パーティ入り希望者に会おう③
前回のあらすじ:美雪達のパーティ入り希望者、サっちゃん(236歳)に対して日本式圧迫面接で彼女の素性と希望理由を詳細化した美雪。
一本筋の入ったサっちゃんの回答に、美雪達はパーティ入りを認めるが、仲間入り希望者は一人じゃなかった。
「私達五人のパーティ入り、ご検討のほどよろしくお願いします!!」
突然の事態で混乱する私をお構いなしに、深く頭を下げる五人。
右から、銀琴の異名で知られる先輩冒険者のトウカさん、竹調の異名で知られるササラさん、ササラさんのパーティ仲間の、ユリスキーさん、レズメッグァナーイさん、ユリ・シンジョウさん。
頭を下げる五人に対し、私は状況の再確認をする
「サっちゃんの仲間入りが決まったところで、追加で、トウカさん達も私達のパーティ入りを希望している。状況は合ってますか?」
「「「はい、合ってます!!お願いします!!」」」
「私達は青等級の、王都に来たばかりの新米パーティですよ?本当に合ってます?」
「「「はい、合ってます!!お願いします!!」」」
「ふむ、なるほど。」
私の再確認に、五人は声を合わせて答える。どうやら間違いではないらしい。
なるほどと言ってみたけど…。いや、どんな状況…?
トウカさんとササラさんは銅等級冒険者で、私達なんて比べ物にならない高等級冒険者じゃん…。なんで、わざわざ格下の等級の私達のパーティに入りたいの…?
それに、さっきサっちゃんと散々、仲間入りの問答やったじゃん…。えー…。追加で確認しなきゃいけないのー…?トウカさんとササラさんをー?うわー、荷が重いー…。
困惑していても仕方ないので、ひとつ確認することにする。
「えーっと…、これだけ確認させて。」
「これだけって、え?確認ひとつで判断するのか!?さっきのサっちゃんみたいに、いっぱい聞いてくれよ!!私も…、いや、ササラがどんな質問にも答えるから!!」
「トウカはん!?なんでササラを悪魔に売ったん!?」
「悪魔…?それは私のことで、よろしかったでしょうか、ササラさん?」
「ちゃ、ちゃうねん!!」
「そうですか、ちゃうんですか。では、なぜそんな汗をかいて焦っているんですか?違うのであれば、そんなに慌てず、平然としてれば良いじゃないですか?ね、ササラさん?」
泣きそうな顔になったササラさんは、トウカさんの後ろに隠れて、ぷるぷると震える。
ちょっとからかい過ぎたな。久しぶりに面接やったから、テンションが変な風になってる。気を付けよう。
「そんな怯えないでください。ひとつ確認というのは、他にパーティ入り希望者はいませんよね?っていうことです。」
「他に希望者?そんなことか?それなら安心してくれ。ここにいる五人以外はいない。」
「そうですか、安心しました。それでは確認は以上で、ここからはお願いになります。」
「お願い?」
「トウカさん、ササラさん、他三名についての仲間入りは、持ち帰り案件とさせてください。具体的に言うと、トウカさん達には後日お集まりいただき、面接をさせていただきます。」
私のお願いに、トウカさんは露骨に嫌そうな表情に変わる。
「後日?えー、今日にしてくれよー。私、先送りされるのって苦手なんだよなー。」
「それでは、今回の話は無かったことに。サっちゃんの歓迎会に戻りましょう。」
サっちゃんのほっぺたを指先でツンツンし始めたところで、トウカさんが慌てた様子で言い直す。
「あー、嘘嘘嘘!!待つ待つ待ーつ!!そうだよな、美雪達はサイクロプス討伐クエストやってきたから疲れてるよな!!面接は後日で構わん!!」
「ありがとうございます。それじゃ、後日は嫌ということですので、なるべく近日中に…。シロ君、明日って急ぎの用事がありましたか?」
「特にありません。」
