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魔王退治は要件定義から!  作者: 荒井清次
王都滞在編 -新しい仲間と共に王都での生活基盤を整え強くなる-
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【番外2-5】竹調のササラは銀琴に再会しても変わらずポンコツ

この物語は竹調のササラ目線で語られる番外編です。

本編の歌姫護衛クエストのササラ視点です。一年ぶりに銀琴と再会したササラは相変わらずのポンコツです。

話し方が安定しないエセ京都弁のササラ、銀琴竹調の百合成分に対し、不快に感じた場合は申し訳ございません。


「どないしましょー!!ラクレはん!!レトチはん!!」


ササラは相談相手のラクレはんがおる宿屋金字塔を訪れて、大声一番。

宿屋ん中におった冒険者達がポカンとしてるのを無視して、宿屋の看板娘であるラクレットチーズに、ササラは一大事が起こったことを伝える。


「一大事や!!」


「落ち着け、ポンコツササラ。」


ササラの大声に、ラクレはんの妹のレトチはんが、不名誉な異名と共に、冷ややかな目を向けて来はります。でも、負けまへん。一大事どす!


「ポンコツ言うな…、って今はそんなこと気にしとる場合やない!!一大事や!!」


「どったの、ササラ?そんなに慌てて?でも、嬉しそうだね?良いことあったの?深呼吸して落ちついてから、私に話してごらん!」


妹のレトチはんと違って、お姉ちゃんのラクレはんは優しいなぁ。落ち着いとる。


「すぅー、はぁー。」


ササラはラクレはんの言うとおりに深呼吸してから、一大事の内容を話す。


「トウカはんが戻ってきたんや!!引きこもりから復活で、またササラと対バンライブをしてくれはるんやってー!!しかも、一緒に歌姫はんの護衛クエストやって!!これは、一緒に冒険者パーティを組むための、大きな一歩やと思わへん!?」


「え、えーっと、うん、そうだね!大きな一歩だ!やったじゃん!ササラの頑張りがトウカさんに通じたんだよ!!」


「おめでと。でも、ポンコツササラには気を付けてね?」


「大丈夫や!トウカはんが引きこもってる一年間、ササラはたっくさんシミュレーションをしたんやからな!ポンコツササラが出る隙なんてあらへん!ポンコツササラは今日でお終いどす!」


ササラは両腕を突き上げて、今日の意気込みを声高らかに宣言するどす。


「見える!!見えるで、トウカはんが引き籠ってる間、甲斐甲斐しく世話しとったササラに対して、感謝でむせび泣くトウカはんの姿が!!」


「見える。見えるよ、ポンコツ発揮で感謝なんてされず、むせび泣くポンコツの姿が。」


「なんてこと言うねん!!レトチはん!!」


ササラの気合一発に、同じような言葉を使うて水を差すレトチはん。

抗議の言葉を続けよう思ったササラやけど、レトチはんの表情でササラは気付く。


「大丈夫、ササラは分かっとる。ツンデレいうやつやろ?ツンデレのレトチはんは、ササラがポンコツ発揮してまうのを心配してくれとるんやろ?大丈夫、ササラには分かっとるでー!」


「いや、そういうのじゃないよ、ポンコツ。」


「そういうのじゃないんかえ!?」


「妹のレトチは素直じゃないだけだよ。私たち姉妹は、ポン…、ササラのこと応援してるよ?がんばれ、ササラ!」


優しい笑顔で応援してくれるラクレはん。

途中でポンコツのポンまで出とったけど、そんなんどうでもえぇ。

二人の応援から、ササラは久しぶりにトウカはんに会う勇気をもろうた。


「おおきにな、ラクレはん!レトチはん!ササラ、がんばってくるわ!」


ササラの力いっぱいの宣言に、笑顔でがんばれと送り出してくれるラクレはんとレトチはん。

二人を背後に、意気揚々とササラは歌姫はんの護衛クエストの集合場所である闘技場に向かう。


意気込みいっぱいで宿屋を出たササラに、いつの間にかササラのパーティ仲間である、ユリスキーはん、レズメッグァナーイはん、ユリ・シンジョウはんが、後ろに付いとった。


「意中のトウカ様との再会に胸を弾ませるササラ様…。尊い…。」


「「尊い…。」」


三人がなんか言うとるけど、ササラは無視する。

なんせ、トウカはんとの再会やからな。しっかりシミュレーションしとかんと、ポンコツササラが出てまう。ササラ、気合いいれるで。


そういえば、普段より宿屋金字塔が静かだった気もするんやけど、トウカはんと久しぶりの再会に胸を弾ませとったササラは、深く考えんかった。

実は、宿屋金字塔をスキル眼光威圧で、恐怖と静寂の渦に包んだ犯人の女性が、これからのササラの護衛クエストの行方を大きく変えるんやけどな。

それを知るんは、もう少し先の出来事や。




「まだやろか?トウカはんはまだやろか?なぁ、トウカはんはまだかえ?」


「まだです、ササラ様。基本的にトウカ様は時間にルーズなお方なので、来るのはまだまだ先かと思われます。」


「せやか…。早くトウカはん来んかな…。」


集合場所である闘技場の控室に、集合時間の一時間前に訪れたササラは、逸る気持ちを抑えながら、トウカはんのことを待っとった。


「そわそわササラ様…。尊い…。」


「「尊い…。」」


「その尊い言うん、トウカはんの前でやったら、ササラ許さんからな?」


「「「分かりました!!我々はササラ様のために!!」」」


その感じもなんなん?思うたけど、変に暴走されてもかなわん。

トウカはんに迷惑がかからんならえぇかってことで、三人はそのままにするわ。


待つこと一時間半。

長い沈黙を破って、待ちに待った瞬間が訪れた!!

