茹で上がったエビのように真っ赤になる。
さぁ、どうフォローをしようかなと考えていたところで、大きく背伸びをした愛は、きょろきょろと周囲の様子を伺いながら、私達に声をかける。
「んー…。ん?美雪とサっちゃん何で向かい合って真剣な表情してんの?にらめっこ?」
「愛、おはよう。にらめっこじゃなくて、昨日取得したスキル気配感知の確認をしてたの。」
「そっかー。なるほどなるほどー。」
寝惚けた様子のまま、愛は目をこすっている。
いつもより眠そうだ。サイクロプス討伐に、ユウジとの戦闘。昨日スタミナを多く使う戦闘が多かったからかな?
大きくあくびをした愛は、しょぼしょぼ目のまま、サっちゃんに失礼なことを口走る。
「サっちゃんはおばあちゃんだから、やっぱり早起きなの?」
「おばあちゃん!?老人は早起きってことですか!?違いますよ!!昨日も言いましたが、エルフからしたら、私は若い方なんですからね!!」
「んじゃ、なんで早起き?」
「美雪さんの仲間入りをしたことで、ワクワクして眠りが浅かったんです!!」
遠足を楽しみにする小学生のような理由に、私はほっこり。
サっちゃんの可愛らしい早起き理由に、私は思わずサっちゃんの頭を撫でる。
ほっこりタイムは、元気いっぱいの愛の大声によって吹き飛ばされる。
「美雪ー、今日はどんなモンスターと戦いに行くのー?クエストー?ダンジョンー?闘技場ー?まだ見ぬ強敵に、ワクワクが止まらない!」
今日も戦闘狂の愛さんは、愛さんである。多分、忘れちゃったんだろうなーと思いながらも、愛さんに確認をする。
「愛、今日はトウカさん達の仲間入りを確認するための面接があるんだけど?」
「トウカ達の面接?あー、そういえば昨日そんなこと言ってたねー。でも、それなら美雪に任せるよ!美雪がオッケーって思えれば、私達もオッケー!なんせ、美雪は私達のプルーンだからね!」
「プルーン…?って、もしかしなくても、ブレーンのこと?」
「そうそれ!考えるのは美雪に任せてるんだから、私はそれに黙って従うよ!私は突っ走るのが得意だけど、考えるのが苦手だからね!考えるのは美雪の役目でしょ?」
少し恥ずかしそうに、んへへと笑う愛。
そんな愛の笑顔と言葉に、彼女と出会ったばかりの頃のことを思い出す。
「美雪、私強くなりたい!私は突っ走るのが得意だけど、考えるのが苦手だから、美雪にそっち方面のサポートをしてほしい!」
「愛、私も強くなりたい!私は考えるのが得意だけど、考え過ぎて足を止めてしまうから、迷った時に愛に突っ走ってほしい!」
図らずも今日見た夢の中に出演したタツヒロさんと初めて出会った時、手も足も出ないほどの圧倒的な実力差を感じた愛と私は、その場で誓い合った。
懐かしい記憶。愛も覚えてたんだな。
「愛さんは美雪さんのことを信頼されてるんですね。」
愛が私との思い出を覚えていたことと、サっちゃんの見透かしたような言葉に、私も思わず照れ笑いを浮かべてしまう。
「ふふっ。そうね、考えるのは私の役目ね。それじゃ、愛はクエストに行って良いわよ。申し訳ないけど、サっちゃんも同行をお願いしていい?」
「はい、問題ございません!愛さんは強いモンスターと戦いたいんですよね?それでは、王都近くの石像の荒野にロックゴーレムと泥人形狩りに行きませんか?」
「ロックゴーレムに、泥人形?強いのそいつ?」
サっちゃんの発言に、愛は首を傾げる。お、どうやらサっちゃんは愛の興味を引くことに成功したようだ。
「はい!ロックゴーレムは適正討伐レベル33、泥人形は適正討伐レベル31の強敵です!愛さんなら退屈しない相手かと思います!私が鍛冶をするための炉の作成に、ロックゴーレムのドロップアイテムである石塊と、泥人形のドロップアイテムである硬質な粘土が必要なんです!それらの取得のお手伝いを、お強いと噂の愛さんにお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「しょうがないなー!!私がサっちゃんについていってやるよー!!」
サっちゃんの提案に、愛はまんざらじゃない様子で了解をする。
どうやら愛はサっちゃんに対して先輩風を吹かしたいんだなー。なるほどー。
得意気な愛の表情に少し嬉しくなるが、同時に心配も湧き上がってくる。念のためにもう一人欲しいな。
「愛、サっちゃん。ユウジも連れていって。どうせ面接に役立たないから。」
「ユウジ?分かったー。盾にするね。」
「前衛で防御が出来る上に、水魔法が使えるユウジさんと一緒は心強いですね!遠慮せずに、ご一緒させてもらいます!ありがとうございます!」
にこにこと笑うサっちゃん。良かったなユウジ。お前にも役割があったぞ。
「シロ君は美雪と一緒?」
「うん。シロ君は我らの知恵袋だからね。私の異世界知識不足を補うため、面接のサポートについてもらう。良いよね?」
「大丈夫!ロックゴーレムは見たことないけど、鬼火流剛術の敵じゃないよ!牡丹ドーンで、簡単にズバーンだよ!!」
「サっちゃん。愛の暴走を止められるのはあなただけ。ユウジをうまく使ってね。申し訳ないけど、頼んだわよ。」
「暴走!?昨日のことも相まって、急に不安になってきました!!あー、大量のポーションを押し付けないでください!!こんな大量のポーションが必要になるんですか!?」
強敵との戦闘が待てないといった様子で素振りを始める愛。
私が持っているポーションすべてを押し付けることに慌て始めるサっちゃん。
二人の様子を気にかけつつも、まぁ、なんとかなるだろって気持ちで、シロ君とユウジを呼び寄せた後、今日これからの予定をまとめる。
「よし!それじゃ、今日の予定を確認するわね!私とシロ君はトウカさん達の面接!愛とサっちゃんとユウジは、王都近くの石像の荒野で、ロックゴーレムと泥人形狩り!」
私の予定の確認に、石像の荒野へ行く三人は声を上げる。
「オッケー!!サっちゃんとユウジ、いっくぞー!!」
「は、はい!がんばります!!」
「いや、急に寝起きで説明受けても…。俺は昨日、愛に一回殺されてるんだぞ…。」
何か愚痴愚痴と言い出しそうなユウジに、スキル眼光威圧を伴った睨みを利かせる。
「…って言っても無駄なのは分かってる。了解。愛とサっちゃんと一緒にクエストに行ってくるよ。危険なことが無いように、二人をサポートする。」
渋々といった様子だが、ユウジは了承してくれた。
眠そうな様子のシロ君も、うんうんと頷いてくれているため、私は今日の予定の決定を告げる。
「よし、それじゃ予定の確認はオッケーだね!お互い無理せず、夕方にはこの宿屋金字塔の食事スペースに戻ってくること!それじゃ、朝食を食べたら解散!!」
「「了解!!」」
愛、サっちゃん、ユウジは炉を作るための素材の入手。
私とシロ君はトウカさん達の面接。
二手に分かれて、行動を開始する。こうして、バタバタの一日は始まった。