「それでは、明日の昼過ぎに、私達が宿泊している宿屋金字塔の食事スペースに来てください。そちらで面接をさせていただきます。」
「ありがとうございます!!明日の昼過ぎ、よろしくお願いします!!」
ぺこりと当たを下げるササラさんに、私は満足気に頷く。
そんな私達の様子に、ユウジがボソッと質問を呟き、シロ君が同意の返答をする。
「あれ、どっちが先輩だったっけ…?」
「傍若無人なトウカさんのあんなところ、初めて見ました…。」
突然のことに、困惑を浮かべる二人。
そんな二人に、愛が親指を立てながら得意気に語る。
「美雪だから!」
「「美雪さんなら仕方ない。」」
「仕方ないんですか!?」
愛の言葉に納得のシロ君とユウジに、サっちゃんの驚き声が聞こえてくる。
私なら仕方ないってどういうことだ?まるで先輩に対して狼藉を働く人扱いして…。
そんなことないでしょ?ちゃんと敬語使ってるでしょ?まったくー。
最近、仲間達が私を非常識人扱いしているのが心外である。
サっちゃん、あなたはいつまでも私を常識人扱いしてね。
そんな気持ちを込めて、サっちゃんの頭を撫でるが、私の気持ちは残念ながら伝わらず、キョトンとした表情でサっちゃんは私を見上げてくる。
困惑のサっちゃんに、にこりと笑顔を浮かべ、私は高らかに宣言する。
「それじゃ、トウカさん達のことは保留にして、今日はサっちゃんの仲間入りを祝しましょう!!サっちゃん、よろしくかんぱーい!!」
「「かんぱーい!!」」
「あ、ありがとうございます!!かんぱい!!」
グラスをぶつけ合う私達。
仲間入りを後回しされ、最初は釈然としないという表情だったトウカさんやササラさん達も、食事をしながらの歓談に、盛り上がっていく。
「おかわりー!!」
盛り上がりの中、もう何度目か分からない愛の乾杯の声が響く。
いつもより多く食べているような…?不審に思った私は、愛に確認することにする。
「愛、なんだかいつもより多く食べてる気がするけど…、なんでかな?」
私の質問に、愛は得意気に親指を立てて答える。
「レベル30のスキルポイント使って、スキル大食いを入手した!!だから、今まで以上にいっぱい食べれる!」
「スキル大食いって、食事をスタミナに変換することが出来るようになって、多くの食事が可能になるってスキルですね。」
愛のスキル取得宣言に、シロ君が解説をしてくれる。
しかし、今はスキルの内容はどうでも良い。愛にスキル取得について確認することにする。
「愛さーん、スキル取得はパーティにとって重要だから、みんなで相談しながら取得しようって言ったよねー?なんで取得しちゃったかなー?」
「これなら、トウカにも負けねぇ!!」
「そうか。トウカさんのせいか。」
「おい、美雪!!なんで私を睨むんだ!?私のせいって言いたげな睨みやめろ!!どう考えても、愛ちゃんの暴走だろ!!私は関係ないだろ!!相変わらず、愛ちゃんに対して激アマかよ!?」
慌てふためくトウカさんと、得意気に親指を立てる愛。
んー、どうしたもんか。と思っていた私に、シロ君が声をかけてくれる。
「食事でスタミナを回復する、という効果のスキル大食いの取得は、スタミナを多く使う武技を中心に戦う愛さんにとっては有用だと思います。魔法を使うとMP、武技を使うとスタミナが消費しますが、愛さんは鬼火流という武技のみで戦うため、スタミナ消費量が大きいです。だから、スキル大食いの取得は有用と僕は考えます!」
「そう、そういうこと!!」
シロ君の言葉に、得意気に親指を立てる愛。
愛はさっきから親指立ててばかりだなと思ったけど、スキル大食いの取得は愛なりに考えての結果なんだな…と感心したので、お咎め無しにする。
「ちょうど良い機会だし、サっちゃんのスキルの確認と、新しいスキル取得をしようか!まずは、サっちゃん、取得済みのスキルを教えて!」