護衛クエストの依頼主ペトラはんと一緒に、愛しのトウカはんが登場や!!


トウカはんがササラの待つ控室に入室した瞬間、景色ががらりと変わった。

トウカはんの登場に、世界はほんわりピンク色に代わり、ササラの胸はとくんとくんと高鳴り、頬がぽっぽと熱くなってくる。


トウカはん、一年ぶりでも変わらず可愛いなぁ…。少しふっくらしたやろか?

仕方あらへんな、トウカはんは一年ほど運動せずに引きこもってたんやからな。

でも、少しふっくらしても、トウカはんは変わらず可愛いなぁ。むしろ、ぷっくりほっぺが愛らしいわ。

ツンツンしたい。そんなんしたらトウカはん切れるやろうけど、ササラはトウカはんのふっくらほっぺをツンツンしたい。


「私の頬が愛らしい?ツンツンしたい?ツンツンで良いのか?なんだったら、ふにふにとか、ササラの好きにしていいぜ。」


「ふにふに!?それどころか、トウカはんを、ササラの好きにしてえぇ…やと…!?」


恐る恐るササラは、トウカはんの頬に手を伸ばす。

目を閉じとるトウカはんの頬を、ササラは親指と人差し指で、優しくつまむ。

ふにぃって柔らかい感触と共に、ササラの胸の高鳴りが早まる。


「や、柔らかい…。」


「おいおい、頬の柔らかさだけで満足か?もっと柔らかいとこあるぜ?」


トウカはんはササラの手を取り、自分の胸の位置へと持っていく。

小さめな体のトウカはんやけど、小さくない部分がある。トウカはんの大きく膨らんだ双丘の間に包まれたササラの手を、むにゅうと至高の柔らかさが包む。


「トウカはん!?」


「どうだ、柔らかいだろ?」


「や、柔らかい…!けど、なんなん!?なんで、急に!?どうしたん、トウカはん!?」


「うるせぇ、ササラ。ちょっと黙れ。黙って、私の鼓動を聞け。」


暴力的な柔らかさに包まれとったササラの手に、トウカはんの鼓動が伝わってくる。

とくんとくんと高鳴るトウカはんの鼓動は、ササラの胸の高鳴りにも負けんくらいやった。


「私だって緊張してるんだ。ササラ以外に触らせたことないしな。」


「はえ?なんで、突然…?」


「あ?鈍いやつだな。私がここまでするってどういうことか…。察しろ、ばかササラ。」


そう言うて真っ赤なトウカはんの顔が近づき、ササラはこれ以上反論が出来んくなった。


「と、トウカはん…。そ、そんな…、ササラ、あ、あかん…。」


「ササラ様、妄想中失礼いたします。少しよろしいですか?」


「トウカはん…、そ、そこは…って、はえ?」


まさにササラの秘境に到達しようとしとったトウカはんは突然消え、目の前でユリスキーはんが手を振っとった。

ん?あれ、トウカはんはどこにいったしまったん?って、まさか…?


さっきまでのトウカはんはササラの妄想!?

あまりにも可愛すぎるトウカはんに、ササラは妄想が溢れ出して、トウカはんの幻想を作ってしもうたいうんか!?

あかん、久しぶりの生トウカはんは、ササラには刺激が強すぎる!!妄想を誘発するほどや!!

表情を引き締めるんや!!そういないと、緩み切った笑顔になってまう!!

むむむーっとササラは、表情と覚悟を引き締める。

そんな表情を引き締めていたササラの肩を、ユリはんがポンポン叩きながら声をかけてくる。なんやろ、変に驚いた顔をしとる。


「ササラ様…、あ、あの方は…?トウカ様に続いて、見知らぬ方々が…。」


「あの方?なんや…?って、はえ?」


ササラの耳元で呟いたユリスキーはんの声に確認すると、トウカはんに続いて、四人の男女が控室に入ってきおった。


「はえ?トウカはんの後ろにいるんは誰や?見たことあらへんけど…?なんなん!?」


ササラの質問に答えたんは、レズメッグァナーイはんやった。


「あの四人は少し前に王都に来た冒険者達です。確か青等級と黒等級が半々の低級冒険者パーティのはずです。なぜトウカ様と一緒にいるかは分かりませんが…。上級冒険者のトウカ様と一緒に来たということは、あの方々はトウカ様のサポーターと推測いたします。」


