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魔王退治は要件定義から!  作者: 荒井清次
王都滞在編 -新しい仲間と共に王都での生活基盤を整え強くなる-
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【番外2-6】竹調のササラは協力クエスト一日目もポンコツ

この物語は竹調のササラ目線で語られる番外編です。

本編の歌姫護衛クエストのササラ視点です。本当はまとめて最後まで書き切ろうと思ったのですが、2万文字を超えたので、護衛クエスト一日目の終わりで切りました。

話し方が安定しないエセ京都弁のササラ、すぐ走って逃げ出すササラに対し、不快に感じた場合は申し訳ございません。

歌姫であるミラウェルはんの護衛クエスト初日午後。

昼ご飯後の午後は、歌姫はんのマネージャーであるペトラはんとのライブイベントの打ち合わせやった。

ササラはライブイベントの前座として、トウカはんと対バンライブをする。

そのため、リハーサルを兼ねての歌姫はん護衛やったけど、ササラは心ここに非ず状態やった。


「…と、今お伝えしたのが当日のおおまかな流れになりますが、質問等はございますでしょうか?」


「私は特にねぇけど…。ササラはなんかあっか?」


「…。」


「おーい、ササラー?」


「…。」


ササラがぼーっと心ここに非ずな状態になるんは、理由があった。

久しぶりにトウカはんと再会し、以前と変わらずのポンコツを発動したササラはショックを受けとった。

トウカはんが引きこもっとった一年間のイメージトレーニング。

無駄やったどころか、トウカはんに対する耐性が無くなってもうて、ササラのポンコツ発動を加速させとった。


「ササラー、ササラー。おーい、ササラー。あーだめだ、ペトラ。ササラぶち切れて私を完全に無視してやがる。全然反応しねぇ。」


「おそらくトウカが原因だと思うわ。なにかササラに失礼なことしたでしょ?」


「んー…?」


ショックで思考が固まっとったササラは、トウカはんとペトラはんが何かを話しとったけど、全然聞こえてへんかった。

だって、この後のことが気になって仕方ないんやもん。

パーティ仲間であるユリスキーはん達が秘策であるチョコパウンドケーキを手に入れられるか、無事にチョコパウンドケーキを手に入れてもササラはちゃんと渡せるか。

気になって、気になって、仕方あらへん。


「これは相当お怒りね。トウカ、何やったの?私としては、護衛クエストの要になるあなた達が協力してくれないと困るんだけど?」


「んー…?んー…?正直な、思い返してみたけど、私なにも悪いことしてないと思うんだよ。」


「いや、ちゃんと思い出して。絶対にあなたが悪いんだから。あなたって昔から、不躾で無遠慮の、絵に描いたようなチンピラヤンキーで、失礼が服を着て歩いてるような人でしょ?私があなたと一緒に老騎士の弟子をやっていた時だって、姉弟子である私に失礼な態度だったもんね。まぁ、そんなトウカを私は許さなかったけど。」


「ぐぅ…。昔、ボコボコにされたトラウマが蘇ってきやがる…。くっそー…、今の等級は私の方が上のはずなのに、なぜか反論が出来ねぇ…。」


「いくら銅等級になっても、補助支援キャラのあなたなら、今の私でも勝てると思うけど?ちょうど闘技場だし、一戦交えておく?」


「喧嘩上等な私としては、そんな挑発されたら受けないわけにはいかないな…。良いぜ、その喧嘩受けてやるよ。昔のリベンジだ…。ただ、ちょっと待ってくれ。」


ぼーっとしとったササラの思考と視界やけど、トウカはんが急に近付いてくるんに気付いた。

どうしたんやろ、そんな慌てて?


「ササラ!!お願いがあるんだ!!」


ササラん前に立ったトウカはんは、両手でササラの肩をがっちりと掴む。

トウカはんのおでこと、ササラんおでこが触れそうな距離。

な、なんなん!?急になんなん!?ペトラはんとの話を聞いてへんかったから、なんでササラは今両肩を掴まれてるか分からへん!!

なんで、トウカはんがぐいぐい来るん!?両手で、ササラん両肩掴んで…。こ、こんなんあれやん!!ぎゅうってされる少し前やん!!ササラ、抱きしめられてまうん!?

い、いや、それどころやないかもしれん…。

ま、まさかやけど…。ち、ちゅう…、かえ…!?ササラ、トウカはんに、ちゅうされてまうんかえ!?


「ササラ、ペトラと喧嘩…。」


「やから、ちっかいねん!!あほう!!」


大混乱のササラは、トウカはんが何かを言おうとしてるんを遮って、ばちーんとトウカはんの頬を叩いとった。

あかーん、またやってもうたー!!

