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魔王退治は要件定義から!  作者: 荒井清次
王都挑戦編 -所持金すべて失い歌姫を護衛する-
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守れ!歌姫!護衛クエストで等級アップだ!③

前回のあらすじ:護衛クエストのサポートを受領することを決めた美雪(みゆき)達。しかし、同時護衛の相手に対して、露骨に嫌な顔をするサポート主のトウカさんに、美雪達は不安を感じる。


王都で受けられるお尋ね者クエストを受領した私達は、冒険者ギルドの入り口でペトラさんと合流し、コンサート会場へと向かう。

そんな中、ぶすーっとした表情を浮かべる、銀琴(ぎんごと)のヤクモことトウカさんは、怒りの表情を歌姫のマネージャーであるペトラさんに向ける。


「おい、ペトラ。ササラも一緒に護衛クエストなんて聞いてないぞ…。」


歌姫の護衛クエストに、竹調(たけしらべ)のササラ率いるササラ幻樂団(げんがくだん)が加わると聞いて、トウカさんはお怒りのようだ。

そんなトウカさんの怒りなど気にすることも無く、ペトラさんは眼鏡をくいっと上げながら、話し始める。


「王都の至宝である歌姫の護衛ですよ?成功率を少しでもあげようとするのは、当然のことです。」


「それにしても、ササラかよぉ…。モブ達はどうでも良いけど、よりによってササラかよぉ…。美雪達にサポートを依頼した手前、今更クエスト受注を取り下げることも出来ないしよぉ…。あー、ササラか…。会いたくねぇな…。」


「トウカさんがあんなに嫌がるなんて…。シロ君、竹調のササラって、そんなにヤバい人なの?」


あまりにもなトウカさんの様子に、竹調のササラがどのような人物なのかシロ君に確認する。首を傾げながらシロ君は回答する。


「僕も会ったことが無いですが、竹調のササラと言ったら上品で物腰柔らかな美女で有名です。なぜ、あんなにトウカさんが邪険にするのかが分かりません…。」


「上品で物腰柔らかな美女ね…。」


竹調のササラについて、シロ君から聞いた内容を反復しながら、目の前のトウカさんとの出会いから今日までを思い出す。

ファストの町のダンジョンで、愛と喧嘩と言っても過言でない早朝トレーニングをするトウカさん。

ダンジョン攻略報酬の確認中に、私にサングラスをかけて爆笑するトウカさん。

私のスキル眼光威圧に対して恐慌状態になり、泣き叫ぶ愛を生贄に捧げるトウカさん。


「ん?どうした、美雪?私の顔をまじまじと見て?大丈夫、ササラのことは確かに嫌いだけど、護衛クエストに支障が出ないようにするからよ!!」


姉御肌気質で、乱暴な言葉遣いのトウカさん。ササラさんは、上品で物腰柔らかな美女。ふむふむ。


「なるほど。」


「おいこら、美雪。その「なるほど」には、どんな意味が込められてるのか聞かせてもらおうか?」


掴みかかろうとするトウカさんを誤魔化してたところで、(あい)が元気いっぱいトウカさんに質問する。


「なぁなぁ、トウカ!!その竹調のササラってのは強いのか?」


「強いけど、愛ちゃんが思い描く強さとは、ちょっと違うかなー。ササラは私と同じくサポート系だから、主に戦うのはササラ親衛隊って呼ばれる、ササラのパーティの前衛だ。」


「そっかー。んじゃ、その前衛の人達に相手をしてもらおう。」


ん?何の?