「サポーター…なぁ…。」


サポーター。

低級冒険者や中級冒険者が、上級冒険者のサポートをするって制度だったはず。


「つまり、あの四人は、トウカはんと、冒険者として、肩を並べとる、いうことかえ…?」


「はい、そうなります…って、冒険者としてトウカ様と肩を並べるってのは、ササラ様の夢!?」


そうや。

ササラの夢は、トウカはんと一緒に冒険すること。

そのために、ササラはトウカはんが引きこもっとる一年間、無我夢中で経験値を積んだんや。

トウカはんと同じ銅等級にもなった。苦労して、並び立つ条件は満たしたはずや。


「なんで、ぽっと出の冒険者達に、先にササラの夢を叶えられなあかんねん。たとえサポーターって立場でも、許せへん。ちょっと、ササラ行ってくるわ。」


気が付いたら、ササラは立ち上がっとった。

イライラした気持ちを隠せへんまま、ササラはトウカはん達の元へ向かいます。

長い黒髪を後ろで縛った、細身のスーツ眼鏡の女性がササラに気付く。身のこなしや体重移動、どれをとっても素人のそれ。なんや、全然弱そうやん。

ちょっと目つきが怖いけど、大したことないな。あくまでもトウカはんのサポーターってわけやな。


ササラは女性冒険者に余裕たっぷりで、にこりと微笑んだ後、トウカはんの前に立つ。

なんなん、このサポーター達は!?と糾弾しそうになる気持ちを落ち着けながら、トウカはんへと声をかける。


「珍しい方がおるなぁと思うたら、トウカはんかえ?遅かったどすなぁ。道草でも食べとったんかえ?それとも、また引きこもってたんかえ?引きこもりのトウカはん?」


ん?あれ、ササラは久しぶりに会うて嬉しいって気持ちを伝えようとしとったんに、なんで喧嘩腰になってまうん?

一時間半も心待ちにしとったのに、見知らぬサポーターと一緒に来たことへの怒り。

そこに、久しぶりにトウカはんに会うての緊張が重なったんやろか…。

気付いたら喧嘩腰でトウカはんに話しかけとった。


「うげ、ササラ…!!」


ササラの喧嘩腰の挨拶に、トウカはんの、げっ…!?も、うげ、に進化してもうてる…。

久しぶりの再会やのに、なんでこうなってまうん?

いや、まだや。まだ取り戻せる。

喧嘩したいんやないってことを伝えるため、笑顔を浮かべながら、トウカはんに向き直ります。


「トウカはん。久しぶりにササラの顔見て、うげ、とは失礼ではおまへんかぁ?長いこと引きこもっとったことで、失礼さに磨きがかかったんかえ?」


「引きこもり、引きこもりって、人が気にしてることを、ずけずけ言いやがって…。」


「ササラは事実を言ってるだけどす。悪いのは、約一年もの間、引きこもって腐ってたトウカはんどすえ?腐ってたトウカはんは屋外で日干しをして、殺菌をしてきた方がえぇと思うで?良く効く防腐剤、買うて来まほうか?」


あれ?あかん、久しぶりのトウカはん過ぎて、喧嘩腰になってまう。

ササラは喧嘩するん気ないんやけど、なんでや?

もしかしなくても、トウカはんの後ろにおるサポーターが原因かえ?

活発そうな女の子、利発そうな美少年、ワイルド系の大男といった、個性豊かな美男美女のサポーターたちが、ササラの嫉妬心を刺激しとるんか!?

嫉妬しての喧嘩腰かえ?あかん、落ち着くんや!!ササラ、暴走したらあかん!!

やけど、ササラが落ち着くのを、トウカはんは待ってくれへんかった。


「あ?喧嘩売ってるなら、買うぞ?」


怒りマークいっぱいでササラを睨むトウカはん。

完全に怒うとるやん…。怒うとるトウカはんの顔もすごい可愛いんやけどな…。

トウカはんの怒りを鎮めようと慌てとったササラやけど、ササラの思考は180度変わる。


どうせササラはうまく話せへんのや。

喧嘩しとった方がトウカはんと話すことが出来るんやないか?

しかも、喧嘩という形でもトウカはんと戦えれば、この一年でのササラの実力アップを知ってもらえる。

うん、完璧な作戦や。


「特売中どすえ。買うてくれはりますか?」


「あ?」


「え?」


睨み合うトウカはんとササラ。

歌姫の控室は緊張感に包まれるんやけど、トウカはんは室内での喧嘩はしない。

すぐに外に出ろって提案してくるはずや。

そしたら、ササラはトウカはんに、この一年の成果を知ってもらえるんや。

そんなササラと、外に出ろ言う三秒前のトウカはんに、とある人物が近づいてくる。


「はい、そこまで。二人は今回の護衛クエストの要なんですから、仲良くしてくださいね。」


「「痛い!!」」


トウカはんとササラそれぞれの頭に、ビシッとチョップをお見舞いしたんは、歌姫はんのマネージャーであるペトラはんやった。

護衛クエストの依頼主であるペトラはんは、護衛クエストを前に喧嘩寸前やったトウカはんとササラを止めたんやな…。そのためのチョップやんな…。

うぅ…、ペトラはんのチョップは、スキル痛撃がのっとるから、普通に痛い…。

痛みに悶えるトウカはんとササラを無視して、眼鏡をくいっと上げたペトラはんは、周囲を見回しとる。ペトラはんは護衛クエストを受領する冒険者パーティが全員いることを確認したんやな。

ペトラはんは眼鏡をくいっと上げた後、ゆっくりと話し始める。


「皆様お揃いのようですので、これから護衛クエストについて説明をさせていただきますが、その前に、各パーティの代表から自己紹介を兼ねて挨拶をいただきましょう。トウカとササラは、二人仲良く頭を押さえているので、冒険団モブからお願いします。」


モブ達の自己紹介の内容は、正直どうでもえぇから割愛。

次はササラの自己紹介の番やな。

大人数の前で話すんは、あまり得意じゃないササラやけど、トウカはんの前で無様なところは見せられへん。

気持ちを落ち着けながら、ササラはゆっくりと上品に立ち上がる。


「ササラは、ササラ幻樂団の代表を務めてはります、竹調のササラこと、ササラ・タケナカいいます。銅級冒険者をしてはります。ササラは、竹で作られた楽器を奏でることで、敵の能力を大きく下げることが得意どす。皆はん、よろしおすなぁ。」


うん、完璧な自己紹介や!

