所持金ゼロ!なんとかクエストで稼ごう!っと思った私達に救世主現る!
前回のあらすじ:ガイドさんと名乗るかつあげにあい、美雪の所持金はゼロになりました。
「はぁー!?所持金ぜんぶ巻き上げられたー!?誰に!?」
「美雪さんと愛さんを二人っきりにするのは不安でしたが、やはりトラブルに巻き込まれていましたか…。それにしても、所持金ぜんぶですか…。はははは…。」
「「すみません…。」」
ガイドさんに所持金てを巻き上げられた後、近くの騎士によって助けられた愛と私は、宿屋金字塔にて夜ご飯を食べながら、今日あったことをシロ君とユウジに説明する。
私の説明を聞いたシロ君とユウジは、溜息を吐きながらも、同情を含んだ視線を向ける。
「深緑のデスガイドが相手か…。それなら、仕方ないけど…、所持金ぜんぶか…。」
「不幸中の幸いですね…。彼女は粘着しませんから…。それにしても、所持金ぜんぶですか…。素材も全て売った後ですよね?装備や所持品は残してくれたのが幸いです。幸いですが…、正直なところ、金銭面的にピンチですね…。」
「「すみません…。」」
シロ君とユウジは非難してくることは無いが、落ち込んでいることは否が応でも伝わってくる。
申し訳ない気持ちが込み上げてくる。愛も落ち込んでいるのか、大好物のジューシーな焼肉を目の前にしても、二回しかおかわりをしていない。
「過ぎたことを文句言っても仕方ない。明日からクエストをガンガン受けて、また冒険者パーティのホーム建設資金を貯めるぞ!!」
「そうですね。実入りの良いクエストを集中的に攻略して、早めにホームを手に入れましょう。ホーム無しでは、王都では冒険者パーティとして格好がつきませんからね!」
明日以降の計画を練り始めるシロ君とユウジ。そんな二人の様子に疑問を感じたため、シロ君のローブの端を摘み、恐る恐る確認する。
「あれ、怒ってないの?」
「え?怒ってないですよ。トラブルメーカーの二人なら、予想の範囲内ですし。所持金ぜんぶは、さすがに想定外でしたが、二人が無事だったので問題なしです。不幸中の幸いってやつです!だから、美雪さん達は気にしないでくださいね!」
にこにこと笑うシロ君は、本当に怒っていないようだ。シロ君が怒っていないことに安堵しながらも、私はがっくりと肩を落とす。
愛はまだしも、私がトラブルを起こすことが想定の範囲内とは…。しかも、私よりも一回りも年下のシロ君にフォローを入れられるなんて…。
年上として不甲斐なさを感じるが、今日しでかしたことに対する負い目から反論することが出来ない。
隣で落ち込む愛と一緒に、明日からのクエスト頑張ろうと決意を固め、早めに就寝する。
そして、私達はガイドさんに巻き上げられた持ち金を取り戻すため、様々なクエストを受けまくった。
ガイドさんに巻き上げられた所持金を取り戻すために、クエスト挑戦を続けて早一週間。夜光蝶の羽の収集クエストをクリアした私達は、冒険者ギルドの飲食スペースで夜ご飯を食べていた。
私は溜息を吐きながら、この一週間の総評を告げる。
「あー、だめだー。思ったようにうまくいかなーい!!全然お金が増えなーい!!」
冒険を終えた数多くの冒険者達パーティの中に、悲哀に満ちた私の声が響く。
そんな私の情けない声に、周囲から小さな笑いが起きる。懐かしーとか、私達もそんな時期あったーとか聞こえてくる。どうやら、王都に挑戦する初級冒険者なら誰もが通る道のようだ。
「普通はこんなものですよ。ファストの町にいた頃が順調過ぎたんです。」
「そうだけどー。せっかく王都に来たんだから、私達の快進撃が始まるって思うじゃん!それが、なんで厳しい財布事情で苦しまなきゃいけないかな!?」
「美雪ー、強いモンスターと戦えなくて暇だよー。」
「愛の言う通り!!ぶっちゃけクエストが簡単すぎる!!報酬が少ない!!でも、お金が増えない理由の一因は、愛の大食いでもあるんだからね!!物価が高い王都でそんなにいっぱい食べてたら、そりゃお金もたまらないわ!」
愛の隣には、四枚ほど重ねられたお皿。クエスト達成の報酬金は、こうして愛のお腹に消えている。
急に私の怒りの矛先を向けられた愛は、びくっと驚いた後、しゅんと落ち込む。
