【番外2-4】竹調のササラは銀琴が引き籠ってポンコツ通い妻になる
この物語は竹調のササラ目線で語られる番外編です。
「【幕間】姫騎士、ダンジョンへ不法侵入する」に繋がる部分であり、銀琴や姫騎士が美雪たちに出会うきっかけとなる部分です。
もはや京都弁ではないササラ弁、銀琴竹調の百合成分の多さ、ササラのポンコツに対し、不快に感じた場合は申し訳ございません。
まだ陽の光も出ていない真っ暗闇ん中、ササラはとある家を訪れた。
小さい子なら、走って逃げてまうような不気味な家。何度も訪れとる家やけど、ほんま不気味な家やな。
童話なら老齢の悪い魔女が出てくるんちゃうか?って雰囲気の古びた木の扉を、ササラは覚悟を決めて、こんこん叩く。
「はーい、どなたー?こんな早朝にー?って、やっぱりササラちゃんか。おはよう。」
中から現れたんは、魔女ではなく、妖艶な魅力たっぷりの妙齢のエルフの女性やった。
本名も年齢も不明で、ポーションの調合師いう謎の職業の、怪しい雰囲気満載の彼女。ササラが彼女の家を訪れたんは理由があります。
「毎日すんまへん…。寝てたやろか?かんにんな?」
「いや、大丈夫。気にしないで。ちょうど引きこもりの様子を見に行こうと思ってたとこだから。ほら、上がって。」
ササラが訪問したんは、トウカはんの自宅の管理人。
ここに来る前にトウカはんの自宅を訪れたんやけど、自宅を固く閉ざして引きこもったトウカはんは、ササラの呼び声に答えてくれへんかった。
だから、ササラはトウカはんが家を借りとる管理人を訪れたんや。
トウカはんの師匠が亡くなったあの日。
ダンジョンの前でトウカはんと別れてから、ほぼ一月が経っとった。
その間、トウカはんは自宅から一歩も外に出て来んくなった。あの日以来、トウカはんは自宅に引きこもってしもうたんや。
一歩も家から出てこんくなったトウカはんに対して、ササラは毎日後悔の日々。
トウカはんの師匠である老騎士が亡くなったあの日。ササラがトウカはんにかけた言葉は、大きな間違いやった。
大事な師匠が亡くなったんは自分のせい。そう苦悩するトウカはんに、ササラはもっと気の利いた言葉をかけられなかったんやろか。
なんやねん、がんばれ!って?後で知ったんやけど、がんばれって言葉は、心が辛い人にかけちゃいけない言葉やった。
心が辛い人は、がんばって無理しとることが多い。がんばれ!いう言葉は、そんながんばってる人を無理に追い詰めてまう言葉なんや。
そんな言葉を、ササラはトウカはんに言うてしまった。
ポンコツササラになって良い場面やなかった。
ササラはトウカはんを追い詰めてしもうた。
そんでトウカはんは引き籠ってしもうた。ササラのせいや。
「今日の用事もそれ?」
後悔の念が押し寄せとったササラに、管理人はんが声をかけるどす。
管理人はんは困った表情で、ササラが手に持つ籠を指差しとる。
「そうどす。毎日で申し訳ないんやけど、今日もトウカはんに食事を持って来はりました。トウカはんの部屋の前に置いてくれへんやろか?」
トウカはんが引きこもってから、ササラはこうして食事を毎日三食分、管理人はん経由でトウカはんに届けとった。
あの日、何も出来なかったお詫びってのもあるんやけど、それだけやない。
ササラはトウカはんが辛い時に、ただ黙って待ってるなんて出来へんねん。
居ても立っても居られないねん。何かしなきゃいう感情が押し寄せてくるんや。
何かササラに出来ることがあるんやないか?引きこもってて、お腹空かないやろか?そう考えたササラは、こうして弁当を作って届けることにしたんや。
「今日もいっぱい持って来たわね?あ、昨日持ってきてくれた弁当箱は洗って、そこに置いてあるわ。いつもどおり、綺麗に食べきってるわよ。」
「そうなんか。昨日も残さず食べてくれたんか。」
「引きこもってても、ちゃんとお腹は減るのね。今日も残さず食べてくれるかな?」
「今日も綺麗に食べきってくれると、ササラは嬉しいな…。」
トウカはんがササラの用意した弁当を全部食べてくれとる。そのことを管理人はんから聞いて、ササラは自然と笑顔になってまう。