さっきと同じように、トウカはんをぺちーん叩いてもうたササラは、気が付いたら走り出しとった。


「大丈夫?」


「痛ぇ…。」


「どうせトウカのことだから、ササラに支援をお願いしようとしたんだろうけど…。残念ながら、見事に失敗ね。」


「いや、ササラに支援してもらおうと思ったわけじゃねぇし。私達の喧嘩の見届け人になってもらおうと思っただけだし。だから、ササラいなくても喧嘩できるし。」


「あら、そう。じゃあ、早く闘技場に行きましょう。」


「ちょっと待て。頬がやけに痛ぇ。さっきのササラビンタのダメージがあるわ、これ。奥歯二本くらい取れてっかも。これじゃ、公平じゃないよな?」


「負け惜しみ?敵前逃亡?」


「あ?違ぇし。まじでササラビンタのダメージがでけぇんだし。折角のリベンジなんだから、万全の体調でやらせろ。ササラビンタで失った私の奥歯二本が生えるまでな。」


「ふふっ。そういうことにしておいてあげる。」


二人がそんなやり取りをしとるんを知らず、ササラは一目散に走っとった。

あかんな。トウカはんへの耐性が下がり過ぎて、ちょっとのことで手が出てまう…。

反省と自己嫌悪でいっぱいになりながら、ササラは走り去る。



「また失敗したんですね、ササラ様。」


打ち合わせ場所から離れたところで、小さく丸くなって座り、しょんぼり落ち込んどったササラにユリスキーはんが声をかけはる。


「ササラ様、落ち込むのはまだ早いです。私、レズメッグァナーイがササラ様とトウカ様のため、洋菓子店フランソワのチョコパウンドケーキを入手いたしました。」


「これを使えば、トウカ様との仲直りも簡単だよー!!」


ササラの前に、紙で作られた箱が差し出される。レズメッグァナーイはんがゆっくり箱を開くと、そこには色とりどりのケーキが入っとった。

様々なフルーツが使われた色とりどりのケーキの中にある、黒と茶色しかない地味なケーキ。これがササラお目当ての、トウカはんが大好きなチョコパウンドケーキや。

なんとかいうパティシエの転生者が作成した絶品スイーツで、その味は舌の肥えた王都の貴族達も唸らせるほど。

毎日完売御礼はもちろんのこと、朝早くに店に並ばんと手に入らんほどの人気や。

三人がこの短時間で、ケーキを手に入れるんためにどれほど苦労をしてくれたか、阿呆なササラでもよく分かる。

やから、三人に感謝の気持ちを伝えるため、ササラはゆっくりと頭を下げる。


「ユリスキーはん、レズメッグァナーイはん、ユリはん。ほんまおおきに…、やないな…。本当にありがとう。」


深々と頭を下げたササラに、三人の慌てた声が聞こえてくる。


「さ、ササラ様!!頭を上げてください!!私たちごときに、ササラ様が頭を下げるなんて、あってはならないことです!!」


「そうです、ササラ様!!偶然、私の家のメイドが買っていた物を譲ってもらったんですから!!そんな苦労を労われてしまうと、心が痛いです!!」


「ほんとです、ササラ様!!レズメッグァナーイさんしか活躍してない上、私に至っては、ケーキを譲ってくれるメイドのスカートをめくってセクハラをしたくらいです!!レズメッグァナーイさんの家を出禁くらいました!!感謝の言葉は、私の良心にグサグサ刺さります!!」


