【幕間】ショタコンはショタをもてなす準備をする
「ゲホゲホ。うー、喉が痛い。でも、シロきゅんと一緒に特別席でミラウェルのコンサートを見るため、もう少しの我慢です。この日のため、私は今回のミラウェルのコンサートイベントの準備は張り切ったんですから!」
喉の痛みに耐えながら、闘技場の特別席を飾り付けしていきます。
冒険者ギルドで初めて会った冒険者のシロきゅん。天使が地上に舞い降りたのかと錯覚するほどの、超美形ショタでした。
ショタコンな私の好みど真ん中のシロきゅんは、一瞬で私の心を射止めました。シロきゅんは、私の理想のショタです。理想ショタです。
「王都に住む貴族達が求めるほどの人気席である、この特別席!!ミラウェルのマネージャーというポジションをフルに活用して、シロきゅんのために特別に確保させてもらいました!!完全個室、ライブ会場正面、の最高の席!!友人であるフィーネの名前まで借りて、愛しのシロきゅんのためだけに用意しましだ!!ゲホゲホ!!うー、喉痛い。」
あまりテンションを上げると、喉に響くわね…。
早まる気持ちは仕方ないことだけど、気持ちを落ち着けなくては…。眼鏡をくいっと上げて、気持ちを落ち着かせます。
「あ、そうだ!あれの準備をしなきゃ!」
私は机の上に置かれた、今日の為に特別に用意した、有名な洋菓子店フランソワのケーキを確認します。
「私とシロきゅんが出会った運命の日、ちょうどフランソワのケーキを食べる機会があったのだけど、その時に私は気付いたわ!シロきゅん達のリーダー的な存在のトウカが食べていたチョコパウンドケーキを、シロきゅんが羨ましそうに眺めているのを!!トウカが大好物って言ったから遠慮して譲ったのだろうけど、ショタコンの目は誤魔化せないわよ!あ、シロきゅん、チョコレート好きなんだー…って、理解した私は、シロきゅんのために、大好きなチョコパウンドケーキを用意したわ!!ゲホゲホ!!うー、喉痛い。」
痛む喉を抑えながら、チョコパウンドケーキを確認。その時、私は大事なことを見落としていたことに気付きました。
「チョコパウンドケーキ、シロきゅんの小さいお口には、ちょっと大きいわ!!ミラウェルのコンサートを見ながら食べるなら、片手で食べられるサイズの方が好まれる!!でも、このチョコパウンドケーキは、少し大きい!!これじゃ、食べづらいわ!!」
思い立ったら即行動でう。マグカから愛用の黒曜石製のオブシディアンナイフを取り出し、チョコパウンドケーキを細長く、スティック状に切り分けていきます。
チョコパウンドケーキを大きな口を開けて頬張るシロきゅんも可愛いだろうな、なんて考えながら、ショタの口の大きさに合うサイズへ切り分けます。
「うん、バッチリ!これなら、小さなシロきゅんのお口にも入るわね!」
全ての準備が揃ったところで、眼鏡をくいっと上げます。
「問題はどうやってシロきゅんを、この特別席に誘うかね…。いくら歌姫のコンサートを、最高の席で、最高のおもてなしと一緒に見れると言っても、男女二人っきりだと、さすがに警戒されちゃうかな…?」
シロきゅんは理知系ショタ。
無邪気系のショタならノー警戒で万事オッケーだが、理知系ショタは警戒力が高い。これは作戦を練らないといけません。
「まぁ、その時はこれね!」
私はマグカから、とある液体が入った瓶を取り出します。
これは、ヒュプノスの涙。どんなモンスターでも、どんな屈強な冒険者でも昏睡状態に陥らせる、状態異常誘発アイテムです。
昏睡させるだけでなく、直前の記憶を少し奪う便利アイテムです。
「理想のショタに強く拒否されたら、ショタコンの私は耐えられない。ってことで、シロきゅんに拒否された時には、これを使って、疲れで眠っちゃったってことにしましょう!」
全ての準備を終えた私は、喉の痛みに耐えながら、シロきゅんの待つトウカの控室へと移動します。