空っぽになった昨日の弁当箱を片付けとったササラに、管理人はんは笑いかけます。
「ねぇ、ササラちゃん。可愛らしいお手々をそんなに絆創膏だらけにしてまで、なんであの子のためにそこまで尽くすの?」
ばっと自分の腕を隠しながら、ササラは管理人はんの質問に答えます。
「そ、そんなん、前にダンジョンでトウカはんと師匠はんに助けてもろうたからに決まっとるやろ?だから、恩返しや!それだけや!!」
「ほんとにそれだけ?」
まるでササラのことを試すように、口元に笑みを浮かべながら、首を傾げる管理人はん。
「いけずなこと言うなや…、管理人はん…。」
「ふふふ。ササラちゃんの返答次第では、このお弁当は私が食べちゃうわよ?」
「本当にいけずやな…。分かった。分かりました。ササラは好きな人…、大好きなトウカはんの力になりたいんや。ササラはトウカはんのこと、だ、大好きやからな…。これで、満足どすか?」
「大満足♪」
妙齢な女性の割に、たまにこうしてササラの恋心をからかって、子供みたいな笑顔を見せるんや、この人は。
毎日のように、このやり取りしとるんやけど、やっぱり声に出すんは恥ずかしい…。
顔真っ赤で抗議的な視線を向けるササラに、ご機嫌な管理人はんは、自分の作業机をガサゴソし始めます。急にどうしたんやろ?
「これ、あげる。使いなさい。」
管理人はんは、作業机から取り出した小さな瓶を、ぽーんとササラに投げてきます。
危なげなく瓶を受け取ったササラは、瓶の中身を確認します。
「なんどす?この白いトロトロした液体?」
「私特性の怪我を治すポーション。その怪我だらけのお手々に、塗りなさい。」
「急になんなん?」
「トウカのために節約するのも良いけど、ポーションくらいは自分のために使いなさい。手を怪我したままダンジョンに潜ったら、いざという時に力を出せないわよ?」
管理人はんの言葉に、ササラは慌てて自分の手を後ろに隠します。
「ほんと、ササラちゃんって可愛い♪」
「ちゃうねん!決して慣れない料理で、指のケガが絶えないってわけじゃないねん!ちゃうねんけど、管理人はん!!ササラのことを見透かしてニヤニヤ笑うのやめてくれへんやろか!?」
真っ赤な顔で否定するササラに、楽しそうに笑う管理人。
いつも管理人はんには、トウカはんのことでからかわれてまうな。
にやにや笑う管理人はんと、やんややんや言い争いをしとったところで、溜息を吐いた管理人はんは、妖艶に首を傾げながら、ササラに質問をしてきます。
「ササラちゃんは、今日もダンジョンに行くの?」
「当たり前やん。管理人はん、ササラは冒険者や。ダンジョン潜ってお金を稼がんと、生活できへん。」
「そうしてダンジョンで稼いだお金を、健気に引きこもりのトウカちゃんに貢ぐのね?ササラちゃん、それ世間でなんて言うか知ってる?」
「なんなん?」
「通い妻♪」
管理人はんの言葉に、みるみるササラの顔が赤く熱くなってくるんを感じる。
ササラは慌てて、否定します。
「か、通い妻!?な、なにを言うとんの、管理人はん!?ササラが、トウカはんの通い妻!?つ、妻!?トウカはんとササラの関係は、まだそんなんちゃうで!!」
「あら、そうなの?こんなに毎日尽くしてるから、ササラちゃんとトウカちゃんは、そういう関係だと思ったんだけどなー?」
「ちゃ、ちゃうで!!そんなん言うたら、トウカはんに怒られてしまうわ!!一方的どす!!ササラが勝手にやってることどす!!好きで、ササラが勝手にやってることや!!」
「好きで、勝手にねー♪ササラちゃんがトウカちゃんのことを好き好き大好き、ってのは何度も聞いてるけど、こうはっきりと言われると、さすがの管理人さんも照れちゃうわね♪」
ほくほくいう感じの管理人はんの表情に、ササラは真っ赤な顔のまま、頬を膨らませて、抗議の感情を伝えます。
ぷくーっと怒っとったササラやけど、管理人はんのさっきの通い妻の意味を考えます。
通い妻というのは、必要に応じて夫のところに通う妻のこと。
毎日の食事を持って、トウカはんを訪れるササラは、トウカはんいう夫?に対しての、妻いうても過言やないん、か…?