一瞬、愛が何の相手をしてもらおうとしているか疑問に感じたが、愛の性格を考えたら結論はすぐに思いついた。注意しよう。


「愛。なるべく闘争心は抑えてね。一緒に護衛をする仲間なんだから、無為に攻撃したり、決闘を挑んだりしたらダメよ。」


「え!?せっかく強い人達がいるってのに!?そんなもったいないこと、私は我慢できないよ!!」


案の定な愛の発言に、私は用意していた愛を止めるための言葉を伝える。


「愛、護衛クエストの間は歌姫さんの護衛確率を上げるために、戦いたい気持ちは我慢しましょう。その代わり…。」


「その代わり?」


「護衛クエスト中は我慢する代わりに、一緒に護衛する冒険者達に、護衛クエストが終わった後、思わず決闘を申し込みたくなるようにしましょう!」


「思わず決闘を申し込みたくなる?どうやって?」


「護衛クエストをがんばって、愛の実力を知ってもらいましょう!あ、あの素晴らしい護衛をしているのは誰だ!?すごい冒険者だ!ぜひとも、決闘をさせてほしい!!って流れで、護衛クエスト中に決闘の約束を取り付けることが出来るわ!」


「さすが、美雪!!名案じゃん!!」


よし、無茶苦茶な論理だったと思うけど、これで決闘大好きな問題児は落ち着かせることに成功した。一安心である。

さて、それじゃもう一人の問題児にも釘を打っておきますか。


「もう一人の問題児、ユウジ。美女って噂の竹調のササラに、得意のナンパをしかけて、あっさり振られて、護衛クエストを気まずい雰囲気にするなよ?」


「俺のナンパキャラはまだ払拭出来てないんだな…。ナンパはしないよ。約束する。」


なんか複雑な表情を浮かべるユウジ。

竹調のササラは、もうすでにナンパ済みだったか?ファストの町に来る前は、王都にいたらしいし。まぁ、とりあえず、ナンパをしないって約束が取り付けられたから、気にしないことにしよう。

二人の問題児を未然に大人しくすることに成功して満足していた私の上着が、くいくいと引っ張られる。なんだろうと確認すると、歌姫ことミラウェル・シンガーソングさんが、オドオドとしてるけど、何か話したいことがあるといった表情で私の上着を引っ張っていた。


「どうかしましたか?ミラウェルさん?」


「あ、あの、あの…。あのね、美雪…。あの…、あの…。あうー。うー。」


強度の人見知りな歌姫さんは、顔を赤くしながら私に何かを伝えようとしている。にっこりと微笑みながら彼女の言葉を待つが、もじもじと視線を右往左往した彼女は、やがて真っ赤な顔で天才ピアニストことレイヤ・ピアニッシモくんの下へと走って逃げてしまう。

歌姫さんの様子に疑問を感じていると、ペトラさんが私達へ言葉をかける。


「皆様ー!そろそろライブ会場であります闘技場に着きます!こちらに集まってくださーい!!」


「ライブ会場が闘技場?」


ペトラさんの言葉に、私は思わず聞き返してしまう。そんな私に、こくりと頷いたペトラさんは、眼鏡をくいっと上げながら説明を始める。


「はい。闘技場は昼夜で、使用方が変わるのです。昼間は武闘大会などが開催され、冒険者達がお互いの武勇をぶつけ合う場所として使われます。夜はライブ会場や演劇会場として使われます。」


「多くの観客が見守る中で何かをするって意味じゃ、冒険者達の決闘も、演劇やライブってのも同じだろ?護衛クエスト中、昼間は暇になるから、美雪達は闘技場で他の冒険者の戦い方を学んで来いよ!」


「なぁ、トウカ!その武闘大会っての、参加しても良い?」


「良いぞー!!でも、愛ちゃんはレベルが低いから、多分ぼっこぼこに負けちゃうぜー!!」


「なんだとー!?見てろ!すぐさま鬼火流剛術(おにびりゅうごうじゅつ)が、王都中で大流行するから…、って、わぶっ!美雪、どうしたの?」


荒ぶる愛を後ろから、ぎゅっと抱きしめて守りながら、トウカさんに抗議の視線を送る。


「トウカさん。その武闘大会ってのは、負けたら最悪、光の粒ですよね…?そんな危険な場所に、愛を行かせられませんよ?」


「お、おうふ…、目つきが怖いなぁ…って、大丈夫!闘技場は特殊なフィールドだからな!」


「特殊なフィールド?」


「そう!特殊フィールド!闘技場は、経験値やドロップアイテムは手に入らない代わりに、たとえ倒されても、控室に復活できるっていう特殊な場所なんだ!レベルの低い愛ちゃんでも、安全に強者と戦えるぞ!無駄に高い自信が折られちゃうかもしれないけどな!」