さらっとトウカはんに銅等級になったことと、得意な魔法のアピールをすることが出来た!

完璧な自己紹介に満足しとったササラやけど、ササラの自己紹介に続いて聞こえてきた大声に、ササラは驚かされる。


「「「我々はササラ様のために!!」」」


なんや、急に大声出して!!びっくりするやろ!!

ほら、トウカはんのサポーターの眼鏡女子も驚いて、トウカはんに確認しとるやん。


ササラのパーティ仲間について説明してくれてるんやろうけど、妙に仲良く話しとるな。あん眼鏡。

嫉妬心から眼鏡を睨んどったら、トウカはんが勢いよく立ち上がる。

天使も羨むような笑顔を浮かべたトウカはんは、腰に両手を当てて、堂々と自己紹介を始める。


「私は銀琴のヤクモこと、トウカ・ヤクモだ!!ササラと同じく銅級冒険者!!銀で作られた楽器を奏でることで、味方の能力を大きく上げることが得意だ!!私はパーティ未所属だから、人手を出せなくて申し訳ないなぁと思ってたけど、今回は知り合いの冒険者パーティにサポートを依頼した!!まだ、等級が低い冒険者の集まりだからノーネームだけど、四人とも実力は私が保証する。よろしくな!ほら、美雪達も!」


「「「よろしくお願いします!」」」


ミユキ?トウカはんの隣にいる眼鏡か?あんサポーターはんは、ミユキいうんか。覚えたわ。

しかし、さっきから仲良さげやな…。

これは、トウカはんとミユキはんが、どこでどう出会って、現状に至るんかを確認しないとあかんな。

ササラがそんなことを決意しとったところで、ペトラはんが護衛クエストの説明を始める。


「クエストを受けてくれた皆様の自己紹介が終わったところで、私から今回の護衛クエストについて、説明をさせていただきます。各パーティへ個別に事前説明はさせていただきましたが、今回の護衛クエストの護衛対象は、王都の歌姫ことミラウェルと、彼女の専属のピアニストであるレイヤとなります。彼女達が出演するライブイベントまでの五日間、凶悪な誘拐団である黒い羽根から二人を守り抜いて欲しい、というのが今回のクエストの肝になります。」


トウカはんとの初めての共同クエスト。

大事な大事なクエストの内容を、ササラはうんうんと頷きながら聞く。

ササラや他の冒険者たちが、うんうんと頷いとることに気分が良くなったんか、ペトラはんは饒舌に説明を続ける。


「この闘技場は、昼間は冒険者達の対抗戦など、イベントが行われているため、人の出入りも多いです。本来なら安全なところに歌姫達はいるべきですが、私達はライブイベントの準備やリハーサルのため、この闘技場にいなければいけません。その隙を黒い羽根は狙ってくることでしょう。皆様には、その脅威から、歌姫達を守ってください。」