「で、でも、トウカはんとササラってそういう関係に見えるんか?そ、その、トウカはんの妻って感じなん?ササラって?」
「トウカちゃんは元気でサバサバでわがままだから、男の子っぽいよね。転生者ってみんなそんな感じなのかなっーて思ってたけど、ササラちゃんはすごい女の子っぽいよね。バランス的に、トウカちゃんが夫で、ササラちゃんは妻って感じは否定できないわ♪」
「トウカはんが夫で、ササラは妻?そ、それって、す、すごい、素敵やんなぁ…。通い妻、悪くないかもしれんなぁ…。」
めくるめくトウカはんとの夫婦生活の妄想を始めたササラに、管理人はんはニヤリと笑いながら一言呟く。
「ポンコツ通い妻♪」
「ぽ、ポンコツ!?普通の通い妻でえぇやん!!なんで、ポンコツつけたん!?」
「さすポン♪まじポン♪」
「なんで、その言葉知ってるねん!?って、ラクレットチーズやな!?あん双子め!!お金が貯まってきたササラが、宿屋金字塔から一軒家に移動したら、トウカはんに伝わらない範囲のササラの知り合いに、さすポン広めてくれて…!!なんなんなー!?」
「サラサラササラー、ポンコツササラー♪ポンポンポンコツ、ポンコツササラー♪」
「音程にのせて、変な歌作るのやめてくれへんやろか!?」
今日も管理人はんとやんややんや言い争います。
ササラを楽しそうにからかう管理人はんに、やがてササラも諦めて、力無く笑うだけになってまう。
まったくなんなん、管理人はー?って気持ちで、管理人はんの家を後にし、ササラは今日もダンジョンに向かう。
ダンジョンへの道中、ササラは管理人はんにもろうたポーション片手に、さっきまでのやり取りを思い出す。
「ほんま仕方ない人やな。管理人はんは。」
管理人との、あほうなやり取りに、自然と頬が緩むのを感じる。
やけど、管理人はんがササラのことをからかってるだけじゃないいうこと、ササラは知っとる。
ふざけて、からかっているように見える管理人やけど、トウカはんが引きこもったことに責任感を感じ、焦っとったササラを、笑顔にしようとしてくれてるんや。
特性ポーションくれたんもそうやけど、言葉のあちこちにササラを心配してくれてるんが感じられる。
現に、管理人はんにトウカはんの弁当を預けた後は、今日もがんばろういう気持ちでいっぱいになるんや。
ありがたいことやな、と管理人はんに感謝をしながら、ササラはダンジョンに向かいます。
いつかトウカはんの横に並んで立てるように。
トウカはんと並び立てるくらいの実力をつけられるように。
でも、ダンジョンに向かう目的はそれだけやない。
「トウカはんの分も、ササラはがんばらなあかんからな。」
トウカはんの師匠はんが亡くなったあの日、トウカはんが言うた言葉。
「ササラが私の代わりにがんばってくれよ。」
その言葉に答えるため、ササラはがんばらなあかん。強くなる決意を胸に、ササラは今日もダンジョンに向かいます。
トウカはんの食事を作る、トウカはんに食事を届ける、ダンジョンかクエストで無我夢中の戦闘、手に入れた素材を売って翌日の食材を買う。そんで寝る。
その頃のササラの生活サイクルは、そういう風に回っとった。
正直、辛い日も多かった。
ダンジョンでボスモンスターに挑んだ日は、トウカはんの食事も、出来合いの物で構わないんやないか思うた。
でも、トウカはんも師匠を亡くして辛いはずや。
そう思うと、ササラは頑張れた。楽しよういう考えは、トウカはんのことを考えたら吹き飛んだ。
恋心は人を動かすパワーになるんや。
トウカはんへの恋心をエネルギーに変えて、ササラはモンスターと戦い続けることが出来たんや。
そんな生活を続け取ったら、いつの間にか、ササラは王都の中で竹調のササラいう異名で呼ばれるようにもなっとった。
銅等級への昇級も見えてきとって、引きこもっとるトウカはんとの差は縮まるばかり。
でも、異名がつく、王都で冒険者として認められるんは、ササラにとってあくまでも通過点。
ササラが目指すんは、最低でも、今のトウカはんと同じ銅等級。
