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魔王退治は要件定義から!  作者: 荒井清次
王都滞在編 -新しい仲間と共に王都での生活基盤を整え強くなる-
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パーティ入り希望者に会おう①

前回のあらすじ:サイクロプス討伐により、シロ君も無事にレベル30に到達。青等級レベル30以上が条件の王都のダンジョンに挑戦する権利を得た。


サイクロプスを討伐した日の夜。

私達は銀琴(ぎんごと)のヤクモこと、先輩冒険者であるトウカさん指定の飲食店を訪れていた。

様々な種族の、様々な冒険者パーティが食事をとっている中、目的のトウカさんを探す。


「ここがあの冒険者パーティ、洋食屋くろばらが運営する洋食屋ですね。」


「あの冒険者パーティ?洋食屋くろばら?」


「忘れちゃった(あい)に説明するね。洋食屋くろばらは、私達が先日受けた歌姫の護衛クエスト中に、黒薔薇剣劇団(ブラック・ローズ)とパーティ対抗戦をしてた冒険者パーティ。黒薔薇剣劇団に勝利した記念に、ブラックポークのバラ肉をふんだんに使った、ポークカツレツ定食が特別セール中なんですって。ご飯どころかポークカツレツもおかわりし放題ですって。太っ腹ね。」


「おかわりし放題!?美雪(みゆき)、私それ!!」


きらっきらの目で、メニューにでかでかと書かれた特別メニューを指差す(あい)

洋食屋くろばらの入り口の壁には、メニューの代わりに、すごく上手な料理の絵が描かれていた。おそらく、この壁画がメニュー代わりなのだろう。

精巧な料理の絵に、食欲を刺激させられる。

愛はその中の一つである特別メニューを片手で指差したまま、もう片方の手をぶんぶん振り回し、ぴょんぴょん飛び跳ねる。今日も愛は元気です。


「あーあ、我らの大食い愛さんが狙いをつけちゃったよ。洋食屋くろばら、特別セールをしたこと後悔するぞ。あ、俺はこのメンチカツ定食。」


「なるほど。メンチカツも良いわね…。あー、色々なメニューありすぎて悩む…。」


洋食屋くろばらの壁には、ユウジが選んだメンチカツなどの揚げ物の定食、大きな魚の描かれた煮魚定食や、カレーライスやラーメンのような一品物、パフェのような色とりどりのデザートなど、選り取り見取りな料理の絵が描かれている。

様々なメニューの中には、八宝菜や麻婆豆腐など、これは洋食?と思うメニューも描かれている。

洋食屋くろばらは、転生前の日本にあった、様々なメニューを出す町の定食屋のようだ。

この店なら、食に飽きることは無いだろう。良い店を見つけることが出来た!

