異世界で冒険者をしていたら、エルフの少女が仲間入りを希望してきたので、日本式圧迫面接で対応します
前回のあらすじ:パーティ入り希望者は、王都の中央通りでエルフの姫を探す薄幸の少女サっちゃんであった。
なぜ彼女が美雪達の仲間に入りたいのか、なぜこんなに揚げ物を頼んでしまったのか、そもそもサっちゃんとは何者なのか。サっちゃんへの疑惑と、揚げ物の匂いに包まれながらの食事会が今始まる。
「それじゃ、料理も揃ったところで、サっちゃんと美雪達の交流会と、遅くなっちまったけど歌姫の護衛クエスト完遂祝い、ホワイト坊ちゃんのレベル30の壁超え祝賀会…、その他もろもろの策略を兼ねての食事会を開催します!!はい、いっただきまーす!!」
「「「いっただきまーす!!」」」
「いろいろ兼ね過ぎじゃないですか?あと、策略って不審な単語が聞こえたような…?」
私の質問を気に掛けることなく、トウカさんの言葉を皮切りに食事会は始まる。
開幕早々、両方のほっぺたをいっぱいにした愛が、トウカさんへ勝負を仕掛ける。
「おい、トウカ!!何のんびり飯を食ってんだ!!私に負けても良いってのかー!?」
「残念だったな、愛ちゃーん!今日の私は大人だし、この食事会の司会進行役だから、安い挑発にはのらないぜー!」
愛とトウカさんの大食い大会が開催されるかと思われたが、トウカさんは両腕を肩の高さ、手の平を上に向ける。相手を苛立たせる、やれやれといった表情だ。
そんなトウカさんの態度、我等が愛さんが許すはずもない。
お行儀悪く、箸の先をトウカさんに向けながら挑発を始める。
「トウカが大人!?私と同じくらいの背で大人を語るんじゃねぇ!!食べねぇと大きくねれねぇぞ!!バーカ!!チービ!!」
子供の喧嘩のような愛の挑発。さぁ、挑発にはのらないと豪語した大人のトウカさんはどうでるか。
「あぁーん!?チビって言ったなー?今までは先輩として愛ちゃんのバカな暴言を大目に見てたけどよー、チビってのは私に一番言っちゃいけないんだよ!!私がチビじゃねぇってこと教えてやるよ!!」
チビじゃねぇ、まだ成長期だ!!という言葉と共に、目の前の揚げ物の山に食らいついていくトウカさん。成長期なら愛と同じ土俵で喧嘩してもおかしくないですね。
頬をパンパンにするトウカさんに、愛さんも満足。にやりと笑って大きく口を開け、ポークカツレツにかぶりつく。
「あ、いつものが始まったな。」
「二人のこの感じ。もはや様式美ですよね。」
「トウカはん、ゆっくり噛んで食べんと、喉詰まらすで。」
「束の間の日常風景に一安心。」
「この光景が日常なんですか!?」
私もふんわりサクサクのアジフライによく似た魚のフライを堪能しながら、愛とトウカさんの大食い大会を見守る。
しかし、まだ二人に慣れていないサっちゃんは、自分の食事を忘れるほど驚いている。
こうして見ると、耳が長いエルフってこと以外は、純粋な少女のようね。悪意や敵意といったものは微塵も感じられない。
今も豆腐ハンバーグを箸で小さく切って、丁寧に小さな口に運んで、にっこりと微笑んでいる。
揚げ物にかぶりつく私達には無い、気品さと上品さ。さ、さすがエルフ…。なんか高貴。
なぜこんな子が私達のパーティに入りたいのだろう?
