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魔王退治は要件定義から!  作者: 荒井清次
王都挑戦編 -所持金すべて失い歌姫を護衛する-
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守れ!歌姫!護衛クエストで等級アップだ!①

前回のあらすじ:美雪(みゆき)達はスキルの共有と取得をした。その結果、美雪は眼光威圧という望まぬスキルを手に入れてしまった。


新しいスキルを取得した次の日。

銀琴(ぎんごと)のヤクモこと、トウカさんを待つため、私達は冒険者ギルドの食事スペースに待っていた。普段は冒険者達によって、わいわいがやがやと騒がしい食事スペースだが、昼前だからか静寂に包まれている。


「なんだか、今日はすごい静かだね?」


にこにこと笑顔を浮かべながらの私の質問に、(あい)とシロ君とユウジは、黙ってこくこくと首を縦に振る。今日の冒険者ギルドは、喋っちゃいけないのかな?また、静寂が訪れる。


「静かなのは、私達以外の冒険者がいないからか。なるほど。珍しいこともあるもんだね?」


にこにこと笑顔を浮かべながらの私の質問に、愛とシロ君とユウジは、黙ってこくこくと首を縦に振る。そっか、今日の冒険者ギルドは、喋っちゃいけないのか。それなら、私も喋らずにトウカさんを待とう。


程なくして、トウカさんが三人の謎の人物と共に現れる。

謎の人物と表現するのは、三人の服装があまりにも周囲とかけ離れているからだ。きょろきょろと周囲の様子を伺う、全身を隠すローブに、ローブのフードを深く被って、顔を隠した人物が三人。三人の内二人は体格的に大人の女性で、一人は子供かな?見るからに怪しい。

怪しい三人を睨んでいた私達に気付いたトウカさんは、一瞬びくっとした後、ローブの三人をその場に待機させ、足早で私達の前に立つ。

慌てた様子のトウカさんは、息を切らしながら、私の近くに立っていた愛の肩を掴み、早口でまくしたてる。


「ちょっとちょっとちょっとー!!愛ちゃん、何をやったの!?美雪(みゆき)まじ切れじゃん!!ブチ切れてんじゃん!!謝りなさい!!愛ちゃん、謝りなさい!!」


「怒ってないですよー?」


「うぉ!?尋常じゃない睨み!!美雪、怖っ!!愛ちゃん、早く謝ってー!!」


「ごめん、トウカ!!私のせいで、せいで…!!うわぁぁぁあああん!!私はなんてことをー!!」


トウカさんに肩を掴まれたまま、愛は大声で泣き始めてしまう。私の怒ってない発言はスルーですね?

突然の愛の号泣に、トウカさんは少し驚いた後、大きく両手を広げ、愛のことをぎゅうっと抱きしめる。


「愛ちゃん…!!愛ちゃんも辛かったんだね…!!良いよ、ゆっくりで良いから、何をしたか話してごらん?美雪だって、鬼じゃない。誠実に、精一杯謝罪をすれば許してくれるよ!私も一緒に謝るから、話してごらん?ね?」


「トウカぁぁぁあああ!!!」


大声で泣く愛と、愛の頭を撫でながら優しく頷くトウカさん。シロ君とユウジは温かい目で、二人のやり取りを見守っている。


「いやいや、二人とも落ち着いて。私は怒ってないよ?だから、落ち着いて。ね?」


「トウカ!!トウカぁぁぁあああ!!!」


「うわぁぁぁあああ!!!ごめんなさい!!愛ちゃんは差し出します!!煮るなり焼くなり好きにしてもらって構わないので、怒りをお鎮めください!!!」


「トウカ!?トウカぁぁぁあああ!?!?」


異様に取り乱しながら、愛の背中をぐいぐいと私の方に押してくるトウカさん。そして、この世の終わりのように泣きわめく愛。

二人がこんな風になっているのは、昨晩スキル眼光威圧を取得したせいだろう。元々目つきが悪かった私が、威圧するレベルまで目つきが悪くなるスキル眼光威圧を取得したのだ。こう恐れられるのも仕方ない。

スキル眼光威圧の効果によって、私の目つきの悪さは余程のレベルになったしまったのか、愛は昨日から一切、目を合わせなくなるどころか、私の前で言葉を発するのをやめた。

異常に怖がる愛を安心させるため、私はこうして満面の笑みを続ける。そうしないと、愛は走って逃げてしまう。え、満面の笑みに見えない?いや、私的には全力の笑顔なんだよ?にっこにこだよ?