今後、お気に入りの店になるであろう洋食屋くろばらで初めて食べるメニューは大事よね…。思い出の一品になるかもだし…。しっかり選びましょう…。


「疲れてるからガッツリしたものが良いかな…?いや、疲れてるからこそサッパリしたもの…?悩む。」


「美雪さんって食に無関心だと思ってたけど、意外とこういうの悩むんだな。」


「選択肢がこうも多すぎると、優柔不断な私は悩んじゃうのよ。意外に繊細なんだから。」


「優柔不断に…、繊細…だと…!?」


「冗談やめてよ、美雪ー!!美雪が繊細ー?あっはっはっはー!!全っ然、繊細じゃないよねー!!」


「ん?」


「あのー、皆さん。今日の目的を忘れないでくださいね。」


シロ君が言う今日の目的。

私達のパーティに入りたいっていう冒険者を、交流を兼ねての食事をしながら紹介したい。って先輩冒険者であるトウカさんに招集された。

そのため、私達はサイクロプス討伐クエストを完了した後、こうして洋食屋くろばらを訪れた。


「大丈夫、忘れてないよ。うん、大丈夫。」


「あ、トッピングも出来るのか。俺メンチカツ定食に、エビフライをトッピングで。」


「はー!?メンチカツ定食に、エビフライをトッピング!?それは重罪過ぎるでしょ!!なんでメインにメイン重ねてるのよ!!欲張りすぎ!!ユウジの癖に生意気!!」


あんまりなユウジの横暴に、私は大きな声で抗議する。

これは食にうるさい愛が黙ってないぞ…と思ったら、愛は両手を合わせてユウジにお辞儀をしていた。


「ユウジ、私のためにエビフライありがとう。」


「いや、愛のためのエビフライじゃねぇよ!!ポークカツレツ飽きてきても、エビフライ食べたら無限じゃん、って表情やめろ!!俺のエビフライだ!!やらねぇからな!!」


「なんだと、ユウジ!!それなら、エビフライのトッピングは却下な!!この草にしろ!!ユウジなんて、草で充分だ!!」


「はぁ!?草なんか食ってられっか!!エビフライのトッピングは譲らねぇぞ!!」


草食え、草食わない、草食え、草食わないで、言い合いを始める愛とユウジ。

いつものことかーと二人を無視してメニュー選びを続行しようと思ったが、重要なことに気付く。


「いや、待てユウジ。」


「いや、待たない!!今日こそ愛に説教を…って、美雪さん真剣な表情でどうした?」


「これ見て。」


「ん?って、まさか…!?」


私の指差す先のメニューを見て、ユウジも驚いた表情を浮かべる。


「愛が指さしたのは、ほうれん草みたいな味が特徴の月光草のバターソテーよ。これも普通に美味しそうじゃない?ねぇ、一皿頼んで、みんなでシェアしない?」


「ファミレスにあったな…、ほうれん草のバターソテー。絶対、美味しいやつじゃん。俺、賛成。」


「月光草のバターソテー、良いですね!今日はサイクロプス討伐の報酬で、多くのゴールドも手に入りましたし、レベル30の壁も超えられたので、少しくらい贅沢しても良いと思います!今日はお祝いにしましょう!」


「シロ君のレベル30超えおめでとうパーティね!そうしましょう!それじゃ、今日の主役のシロ君は何を頼むの?」


「僕はこのロック鳥の卵を使ったふわとろオムライスに、エビフライをトッピングします!」


「あ、メインにメインをトッピング。それ、美雪さんに怒られっぞ。」


ニヤニヤ笑いのユウジは、両手でシロ君を指差す。

シロ君を挑発するユウジに、私は注意をする。


「いや、シロ君のは普通にオッケーでしょ。ユウジ、ふざけたこと言ってシロ君を怯えさせないで。」


「なんでだよ。シロのもメインにメインのトッピングだろ。俺のメンチカツ定食にエビフライのトッピングとどう違うんだよ?」


「シロ君のはご飯であるオムライスに、おかずのエビフライをトッピング。これは普通でしょ。お前のメンチカツ定食にエビフライのトッピングはおかずにおかずのトッピング。普通じゃない。よって、却下。」


「んー、分からないでもないけど、納得いかねぇなー…。んじゃ、美雪さんは何を注文すんだよ?」


「私?結構悩んだけど、今日は魚系にしようと思う。転生しても、根っこの部分は日本人だからかな?魚が恋しい。」


「えー、魚ー?肉じゃないのー?」


私の魚の選択に、愛がむむむーっといった感じの表情に変わる。

このように肉至上主義の愛がいるため、私達の食事はいつも肉メインになる。元日本人の私としては、魚が恋しい日々である。

そんなわけで、今日は魚。メニュー内の魚定食から、今の私の気分に合うものを探す。

なにかの魚の煮魚定食に、アジフライのような絵が描かれた定食…。サンマのような魚の焼き魚定食もあるけどー…。さすがに刺身はないわね…。魚の生食は異世界では敬遠されてるのか…。

魚料理の中から、今の気分に合ったものを探す私の目は、とあるメニューで止まる。


「待たせてごめん。私も決まったわ。」


「決まりました?ちなみに、どれにするんですか?」


シロ君の言葉に続き、愛とユウジも私の頼むメニューに注目してくる。

ゆっくりと私は定食メニューの中から、ひとつの定食を指差す。


「私はこのミックスフライ定食にする。」


「トンカツ、メンチカツ、イカフライ、エビフライ、アジフライの豪華なフライがセットになった定食ねー…。おかずだらけじゃん。おかずのエレクトリカルパレードじゃん。メインにメインのトッピングどころじゃねぇぞ。美雪さん、ずっるー…。」