首を傾げながらサっちゃんの様子を確認していると、ポンと手を叩いたササラさんが話し始める。
「ほな、司会進行役を放棄したトウカはんに変わりまして、ササラが仕切らせてもらうな。まず、お互いの自己紹介から始めようかえ?」
「そ、そうですね!それでは、僭越ながら私から自己紹介をさせていただきます!!」
「ほな、サっちゃんから。どうぞ!」
ササラさんのはんなりした声の後に、慌てて立ち上がったサっちゃんは、ぺこりとお辞儀をした後、自己紹介を始める。
「今日はこのような場を設けていただきありがとうございます。私の名前は、サチウス・マルール・スフォルトゥーナといいます。」
「「「幸薄…?」」」
シリウスみたいな発音だが、どう考えても幸薄いの方の意味に聞こえる。薄幸のエルフの少女って紹介されたことあるし…。
「皆さんのそのリアクション…、よく分かります。サチウスは古代エルフ語で、健康って意味の名前なんですが、こちらの言葉では幸薄いって意味に取られますよね…。いえ、薄幸であることは否定しませんけど…。」
落ち込む薄幸のサチウス、サっちゃん。
サっちゃんにどう言葉をかけて良いか分からず困っていると、私達のパーティのムードメーカーが親指を立てて話し始める。
「サチウス、なんちゃら、なんちゃーらだかなんだか知らないけど、サっちゃんはサっちゃんでしょ!幸薄いとか、気にすんなって!私の名前は鬼火 愛!気軽に愛と呼ぶが良い!よろしくね、サっちゃん!」
「あ、はい、よろしくお願いいたします、愛さん!」
薄幸を気にして落ち込んでいたサっちゃんだが、愛の元気いっぱいの自己紹介で、パァと表情が明るくなる。
サっちゃんはサっちゃんか。
さすが愛ね。単純だからこそ、まっすぐに的を射る。
「愛は鬼火流剛術っていう、剛で全てを解決しようとする謎の武術の使い手で、私達パーティの一番槍かつ物理攻撃特化の前衛を務める女の子。常識知らずのトラブルメーカーだけど、とっても良い子だから、非常識なところは目を瞑ってね!」
「要するに脳筋バカだ。」
「脳筋って褒め言葉をくっつけても、バカは許さないぞ!!ばかトウカ!!」
「脳筋って褒め言葉でしたっけ…?」
このくらいの愛の型破りで困惑していては、私達とはやっていけないよ。
サっちゃんの修行のためにも、質問は一旦無視して自己紹介を続ける。
「私は美雪。弓弦が苗字で、名前が美雪だけど…、こっちだとミユキ・ユヅルって言うのかな?後方からの弓の攻撃が得意な後衛ってところね。よろしく!」
「常識人っぽいけど、一番やべぇ奴だから。サっちゃん、気を付けろよ。」
「一番…やべぇ奴…?」
「怖い!!え、今まで出会ったどんなモンスターより怖いんですけど!!」
「美雪はん!!それほんまにやめてぇや!!ササラ、それパニックになるんやから、ほんまにやめてな!!サっちゃんも怯えとるで!!」
おっと、おもわずスキル眼光威圧を使ってしまった。
今日初対面のサっちゃんを怯えさせてもいけない。私は常識人なんだから、常識的な対応を心がけましょう。
「次は僕ですね。僕の名前はホワイト・ヒューガルド。ちょっとした事情あって、シロ君って呼ばれてます。後方からの地属性魔法と、光魔法での支援が得意な後衛です。よろしくお願いいたします。」
「一番年下だけど、ホワイト坊ちゃんはまじの常識人だから。なにかあったらホワイト坊ちゃん頼れよー。」
「みんなと呼び方統一してください。シロでお願いします。」
「本名じゃなくて、そっちに統一すんの?んじゃ、シロ坊で。」
いや、坊を取ってほしいんですけど…って表情でシロ君は頬を膨らませてトウカさんを睨む。
しかし、トウカさんは気にかけることなく、すぐに愛との大食い合戦に戻る。
「最後は俺だな。俺の名前はユウジ・タチバナ。美雪さん、愛と同じく異世界からの転生者だ。攻撃特化すぎる美雪さんと愛を守る盾役ってところ。よろしく。」
「女好きのナンパ野郎だからサっちゃんも気を付けろよ。」
「あ、はい。知っています。少し前によくナンパしているところを見かけましたので…。」
「ユウジ、お前ファストの町に来る前は王都にいたって言ってたけど…。なるほど。」
「弁明の時間を!!弁明の時間を俺にくれ、美雪さん!!」
「ユウジうるせぇ!!私がまだ食ってる途中でしょうが!!」
愛の理不尽の怒り。
しかし、これ以上うるさくすると、愛の剛の拳が飛んでくることを知っているユウジは、反論を取り下げることしか出来ない。しょんぼりと自分の席に座る。
なんか可哀想だな。いつか、ちゃんとユウジの話を聞いてあげよう。
何もやることがなく、手持ち無沙汰を通り越して、本当に暇で暇でしょうがない、ただ時間を浪費しても良いかなって思える時にでも、聞いてあげよう。そう心に誓うのであった。
とりあえずユウジはそっとしておいて、今は大事なサっちゃんへのヒアリングに戻ろう。
「それじゃ、ここからはサっちゃんに質問をしたいんだけど良い?」
「はい!お願いします!」
笑顔で承諾するサっちゃんに対し、私は手にしていた箸を置き、眼鏡の位置を正す。
食事のために緩めていたネクタイも締め直し、サっちゃんへとまっすぐ向き直る。
今後の異世界生活を左右するかもしれない、サっちゃんのパーティ加入。
これからの質問タイムは重要だ。姿勢を正して正装で臨まなければいけない。
気持ちを、転生前の社会人時代、入社面談の面接官をした時の物に切り替えよう。
普段の業務が忙しいってのに、人事部はなぜ現場の人間に面接官をやらせようとするんだ?