「うん、ごめんね。私食べすぎだったよね。明日からご飯を減らすから、今日のところはもう一杯おかわりしても良い?」
「仕方ないな。明日から節制するために、今日はいっぱい食べなさい。」
「ほんと!?わーい、やったー!!店員さん、ご飯と大きい肉おっかわりー!!あ、二人前でー!!ご飯は大盛りねー!!」
にっこにこでおかわりを要求する愛。私も笑顔でうんうんと頷く。
私達パーティの元気印の愛が落ち込んでいては、パーティ全体が暗くなってしまう。財布事情が辛い上に、雰囲気まで暗くなってしまっては良くない。そのための必要な出費だ。
「このやり取り、王都来てから毎日やってるよな…。」
「なんだかんだで、美雪さんは愛さんに甘いですから…。仕方ありません…。」
シロ君とユウジの冷たい視線が突き刺さる。そんな視線を誤魔化すため、私は声を大にして、私達の財布事情が苦しい理由を指摘する。
「そもそも!お財布事情が回復しないのは、私達が受けられるクエストが、地味なモンスター討伐や素材の回収だけってこと!簡単すぎる!!実入りが少ない!!得られる経験値も少ない!!」
「仕方ないだろ。美雪と愛は黒等級なんだから。黒等級は簡単なクエストしか受けられないんだよ。」
王都の冒険者ギルドで受けられるクエストは、等級に応じたクエストのみ受注可能だった。例えば、ブラックドラゴンの討伐は銅等級以上の冒険者しか受けられない、といった感じだ。
下から二つ目の黒等級である愛と私とユウジは、受けられるクエストに大きく制限があり、この一週間は初級冒険者が受けるようなクエストをこつこつとこなしていた。
子供の頃からクエストを受けていたシロ君は、等級を上げるために必要な冒険者ポイントを多く持っていた。そのため、王都に来て早々に青等級になったが、ろくなクエストを受けていない私達三人は青等級へ昇級出来ずにいた。
「ん?愛と私は?おい、ユウジ…。お前、まさか…!!」
「くっくっく…!!俺は美雪さん達に会う前に、地味なクエストをこつこつとクリアしていたからな…。今日のクエスト達成で、俺は青等級になったぜ…!!」
ドヤ顔で自分のマグカを取り出すユウジ。確かに、ユウジのマグカは青色だった。
「うわー。ユウジのくせに腹立つー。美雪ー、クエストっての辞めて、ダンジョン挑戦に行こうよー。」
「そうだね。クエストの実入りが思ったよりも少ないし、レベル不足が少し不安だけど、ダンジョン攻略にシフトしようか。」
「いえ、そうはいきませんよ。」
愛と私の言葉に、シロ君が人差し指を立てて注意する。
「なんで?私達なら、なんとかなるんじゃない?」
「いえ、僕達には挑戦資格がありません。王都のダンジョンは、未熟な冒険者が無駄に命を落とさないよう、レベル30以上、青等級以上が挑戦する条件なんですから。」
「ダンジョンも等級かよー。ちぇー。」
くっそー、ここでも等級か…。実力があれば何とかなると思ってたけど、冒険者として格を上げないと出来ることが少ない。
「実入りの良いクエストを受けるためにも、ダンジョンに挑戦するためにも、等級とレベルを上げなきゃいけないってわけで、簡単なクエストでも我慢してるんだけど…。私の何かが…、具体的に言うと、焦る気持ちや向上心が、このままで良いのかと訴え続けている…!!」
「ちなみに、俺はレベル30以上で、青等級!王都のダンジョンも挑戦できるぜ!」
ドヤ顔で自分のマグカを見せびらかせながら、親指を立てるユウジ。
「うるせぇ!!ユウジの分際で私の上に立とうとするんじゃねぇ!!」
「おい、愛!!俺のマグカになんてことを!?」
激昂した愛は、ユウジの手から驚くべきスピードでマグカをかっさらい、遠くへと投げる。正直、イラッとしていた私は愛の行動に気持ちが晴れる。よくやった、愛。
愛の投げたマグカは、トランプを武器にして戦う人の手裏剣のようにクルクルと回りながら、遠くへと飛んでいく。その様子に、周囲の冒険者が笑うが、飛んで行ったマグカが銀髪の冒険者の頭に刺さった瞬間、一気に静かになる。
あれ?なに、この雰囲気…?みんな冷や汗ダラダラで、恐怖心いっぱいって感じの表情だけど…。もしかして、やばい人に刺さった…?