「ずるくないわよ。ひとつのメニューでしょ?」


「ひとつのメニューですね。エビフライをトッピングしてる僕達より少ないくらいです。ユウジ、いちゃもんはやめてください。」


「俺が悪者かよー…。納得いかねぇー…。」


「ねぇねぇ、美雪!そのミックスフライ定食に、エビフライをトッピングしよう!!」


「いや、フライが大渋滞じゃねぇか。すでにミックスフライ定食の中にエビフライあるよ。」


「いや、愛だけエビフライ無いのは可哀そうよ。私のミックスフライ定食に、エビフライをトッピングしましょう。それを愛にあげるね?」


「相変わらず愛ちゃんには激アマだな…。」


「え!?それなら私のポークカツレツ定食にもエビフライをトッピングしたい!!」


「エビフライ五本になっちゃったよー…。一人一本より多いじゃーん。絶対、店員たちに陰でエビフライ大好き集団って呼ばれるよー…。」


「そうね。それじゃあ、コロッケもトッピングして、エビフライの印象を下げましょう。あ、カラアゲも食べたい。」


「美雪さん、揚げ物多すぎない?女性にしてはパワフル過ぎない?俺のメンチカツ定食にエビフライのトッピングの比じゃないじゃん。」


「ユウジ、冒険者はいっぱい食べて体を作るのも大事なんですよ。そんなわけで、僕もコロッケをトッピングさせてください。」


「あ、私もカラアゲ追加!!陸のポークカツに、海のエビフライ、空のカラアゲで、揚げ物の陸海空を制覇だよ!!」


「うまい!それでいきましょう!」


「いや、俺ら揚げ物頼みすぎだろ。冷静になって、ちょっと揚げ物減らそう。揚げ物ドラフトしよう。」


「揚げ物ドラフト?」


「揚げ物ドラフトって何ですか?」


「みんなでせーので好きな揚げ物を指差して、被らなかったら選んだ揚げ物を食べられる。被ったらじゃんけんして、勝った者はそれを食べられる。じゃんけんに負けた者は、すでに選ばれた揚げ物以外の揚げ物から選ぶ。これを二回繰り返…。」


「そんな変なドラフトさせねぇぞ。お前ら、いい加減にしろな?」


「「「!?」」」


「おいこら、お前ら。何を楽しそうに夕食のメニュー選んでんだよ?私のこと忘れてねぇよな?」


愛と私の間にいつの間にかトウカさんが立ち、怒りの表情で私達の肩に手を置く。

私の肩をぽんぽんと叩きながら、トウカさんは下から睨んでくる。


「美雪たちが来たなー、夕食のメニュー選んでんのかー、洋食屋くろばらに来たら壁に描かれたメニューに目を奪われても仕方ないなー、少し待ってやるかー、って観察してたけどよー…。長ぇよ。エビフライをトッピングするかどうかとか、どうでも良いよ。好きな物食えよ。お前らの揚げ物論争、長ぇよ。あと、途中で私が「相変わらず愛ちゃんには激アマだな…。」って、会話に混ざったのに、なんで気付かず話を進めんだよ。止まれよ。不自然に思えよ。なに、謎の揚げ物ドラフトに突入しようとしてんだよ。私はどんな気持ちで揚げ物ドラフトに臨めば良いんだよ…っていうか、揚げ物ドラフトって何だよ。」


よっぽど怒りが溜まったのか、トウカさんの愚痴が止まらない。

そんな愚痴愚痴トウカさんの前に愛は堂々と立つ。普段から豪快な愛なら、怒れるトウカさんを前に、豪快な謝罪をしてくれるだろう。期待して私達は愛を見守る。


「長い。まとめろ、トウカ。」


私達の期待する豪快な謝罪は無かった。むしろ、火に油を注ぐような愛さんの行為。

先ほどまで長く揚げ物論争をしていた私達を棚に上げての不躾な言動に、トウカさんのおでこに怒りマークがいくつも浮かび上がる。ブチ切れだ。


「良い度胸だな、愛ちゃん。良いよ、一言にまとめてやるよ。」


ブチ切れを通り越した怒りの表情で、トウカさんは私達を睨んで、静かに怒りの言葉を告げる。


「先輩待たせて何やってんだ、お前ら?ぶち殺されてぇのか?あぁ?」


「じょ…むぐぅ。」


「「「すみませんでした。」」」


上等だ!!的なことを言おうとした愛の口を塞ぎ、私達は頭を下げる。

愛の口を塞いでいた私の手がむぐむぐと動き出す。


「なんで口を塞ぐの!?トウカの喧嘩は買わないとダメでしょ!?」


「いや、買わないとダメなこと無いでしょ!!トウカさん、ブチ切れてるでしょ!!今回悪いのは私達なんだから、ちゃんと謝罪をしなさい!!」


納得いかないといった表情の愛を、なんとか落ち着ける。

今までに見たことがないくらいブチ切れている今日のトウカさんは、今までのじゃれ合いの喧嘩では済まないだろう。

ブチ切れのトウカさんに対し、私達は冷や汗を浮かべながら頭を下げ続ける。

さぁ、どうしよう。

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