「ん?トウカ、私のこと馬鹿にしてる?その闘技場で、私と戦うか?ん?」


「お?私に戦いを挑むってことは、前にダンジョンで実力差を分からせてあげたのを、忘れちゃったのかな?相手になるぞ?お?」


「ん?」


「お?」


「はい、そこまで。人目が集まると面倒ですので、二人とも落ち着いてくださいね。」


「「痛い!!」」


荒ぶる愛とトウカさんの頭に、ビシッとチョップをお見舞いしたペトラさんは、眼鏡をくいっと上げた後、闘技場へと歩を進める。


「あのお姉さんのチョップ…。妙に痛いよ…。なんで…?」


「ペトラはスキル痛撃を持ってるからな…。ペトラは防御無視の攻撃が出来るんだよ…。久しぶりにくらったな…。あー、痛ぇ…。」


大人しくなった愛とトウカさんと一緒に、ペトラさんの後を歩いていると、程なくして大きな石造の建物が現れる。


「まるでローマのコロッセオね…。すごっ、でかっ。」


あまりにも巨大な見事な建物である闘技場に、私のボキャブラリーは残念なものになる。

大きな岩で築き上げられたドーム状の建物に驚いていた私の耳に、多くの人の声が聞こえてくる。声がする方を確認すると、闘技場の入り口には様々な出店が並び、行き交う人々によって、お祭りのような盛り上がりを見せていた。


「盛り上がってるなー!今日は珍しい決闘でもあるのか?」


「どうやら、黒薔薇剣劇団(ブラック・ローズ)と洋食屋くろばらが、どちらがより黒いバラが相応しいかで揉めて、パーティ名改名をかけて対抗戦をするみたいですね。」


「あー、だからかー。パーティ対抗戦は盛り上がるからなー。」


シロ君の言葉に、うんうんと頷くユウジ。


「え?パーティ対抗戦って何?」


シロ君とユウジの会話に、思わず質問をしてしまう。


「パーティ対抗戦は、冒険者パーティ同士が何かを賭けて戦い合うものです。今回はパーティ名ですが、武器や防具といった装備品、共同で受けたクエストの報酬など、お互いが合意した物であれば、なんでも戦いの賭けの対象になります。お互いの冒険者パーティから、先鋒、次鋒、中堅、副将、大将の五名を選出し、一対一で戦っていき、先に三勝したパーティが賭けた物を手に入れられるって具合です。」


「なるほど。でも、洋食屋が冒険者パーティと対抗戦って…、戦いが成り立つの?」


「紛らわしい名前だけど、洋食屋くろばらってのは冒険者パーティなんだ。原初の料理人に憧れた冒険者達で構成されたパーティだったはず。自分達で手に入れた食材を、自分達で美味しい料理にする、ってのがコンセプトだったかな?洋食屋くろばらは、料理人をやりながら、冒険者もやるっていう変わり者パーティだけど、実力は折り紙つきだぜ!」


「そんな変な名前の冒険者パーティもあるのね…。」


洋食屋くろばら。冒険者パーティなのに、洋食屋とはこれ如何に。

そんなことを考えていた私の肩に、急に重みが加わる。ん?と思うと、トウカさんが肩を組んできていた。


「他人事じゃねぇぞー、美雪!美雪達ももう一人仲間が増えて、五人以上の冒険者パーティになったら、パーティ名を付ける必要があるからな!」


「え?そうなんですか?」


「冒険者ギルドも、名前があった方が管理しやすいだろ?だから、五人以上の冒険者パーティには名付けを義務付けているのさ!四人以下の冒険者パーティは、ノーネームって呼ばれて、実力が低い冒険者達ってバカにされちゃうぜ!だから、いずれ参加する冒険者仲間のため、良いパーティ名を考えとけよ!美雪達のパーティに入りたいって冒険者もいるしな!」