現場の目で志望者を見てほしい?それ、お前ら人事部が見る目の無い能無しって言ってるのと同じだぞ。
職務放棄ですか?私達は面接が終わった後に普段の業務があるってのに、人事部は面接って仕事が終わったから先にお帰りで…。
おっと、いけない。気持ちをあの時に戻し過ぎた。あの時の文句が溢れ出してしまった。怒りは面接にとってよくない。
リラックス、リラックス。
でも、気を抜き過ぎて、面接相手に緩んだ会社だな、余裕じゃんと思われないように、程ほどの緊張感を持たないと…。
オッケー、気分が切り替わった。それではサっちゃんの面接を始めましょう。
まずは、面接官である私のプレッシャーに耐えていただきましょう。スキル眼光威圧オン。
「それでは、サっちゃん。あなたが私達のパーティ入りを志願する理由を教えてください。」
「いや、圧迫面接かよ。」
無粋なツッコミを入れるトウカさんは、睨みで黙らせる。
緊張のためか委縮するサっちゃんに、どうぞ、と一言伝え質問の回答を促す。
「はい…。信じてもらえないかもしれない…、荒唐無稽な話ですが、よろしいでしょうか…?」
「構いません。」
ふぅと一息吐くサっちゃん。きっと気持ちを落ち着けているのだろう。優しい面接官の私はサっちゃんの回答を待ちます。
「はい、すみません。私が美雪さん達のパーティに入りたい理由ですが、神からの啓示があったためです。」
「神からの啓示?詳しくお聞かせください。」
「はい。先日、ガイドさんに…」
「ガイドさんの名前は出さないようお願いいたします。」
「あ、はい。申し訳ございません。」
「いや、なんでだよ。」
無粋なツッコミをいれるユウジは、睨みで黙らせる。
話を止めてしまったサっちゃんに、どうぞ、と一言伝え回答の訂正を促す。
「先日、美雪さん達にお会いした日の夜、私の夢の中に神が現れて言ったのです。私の探し人であるエルフの姫様、ロックォーヌ・ティルノシリア様を見つけたければ、美雪達のパーティに入りなさい。さすれば、いずれエルフの姫様と会うことが出来るでしょう。そう神が言ったのです。」
「そう神が言ったのですか。私の知っている神とは話し方が違いますが、本当に神はそう言ったのでしょうか。」
「申し訳ございません。正確に再現をさせていただきます。この場に相応しくない話し方になることを、お許しください。」
一息吐いたサっちゃんは真剣な表情で、神の話し方の真似を始める。
「へいへーい、ぐっすり眠ってるところごめんだけどー、おっきてー、サチウスちゃーん!今日、美雪ちゃんと愛ちゃんに会ったと思うけどー、二人はサチウスちゃんにとってー、ちょー重要人物だよー!探し人の、エルフの姫様に会いたいならー、二人と一緒に旅することをお勧めしまーす!以上、神がお伝えしましたー!」
間延びした声での神のモノマネを終えたサっちゃんは、姿勢を正す。
「これが私が受けた神の啓示です。」
「「「間違いなくノアね。」」」
「え、神様そんな間延びした話し方なんですか…?」
転生者がサっちゃんの神の啓示を信じたところで、ノアに会ったことのないシロ君が驚きの声を上げる。
ノアの真似が恥ずかしかったのか、サっちゃんの頬はほんのり桃色に染まる。
サっちゃんが私達のパーティ入りを希望する理由が分かったが、私は彼女の人となりを知るため、質問を重ねる。
「サっちゃんの志望動機が分かりました。ただ、あなたの志望動機は私達にとって、あなたの目的のために私達のパーティを利用させてもらう、という風に受け取ることも出来ます。そちらについては、いかがお考えでしょうか。」
「やっぱり圧迫面接じゃねぇか!!」
二度目の無粋なツッコミを入れるトウカさんは、より強い睨みで黙らせる。
トウカさん、ツーアウトですよ?スリーアウトで退場なので、注意してくださいね。
あえての答えにくい質問だったが、サっちゃんはまっすぐ私を見てくる。どうぞ、と一言伝え質問の回答を促す。
「言い訳のしようがございません。私の目的のために美雪さん達のことを、利用しようといているのは間違いございませんが、私だって美雪さん達のことを、ただ利用しようとは考えておりません。私の持っている技術、能力…、なんなら金銭も使って、美雪さん達を全面支援をさせていただきます。仲間入りが認められた際には、お互いにとって良い関係を築かせていただければと考えております。」