私の言葉に、ぴくっと反応したサっちゃんは表情を引き締めた後、自分のスキルの説明を始める。
「あ、はい!私は、地属性と火属性の進化魔法の岩魔法と炎魔法が取得済みで、スキルは7つです。護衛用のゴーレムを生成するスキル土像作成、レベルアップ時に魔力のステータスを上げる魔力促進と、武器と防具作成のスキル鍛冶、装飾品作成のスキル精製、鍛冶と精製の作れる範囲を広げる錬成、装備品に一定確率でスキルを与えるスキル付与、確率系スキルの確立を上げるスキル精度向上…、以上です!」
サっちゃんのスキルは、面接の時に言っていた鍛冶方面のスキルが多かった。
そのスキルの中でも、気になったものを聞いてみることにする。
「サっちゃん、護衛用のゴーレムを生成するスキル土像作成ってどんなの?」
「スキル土像作成は、攻撃と防御スキルの少ない後衛の私の代わりに、前衛に立って防御をしてもらうゴーレムを作ることが出来るスキルです!実際に見てもらった方が早いですね!ここで出せるのは小さい物ですが…、出でよ、ゴーレム!」
サっちゃんの呼びかけに答えるように、手の平サイズの小さな土人形が食事をしていた机の上に現れる。
私の見守る中で、ぼってりとした球形の体に、短い手足が生えたゴーレムが、ぴょこぴょこと四肢を動かす。
「なるほど。これが、ゴーレム。」
「初めて見ましたね…。」
私とシロ君は目の前でちょこちょこ動くゴーレムに驚く。このサイズ感、愛くるしいなぁ…。ぴょこぴょこ手足を動かすのがすごい可愛い…。
そんな愛くるしいゴーレムを指で突っつきながら、ユウジがサっちゃんに質問をする。
「このゴーレムって何が出来んの?」
「ゴーレムは動きこそ遅いですが、戦闘の時は前衛に立って防御と攻撃をしてくれるだけでなく、鍛冶の時は私の補佐をしてくれます。土や岩があるところであれば、最大で2メートルくらいの大きさのゴーレムを出せますよ!」
サっちゃんの言葉に答えるように、ユウジの指をバシバシと叩くゴーレム。
サっちゃんは鍛冶を主としたサポートに徹してもらおうと思っていたが、サっちゃんが出すゴーレムは前衛として活躍してもらえるかもしれない。
そんなゴーレムの説明に、ふと感じたことを、近くの大男に確認してみる。
「ゴーレムは防御と攻撃が出来る前衛…。ユウジ、あんたのお株を奪っちゃうんじゃない?あんたの役割、ゴーレムと被ってない?」
「サっちゃん、後で本気のゴーレムと戦わせてくれ。パーティ内の俺の立場が危うい。」
「あ、はい。分かりましたが…、多分ユウジさんが楽勝だと思いますよ。ゴーレムは頭良くないので臨機応変な対応は出来ませんし、水魔法に弱いですから。」
サっちゃんの言葉に、ユウジは自分の有用性を示すように、得意気な笑顔で私を見てくる。
ユウジの得意気な顔に反応するのも、なんとなく億劫だったので、新規スキルの取得に話を移す。
「愛はスキル大食いを取得済みで、ユウジは新しく取得できるスキル無いよね?」
「そうだな。今の俺はレベル34だから、前回から取得可能スキルは増えてない。今回は美雪さんとシロだけだな。」
小さなゴーレムと戯れるユウジに、おいこら、私と変われ、と思うが今はそんな場合じゃない。
ひとまず、私達の現状のスキルをサっちゃんに伝えた後、新規スキルの取得の話に戻る。
「私は前回、眼光威圧を取得したことで取得出来なかったスキルの気配感知を取得しようと思うけど、シロ君はどのスキルを取得する予定?」
「僕は光魔法の中のHP回復魔法を強化するスキル治癒を取得しようと思います。美雪さんも愛さんも、防御を捨てての攻撃特化タイプなので、正直なところ、すごく冷や冷やしますので…。スキル治癒でサポート力を上げようと思います。」
「良い心がけだな!!」
得意気に親指を立てる愛。もしかして、愛なりにサっちゃんに先輩風を吹かせようとしてるのかな?