「いや、なにしとんの、ユリはん?後で謝りにいこうな?ササラもついてったるから。」


「あぁ、ササラ様の優しさが胸に刺さる!!」


胸を押さえて悶えるユリはんのせいで少し感謝しずらい状況になったけど、ササラが三人から力をもらったんは確かや。

ササラは表情を引き締めて、拳に力を入れて立ち上がる。


「よし!!今すぐチョコパウンドケーキ持って、トウカはんのとこに行きたいところやけど、夕食前やもんな!!タイミングが悪いな!!夕食まで待機や!!」


三人が驚くくらい勢いよく立ち上がったササラやけど、時刻は夕方前。まだ決戦の時間には早い。やから、待機や。

決して、決戦直前でひよって後回しにしたんちゃうで。

夕食前にケーキ食べちゃうとお腹いっぱいになってまうもん。

せっかくペトラはんが用意してくれた美味しい夕食が台無しになってまうもん。

やから、苦渋の選択で待機なんや。苦渋や。


待機を決めたササラやったけど、打ち合わせから逃げ出して来た手前、そのまま戻るんわけにもいかへん。

手持ち無沙汰になってもうたササラは、闘技場で行われとったギルド対抗戦を見守っとった。



程なくして、夕食の時間も終わり、ササラの勝負の時間がやってきた。

震えて逃げ出したくなる衝動に駆られるんやけど、ササラはトウカはんに追いつくために頑張って来た一年間の努力のおかげで、グッとこらえることが出来た。

仲間の応援が詰まった手元のチョコパウンドケーキも、ササラを後押ししてくれる。

ササラはゆっくりとトウカはん達のおる控室の扉を開く。


「トウカはん、ちょっとええか?」


控室に入ると、ちょうどトウカはんが外に出ようとするとこやった。つまりトウカはんがササラの目の前。

突然の急接近に逃げ出しそうになるんやけど、ササラはグッと堪える。

急接近のトウカはんに、グッと堪えたササラやけど、直後の出来事に驚かされる。


「あん?何だ、ササラ?そんな神妙な表情を浮かべやがって。今、愛ちゃんと喧嘩してくるとこなんだから、入り口を塞ぐなよ…、って、痛い!!」


何かを言うとったトウカはんの頭に、サポーターの愛はんのチョップが刺さる。

そういえば愛はんは今日の昼過ぎの闘技場ベンチで、トウカはんがいつか倒す相手やって言うとった…けど、まさか今なん!?

あかん、愛はんを止めないと!!そう思うたササラの気持ちに反して、愛はんが追撃をすることは無かった。

それどころか、チョップされた後のトウカはんも、なぜか納得といった表情しとる。


「痛ぇな…。急になにしやがんだ、愛ちゃん…、って、そうか。おー、ササラ。どうした?一緒に飯でも食っていくか?」


トウカはんと食事!?決戦を前にして、なんて強い誘惑!!って、あかん!!ササラもう夕飯を済ましてもうた!!

やって、昼ご飯を食べて無かったんやもん。空腹の限界やったさっきまでのササラのあほう!!

…って、自分を責めてる場合やない。

今のササラには、大事な用事があるんや。荒ぶる気持ちを落ち着かせ、ゆっくりと話しを始める。


「嬉しい提案やけど、ササラはもうご飯を食べてもうたわ。それはまたの機会にさせてもらうわ。それよりも、これ。みんなで食べとくれやす。」


なんとか言葉を伝えられたササラは、ゆっくりとトウカはんの前にケーキを差し出す。

トウカはんは不思議な顔をしながらも、ササラの差し出したケーキ入り紙箱を受け取ってくれる。


「ん?これって有名な洋菓子店フランソワの人気ケーキじゃねぇか?」


「トウカはんの頬を叩いてしまったお詫びや。ササラ、言い過ぎたし、暴力はやっぱりあかんかった。ほんま堪忍な、トウカはん。」


トウカはんは変わらず首を傾げとるけど、後ろにおる美雪はん達サポーターはキラキラした目をササラに向けとる。

な、なんや?なんでそんな目で、トウカはんとササラのこと見てくるんや?

愛はんと男二人は子供を見守る母親のような温かい目で、美雪はんはササラを殺さんとする鋭い目つきでササラんことを睨んどる。

と、トウカはんに差し入れしたんが、そんなあかんことやったんか!?

美雪はんの眼光に、少しパニックになりかけとったササラ。そんなササラをトウカはんは見上げながら、失礼なことを言う。


「いや、ササラ。お前何を企んでるんだ?そんなしおらしく、敵に塩まで送って?お前のキャラじゃないだろ?え、これ毒入り?」


「毒なんて入ってへんわ!!トウカはんのあほう!!」


あかん。

美雪はんの眼光でパニックになったところへのトウカはんの失礼な言葉が合わさって、気が付いたらササラは、ぱちーん平手打ちしとった。

本日三度目の平手打ち。

やってもうたの気持ちからササラは走って逃げ出す。これも本日三度目。


こうして一年振りのトウカはんとの再会やったけど、相変わらずのポンコツ発揮で、ササラはうまく話すことが出来へんかった。

失敗ばかりの一日やったけど、一年前と違う進歩もある。


一年前には渡せへんかったケーキを、今回は渡すことが出来た。

それに、トウカはんが急接近してこなければ、普通に会話をすることも出来た。

ササラかてこの進歩が小さいことは分かうてるけど、確実な進歩は次への活力につながる。


反省も多かったけど、得るものも多かった歌姫はん護衛クエスト一日目は、こうして、終わりを迎えた。


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