にっこにこ笑顔を浮かべながら、目の前で繰り広げられる阿鼻叫喚かつ凄惨な現状に目を向ける。なんでこんなことになってしまったんだろう…。あんなに無邪気な愛が、今は怯える子犬だ。

そんな、愛と目が合う。あ、逃げられるかなと思ったが、私の予想は外れる。ふるふると怯える愛だったが、ぐっと表情に力を入れた後、私の前に堂々と立つ。


「ぐずっ…、本当に泣きたいのは…、ずっ、美雪の方だよね…ずずっ。私がやったことなのに…、ずずっ、私が怯えてたらダメだよね…。ごめん…、美雪…。本当にごめん…ずずっ!!」


愛は怖くて泣きたいのを必死に堪えているのか、震える手をゆっくりと私へと伸ばしてくる。

愛の健気で懸命な様子に、私も涙がこぼれそうになる。しかし、笑顔を崩すわけにはいかない。こうして愛が心を開いてくれたのに、笑顔を崩したら全力で逃げてしまう。

私は満面の笑みで、愛へとゆっくり片手を伸ばす。


「ありがとう、愛。」


「ぐすっ!!うぅ…、私、頑張って慣れる…。慣れるから…、美雪もそんな辛い顔をしないで…。ね?」


愛の言葉に、伸ばしかけた手が止まる。

スキル眼光威圧を取得してから、王都の住民全員にもれなく恐れられた私。子供たちはこの世の終わりのように泣き叫び、大人たちは一目散に走って逃げ去っていった。

今までも目つきの悪さを恐れられることはあった。でも、スキル眼光威圧を取得してからは、今までのことが可愛くなるくらい恐れられる。私を中心に、阿鼻叫喚である。


正直なところ、辛い。これからの異世界生活、人に恐れられながら生活していくのか…と朝から気が滅入っている。それに、愛は敏感に気づいたようだ。

スキル眼光威圧を取得したことで、多くの物を失った。その代わりに、私は愛との絆を手に入れられた。真っ直ぐと伸ばされた、かけがえのない仲間の手を取る。私は愛と力強く握手をする。


「ありがとう、愛…。そして、これからもよろしくね!」


「うん…。よろしく…。」


涙を拭いてたからか、愛の手はしっとりと湿っている。

今も怖いのだろう。握手をしている愛の手は、ぷるぷると震えている。でも、離れることはない。愛との強い絆を感じる。


「って、ダメだぁぁぁあああ!!!怖いよぉぉぉおおお!!うわぁぁぁあああん!!トウカ、助けろ!!早く、助けろ!!助けろやぁ!!!逃げんなぁ!!トウカぁぁぁあああ!!!」


泣き叫ぶ少女の声、諸行無常の響きあり。

逃げ出すトウカさんの銀の髪、盛者必衰の理をあらはす。

眼光鋭き我も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし、と願うも叶うことなし。

固い絆も我の眼光の前にはつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。


おっと、混乱のあまり、思わず学生の頃に習った古典文学を今の気持ちでアレンジしてしまった。

泣き叫ぶ愛と、全力ダッシュでどこかに走り去ろうとするトウカさん。いや、私の方が泣きたいし、逃げたいよ…。

深く落ち込んでいると、後方からシロ君の言葉が聞こえてくる。


「え、えーっと、そのまま振り向かずに聞いてくださいね…、美雪さん。本当に申し訳ないのですが、話が進まないので、少しの間、この目隠しをしてもらって良いですか…?あ、こっちを見ずに…。すみません…。」


申し訳無さいっぱいといった様子のシロ君の言葉に、私はゆっくりと頷き、手探りでシロ君から目隠しを受け取る。そうか、目隠しをすれば眼光威圧も封印されるか。さすがシロ君、名案だ。