「「「分かりました。」」」


ペトラはんの説明に、各々の声が重なる。

その声に満足だったんか、眼鏡をくいっと上げたペトラはんは、トウカはんとササラに向き直る。


「トウカとササラ、あなた達はライブイベントの中で出番があるから、一緒に打ち合わせに参加しながらミラウェルとレイヤを側で護衛してください。」


「りょーかい。」


トウカはんと当分の間、一緒に過ごせる。

こ、この数日は忘れられない期間になるかもしれへんな…。

トウカはんとササラ二人の関係を、大きく変える転換期なるかもしれへんな…。

ササラは高鳴る胸を抑えながら、感情を抑えてペトラはんに返事をする。


「かまへんで。」



こうして始まった歌姫の護衛クエスト兼ねてのライブイベントの打ち合わせやけど、まずは昼ごはんを食べることになった。

それぞれの冒険者パーティは、ペトラはんが用意してくれた弁当を食べとったんやけど、ササラは弁当を置いて、立ち上がります。


「あれ、ササラ様お弁当食べないんですか?」


「みんなで分けて食べてくれて構へんで。ササラには確認しなきゃあかんことがあんねん。」


昼食よりも大事なことを確認するため、ササラは闘技場の観客席に向かう。

ササラが会いたかった目的の人物は、二人揃って観客席に座っとった。

護衛クエスト中やのに、のんびりお昼ご飯を食べながら二人で話しとる。

なんでこんないい加減な冒険者が、トウカはんのサポーターしとるねん。

ササラはどんなに実力をつけても一緒に冒険できないのに…。嫉妬心から、二人を睨んでまう。


ササラが睨むんは、トウカはんのサポーターの眼鏡少女と活発少女。

二人の話を盗み聞きすると、眼鏡少女は美雪(みゆき)、活発少女は(あい)いうんやな。

美雪はんと愛はん。ササラのライバルになるかもしれへん二人。

ササラが二人に会うんは、トウカはんの関係を聞くため。トウカはんとの関係をはっきりさせへんと、護衛クエストに集中できへん。


やから、昼食も取らずに二人のもとを訪れたんや。

でも、なんて声かけたらえぇやろ?いざ二人を目の前にすると、奥ゆかしいササラは躊躇ってまう。

話す口実を考えとったササラやけど、目の前の少女は待ってくれへんかった。


「!?」


愛はんが急に勢いよく後ろを振り返る。ワンテンポ遅れて、美雪はんも振り返る。

予想外のタイミングでの顔合わせに慌てながらも、ひとまずササラは二人へ注意をすることにする。


「お二人はん、サボるのはあかんとちゃいますか?」


「サボってないよ!!でも、トウカには言わないで!!」


トウカ?呼び捨てなん?親密なん?

混乱しとるササラに、何度も愛はんはサボってたこと言わないでーとお願いしてくる。

いや、トウカはんのサポーターは観客席でサボってたでー、なんて言えへんやろ。告げ口なんて陰気臭いこと、トウカはん嫌いやからな。

それに、久しぶりのトウカはんとの再会で浮かれとる今日のササラは、トウカはんと話そうとしたらポンコツになってまうこと間違い無しや。

そんなササラの悩みも知らんで、わぁわぁ言う愛はんを落ち着かせるためにも、ササラは呟きます。


「大丈夫どす。ササラ、告げ口なんてしまへん。ササラ、トウカはんとなるべく話したくないもん。」


護衛クエストは五日間。刺激の強い久しぶりのトウカはんとは、なるべく今日は会いたくない。徐々に慣らす時間がほしい。

そう思ってのササラの言葉なんやけど…。なんや、美雪はんが同情いっぱいの顔でササラを見てくる。

なんかササラ変なこと言うたやろか?

不思議に感じながらも、ササラは二人に、トウカはんとのことを確認することにする。


「お前はんら、確かトウカはんのサポーターの…、美雪と愛やったか?護衛をサボってはるんなら、少しササラに時間をもらえないやろか?」


少し不自然やったやろうか?

心配になったササラやけど、活発な愛はんは、無邪気な笑顔でササラの提案を承諾してくれた。


「サボってたわけじゃないけど、良いよー!ちょうどサンドイッチも食べ終わったとこだしー!!」


「おおきに。ほな、美雪はんの隣に失礼するな?」


「あ、どうぞ。」


なんや値踏みするような表情で、ササラを見てくる美雪。

控室で会うた時の第一印象は、大したことないやった美雪はんやけど、只者じゃないかもしれん。

美雪はんはササラの思惑に気付いとるんやろか?

内心冷や冷やしながらも、ササラはこのまま行くしかあらへん。

誤魔化すためにも、にこりと微笑み、美雪はんの隣に座る。

なんやろ、美雪はんの観察するような視線は…?しかし、美雪はんの視線って、殺し屋みたいで怖いな…。人間の目つきってこんなに怖くなれるんか?

なんなん?ほんまに同じ日本からの転生者かえ?平和な日本で育った日本人が、こんな目つき悪くなるやろか?おかしない?

あかん、怖いんやけど…。目つきの悪さもそうやけど、全てを見透かしてくる感じが怖いんやけど…。

ササラよりも二つ以上等級が低いはずの美雪はんに、ササラは恐怖を覚えてまう。

ほんなら、下手な小細工は無しや。

ササラは胸張って、本来の目的の達成に動くことにする。


「トウカはん、ササラのことを何か言うてはりまへんでしたか?」


「トウカ?トウカなら…、むぎゅう。」


真っ先に答えようとする愛はんの口を、美雪はんが片手で塞ぐ。

どうしたんやろ?疑問いっぱいのササラを無視して、二人は相談し始める。

なんや、ササラの思惑がバレてしもうたんやろか…?不安いっぱいのササラを無視して、二人は相談を続ける。

程無くして、愛はんが親指を立てながら、ササラの質問に対する回答をしてくれる。


「トウカはササラのこと、なーんにも言ってなかったよー!すっこしも話題に出なかったー!あ、ササラと一緒なの?そっか。くらい!」


ががーん!!しょっくー!!ササラ、大しょーっく!!

え!?トウカはんの、ササラに対する扱い、そんなんなん!?無やん!!モブたちと一緒やん!!

ショックのあまり、ササラは思わずぽろりと本音がこぼれてまう…。


「せやか…。トウカはん、ササラのこと何も言うてなかったんかえ…。」


ショックから立ち直れないササラは、美雪はん、愛はんの後輩冒険者の前やけど、本音がぽろぽろこぼれてまう。


「トウカはんは一年近く引きこもりをしてて…、その間に色々とササラは頑張ったってのに…、トウカはんは何も言うて無かったんどすか…。トウカはんが引きこもって投げ出したクエストとか、ササラが代わりに受けて事無きを得たり、放っておいたら何も食べないで引きこもるトウカはんに、ササラは甲斐甲斐しく差し入れをしたりしたってのに…、何も言うて無かったんどすか?えぇ身分やなぁ、トウカはんは。」


後輩冒険者の前でも、ササラは子供みたいに、ぶすーっと頬を膨らませてまう。

そんなササラに気を遣うてくれたんか、美雪はんが笑顔でフォローをしてくれる。

あまりの目つきの悪さに、笑顔でも怖い美雪はんやけど、慌ててフォローをする様子は好感が持てる。

ササラは黙って美雪はんのフォローの言葉を待つ。


「ササラさん。トウカさんは私だけに耳打ちしてくれたんですけど、トウカさんはササラさんのことを、こう言ってました。」


「トウカはんがササラのことを?どう言うてたん?」


「ササラさんは、トウカさんと違って周囲への気配りが出来て、すごく素敵な女性だと褒めてましたよ?トウカさんが引き籠っている間、ササラさんが色々としてくれていたことも気付いていて、感謝の言葉を言ってました!」


トウカはんが!?ササラを、素敵な女性!?はえ!?