横柄な態度とも見える愛の代わりに、私はシロ君に頭を下げる。
「いつも私達を支えてくれて、本当にありがとう。シロ君は、スキル治癒の取得をお願いします。私は気配感知を取得するね!」
「はい、分かりました!」
スキル気配感知を取得しようとマグカを操作したところで、とあることに気付く。
「あ、あともうひとつスキル取得できる。」
「前回のスキル取得はレベル20で、今回はレベル30だから、取得可能スキルは二つですね。美雪さん、愛さん、僕はもうひとつずつスキルを取得できますね!」
「なるほど。それじゃ、私はレベルアップの時に魔力のステータスにボーナスが入るスキル魔力促進を取得かな。」
「んじゃ、私はそれの攻撃版の攻撃促進!」
「僕は魔法防御力版の魔防促進にします。促進系のスキルは、確実に今後役立ちますからね!」
シロ君は笑顔でマグカを操作する。きっとスキル治癒と魔防促進を取得するのだろう。
私もマグカを操作して、スキル気配感知と魔力促進を取得する。
新しく取得したスキル気配感知は、モンスターや悪意を持った敵の気配を感知するスキル。
「さぁ、どういう風に気配を感知できるのか…。早速使ってみましょう。」
誰にも聞こえないように呟いて、取得した気配感知を発動してみる。さぁ、どう効果が出るのか。
スキルを発動した瞬間、私達がいる洋食屋くろばらにいた人達の気配と悪意を、俯瞰的な視点で色分けして確認できるようになった。
見慣れない視点に少し戸惑ったが、色付けとその人の表情から、すぐにこのスキルの有用性が分かる。
悪意の無い仲間や楽しそうに食事をする人は緑、遠くで怪訝そうに私達の様子を確認する人は黄色、キッチンで愛の大食いに怒っている人は赤色になる。
緑は平常、黄色は警戒、赤は危険といった具合で、相手の私達に対する感情が分かるようだ。
ただ、俯瞰的な視点になるスキルのため、これを発動しながらの戦闘は無理だろう。
もし私の目の前に迫る脅威とかがあっても即座に反応できない。
スキル気配感知は、ダンジョンで階層を降りた時や、開けたところでの警戒の際には使えそう。
なんにしても有力なスキルの取得だ。これから上手く使っていこうと思っていたところで、目の前のトウカさんとササラさんが黄色なことに気付く。ん?どうした?
目の前の警戒状態の銀髪の先輩冒険者トウカさんに、警戒の理由を確認してみる。
「トウカさん、どうかしました?」
「なぁなぁ、美雪!私やササラのスキルの確認は不要か?アピールさせてくれ!!」
先ほどまでスキルの確認と取得をしていた私達に、パーティ入り希望者であるトウカさんはスキルのアピールをしたかったようだ。
私の様子を伺っていたから警戒の黄色か。このくらいの警戒でも、黄色になるのかー。なるほど。
スキル気配感知は結構ざっくりしてるなー、と思いながらも、トウカさんの質問に回答する。
「そちらにつきましては、明日の面接にて確認をさせていただきます。アピールと言われましても、この場で何かをされると他の方へ迷惑をかける恐れがありますので、謹んでいただきますようお願いします。」
「業務的な返し!!」
私の返答に驚いた表情を浮かべるトウカさんの警戒色が、平常の緑色に変わる。
なるほど。こうして、スキル気配感知は使うのか。
新スキルの効果を実感した私は、今日のメインイベントである、サっちゃんの歓迎に戻ることにする。
キョトンとした表情を浮かべるサっちゃんの無垢な様子に、思わず私の頬は緩む。
新しい仲間を歓迎するため、私は声を上げる。
「これにて、今回のスキル確認と取得は終わり!それじゃ、サっちゃん、いっぱい食べてね!」
「美雪さん、しれっと私に食べきれない揚げ物を押し付けないでください…。私はエルフなので、植物由来の物以外を食べると、お腹を壊しちゃいます…。」
そっとサっちゃんの皿にのせたエビフライは、強めの拒否を受けて、私の皿に戻ってくる。
なんとか食べなければーと一口かじってみるが、飲み込むのに精一杯。完全にお腹いっぱいである。ふぅと溜息を吐いて、同席の大男にエビフライを差し出す。
「じゃあユウジいる?」
「ん!?い、いや、ダメだろ。俺が美雪さんから食べかけをもらうのは…!?」
「そうですね、ダメです。」
戸惑うユウジに、シロ君の力強い否定の言葉が重なる。
愛の次に大食いだから、って理由でユウジに期待したけど、ユウジもお腹いっぱいのようだ。
もう私はお腹いっぱいで揚げ物を受け付けていない。エビフライ以外の揚げ物も、半分ほど残ってしまっている。さぁ、どうしよう?
