王都の宿屋に泊まろう
前回のあらすじ:異世界お約束の門番とのいざこざに遭遇。危うく門前払いされるとこだったが、シロ君の機転によって無事に(?)王都入りを果たす。
「美雪ー!見てー!!なんかすごそうな人たちの石像!!」
無事に(?)王都入りをした私達は、門を出てすぐの広場でこれからの作戦会議を行っていたが、愛が急に広場に立つ四人の石像を元気いっぱい指差す。
「そうか、愛は王都初見だから、この英雄像も初見なんだなー!良いぜ、つい先月まで王都に在住していた俺が説明してやる!!」
「シロ君、英雄像に対しての説明をお願い。」
「え?あ、はい。分かりました!英雄像に対して、説明をします!」
「なんで!?俺が説明するって言ってんだろ!なんでシロに説明を依頼するんだよ!?」
大きな声でツッコミをするユウジを無視して、シロ君は説明を始める。
「この四体の石像は、過去にこの王都を幾度となく救った伝説の冒険者パーティ、古の英雄たちを称えたものになります。左から、闘神ラクザン、勇者ワタル、剣聖アキラ、賢者ヒバリ。どの方も、天上の実力を持っていたと言われます。」
「四人とも強いのかー!!なっるほどー!!んじゃ、どうやったら、四人と戦えるの?」
「すぐに戦おうとするんじゃない。」
愛の頭をぺしっと注意する。
むむむーっと愛が非難いっぱいの表情を私に向けるが、そんなことなど気にせずにシロ君が解説を続ける。
「四人と戦うのは不可能です。まず、四人が活躍したのは今から百年以上前ですから。さらに、別の世界からの転生者だったとされる英雄達は、元いた世界に脅威が迫ってることを知り、人々を救うため、七つの原初のダンジョンを攻略し、神に元の世界に返してもらったと言われています。」
七つの原初のダンジョン。その単語に、いつかの夢の中でノアが言っていた話を思い出す。
原初のダンジョンっていう七つの特殊なダンジョンをクリアすると、この世界の創造神であるノアが、叶えられる範囲で願い事を叶える特典がもらえる…だったわね。古の英雄は、その特典で元の世界に戻って、脅威から人々を救ったと。なるほど。
明らかに強者って分かる古の英雄たちの不在に、愛のテンションはだだ下がりしてるかなーっと思ったが、そんなことはなかった。愛は一体の石像をまっすぐと見つめていた。
「どうしたの、愛?闘神ラクザンの石像を、そんなに見つめて?見るからに武闘派だから?」
「ん?そういうのじゃないんだけど…。なんだかこの石像、どこかで見た覚えがあるなーって思って。全然思い出せないけど。なんだろうなー…。」
必死に記憶を思い出そうとしているのか、真剣な表情で闘神ラクザンの石像を見つめる愛。
愛のこんな真剣な表情も珍しいなと思っていたところで、ぐーっという可愛らしい音が、愛のお腹から聞こえてくる。
「あ、お腹空いた。ラクザンって奴のことを、考えても思い出せないものは仕方ない!気にしないことにする。でも、頭を使ったら、お腹空いた!美雪、ご飯にしよう!」
真剣な表情をしていても、愛さんは愛さんである。愛の提案に空を見上げると、日は沈み始め、もうすっかり夕方になっていた。
「今日は遅いし、ご飯食べて宿屋で休もっか!王都の探索は、明日にしましょう!シロ君、おすすめの宿屋ある?」
「それなら、僕が王都に来た時にいつも泊っている宿屋にしましょう!料金もお手軽な上に、料理も絶品です!ただし、驚かないでくださいね!」
「「「驚く?」」」
驚く宿屋という単語に、首を傾げる私達三人に対し、にこりと笑ったシロ君は王都の中央へと走り出す。
「着いたら分かります!それでは、行きましょう!」
驚く宿屋とは?何度かシロ君に聞いてみたが、秘密ですと教えてくれなかった。
首を傾げながらも、シロ君に案内されるがまま、王都の街中を進む。シロ君に引き連れられながらも、私は王都の街並みを観察する。土の上に木製の家が建てられた自然調和のファストの町とは異なり、王都は石のレンガで整備されており、町としての繁栄具合の違いを感じさせられる。
魔力を込めると光る、魔光石で作られた街灯が薄暗くなってきた街を明るく照らす。しかし、心なしか行き交う人々の表情は暗いように感じる。疲れや、将来の不安を隠しきれないといった表情。
王都の中心であったトラップタワーの喪失が原因かな?明日、確認してみよう。
王都の街並みを観察しながら歩いていたところ、目の前になんだか見覚えのある二階建ての立派な木造建築が現れる。
既視感のある建物の入り口の看板を確認すると、そこには宿屋 金字塔と書かれている。
外見も名前も、とある宿屋にそっくりだなーと思いながら宿屋の中に入った私は、聞こえてきた声にさらに驚かされる。
「はーい、いらっしゃーい!自称王都一番の宿屋!金字塔へようこそー!」
「ようこそ。」
聞こえてきた声は、元気な女の子の声と、静かだけど透き通る声。二人の聞き馴染みのある声に驚きながらも、宿屋のカウンターを確認すると、見知った二人の少女が立っていた。
「え!?ナチュラさんとラルチさん!?なんで王都にいるんですか!?」
カウンターに立っていた二人の少女は、ファストの町でお世話になった宿屋の看板姉妹にそっくりであった。私の質問に、ナチュラさんにそっくりな方の少女が、にこっと笑いながら答える。