あかん、フォローと分かってても、顔がほころんでまう!!

一瞬、喜んでしまったササラやけど、美雪はんのフォローやってことを思い出して冷静さを取り戻す。


「トウカはんがそんなこと言うわけないやん。さっきのササラの言葉に、気を遣ってくれたのは分かるけど、トウカはんがそんなこと言わないこと、ササラよく知っとるで。」


ササラの言葉に、慌て始める美雪はん。

やっぱりさっきの言葉はフォローやったんな…。分かってたとはいえ、どこかで本当にトウカはんが言うてたんやないか、と希望を持ってしもうてた自分が恥ずかしい。

恥ずかしさを悟られんように、ササラは美雪はんへと質問をする。


「まぁ、えぇわ。ここにいないトウカはんを非難しても仕方あらへん。それよりも、トウカはんと美雪はん達が出会った時の話を聞かせてくれへんか?トウカはんが引きこもりから復帰したと思うたら、知らへん四人をサポーターとして連れて来たんや。ササラとしては警戒してまうやろ?」


本題に戻ろうと思うたササラの質問に、美雪はんは緊張感を強める。

なんや?どうしたんやろ?

少し警戒した様子で、美雪はんはトウカはんと出会うたきっかけや、今回の護衛クエストにサポーターとして参加するようになった経緯を話し始める。


美雪はんの説明を聞き終えたササラは、うんうんと頷きながら、今までの話をまとめます。


「ファストの町のダンジョンで、トウカはんと冒険者フィーネはんに助けられたと。それから、トウカはんは先輩冒険者として、美雪はん達に優しくしてると。さすが、世話焼きでお節介なトウカはんやな。お優しいこって。尊敬してまうわ。」


ダンジョンで助けられて、それから色々と優しくされとる美雪はん達。

同じくダンジョンで助けられたササラは、トウカはんと一緒に冒険するために悪戦苦闘しとるいうんに、美雪はんたちは何もせんでも、運命的にトウカはんに世話焼かれてるんか…。

嫉妬心にかられたササラは、思わず呟いてまう。


「ササラやって、トウカはんに助けられたもん…!」


あかん、低級冒険者の美雪たちに文句を言うても、ササラがカッコ悪いだけや。

ぶすーっとしてる場合やあらへん。上級冒険者として、余裕を見せたらなあかん。ふーっと一息吐いたササラは、にこりと微笑む。

もう遠回しな質問はやめや。開き直って、直球勝負や。


「美雪はんと愛はんは、トウカはんのことどう思っとるんどすか?」


直球ストレート。美雪はん達がトウカはんのことをどう思うとるか確認や。

ここで、美雪はんか愛はんが、トウカはんのことを大好きー言うても、ササラは負けへん。トウカはんのためなら、差し違えても構へん。

その覚悟で、ササラは美雪はん達にトウカはんのことをどう思うとるか質問をしたんや。


「トウカさんのことどう思ってるか?…んー、愛はどう?」


「トウカはいつか倒す相手!トウカは鬼火流剛術(おにびりゅうごうじゅつ)を小馬鹿にしてるからね!いつか見返す!!」


ぐっと拳をササラに向ける愛はん。

いや、なんなん!?この子!?

トウカはん大好きー、的なことを言われても困ったけど、こんな戦意漲った回答されても困るんやけど!!

なんなん!?トウカはん、味方のサポーターからも恨まれてるん!?

以前から、トウカはんのことは基本的に失礼で傍若無人と思うとったんやけど、こんなに敵意を向けられる程なんか!?

心配になったササラは、愛はんを優しく諭すことにする。


「そうどすか…。トウカはんのこと、殺してしもうてはあかんからな?」


活発な少女やなーと思うとった愛はんやけど、活発どころやない。

喧嘩っ早いトウカはんに負けないくらいの、喧嘩っ早さや。

愛はんに警戒しとったところで、美雪はんが優しく言葉をかけてくれはります。

殺し屋のような怖さを感じた美雪はんやけど、意外と気遣いとかが出来る人なんやろか?


「トウカさんは、すごく面倒見の良い先輩冒険者です。乱暴な言葉遣いが目立ちますが、初級冒険者である私達のことを気にかけてくれています。とても頼りになる先輩です!」


美雪はんのトウカはん評価に、ササラはどきりとする。

美雪はんのこの言い方…、まさかトウカはんに惚れとる?

ササラん中で美雪はんへの警戒心が強まる。やけど、後輩冒険者に嫉妬しとるなんてかっこ悪い姿は見せられへん。気丈に振る舞って、なんもないように、美雪はんへと強気に回答する。


「あのトウカはんが?ふーん、そうかえ。ほー、そうなんかえ。」


なんやササラの表情を伺ってくる美雪はん。強がりがバレたんやろか…?