トウカはんが復活をしたら、いつでも一緒にパーティを組めるように、トウカはんに並び立つ程の実力をつけるんや。
その一心で、ササラは無我夢中で頑張っとった。
でも、頑張るだけじゃあかんかった。
そのことをササラが知ったのは、トウカはんが引きこもってほぼ一年が経った頃や。
その日のササラは浮かれとった。
浮かれとった理由は、銅等級冒険者で見事な成績を収め、昇級したからや。
これで等級って意味では、トウカはんに並び立つことが出来た。
あとはトウカはんが復活するだけや、そうすればトウカはんと冒険するいうササラの夢が叶うんや。
そう思っとったササラの考えは甘かった。激甘やった。
「はえ?トウカはんが、ササラの弁当を残した?」
銅等級に昇級した報告を、そのままの足で管理人はんに伝えよう思うたササラを襲ったんは、衝撃的な事実やった。
ササラの弁当が美味しくなかったんか?そう考えたんやけど、一年近く毎日弁当を作っとったササラの料理の腕前は確かなもんになっとった。
しかも、今日の弁当はいつもより時間かけて作った、特性の弁当や。自分でも朝に少し頂いたんやけど、味は絶品やった。
銅等級への昇級試験のため、勝負に勝ついうゲン担ぎで作った、特製カツ弁当。
トウカはんの大好物いうシルバーブルの肉を使い、いつもより気合を込めて作った特製カツ弁当は、朝昼ふたつ分、どれも半分以上が残っとった。
「ま、まさか、トウカはん…。ついに思い詰めてしまったんか…!!老騎士はんの後を追おうとしとるんか!?こ、こうしてる場合や、あらへん!!管理人はん!!ササラ、ちょっと行ってくるわ!!」
「ササラちゃん!?弁当残したのは、別のりゆ…、あぁ、行っちゃった…。」
管理人はんが何か言うとるけど、最悪の想像をしてしまったササラは、気が付いたら管理人はんの家を飛び出しとった。
こんな時に頼れる人は一人しかおらん。
王族騎士団の四騎士に並ぶ、王都最強と名高いめちゃくちゃな冒険者。
めちゃくちゃ強いのに、それを誇示することなく、王都の民のために採算度外視で、民を救っていく最優の冒険者。
幸いなことに、その冒険者は、トウカはんとササラの共通の知り合い。
彼女なら、この一大事もなんとかなるかもしれへん。
ササラは彼女を探して、王都の中を走り回った。
「やぁ、ササラちゃん。そんなに慌てて、いったいどうしたんだい?」
「祝福の…なんとかはん?今は話してる暇ないねん!!フィーネはんを探さないとあかんねん!!」
「冒険者フィーネ?彼女なら、裁判所に行くのを見かけたけど…。」
「ほんまか!?おおきに!!祝福の、なんとかー!!」
「僕の名前は祝福の、マーシーって…。行ってしまったね…。きっと、彼女にも急ぐ理由があるんだろう。彼女にしゅ…。」
名前は忘れてもうたし、なんか話してたんも途中で聞こえんくなったけど、祝福のなんとか、いう予想外の人物から、フィーネはんに関する予想外に有用な情報を得ることが出来た!!
ササラはフィーネはんに会うため、裁判所へと全力疾走で向こうた。
「フィーネはん!!」
「あ、ササラさん!お久しぶりです!」
祝福のなんとかの情報通り、冒険者フィーネはんは裁判所の中におった。
なんや紙の束を持って、大人しい見た目の女性と話しとった。お取込み中っぽいけど、今は一大事やから、ササラは止まらん。
「挨拶しとる場合ちゃうねん…。やっと見つけた、フィーネはん…。なんで、こんなとこにおんねん…。ササラは運動が苦手やねんから、あんまり走らせんといてや…。」
ササラは冒険者フィーネに少し文句を言いながら、呼吸を落ち着ける。
なにせ王都の中を走り回ったからな…。スタミナのステータスが低いササラにとっては、なかなかの重労働や…。くたくたの、へとへとや…。
深呼吸しとったササラに、フィーネはんは少し困った顔で、変なことを言い始めた。
「冒険者フィーネ?私は姫騎士なんですが?」
なに言うとんの、フィーネはん?姫騎士?姫騎士いうたら、会うたことは無いけど、王属騎士団の四騎士の一人やん。
でも、目の前にいるんは、どう見てもフィーネはん。ほんまなに言うとんの?フィーネはん?