「回答ありがとうございます。私達はサっちゃんの支援に期待をしております。それでは、次の質問に移らせていただきます。私達は今こそ王都を中心に活動しておりますが、いずれ、魔王率いる魔族と人族の戦争を止めるために旅をします。王都を離れる単身赴任はもちろんのこと、海外への出張も考えられますが、そちらについてはどう思われるでしょうか。」
「問題ございません。私はエルフの姫様が王都に行ったきり行方不明と聞いて、この王都を訪れ、姫様のことを探しております。そのため、王都に対する思い入れ等はございません。王都を離れても問題ございません。」
「それは心強いですね。それでは、どうしてサっちゃんは、そこまでしてエルフの姫様を探しているのでしょうか。」
「姫様は同族の中で迫害されていた私を、唯一認めてくれた存在だからです。私にとって恩人です。」
「迫害?離せる範囲で構いませんので、もしよろしければ話してください。」
「はい。私はエルフとしては異端児なんです。」
「異端児?詳しくお聞かせください。」
言葉の内容とは裏腹に、にこりと明るく笑うサっちゃん。
私達の困惑を気にせず、サっちゃんは話を続ける。
「エルフは妖精族として森の中など自然と協調して生きていくため、水属性か風属性の者がほとんどです。そんなエルフの中で、火属性と地属性の魔法しか使えなかった私は、エルフとして異端児だったんです。」
「生まれつき周囲の者とは異なる。そのための異端児なんですね。」
生まれながらに異常に目つきが悪く、殺し屋、ヤで始まる職業の組長の娘なんて呼ばれていた私としては、サっちゃんの境遇に共感する。
「使える魔法の属性以外にも、興味のある物も他のエルフとは違いました。他のエルフが、弓の訓練や植物の生育に興じている中、私は武器や防具の精錬といった鍛冶仕事に夢中でした。エルフと仲が悪い、ドワーフなんて揶揄されることもありました。」
明るい口調で話すサっちゃんだが、当時は辛い思いをしただろう。
なんか、こんな形で聞いてしまって申し訳ない…。変な面接を始めてしまったことに対する、私の申し訳ない気持ちに気付くことなく、サっちゃんは質問への回答を始める。
「そんな私を認めてくれたのが、私が探しているエルフの姫様なのです。姫様は、停滞を好む閉鎖的な考えのエルフに対して、以前より危機感を感じておりました。そんな姫様だからこそ、鍛冶を学ぶ異端児の私を重宝してくれたのです。姫様が私をエルフの技術職として認めてくれたことにより、私の立場は迫害される者から尊敬される者へと変わったのです。姫様は私にとって恩人です。」
「エルフの姫様はとても素敵な人なのですね。早く見つかると良いですね。」
「ありがとうございます。今まで話した理由が、私が姫様を探す理由です。」
「こちらこそ、ありがとうございます。それでは、最後の質問となります。先ほど私達の最大の目的は、魔族との戦争を止めること、とお伝えいたしましたが、この目的を達成するためなら、サっちゃんの目的よりそちらを優先することが考えられます。具体的に言うと、魔王とエルフのどちらかしか会えないという状況になったら、私達は魔王に会いにいくことを優先します。そちらについてはどう思われるでしょうか。」
「ご配慮いただき誠にありがとうございます。そのような状況になった場合、美雪さん達には誠に申し訳ございませんが、パーティを脱退させていただき、私だけでエルフの姫様を会いにいきます。美雪さん達を害するようなことは、絶対にいたしません。その代わり、美雪さん達も私の邪魔をしないようお願いいたします。」
相手に気に入られるための面談ならNGなサっちゃんの回答。
もし、ここで自分の信念より私達の目標を優先させるなんて綺麗事を言っていたら、私はサっちゃんの仲間入りは絶対に認めなかっただろう。
にこりと微笑んで、サっちゃんへ面接の終わりを告げる。
「分かりました。ありがとうございます。面接は以上となります。」
「ありがとうございました。」