美雪はんの異常な眼力に睨まれながら、場は緊張感に包まれる。


「!?」


緊張感の中、愛はんが急にササラの背後に視線を向ける。

ん?どうしたんやろ?

さっきもササラの接近に気付いた愛はんやけど、今回も誰かが接近したんやろか?愛はんに遅れながらササラも振り返ると、そこには愛しのトウカはんが立っとった。


「おい、ササラ。そろそろ歌姫達のリハーサル始まるぞ。私のサポーター達で遊ぶのは程ほどにしてくれよ。」


「トウカはん!?」


急にトウカはん!!しかも、ササラを探してくれてたんか!?

嬉しいっ!!ササラ、めっちゃ嬉しい!!そんで、トウカはん可愛い!!

って思うとる場合やない。ポンコツササラにならんようにせなあかん!!

ばっと勢いよく立ち上がったササラは、トウカはんの目の前に立つ。まずは、トウカはんに何かを言わなあかん!!


「トウカはん!!急にササラの背後に立たんでくれへんか!!」


急な出来事でパニックになったササラは、ひとまずパニックの原因のトウカはんへ抗議の大声を上げとった。ササラの大声に、ぴくっと驚いたトウカはんは、片手で耳を抑えながら、抗議をしてくる。


「驚かせて悪いけど、そんな大声を耳元で出すなよー。」


片耳を塞ぎ、片目をつぶりながら、強気な表情のトウカはん。

いや、可愛いなぁ。

耳にふぅって息かけたら、こんなん表情になるんかな?頬を赤くしての、キッとした目がたまらん…。

って、あかん!!トウカはんのあまりの可愛さに妄想モードに突入しとる場合やない!!

すぐに返答をするんや!!


「驚いてへん!!トウカはんに驚いてなんかないんやから!!あほう!!」


「阿呆ってなんだよ!!さっきの喧嘩の続きなら買うぞ!!」


思わず出たササラの抗議の言葉に、トウカはんはぐいっと顔を近付かせる。


ササラの目の前が真っ暗になった。


はえ?今、ササラは気を失ってたんか?

突然のトウカはんの急接近に、ち、ちゅう、されるんやないか、思うたササラは、許容値を振り切って少し気を失っとった。

一気に、恥ずかしさが込み上げてきたササラは、思わずトウカはんをキッと睨みはります。


「近いねん!!あほう!!」


「痛いっ!?」


やってもうた!!あかん、沸点越えてまう思うた時には遅かった。ササラは目の前のトウカはんの頬に、バチーンと平手打ちをしとった。

勢いよく振り抜いたササラの平手打ちに対し、なぜか愛はんはグッと親指を立てる。


「見事なビンタだね!」


いや、そんな良くやったみたいな雰囲気出されても、困るんやけど!!ササラは本望やないねん!!

パニックにパニックを重ねたササラは、込み上げてくる手の痛みもあって、トウカはんに抗議をしてまう。


「痛っ…。トウカはん、無駄にレベル高いから、叩いたササラの手も痛いわ!!あほう!!トウカはんのあほう!!」


見事な逆ギレを繰り出したササラは、捨て台詞と共に走り出しとった。

トウカはんから見えへんところに移動したササラは、やってもうたーと膝を抱えて座り込む。

なんで久しぶりの再会なのに、こうなってまうん…?

一年経って、イメージ訓練をいっぱい積み重ねても、相変わらずササラはポンコツササラやった。

どんなに実力をつけても、ポンコツササラはトウカはんの横に並ぶことは出来へん。


自己嫌悪と後悔でうつむいとったササラやけど、いつの間にか三人が近づいとることに気付く。


「見とったんかえ?ササラ今日もポンコツやった…。」


落ち込んどったササラに近付いてきたんは、ユリスキーはん、レズメッグァナーイはん、ユリ・シンジョウはんやった。


「ササラ様、本日もトウカ様との尊きやり取りを、我々に与えていただき誠にありがとうございました。眼福ほくほくでした。」


「良かったな。でも、今はそっとしといてくれへんか?ササラ、今は落ち込んどるねん。」


「大丈夫です。我々に秘策ありです。これから、準備に取り掛かりますので、少々お待ちください。」


「私達でこれから秘策の準備してー…、夜には準備出来ますね!少々お待ちください!」


「秘策?三人の自信たっぷりの感じが怖いんやけど、なんなん?」


なぜか自信たっぷりの三人に、ササラは首を傾げる。

不安な気持ちでのササラの確認に、ユリスキーはんが自信満々で答える。


「チョコパウンドケーキ作戦のリベンジです!」


「チョコパウンドケーキ作戦のリベンジ?」


ユリスキーはんが言うチョコパウンドケーキ作戦いうたら、多分あれやろな。

洋菓子店フランソワのチョコパウンドケーキをトウカはんが好き言うんを聞いて、ササラが一年前にトウカはんとの対バンライブ後に謝罪もかねて差し入れをしようとしたやつや。


「チョコパウンドケーキ作戦か…。一年前のあん時は、トウカはんが帰ってもうて失敗に終わったんやけど、今回も失敗してまうんやない?」


「ご安心ください、ササラ様。今回はライブイベントの打ち合わせは夜に行われます。つまり、トウカ様が先に帰ってしまうことはございません。サポーターの方々もいますので、みなさまでどうぞ、という形での差し入れが出来ます。」