私が目隠しをしたことを確認したのか、シロ君は大きな声で叫ぶ。


「光の精霊よ。我が声に応じて、この場にいる全ての人から状態異常恐慌を取り除きたまえ!!リカバー!」


「え?光魔法リカバー?なんで状態異常を回復する魔法を…って、そうか。スキル眼光威圧は状態異常の恐慌を、相手に与えるんだったね…。なるほど…。」


なんだか身が清められるような心地よさを感じながら、なぜか目隠しが湿っていくのを感じる。しかし、光魔法リカバーの効果は抜群で、泣き叫んでいた愛が静かになっていく。


「ん?私は何を…?って、シロ君が倒れてるー!?なんでー!?」


愛の大きな声に、え!?なんで!?と思う私だが、目隠しをしたままのため、周囲の様子を確認することが出来ない。

代わりに、ユウジがシロ君が倒れた理由を解説してくれる。


「これは、MP不足!?まさか、俺達を恐慌状態から回復するために、自分の限界を超えて、光魔法リカバーを発動させたってのか!?なんでそんな無茶を!?」


「良いんです…。これで、また皆さんに笑顔が戻るっていうなら…、僕がMP不足になるなんて…、小さな犠牲です…。がくっ…。」


「シロくーん!!」


「シロー!!」


愛とユウジの叫び声が、冒険者ギルドの中に響く。

愛とユウジの呼び声に、MP切れのシロ君は答えることが出来ない。冒険者ギルドは、束の間の静寂に包まれる。そんな静寂を破るように、静寂の原因である私は呟く。


「見えないから、何が起こったか分からないけど、最終局面みたいな雰囲気を出さないでくれる?シロ君にMP回復ポーション飲ませて、トウカさんに事情を説明して。可及的速やかに。」


私の指示の後、バタバタと人が動く音が聞こえる。

目隠しによって周囲の様子を確認できない私は、その場に佇むしかない。仕方ないので、阿鼻叫喚を呼ぶような目つきの悪さになった私は、これからどう生活していくかを考える。ひとまず、前髪を伸ばそうかな?それよりも、鉄製のフルフェイス兜を装備するか?

そんな事を考えていた私の右手が突然、温かいもので優しく包み込まれる。


「美雪、さっきはごめん…。なんだが、異様に怯えちゃった…。」


あ、この手は愛か。

さっきまで泣き喚いてたためか、少し鼻声の愛が申し訳なさそうに私に語りかけてくる。


「大丈夫だよ、気にしないで。愛は状態異常に異様に弱いんだもん。だから、仕方ない。少し寂しかったってのが本音だけど。」


「本当にごめん…。お詫びに私が美雪の目になるよ。目隠ししてると、周りが見えないでしょ?何か良い案で美雪の目つきの悪さが回復するまで、こうやって、手を繋いで美雪を導くよ。」


「愛…。」


ひとへに風の前の塵に同じと思っていた絆が、力強く復活する。

胸が熱くなるのを感じながら、愛に導かれるまま、近くの椅子に座る。正面に座ったと思われるトウカさんに、MP回復ポーションで復活したシロ君と一緒に、こうなった事情を説明する。


「あー、なるほど。スキル眼光威圧を取得したのね…。ただでさえ尋常じゃない目つきの悪さの美雪が、スキルの効果も得たわけだ。そりゃあ、尋常じゃない殺気を周囲に振り撒いてるものね。まさか、般若より恐ろしいものが、この異世界に降臨するとは思わな…、って、目隠しを外すな!!全力で睨むな!!マジで怖いから!!すんません!!すんませんでしたー!!」


私の目つきの悪さを全力でいじりはじめたトウカさんを黙らせるため、私は目隠しを外して全力で睨む。

私の睨みに、トウカさんは全力で謝罪していたので、許すことにする。

トウカさんは再び私が目隠しをしたことに安心したのか、話の続きを始める。


「いや、実際のところ、美雪のスキル眼光威圧は、かなりすごいと思うよ?このまま美雪がダンジョンに行ったら、全モンスターが逃げて、誰とも戦わずに攻略できるんじゃね?ってくらい、美雪の眼光威圧はやばい。私は結構レベル高いから、状態異常耐性高いはずなんだけど、そんな私を恐慌状態にするレベルだぜ。スキル眼光威圧!誇って良いぞ!!」


「いや、誇らないですよ…。眼光威圧のせいで、どれだけ私が大変な思いをしてるか…。トウカさんは気軽に言ってるけど、スキル眼光威圧は本当に恐ろしいものなんですよ。朝起きて鏡に映った自分の顔に、ビクッと驚いた私の気持ちが分かります、トウカさん?」


「ん?大変な思いしてるの?それなら、スキルをオフにしたら良いじゃん。」


「スキルをオフ?え?」


目隠しをしているため詳細は分からないが、おそらく私の質問に、トウカさんはキョトンとした表情を浮かべている。


「あ、そっか。美雪は知らないんだな。スキルの中には、オンオフ切り替えられる物があるんだよ。たしか、眼光威圧もそのタイプだったはず。頭の中で眼光威圧オフって念じてみ?それで、美雪の悩みは解決だと思うぞ?」