私達のパーティに入りたい冒険者?無名な私達の仲間になりたいなんて、変な人もいたもんだ…。

そんな変わり者が誰かをトウカさんに確認したが、護衛クエストが終わったら教えてやるよ、と話をはぶらかされてしまう。


「それでは、皆様はこちらへ来てください。他の冒険者パーティがお待ちです。」


「あー、そうだった…。ササラがいるんだったよな…。ペトラ、頼むから私とササラは離れた場所で護衛させてくれよ?」


「ササラさんとトウカは、今回の護衛クエストの(かなめ)なんですから、連携は必須不可欠です。諦めてください。」


トウカさんに冷徹に言い放ったペトラさんは、眼鏡をくいっと上げた後、闘技場の裏へと私達を案内する。闘技場の裏口から入ると、歌姫の控室に案内される。

様々な見知らぬ人が私達に注目する中、ペトラさんが用意してくれた椅子に座る。

ふぅっと一息吐いた私達に、しゃなりしゃなりと一人の和服の女性が近づいてくる。にこりと微笑んだ美女は、トウカさんの前に立ち、ゆっくりと上品に話し始める。


「珍しい方がおるなぁと思ったら、トウカはんかえ?遅かったどすなぁ。道草でも食べとったんかえ?それとも、また引きこもってたんかえ?引きこもりのトウカはん?」


「うげ、ササラ…!!」


トウカさんに声をかけてきたのは艶々とした長い黒髪ストレート、細かな刺繍が見事な着物を身に纏った十代後半くらいの美少女だった。

竹取物語のかぐや姫を思わせる美少女は、ほんわかと笑いながら、上品な振る舞いでトウカさんを見下ろしている。


「トウカはん。久しぶりにササラの顔見て、うげ、とは失礼ではおまへんかぁ?長いこと引きこもっとったことで、失礼さに磨きがかかったんかえ?」


「引きこもり、引きこもりって、人が気にしてることを、ずけずけ言いやがって…。」


「ササラは事実を言ってるだけどす。悪いのは、約一年もの間、引きこもって腐ってたトウカはんどすえ?腐ってたトウカはんは屋外で日干しをして、殺菌をしてきた方がえぇと思うで?良く効く防腐剤、()うて来まほうか?」


「あ?喧嘩売ってるなら、買うぞ?」


「特売中どすえ。()うてくれはりますか?」


「あ?」


「え?」


睨み合うトウカさんとササラさん。歌姫の控室は緊張感に包まれる。


「はい、そこまで。二人は今回の護衛クエストの(かなめ)なんですから、仲良くしてくださいね。」


「「痛い!!」」


トウカさんとササラさんの頭に、ビシッとチョップをお見舞いしたペトラさんは、眼鏡をくいっと上げながら、周囲を見回す。護衛クエストを受領する冒険者パーティが全員いることを確認したのか、話し始める。


「皆様お揃いのようですので、これから護衛クエストについて説明をさせていただきますが、その前に、各パーティの代表から自己紹介を兼ねて挨拶をいただきましょう。トウカとササラは、二人仲良く頭を押さえているので、冒険団モブからお願いします。」


「分かりました。」


ペトラさんの言葉に、すくっと立ち上がったのは、際立った特徴が無い中肉中背の男だった。


「私は冒険団モブの団長を務めておりますモバと申します。突出した能力や特徴はございませんが、堅実な実力と、三十七名という多くの団員にて、竹調様と銀琴様をサポートさせていただきます。よろしくお願いします。」


「「「よろしくお願いします!!」」」


冒険団モブの団長であるモバさんの丁寧な自己紹介に続いて、いつの間にか周囲を囲んでいた、特徴の無い多くの男女達が大声で挨拶をする。

周囲の男女は全員、際立った特徴が無く、ふと注意を他に向けると、景色の中に溶け込むような存在感の無さだった。


「おー、さすが冒険団モブ。その他大勢って感じの、相変わらずのモブっぷりだな。」


トウカさんが冒険団モブの面々を見ながら、満足そうに頷く。

こんな人達で大丈夫か…と一瞬不安に思ったが、景色に溶け込むくらい存在感が無いということは、相手に警戒心を与えづらいということだ。今回のような護衛戦では、彼らの能力は真価を発揮することだろう。