「ほう…。確実に渡せる上に、不自然さが無いな。良い案やん。」


「はい、我々三人で考えた万全の作戦です。これからなんとかして我々で洋菓子店フランソワのチョコパウンドケーキを入手しますので、トウカ様はお待ちください。」


「洋菓子店フランソワのチョコパウンドケーキって、朝一で並んで、やっと手に入るかどうかやなかったかえ?入手できるんかえ?」


洋菓子店フランソワのチョコパウンドケーキは、転生者のなんとかいうパティシエが、異世界の食材をふんだんに使うて、地球のスイーツを再現した、この世界にない極上のスイーツ。

異世界の食材を使うとるからか、地球に無い深い味わいと食感を出しとり、ササラがいる王都で爆発的な人気を出しとった。

王族ん中の、なんとかいう姫様も好物で、王族御用達いう噂もある。

そんな激レアなスイーツが簡単に手に入るわけないやろ、いうササラの質問やったけど、レズメッグァナーイはんは自身満々の表情で笑うて答える。


「ご安心ください。私の貴族という立場を利用しても入手する所存です。」


「いや、レズメッグァナーイはん、貴族やったんか?初耳なんやけど。貴族がなんでササラとトウカはんの恋を応援してるねん。」


「尊いからです。」


「尊いから…。って理由になってへんで…。いつも言うんやけど、なんなん、その尊いって?」


「ササラ様とトウカ様二人のことです。」


「いや、説明になってへんよな?」


「尊いは尊いです。この世の真理です。」


「いや、だから説明になってへんよ。気軽に変な真理作らん方がえぇで?」


「いえ、今の私にとって一番大切なものは、ササラ様とトウカ様の尊さを見守ることです。私にとっては真理で間違いありません。」


やから、その尊さって何やねんって話しやん。レズメッグァナーイはんとの会話は成り立たんな…。

どうしよう思うとったササラに、ユリはんが話しかけます。


「ご安心ください、ササラ様!レズメッグァナーイさんの貴族の力と、私の転生者としてのコネ、ユリスキーさんの…。あ、ユリスキーさんは今回出番無いですね。無能なユリスキーさん以外の、私達が出来る手段すべてを使って、必ず洋菓子店フランソワのチョコパウンドケーキを手に入れてみせます!」


「ユリスキーはんの力も使うてあげてな?へこんどるやん、ユリスキーはん。」


「大丈夫です。ユリさんの言っていることは間違いではありません。前衛の防御職として、高等級な冒険者に並ぶほどの実力を持つ私でも、ササラ様とトウカ様の恋路の前には、無力で無能です。」


「ユリはん、ユリスキーはんが冒険者としての実力を誇示しとるで。無能言われたこと気にしてもうてるやん…。大丈夫やよ、ユリスキーはん。ユリスキーはんがササラの能力上げてくれるんに、一番貢献してくれてるん、ササラ知っとるで。ササラいつも感謝しとるで。おおきにな。やから、元気出しいや?」


ユリはんの無能発言を心配してのササラの質問やったけど、ユリスキーはんの顔が真っ赤になる。

そんな真っ赤な顔のユリスキーはんを、レズメッグァナーイはんとユリ・シンジョウはんが睨みつける。


「んぅ!!申し訳ございません、取り乱しました。私、ユリスキーも二人の何かしらの力になります。我々三人で必ず洋菓子店フランソワのチョコパウンドケーキを手に入れてみせますので、少々お待ちください。」


「ササラ様は我々のことなど気にせず、どしっとお待ちください。」


「大船にのった気持ちで、ササラ様はトウカ様とのリハーサルを堪能してください!トウカ様の素敵スメルをくんかくんかしちゃってください!」


「はえ!?くんかくんか!?確かにトウカはんは良い匂いがするんやけど…、って、ササラくんかくんかなんてせぇへんで!!そんなん、変態やん!!」


ササラの反論に、三人はにこりと微笑む。

え、なんなん、その優しい笑みは?まるで、我々は分かってますよ、みたいな笑みやん。え、ササラ変態なん?ちゃうよな?

混乱しとったササラを無視して、三人はぺこりと頭を下げる。


「それでは、私達は失礼いたします。」


そう言うて三人は、ササラの前から走り去ってもうた。

大丈夫やろか…?不安や…。

でも、今のササラには何も出来ることがあらへん。

なにせ、ササラは一年間のイメージトレーニングや実力アップを経ても、トウカはんに久しぶりに再会したら、変わらずポンコツササラなんやからな…。


自分のポンコツっぷりに落ち込みながらも、反対にササラの胸が高まってくるんを感じる。

これからの数日。ササラはトウカはんと一緒に過ごせるんや。

この共同クエスト内で、ササラはトウカはんに実力を知ってもらうんや。

二人の距離を縮めるんや。小さくぐっと握り拳を作うて、気合いを入れます。


「ササラさん、こんなところにいたんですね。打ち合わせを始めますので、闘技場内、私の控室へお願いします。」


決意を固めとったササラに話しかけてくるんは、ペトラはん。

ササラはにこりと笑うて頷いて、ペトラはんの後に続く。

こうして、波乱いっぱいのササラとトウカはんの歌姫護衛クエストは始まったんや。

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