「おいこら、いってぇなぁ!!どこのどいつだ!!私に対して喧嘩を売るなんて、良い度胸してんじゃねぇか!!表に出な!!」
頭にマグカが刺さったまま、銀髪の女性が立ち上がる。激昂して大声を上げる彼女に、先ほどまで笑っていた周囲の冒険者達は、緊張した表情へと変わる。どうやら、怒らせてはいけない人を怒らせたようだ。
愛の保護者として謝罪するため、私は怒る女性の前に立つ。
「おいこら、てめぇ!!私が銀琴のヤクモと知って、喧嘩を売ってるんだよなぁ…って、あれ?美雪たちじゃん。」
「あ、トウカさん!お久しぶりです。」
愛が投げたマグカが刺さった女性は、ファストの町のダンジョンで親しくなった銀琴のヤクモこと、トウカ・ヤクモさんだった。
「奇遇だなー!久しぶりー!って、そんなに前でもないか!色々あったから久しぶりに感じるぜ!」
なぜか遠い目をして力無く笑うトウカさん。
きっと破天荒なフィーネさんに連れ回されたのだろう。心の中で同情していると、意識を取り戻したトウカさんが満面の笑みで、私の肩を叩く。
「って、私のことはどうでも良いか!!今は再開の喜びの方が大事だな!!美雪たちも王都に来てたんだな!元気にしてるかー?」
「うん!元気!!」
トウカさんの質問に、元気いっぱい愛が答える。元気いっぱいな愛に満足気に笑ったトウカさんは、私達が夜ご飯を食べていた席を見渡した後、笑顔で答える。
「愛ちゃんは相変わらず元気いっぱいって感じだな!良いことだ!なぁ、せっかくだし私も美雪達の夕食に一緒していいか?さっきファストの町から戻ったばかりで、一人寂しい晩酌中だったんだよ!」
「はい、もちろん!こちらにどうぞ!」
トウカさんの言葉に、私達は場所を開ける。
自分の席からビールのような飲み物が入ったジョッキと串焼きの盛り合わせを持ってきたトウカさんは、にっこにこでどかっと腰を下ろす。
腰を下ろしたトウカさんの頭に、そろーっとユウジが腕を伸ばしているが、トウカさんによってバシッと払われる。ユウジの奇行を気にすることなく、トウカさんは自分のジョッキを持ち上げながら、笑顔で話しかける。
「美雪たちも飲むかー?今なら再開を祝して、私がご馳走するぜー!」
「あ、でしたら一杯だけ
「「「ダメ!!」」」
トウカさんの申し出を断ったら失礼かなーってことで、一杯ご馳走になろうとした私の言葉は、他三人の仲間達の大声によって止められる。胸の前で両手をクロスしての、全力の抗議ポーズだ。
「え、大丈夫よ。シロ君の光魔法リカバーで二日酔いも治
「「「ダメ!!絶対!!」」」
ファストの町で二日酔いになって苦しんでた私を心配してくれ、お酒を飲むことを止めてくれたんだ…と嬉しくなったが、どうやら違うらしい。胸の前で両手をクロスしての、全力の抗議ポーズだ。
「もしかして、美雪って酔っ払うとヤバい系?」
「そこまででは
「「「はい、ヤバい系です。」」」
トウカさんの疑問に、三人の声が合わさる。
お酒を飲んだら暴走することは自覚していたが、こうはっきりと言われると少し落ち込む。しゅんとする私をにやにやと笑ったトウカさんは、ぐびっとジョッキを一口あおった後、楽しそうに私に語りかける。