いつの間にか座っていたモバさんに代わり、竹調(たけしらべ)ことササラさんが、ゆっくりと上品に立ち上がる。トウカさんが苦手と評するササラさん。彼女のことを知るため、私達は静かに見守る。


「ササラは、ササラ幻樂団(げんがくだん)の代表を務めてはります、竹調のササラこと、ササラ・タケナカいいます。銅級冒険者をしてはります。ササラは、竹で作られた楽器を奏でることで、敵の能力を大きく下げることが得意どす。皆はん、よろしおすなぁ。」


「「「我々はササラ様のために!!」」」


京都弁のような独特な話し方で自己紹介をするササラさんに続いて、屈強な体をした大柄の男や、聡明な顔をした男など数人が、大きな声で挨拶をする。

突然の大声に驚いた私に、トウカさんが小さい声で説明をしてくれる。


「ササラは性格がアレだが、見た目はとっても良いからな…。あいつに惚れた男達が護衛団として集ったのが、ササラ幻樂団ってパーティなのさ…。ササラに惚れた変態達だけど、屈強な肉体が自慢の前衛や、優秀な魔法使いの後衛がいるから、厄介なパーティなんだよな…。あいつ、見てくれだけは良いからな…。」


「なるほど。だから、トウカさんはササラさんのことを敵対視してるんですね。」


「ん?どういう意味だ、美雪?お前も喧嘩売ってるか?」


トウカさんも大人しくしていれば可愛らしい女性なのだが、如何(いかん)せん乱暴な言葉遣いと、横柄な態度である。多分、転生前はヤンキー。勝手な偏見だが、そんな気がする。


「トウカさん、私と言い争ってる場合じゃないですよ。私達の紹介の番です。私達の代表として、バシッと自己紹介を決めてください。」


「なんだか腑に落ちないけど…。まぁ、良いや。それじゃ、バシッと自己紹介するぜ!!」


勢いよく立ち上がったトウカさんは、腰に両手を当てて、堂々と自己紹介を始める。


「私は銀琴(ぎんごと)のヤクモこと、トウカ・ヤクモだ!!ササラと同じく銅級冒険者!!銀で作られた楽器を奏でることで、味方の能力を大きく上げることが得意だ!!私はパーティ未所属だから、人手を出せなくて申し訳ないなぁと思ってたけど、今回は知り合いの冒険者パーティにサポートを依頼した!!まだ、等級が低い冒険者の集まりだからノーネームだけど、四人とも実力は私が保証する。よろしくな!ほら、美雪達も!」


「「「よろしくお願いします!」」」


私達の自己紹介に、冒険団モブの人達はパチパチと拍手をしてくれる。モブ達の優しい視線に、ペコペコとお辞儀をしていると、ペトラさんが護衛クエストの説明を始める。


「クエストを受けてくれた皆様の自己紹介が終わったところで、私から今回の護衛クエストについて、説明をさせていただきます。各パーティへ個別に事前説明はさせていただきましたが、今回の護衛クエストの護衛対象は、王都の歌姫ことミラウェルと、彼女の専属のピアニストであるレイヤとなります。彼女達が出演するライブイベントまでの五日間、凶悪な誘拐団である黒い羽根から二人を守り抜いて欲しい、というのが今回のクエストの肝になります。」


事前に聞いていた護衛クエストの内容と異なる点が無かったため、私達はうんうんと頷く。

冒険者達から反論が無いか確認したペトラさんは、眼鏡をくいっと上げた後、説明の続きを話し始める。


「この闘技場は、昼間は冒険者達の対抗戦など、イベントが行われているため、人の出入りも多いです。本来なら安全なところに歌姫達はいるべきですが、私達はライブイベントの準備やリハーサルのため、この闘技場にいなければいけません。その隙を黒い羽根は狙ってくることでしょう。皆様には、その脅威から、歌姫達を守ってください。」