もったいないから残したくないなーと思っていた私に答えるように、愛が私の残していた揚げ物を全て自分の皿にのせる。
「美雪がいらないなら、私にちょうだい!スキル大食いの効果か、今日はまだまだ食べられるよー!!はっはっは!!」
ちらちらとトウカさんのことを見ながら、豪快に笑う愛。これはトウカさんへの挑発も入ってるな?
この挑発を受けて、トウカさんはどういう反応をするかな?そう思ってトウカさんを確認すると、彼女はとんでもないことを言い出した。
「愛ちゃん、スキル大食いまで発動するなんて…、今日は私の負けだよ。完敗だ。だから、愛ちゃんの…、鬼火流剛術の弟子にしてくれないか?」
「トウカが私の弟子?」
「そう、弟子。鬼火流剛術の弟子として、師匠である愛ちゃんを近くで見ていたいなーと私は思うんですよー。そんなわけで、弟子である私を美雪達の仲間に入れて…。」
「トウカさん、面接は明日です。愛に取り入って、コネ入社みたいなことをしようとしても、私は許しませんよ。」
今までにない変な流れだったが、そういうことか。油断も隙も無いトウカさんに、私は睨みを利かせる。
「ちっ!!」
「将を射んとする者は、まず馬を射よですか?残念でしたね、美雪さんにはそういうの利きませんよ。」
私の睨みに作戦の失敗を悟ったトウカさんに、シロ君が声をかける。
悔し気にシロ君を睨むトウカさんに、愛がにこにことしながら近付く。
「トウカ、鬼火流剛術の修行なんだけど、さっそく明日の朝から…。」
「残念だったな、愛ちゃん!!弟子になるってのは嘘だ!!」
「な、なんだってー!?だましたな、トウカ!?」
愛の大声に、周囲の冒険者達の視線が集まる。
怒られたり、嫌な顔をされるかなと思ったが、みんなニヤニヤと楽しそうに笑っている。
さすが冒険者達。喧嘩は日常茶飯事な上に、彼らにとっては良い酒の肴のようだ。
「騙したぜ、愛ちゃん!!弟子になるって言って油断させる、うちのササラの策略さ!!恨むならササラを恨むんだな!!」
「トウカはん!?なんでササラのせいにするん!?」
「ササラ弱っちそうだけど、こうなったら仕方無いね。今日は相手になるよ。いつでも、かかってきな。」
「愛はん、戦意たっぷりやん!!助けてや、そこの大きい男!!」
「大きい男って俺のことだよなー。まぁ、助けるけど…。愛、落ち着いてよく考えろー。ササラさんは悪くないぞー。どう考えても悪いのはトウカさんだぞー。騙されるなー。」
「おいこら、ユウジ!!てめぇ、やっぱり美人の味方なんだな!!この女好き!!」
「び、美人って、トウカはん、それはササラのことかえ!?ササラのことかえ!?」
「女好きは、鬼火流剛術で成敗してやる!!覚悟しろ、ユウジ!!」
「いや、なんで俺が愛と戦う流れ!?」
「安心しろ、ユウジ!!私が銀琴で支援魔法をかけてやる!!」
トウカさんが銀琴を取り出したことで、周囲の酔っ払った冒険者たちが、良いぞーやれやれーといった具合に盛り上がり始める。
「トウカさんが銀琴を取り出したせいで、周囲の他の客まで盛り上がり始めちゃったよ!!え、これ本当に愛と戦う流れ!?」
「お客様、他の方の迷惑になりますので…。」
洋食屋くろばらの店員と思われる方が、愛とユウジの間に申し訳なさそうに立つ。