シロきゅん、喜んでくれるといいなぁ。
「え!?歌姫のコンサートを、最高の席で見れるんですか!?うわぁ、すごい!!ありがとうございます!!ぜひ、ご一緒させてください!」
ヒュプノスの涙なんて、いりませんでした。
天使のシロきゅんは、私の心配なんて無に帰すような最高の笑顔で、私の提案を受け入れてくれます。あぁ、シロきゅん、まじ天使。
「あ、でも、美雪さん達と離れるのは、護衛クエスト的には問題ですよね…。」
「大丈夫!冒険団モブ達が、モブスくんのリベンジに奮起してるし、ササラ幻樂団の方々も、主人であるササラさんに良いとこ見せようと燃えています。シロくんの他の仲間も、後で特別席に来るから、先に特別席に行きまじょ…、ゴホゴホ!」
「あー、喉を痛めてるんですから、無理をしないでください!分かりました!それでは、特別席に案内をしてください!」
「特別席だけじゃなく、フランソワのチョコパウンドケーキも用意しています。シロくん、この間、食べたそうにしてましだよね?ゲホゲホ。」
「気付かれていましたか!?うー、気付かれてたのは、恥ずかしいところですが…、正直とても嬉しいです!ありがとうございます!」
恥ずかしさ由来のほっぺたの赤みで、にこりと微笑みながらお礼を言うシロきゅん。
あぁ、シロきゅん、まじ天使。
「おい、美雪さんが言ってた持ち場を離れちゃダメだろ…、って、ぐぅ…。」
「え、ユウジ、どうしたんですか!?急にぐっすり夢の中です!!」
「護衛クエストでの疲れが、急に押し寄せて来たのでしょう。間違いありません。ぐっすり眠ってることですし、控室で大人しく眠らせておきましょう。シロ君、少しだけ手伝ってもらえますか?」
「あ、はい!」
先ほどいりませんでしたと言ったヒュプノスの涙ですが、前言撤回です。
邪魔ものを眠らせるのに大活躍。昏睡状態で崩れ落ちたユウジを、シロきゅんと一緒に、そっと控室の大きな椅子に横たわらせます。シロきゅんとの初めての共同作業…!!
初めての共同作業を終え、シロきゅんと一緒に私は胸を弾ませながら特別席へ移動します。これから、シロきゅんとの二人っきりのスィートタイムです!
シロきゅんと私の愛の巣である特別席までの道は、私の従魔であるミノちゃんが守ってくれています。美雪さんや愛ちゃんでも、簡単には突破できないでしょう。思う存分、シロきゅんとの時間を堪能できます。
「シロきゅんとの時間を堪能できると思っでだけど、疲れがたまってたのかな?まだ始まってないのに、シロきゅん、ぐっすり。」
歌姫の護衛クエスト五日間、サボって闘技場でのイベントを観戦していた美雪さんと愛ちゃんとは異なり、シロきゅんは真面目に闘技場の観戦席を歩き回り、危険が無いかを確認していました。
「ふふふ、寝顔もすごく可愛い。シロきゅん、まじ天使。ゲホゲホ。おっと、咳に気をつけなきゃ。天使の安眠を邪魔してしまう。」
小さく体力が無いショタなら、疲れから眠っちゃても仕方ありません。
シロきゅんの体が冷えないように、マグカから取り出した毛布をかけてあげます。最上級のホワイトゴートの毛で作られた毛布です。ショタを包むのは、優しく柔らかい物でなければいけません。
「しかし、今晩は少し冷えますね。仕方ありません。ローブを羽織りましょう。」
マグカからシロきゅんに初めて出会った時のローブを取り出します。これなら、夜の冷え込みにも耐えられるでしょう。
「さて、コンサートイベントが始まるまで、シロきゅんの寝顔を堪能しますか!すぐ食べられるように、チョコパウンドケーキも傍に置いて…。ふふふ、シロきゅん、まじ天使。ゲホゲホ。うー、喉痛い…。」
この時の浮かれポンチな私は、この直後に起こる、様々な勘違いが織り交ざった事件が待っているなど、微塵も知りませんでした。
美雪さんが特別席に現れ、爆発魔法で私を吹き飛ばすまで、あと数分。