トウカさんの言葉に半信半疑になりながらも、祈る思いで、スキル眼光威圧オフと念じてみる。すると、レベルアップの時に聞こえてくる機械音声が頭の中に響く。


「スキル眼光威圧を無効にします。無効にしたスキルは、頭の中で有効と念じるまで、使用不可となります。無効にしてもよろしいでしょうか?」


スキルを再度有効にする方法も教えてくれるなんて…。親切な機械音声だ。

頭の中で、了承と念じる。


「使用者の了承を確認。スキル眼光威圧を無効にします。」


頭の中で響く機械音声を確認した私は、本当にスキルが無効になったことを確認するため、目隠しを外すことにする。

怯えて逃げる愛を思い出し、不安が込み上げてくる。ゆっくりと震える手で目隠しを外す。


「あ、眩しい…。って、うわぁ!!」


少しの時間の目隠しだが、久々の光に目を細めてしまう。光に驚いた私だが、光と共に体に襲い掛かって来た奇襲に、更に驚かされる。

何事と驚いたが、奇襲をしてきた相手は見知った相手。愛だった。

私の腰に力強く抱きついた愛は、私のお腹に顔を埋めながら、ぐぐもった声を上げる。


「美雪だー!!美雪が帰って来たー!!美雪、お帰りー!!」


喜びいっぱいで抱き付いた愛に、スキル眼光威圧が本当に無効になったことを感じる。

私のお腹から顔を上げた愛は、私の顔をじっと見つめた後、にへらと崩れた笑みを浮かべる。


「美雪が戻って来たどころか、優しい時の美雪だ!うぁー、甘えちゃうー。」


愛は再び、私のお腹に顔を埋める。

同時に、たくさんの安堵の溜息が周囲から聞こえてくる。スキル眼光威圧が有効だった時の私は、かなり殺気を振り撒いていたようだ。本当に、スキル眼光威圧は恐ろしいな。


「怖がらせて、ごめんね。愛…、って寝ちゃったよ…。ふふふ、疲れてたんだね。」


私のお腹の中で、すぅすぅと寝息を立て始めた愛の頭を撫でながら、私は優しく笑う。

両足を大きく開き、私の腰を力強く抱きしめ、お尻を突き出すような姿勢で寝息を立てる愛。この姿勢でよく眠れるなぁと思いながらも、私はひとつ安堵の溜息を吐く。良かった、スキル眼光威圧を封印することが出来て。