「「「分かりました。」」」


「トウカとササラ、あなた達はライブイベントの中で出番があるから、一緒に打ち合わせに参加しながらミラウェルとレイヤを側で護衛してください。」


「りょーかい。」


「かまへんで。」


ペトラさんの言葉に、うんうんと頷くトウカさんに、こそっと耳打ちする。


「トウカさん、ライブイベントに出演するんですか?」


「ん?あぁ、ライブイベントは歌姫のコンサートだけじゃないぜ。前座として、いくつか演目があるんだけど、その中の一つが私とササラの対抗ライブさ。どっちも楽器で演奏しながら戦うからな。いつの間にか演目のひとつになってたんだ。ラップバトルみたいなイメージだな!」


ラップバトルみたいと言われても、そのラップバトルを知らないからイメージがつかない。まぁ、トウカさんの演目は当日の楽しみにして、今は護衛クエストの説明を聞くことにする。


「冒険団モブの方々は、その豊富な人員を二手に分けていただき、闘技場の周囲の見回りと、夜にミラウェルとレイヤが宿泊する宿屋の周辺見回りをしていただき、不審者がいないかの警備を行ってください。ササラ幻樂団の護衛の方々、銀琴のサポートの方々は、それぞれササラとトウカの指示に従ってください。ただし、冒険団モブのモブスくんと銀琴サポートのホワイトくんは、私の両脇でぎゅっと私の手を握っていただき、私のモチベーション維持に努めてください。説明は以上です。それでは、皆様、持ち場に付いてください。よろしくお願いします。」


「「待て待て待て。」」


「どうされました、モバさんとトウカ?声を合わせて?」


「うちの団員を、あなたのショタコン趣味に付き合わせないでください。」


「ホワイト坊ちゃんに何させるんだ、お前は?ショタコン趣味も大概にしろよ?」


「ちっ!!」


一度舌打ちをしたペトラさんは、笑顔で眼鏡をくいっと上げた後、先ほどの言葉に対する説明を始める。


「冗談です。二人の少年が緊張をしていたので、緊張を和らげようとしたのです。それでは、皆様、持ち場に付いてください。よろしくお願いします。」


ペトラさんの指示に従い、冒険団モブとササラ幻樂団の方々は、それぞれの持ち場へと移動する。私達はどうしようかなと思っていたところで、トウカさんが私達四人を集める。


「ペトラの最後の言葉で、なんだかなーって感じになっちゃったけど、護衛クエストに対して、美雪達にお願いしたいことを説明するな!」


「「「お願いします!」」」


「ペトラに頼んで、美雪達は闘技場の観客席を警護対象にしてもらった。昼は闘技場の観客の中を回って、不審者がいないか警護をしてくれ。警護中に、冒険者達の戦いが目に入っちゃうのは仕方ないことだから、警護をしながら冒険者達の戦いの勉強もしちゃいな!」


「ご配慮いただき、ありがとうございます。」


低級冒険者である私達のことを気遣ってくれたトウカさんに、深くお辞儀をする。にかっと笑ったトウカさんは護衛クエストの指示の続きを始める。


「夕方は念のため、観客席に爆弾とか危険物が設置されていないかを確認。夜は、ライブのリハーサルがあるから、不審者が近寄らないように、冒険団モブと一緒に外の警備。これを四日間繰り返してもらう。最終日であるライブイベント当日は、私と一緒にライブ会場の裏方に回ってもらい、ライブ中の歌姫とレイヤを守ってもらう。そんなとこだな!質問はあるか?」


「「「無いでーす!!」」」


「よし!それじゃ、昼飯をさっと食べて、さっそく持ち場についてくれ!ペトラが弁当を用意してくれてるから、有難くいただこう!昼食後は黒薔薇剣劇団(ブラック・ローズ)と洋食屋くろばらの対抗戦も、中堅戦からのはずだから、しっかり勉強してくれ!」


「「「ありがとうございます!!」」」


お弁当を用意してくれたペトラさんと、闘技場の観戦が出来るように警護場所を考慮してくれたトウカさんに感謝の言葉を告げた後、私達は昼食をいただく。

お弁当が足りなかったのか、無遠慮におかわりを要求する愛を抑えながら、私は護衛クエストの始まりを感じる。歌姫とレイヤくんを守り抜こう。

久しぶりに使命感のある仕事に、胸が高鳴っていくのを感じる。

こうして、護衛クエストの一日目が始まった。

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