「そこまで言われると、私としては美雪を酔っ払せてみたいとこだが、それは後日の楽しみに取っておく!王都に来て少し経ったってことは、色々と悩みがあるだろう。私も昔そうだったからなー!あ、エールおかわりー!!」
ビールのような飲み物は、この世界ではエールっていうのか。なんてことを考えながら、楽しそうに笑うトウカさんを見守っていると、ユウジがそろーっとトウカさんの頭に手を伸ばしている。
さっきから何してるの?失礼でしょって注意しようとも思ったが、ユウジの手はトウカさんにバシバシ払われている。問題なさそうだし、良いか。
おかわりのエールをぐいっとあおったトウカさんは笑顔で私達に話しかける。
「ってわけで、今日は悩める後輩たちの話を、先輩である私が聞いてやるよー!!さぁ、遠慮せずドンドン話しちゃいなー!」
少し乱暴な喋り方が目立つトウカさんだが、実は後輩への面倒見が良い。
ファストの町のダンジョン内でも、高い肉を振る舞ってくれたり、出会うモンスターの特性を教えてくれたりと、私達に優しくしてくれたトウカさん。
トウカさんなら、私達の現状も解決してくれるかも…、と思うが、なかなか先輩冒険者に相談することが出来ない。ためらっている私達へ、エールをぐいっとあおったトウカさんは笑顔で私達に話しかける。
「溜め込んでも仕方ないぜー!!先輩たる私に、後輩として悩みをぶつけちゃいなよー!ほら、私も同じ転生者だし、転生者独自の悩みにも答えられる自信もあるぜー!!だから、遠慮せずに先輩に話しな。先輩は優しいよ?」
「そこまで言ってくれるなら、遠慮なく相談します。実はですね…。」
先輩風をびゅうびゅう吹かせるトウカさんへ、先ほどまで四人で話し合っていた王都での問題を相談してみる。トウカさんは私達の話に対して楽しそうに、あー分かる分かる。あるよねーと相槌を打ちながらエールをあおっていく。
全てを話し終えたところで、トウカさんがにやりと笑った後、パンッと一拍手を打つ。
「美雪達の悩み、ばっちり理解したぜー!!要は、もらえる経験値が高くて、実入りの良いクエストを受けて、早く等級を上げたいと!!そういうことだな!!」
「はい。そんなところです。」
「オッケー!任せとけ!美雪達の悩み、私がばっちりと解決してやるよ!!我に秘策あり!!」
「「「おー!!」」」
私達の歓声に気分を良くしたトウカさんは、飲みかけのエールをぐいっと飲み干し、にかっと笑う。
「詳細については明日!私にも準備があるからな!明日の昼前に、この場所に来てくれ!んじゃなー!」
少し酔っ払っているのか、ふらふらとした足取りで冒険者ギルドから去っていくトウカさんを、期待半分、不安半分で見送る。
この時の私は、後輩想いのトウカさんだから悪いことにはならないだろう、と楽観的に考えていた。
しかし、トウカさんの提案によって私達は大事件に巻き込まれることになる。
「いやいや、待って!!お願い、トウカさん!!待って!!俺のマグカを返して!!って、酔っ払ってるのにトウカさんの足取り早いな!!待てー!!」
大事件に巻き込まれることなど知る由もなく、この時の私達はトウカさんの頭に刺さったままのマグカを求めて走るユウジを笑っていた。