凶悪なスキル眼光威圧を無効にしたことにより、無事に元の状態に戻り、安堵していた私の耳に、ユウジとシロ君の声が聞こえてくる。


「あれ?美雪さん、スキル眼光威圧を無効にする前より、優しい顔つきになってね…?本能を揺さぶるような恐怖心が無いぞ…?」


「優しい顔つきになっていますね…。まさか、スキル眼光威圧を無効にしたことで、凶悪な目つきの悪さも無効になったんですか…?」


取得したことを後悔していたスキル眼光威圧だが、無効にすることによって、真の効果を発揮した。

どうやら、凶悪な目つきになるスキル眼光威圧を無効することで、生まれながらの目つきの悪さも封印されたようだ。


「そっかー、目つきの悪さが無くなったか…。なるほどー。ふふふ、これはラッキーだ」


スキル眼光威圧の思わぬ副産物に、頬が緩む。試しに、近くを通りかかった冒険者ギルドの職員に、微笑みかけてみる。

スキルを封印する前の私だったら即座に逃げられたが、今の私は問題無しだった。冒険者ギルドの職員は、その場に立ち止まり、ぼーっとした表情で私の表情を伺っている。

スキル眼光威圧を無効にした効果を実感した私は、より頬が緩むのを感じる。ふふふと笑っていた私へ、真っ赤な顔をしたシロ君とユウジが話しかけてくる。


「美雪さん、初対面の方にはスキル眼光威圧を使って下さい!!」


「そうだな、シロ!!俺達は嘗められちゃいけねぇ!!冒険者だからな!!スキル眼光威圧の美雪さんで、ビビらせよう!!」


「え?いや、なんで?」


突然取り乱した二人に、小首を傾げる。そんな私に、二人は声を合わせて抗議する。


「「なんでもです!!!」」


慌てる二人の様子に、私は疑問を感じながらも首を縦に振る。

私の様子に、なにやら小声で相談を始めたシロ君とユウジを横目に、先ほどまでのドタバタで取り乱した気持ちを落ち着け、今日の本題であるトウカさんへ向き直る。


「トウカさん。今日の本題である、秘策の紹介をお願いします。」


「ん?あ、そうだったな!美雪の眼光威圧をいじるのは、本題じゃなかったな!それじゃ、色々あったけど、本題の実入りが良くて難しいクエストの紹介に移るな…。美雪達には、この白い粉を騎士たちに見つからずにサルドの港町に運んでほしいんだ。」


周囲の視線から隠れるように、トウカさんは白い粉の入った透明な袋を私の前に置く。これは…、まさか?


「いやいやいや!!ヤクの密輸!?倫理的にアウトですよ!!何をやらせようとしてるんですか!?」


「冗談だ、冗談。なんか緊張してたから、冗談で緊張を和らげようと思ったんだよ!もし、ヤクの密輸を頼むとしても、美雪みたいな凶悪な顔立ちの人には頼まねぇよ!醸し出す凶悪な犯罪者臭に、門番に止められて、一発でお終いだわ!!」


凶悪な犯罪者臭と言われたので、試しにスキル眼光威圧を有効にしてみる。

しおしおと小さくなっていくトウカさん。頭を大きく下げ、小さな声で呟く。


「ごめん…。調子に乗りました…。謝るので、スキル眼光威圧を無効にしてください。お願いします…。ごめんなさい…。」


一度無効にしたスキル眼光威圧だが、問題なく有効にすることが出来た。

これは、もしかして良い武器を手に入れたのではないか…?今まで、いじられるか、恐れられることしかなかった目つきの悪さが役に立つとは…。思わず、頬が緩む。

おっと、喜んでる場合じゃない。本題に入らなければ。


「トウカさん、本題に入ってください。トウカさんの秘策ってのを教えてください。お願いします。」


「そうだったな!それじゃ、課題を整理するな!転生者三人と、稀代の天才と言われた少年で構成された美雪達は、実力に合った実入りの良い難しいクエストを受けたい。でも、冒険者ポイントが低いから簡単なクエストが受けられなくて困ってる。昨日聞いた課題は、こんなんだったよな?」


「はい、その通りです。」


昨晩トウカさんに出会った時は酔っ払っていたが、ちゃんと話は聞いていたようだ。一安心しながら、トウカさんの話の続きを伺う。


「今回私が紹介する秘策は、そんな美雪の悩みを解決するもの!要は冒険者ポイントが、いっぱい手に入ったら良いんだろ?等級を上げるために必要な冒険者ポイントってのは、自分達でクエストをクリアする以外にも手に入れる方法があるのさ!私の秘策は、その方法を使う!」


「冒険者ポイントをいっぱい手に入れる方法?そんな方法があるんですか?」


得意気な表情を浮かべたトウカさんは、もったいぶるように少し時間を置いた後、秘策の発表を始める。


「私の秘策!!それは、上級冒険者のサポート!!」


「上級冒険者のサポート?」


「そう!美雪達には、上級冒険者のサポート役ってことで、銅等級冒険者である私が受けたクエストを、特別に手伝ってもらう!銅等級の私が受けるクエストだから、たとえサポートでも冒険者ポイントも多く手に入れることが出来るぜ!」


得意気な表情のトウカさんの秘策の内容に、うんうんと頷きながらも、感じた疑問を口にする。


「そんなズルみたいなこと、冒険者ギルドは認めているんですか?」


「大丈夫!ギルド公認だ!なにせ、サポートってのは高等級冒険者の足を引っ張らないってのが、最低条件だからな!クエストの中で足を引っ張った場合は、マイナス評価になって逆に冒険者ポイントを減らしちまう!相応の実力が無いと務まらないってわけだ!」


ふむふむ、ハイリスクハイリターンということか…。

トウカさんの上級冒険者のサポートの話を聞き、どうするか考えてみる。私の返答が遅かったため、トウカさんは補足説明を始める。


「私が今回受けたのも、おそらく難しいクエストにはなるが、美雪達なら大丈夫だろう!上級冒険者のサポートってのは、今の美雪達には最適なクエストの受け方だと思うけど、どうだ?私は身内に甘いタイプじゃないから、美雪達のがんばりによっては、マイナス評価も付ける。怖気付いたってなら、辞めても良いんだぜ?どうする?」