私の終了宣言とともに、周囲からいくつもの溜息が聞こえてくる。緊張していた空気が和らぐのを感じる。
「お、終わったんかえ?見てたササラの方が緊張したわー。美雪はん、怖いわー…。ほんま、怖いわー…。」
「これが圧迫面接ってやつか…。社会人になるのって大変なんだな…。」
圧迫面接、圧迫面接って言ってくるけど、今回はサっちゃんの回答がしっかりしてたから、順調だった方よ?以前は、私が質問した瞬間に、その場で泣き崩れる学生もいたんだから…。
緩くなりつつある雰囲気に、私は最後の言葉を告げる。
「それでは、本日の面接結果は、後程郵送にてお送りさせていただきます。」
「いや、今日言えよ!!」
三度目のツッコミを入れるトウカさん。
トウカさん、良かったですね。スリーアウトですが、面接は終了しています。不問にします。
「後程郵送ってのは冗談ですけど、サっちゃんの仲間入りを、さすがに私の一存では決められませんからね。他の仲間の話をちゃんと聞いてから判断します。それでは、愛から順に感想をどうぞ!」
「わらひ?」
頬いっぱいにカツを詰め込んでいた愛は、ごくんと飲み込んでから回答する。
「サっちゃんの仲間入り?オッケーオッケー!鬼火流の本能で、サっちゃんは悪い奴じゃないって分かるから、オッケー!それに、もし悪い奴でも、サっちゃん弱そうだから殴り倒せる!だからオッケー!」
「ありがとうございます。殴り倒されないようにしますね…。」
まず賛成が一票。
根拠は無いけどなぜか信じられる、愛の動物的本能が、悪者じゃないって判断してるのは大きな情報ね。
「次は僕の意見ですが…、僕も賛成です。鍛冶が出来るサっちゃんが仲間入りすることは、とても有用と考えます。これから僕たちは難しいダンジョンへの挑戦が増えますが、レベルが上がる度に武器や防具を揃えようとすると、色々な店を回る必要があり、多くの時間を要してしまいます。サっちゃんが仲間になれば、素材を渡すだけで、自分達の希望に合った武器や防具を作ってもらえます。」
「なるほど。さすがシロ君ね。良い意見だわ!サっちゃん、お願いできる?」
「はい!鍛冶は大好きなので、ぜひ皆さんの武器や防具を作らせてください!その他、私に支援できることはなんでもしますので、気軽に言ってください!」
「ん?今なんでもって言った?」
「私に支援できる範囲ですよ!!」
サっちゃんのなんでも発言に目を光らす私。嫌な気配を感じ取ったのか、サっちゃんは顔を赤くして補足する。
冗談なのに、過剰な反応だなー。
「それじゃ、サっちゃんの仲間入りですが、賛成多数で認められました!サっちゃん、これからよろしくね!」
サっちゃんに笑顔で両腕を広げて歓迎を示す私だが、とある人物の待ったで止められる。
「いや、俺の意見も聞いてくんねぇ?」
「ユウジのことだから、どうせ賛成でしょ?それとも、反対なの?反対意見なら聞いてあげる。」
「いや、賛成だけどさー…。流れ的に一応聞いてくんない?賛成の理由を必死に考えてたんだけど。」
「サっちゃん、可愛い。俺、大歓迎。ってところでしょ?今、サっちゃんの仲間入りを、歓迎しようとしてるんだから、邪魔しないで。」
「あ、はい。なんかすみませんでした…。」
「よろしい。それじゃ、ちょっとサっちゃん、こっちに来て!」
席を立って、サっちゃんをちょいちょいと手招きする。
小首を傾げながらも、サっちゃんは席を立って私の前に立つ。
私は笑顔でサっちゃんへと右手を伸ばす。
「私達はサっちゃんの仲間入りを歓迎します。これからよろしくね!サっちゃん!」
「はい!仲間入りを認めてくれたこと感謝いたします。よろしくお願いいたします。」
にこりと笑ったサっちゃんはその場に片膝を付き、握手のために伸ばした私の右手を恭しく掴んで、手の甲にチュっとキスをする。
あ、文化の違い。外国の映画で見たことあるやつだ…。
突然の手の甲に伝わる柔らかい感触に、私は顔が真っ赤になるのを感じる。
「サっちゃん…、そこは握手で良いのよ?」
「あ、すみません!ついエルフ式で歓迎を祝福してしまいました!」
サっちゃんも恥ずかしくなったのか、顔が真っ赤になる。