「姫騎士?そういえば、なんで今日は騎士の服なんて着とるん、フィーネはん?」
「最近、王都で噂の冒険者フィーネではありませんよ?私は、姫騎士です!」
「姫騎士?なに言うてんの、フィーネはん?って、いつもの奇行なん?それなら、仕方ないな…。フィーネはんの奇行は今に始まったことやないもんな。」
「姫…、あ、いえ。すみません。はい、そうです。私が冒険者フィーネです…。」
「何を言うとんの、フィーネはん?当たり前やろ…って、今はそれどころやないねん!フィーネはんが王都に戻って来たと聞いて、助けてもらいたいことがあんねん!ササラの話を聞いてや!」
なんや複雑な表情のフィーネはん。
どうしたんやろ?人が大事な話をしてるんやから、ちゃんと聞いてや。
フィーネはんの表情は無視して、ササラは今日ここに訪れた理由、トウカはんが師匠の後を追おうとしてるんやないか、ってことを説明した。
慌てとったササラの話は、滅茶苦茶やったかもしれん。
でも、フィーネはんは黙って、うんうんと聞いてくれはった。ほんま頼りになる女性や。
ササラの話をゆっくり聞いてくれとったフィーネはんやけど、話が伝わったんか、こくりと頷いた後、勢いよく部屋から飛び出す。
すごい勢いやな、全然目で追えへんかったわ…と思ってたとこで、フィーネはんが戻ってくる。
最初に話しとった大人しい見た目の女性とササラに、口早に要件を伝える。
「ササラさん!トウカさんは私がなんとかします!!ヤマーサさん!!塔崩し…、ユキオの裁判は腑に落ちないことが多いです!!私の名前で、再審要求をお願いします!!」
「分かりましたが…、どこに行かれるのです!?」
「ちょっと、野暮用ってのが出来ました!!少し、王都を留守にします!!」
「んえ!?姫様!!明日は大事な式典があるんですよね!?それなのに、どこに行こうとしてるんですか!?って、速いなー…。」
あっという間に、トウカはんは目の前から消えとった。
めちゃ強なトウカはんが動いてくれたんや。これで、なんとかなるかもしれん…。
んー…。
なんとなく、嫌な予感がするわ…。
なんやろ?ササラがフィーネはんを頼ったんやけど、なんとなく嫌ーな予感がするねんな…。
走り出したフィーネはんに遅れること数分。
自分の直感を信じたササラは、トウカはんの家の前におった。
そこで、ササラが見たんは、予想外の光景やった。
「はえ?なんで、トウカはんの家、全部の扉が壊れとるん…?」
ササラが見たんは、トウカはんが引きこもってた思われる部屋まで、全ての扉が壊されたトウカはんの家やった。
誰が扉を壊したかなんて、少し考えれば分かる。
「フィーネはん、何しとんの…?」
もちろんフィーネはんからの返答は無い。
誰もいなくなったトウカはんの家を前に、ササラは途方に暮れるしかなかった。
ちなみに…、この事件の発端である、トウカはんが亡くなった師匠はんの後を追うために弁当を残した件なんやけど…。
トウカはんは師匠の後を追おうとして弁当を残したんちゃうねん…。
ササラが悪かったねん…。今回もササラはポンコツササラやったねん…。
後に、冒険者フィーネ銀琴襲撃事件なんて呼ばれる事件は、ササラのポンコツが原因で起きてしもうたんや。
ササラが銅等級冒険者への昇級試験のため、ゲン担ぎで用意した特性カツ弁当。
毎日残さず弁当食べとったトウカはんが残したことで、師匠の後を追おうとしたんやないかー、とササラが誤解した特性カツ弁当。
そう、特性カツ弁当。これが全ての原因やった。
トウカはんが弁当を残したんは、シンプルにお腹いっぱいやったから。
引きこもって寝てるだけのトウカはんに、朝からカツを食えいうんは酷やったんな。そら残すわ。
自分でパニックの原因作って、勝手にパニックになっとったんやな…、ササラ…。
自分で自分のポンコツっぷりに驚かされるわ…。
でも、今回のポンコツは、ササラ的にはえぇポンコツやったと思う。
結果的には、かなり荒療治になってしもうたんやけど、トウカはんの引きこもりを終わらせることが出来たんやからな!
たまには、ササラのポンコツも役立つんやな!ナイスポンコツ!略して、ナイポン!
「ポンコツ棚に上げて、ポンコツが笑ってる。まじ厄介。」
「レトチはん!!」
今回の顛末を話した、宿屋金字塔のラクレットチーズ二人からの、じとーっとした目に耐える。
え、えぇんや!トウカはんが引きこもりから復活したんやからな!!ナイポーン!!