にやにやと笑いながら、挑戦的な視線を私達に向けるトウカさん。


「シロ君、ユウジ、どうする?愛は寝てるけど…、答えは決まってるから寝かせたままにするね。」


「僕の答えも決まっていますよ?」


「俺の答えも決まってる。」


「ふーん。んじゃ、その決まってる答えってのを聞かせてもらおうか?」


トウカさんの質問に、私達は声を合わせて回答する。


「「「受ける!!!」」」


「よっしゃあ!!それじゃ、クエストの依頼主を連れてくる!!ちょっと待ってなー!」


私達の返答に満足気に笑ったトウカさんは、冒険者ギルドに一緒に入って来た、ローブ姿の三人へと駆け寄る。どうやら、あの不審な三人が依頼主のようだ。

シロ君とユウジは近くの机と椅子を、私が座っている席にくっつけスペースを確保する。

え?私も手伝えって?愛が私のお腹を掴んだまま、ぐっすりと眠ってるから、動けないんだよ…。


「依頼者を連れて来たぜー!お、席を準備してくれたんだな!あんがと!」


トウカさんに続いて、ローブのフードを深く被った三人が席に座る。近くに来ると、より怪しさが増す。私達の困惑に気付いたのか、トウカさんがフォローを入れる。


「悪ぃな!フードを被ってて怪しいかもしれないが、ちょっと事情があってな。でも、今日は美雪の眼光威圧のおかげで、冒険者ギルドの中に人は少ないな…。フード外しても良いんじゃない、ペトラ?」


トウカさんの言葉に、フードの三人の中の一人がこくりと頷き、顔を隠していたフードを外す。

フードの中から現れたのは、眼鏡をかけた水色の短髪の聡明そうな女性だった。


「初めまして、私の名前はペトラ・ジャーマネと申します。銀琴(ぎんごと)のヤクモこと、トウカへ依頼をさせていただきました。よろしくお願いいたします。」


私達の依頼人と名乗ったペトラさんは、丁寧な挨拶の後、深く頭を下げる。

頭を上げた後、眼鏡をくいっとしたペトラさんは、キリッとした雰囲気が印象的な女性である。なんとなく、私は親近感を覚える。


「私が依頼をさせていただくのは、こちらの二人の護衛となります。フードを被ったままの紹介は、失礼かと思いますので、フードを外しますが…。驚かないでくださいね?」


驚かないでくださいね?

どういう意味だろう?珍しい獣人とかかな?と疑問に思っていたところで、残りの二人もフードを外す。

一人は金髪の美少年。もう一人は緑色の長い髪が特徴な、オドオドした女性だった。

あれ?驚かないでってペトラさんが前置きした割には、普通の少年と女性のような?


「え!?なんで、ここに!?」


「うお、まじか!?」


私とは異なり、シロ君とユウジが驚きの声を上げる。口が開いたままになっている二人に、私は首を傾げながら、目の前の少年とオドオドした女性が何者かを確認する。


「二人は少年と女性のことを知ってるの?」


「いやいやいや!!なんで美雪さんは彼女のことを知らないんですか!?」


「王都で数日過ごしたよな!?彼女の顔、何度も見ただろ!?」


どうやら、目の前の女性は相当な有名人のようだ。驚くシロ君とユウジの言葉に、目の前の記憶を辿ってみるが、思い当たる節が無い。

必死に思い出していたところで、お腹がもぞもぞと動き出す。


「ん、んむぅ…。」


どうやら、愛の目覚めのようだ。私のお腹から離れた愛は、大きくあくびをして体を伸ばす。ふぅと息を吐いたところで、依頼者三名と目が合う。


「ん?あれー!?街中のポスターの人じゃん!!たしか、歌姫だっけ?有名人じゃん!!どうしたの、こんなとこで?」


ん?街中のポスター?そんなの貼ってあったっけ?歌姫?

ピンと来ていない私を置き去りに、ペトラさんが二人の説明を始める。


「そちらの元気な少女の言う通り、彼女の名前はミラウェル・シンガーソング。王都の歌姫をやっております。そして、隣の少年は天才ピアニスト、レイヤ・ピアニッシモ。あなた達に、二人のマネージャーである私からお願いをさせていただきます。二人を凶悪誘拐団、黒い羽根から護衛してください。」


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