真っ赤な顔のまま、お互い照れ笑い。どこからか「尊い…。」という呟きが聞こえたような気がしたが、気のせいだろう。無視をすることにする。
「それじゃ、サっちゃんの仲間入りを祝して、改めて乾杯をしましょう!」
「はい!ありがとうございます!」
新しく私達の仲間入りをしたサっちゃんの歓迎と交流を兼ねて、改めて食事会を開始する。
私達が転生してから今までどういう冒険をしてきたか話したり、私達へのサっちゃんからの質問に答えたり、サっちゃんにエルフの里がどういうものか聞いたりしながら、食事と談笑を楽しんだ。
その中で、ちょっとしたことが気になったので、サっちゃんに質問をしてみる。
「ちなみに、サっちゃんって何レベル?」
「えーっと…、46ですね!この前、ビリジアン等級になりました!」
「レベル33で青等級の私より、レベルも等級も高いじゃないですか、サっさん…。」
「サっさん!?」
「いや、私よりレベルも等級も高い方には敬語を使わないと失礼かなと…。」
「そんな畏まらないでください!!エルフだから年齢より幼くみえますが、皆さんより少し長く生きてるための高レベルです!!それに、寿命が長い分レベルアップのペースも遅いので、あっという間に皆さんにレベル抜かれてしまいますよ!!」
「私達より少し長く生きてる…?ちなみに聞きますが、サっさんは何歳なんですか?」
「年齢をお伝えするのは少し恥ずかしいですが…、仲間に内緒は厳禁ですよね…。あまり大きな声では言えませんが、私は236歳になります。」
「大先輩じゃないですか…サっさん…。いえ、サっ老師…。」
「サっ老師!?」
「236歳って、人間の到達できる年齢を軽く超えてるじゃないですか…。私達の十倍以上の年齢なんて、もはや老師です…。生意気なこと言って誠に申し訳ございませんでした…、サっ老師…。あ、ここ冷えますよね?毛布とかおかけしましょうか?」
「お年寄り扱いしないでください!!千歳まで生きるエルフにとっては、236歳なんてまだまだ若造なんですから!!」
こんな感じで冗談を交えながら、私達は交流を深めていく。
そんな中、愛と大食い勝負をしていたトウカさんが、急に箸を置く。お、ついにトウカさんは満腹かな?
そう思った私の予想は、意外な形で裏切られる。
「やべ、愛ちゃんとの大食いに夢中で、自己紹介を忘れてた。私はトウカ。トウカ・ヤクモ。銀琴なんて異名で知られる銅等級冒険者。演奏で仲間のステータスを上げる支援魔法が得意。よろしく。」
「いや、知ってますけど…。急にどうしたんですか?」
「ササラ・タケナカ。竹調いう異名で知られる、トウカはんと同じ銅等級冒険者どす。トウカはんと同じく演奏での支援魔法が得意やけど、ササラは相手のステータスを下げるんが得意やな。変な喋り方やけど、許してくれな。よろしおす!」
「あれ、ササラさんも自己紹介?え?え?」
「ほんで、こっちがササラん仲間の、ユリスキーはん、レズメッグァナーイはん、ユリ・シンジョウはん。ササラとあわせて、よろしおす!」
「「「よろしくお願いします!!」」」
「ササラさんの冒険者パーティ、ササラ幻樂団の皆様ですよね?いたんですね…?」
「「「はい、いました!!よろしくお願いします!!」」」
次々と行われた突然の自己紹介に驚く私達。
そんな私達の混乱などお構いなし。今までの自己紹介はこのため、と言わんばかりに、トウカさんがまとめの言葉を告げる。
「それじゃ、私達五人!美雪たちのパーティへの仲間入り、ご検討のほどよろしくお願いします!!」
「ほんま頼むわ、美雪はん!!」
「「「よろしくお願いします!!」」」
揃って頭を下げるトウカさん、ササラさん、ササラ幻樂団の三人。
まさか仲間入り希望者がサっちゃんだけじゃないなんて…。確かに一人とは言ってなかったけど…。
すでに仲間入りが決まったサっちゃんが、周囲を確認しながら慌て始める。
「え!?皆さんも仲間入り希望なんですか!?聞いてないですよ!?」
いや、どうせならサっちゃんにも話を通しておいてくださいよ…。
頭を下げる五人の冒険者に、私の頭は痛くなる。
これが最初の挨拶で言ってたトウカさんの策略か…。
面接、あと五回やらないといけないわね…。