確かあの人は護衛クエスト中に開催してたパーティ対抗戦で、副将を務めてた人だな。
「あ、迷惑ですよね。すみません。こら、愛。お店の人に…」
「喧嘩でしたら、そちらの専用リングでお願いします。」
「喧嘩専用リング!?専用リングってボクシングの試合で使われそうな、あそこのスペースのことか!?なんで洋食屋に、喧嘩専用のリングがあるんだよ!?」
「よし、やるぞ。ユウジ。食後の運動だ。」
洋食屋くろばら内に設置された喧嘩専用リングという名前の謎スペースに、愛が堂々と立つ。
愛さんは今日も愛さんです。ユウジ、どんまい。
「いつも俺の質問は無視されるよな!!あー、くっそー!!やってやるよー!!トウカさん、支援魔法まじで頼むぞ!!それ無しじゃ、俺が一方的に殴られるだけだから!!」
「うぷぅ…、食後で演奏とか出来そうにないわ…。何かが上がってくる…。脇腹痛いし、気持ち悪いー。ササラー、背中さすってー。」
「トウカさん!?さ、ササラさん!!せめてササラさんの支援魔法をお願いします!!」
「無理や。充分なスペースが無い屋内で、ササラの竹製要塞バンブー・フォートレスは出せへん。それに、ササラはトウカはんの背中さするんで大忙しや。堪忍なぁ。」
「堪忍なぁって、せめて申し訳なさそうに言ってくれませんか!?すっごい幸せそうな笑顔なんですけど!?」
「「「尊い。」」」
「久しぶりに喋ったなと思ったら、それ!?ササラさんの仲間達のキャラ、俺達にしたらまだ分からねぇんだから、あまり変なこと言わないでください!!」
「鬼火流剛術 終の型!!」
「いや、その型って愛の最終奥義じゃないの!?なんでこのタイミングで発動すんの!?」
「ご安心ください、お客様。ここは闘技場と同じく、死んでも生き返れるスペースです。」
「それなら安心だな!!ってならないからね!?愛の攻撃、痛いとかのレベル超えてるからね!?」
「死んでも生き返れますが、手数料としてあなたの持ち金すべていただきます。」
「ハイリスクノーリターン!!おい、愛!!俺達にとって得なこと無いから、喧嘩はやめよう…って、おい、名前も知らない冒険者達!!俺をリングの上に向かって、ぐいぐい押すんじゃねぇ!!やめろ!!」
周囲の冒険者達に押され、リングに上がるユウジを、私とシロ君とサっちゃんは少し離れたところから見守る。
「いつもこんな感じなんですか…?」
「いや、いつもは僕とユウジの常識人サイドで非常識人サイドを止めるため、こんなに暴走しませんが、今日はトウカさんがいますからね…。」
「周囲の酔っ払い冒険者も加わって尚更よね…。サっちゃんは常識人サイドでお願いね。」
私の言葉に、とんでもないパーティに仲間入りしてしまったかな…?と疑問の表情に変わるサっちゃん。
リングの上では、愛の連打をなんとかユウジが盾で防いでいる。
しばらくユウジの奮闘を見守っていたが、サっちゃんのフォローのために、謝罪の言葉をかける。
「ごめんね、サっちゃん。歓迎会がこんなにバタバタになっちゃって…。」
「大丈夫です!慣れてますから!」
力強く笑うサっちゃん。
薄幸のエルフの少女は強い。彼女は、このくらいの不幸ではびくともしなかった。