「もしかして、お客様はファストの町から来ましたか?」
「はい、そうです…。でも、なんで分かったんですか?」
「やっぱり!ファストの町から来たお客様は、私達のことをナチュラとラルチと呼ぶんですよね!でも、残念ながら違います!他人の空似ってやつです!私はこの宿屋金字塔の看板娘、ラクレ!こっちの大人しいのが妹のレトチ!よろしくね!」
「よろしく。」
性格が間逆な姉妹の挨拶。ますますファストの町のナチュラさん、ラルチさんにそっくりである。
驚いて言葉を失った私に対して、シロ君がにこっと笑った後、得意気に説明を始める。
「どうですか?驚きましたか?ファストの町のナチュラルチーズにそっくりでしょ?でも、本当に血のつながりとかは無いらしいですよ。姫騎士様の鑑定でも…。あ…。あ…?あー…。」
何かに気付いのか、シロ君の言葉が止まる。まるで、過去の何かの重大なことに気付いた表情。
「姫騎士の鑑定がどうしたって?そもそも姫騎士って誰?」
「え!?あ、なんでもないです!!知らない方が良いことってありますし!!今は、二人の紹介でしたね!!彼女らは王都のラクレットチーズって呼ばれてます!!ラクレさんとレトチさんなので!ラクレットチーズです!!」
「はーい!ラクレットチーズです!よろしくー!」
慌てた様子のシロ君は、必死で何かを誤魔化した。しかし、ラクレさんとレトチさんの挨拶を無視するわけにはいかないので、シロ君が気付いたことは保留することにし、二人へと頭を下げる。
「ラクレさん、レトチさん、しばらくの間お世話になります。よろしくお願いします。」
笑顔でラクレットチーズに挨拶をしたところで、愛が大声を上げる。
「これがさっきシロ君の言っていた、驚く宿屋ねー!!銀字塔そっくりー!!」
「はい!看板娘だけでなく、宿屋の中の造りもそっくりなので、美雪さん達にとっては過ごしやすいと思って、この宿屋を紹介させていただきました!宿屋の料金だけは、王都料金で少し高めになっているのが残念ですが…。」
「ごめんねー!これでも、物価の高い王都じゃ安い方なのよー?」
やはり、王都は物価が高いか…。これは、クエストも実入りが良いものを選ばなくては…。
「ファストの町の宿屋を知ってるなら、説明不要かもだけど一応。一階は宿屋のカウンター、私お手製のお菓子販売スペース、食事スペースなど。二階が宿泊スペース。今日は二人用の部屋が二つちょうど空いてる。男女分かれて、そこに宿泊すると良い。」
クエストを選ぶ方針を決めていたところで、ラルチさ…、じゃなかった、レトチさんが宿屋の案内をしてくれる。空室もちょうどあるらしい。良かった!
「ラクレさん、ひとまず三日分の宿泊と食事をお願いします。」
「ひとまず?坊ちゃま、今回は長期滞在になりそうなの?」
「はい!僕はこれから冒険者として、この町で過ごすことになりました!なので、ひとまず三日です!恥ずかしながら、手持ちゴールドが少ないので…。明日、ゴルド商店でモンスターの素材を売ったら、延長しますが、いったん三日分でお願いします!」
シロ君の説明の中に出てきた、よく知ったゴルド商店という単語を私は見逃さない。
王都には、ゴルド商店まであるのか…。確かに、おばちゃんはゴルド商店のファスト支店って言ってたけど…。まさか、おばちゃんそっくりの人が店主をしてるのかな…?いや、そんなわけないよね…?
「坊ちゃまが冒険者。だから、いつもの美人メイドさんがいない。なるほど、納得。」
「いやー、坊ちゃまが冒険者の仲間入りかー!ずっと冒険者になりたいって言ってたもんね!願いが叶ったんだ!おめでとう!」
「おめでと。」
「ありがとうございます!」
シロ君の言葉に、ラクレさんとレトチさんが祝福の拍手をする。そんな二人の祝福に、シロ君は頬を赤らめながらも、ぺこぺことお辞儀をする。なんだろう、ほっこりする。
「それじゃ、坊ちゃんは冒険者になったことだし!坊ちゃま呼びは今日でお終いだ!今日からは…、今日からは…。えーっとー…。」
「坊ちゃまの名前って何?」
「えー!?何回か訪れてますよね!?名前知らなかったんですか!?」
お気に入りの宿屋に名前を憶えられてないことによって慌てるシロ君と、お得意さんの名前を知らなかったことに対して気まずそうなラクレさんとレトチさん。そんな中、とある大声が三人の沈黙を破る。
「シロ君の名前は、シロ君だよ!!」
戸惑う三人に対し、愛が胸を張って大声で答える。いや、シロ君の本名はホワイト・ヒューガルドであって、シロ君はあだ名…。そんな私の困惑に気付くことなく、求めていた答えがもたらされた、とばかりにラクレさんとレトチさんが拍手を始める。
「「シロ君、おめでとう!」」
「おめでとう!!」
ラクレさんとレトチさんの言葉に、愛の言葉が重なる。いや、なんで愛も一緒に?
「まぁ、シロ君で良いですけど…。」
諦めたように笑うシロ君。愛のせいで、シロ君の呼び名が決まってしまった。まぁ、本人が良いって言ってるし、いいか。
ラクレさんとレトチさんの邂逅に驚いた私達だが、長旅の疲れがどっと押し寄せたため、早めのお風呂と夕食をいただくことにした。
夕食は、ワイルドターキーの煮込み定食。甘辛い濃い目の味付けに肉から出るジューシーな脂が堪らない鳥の煮付けに、異世界の人参であるワイルドキャロットの漬物と、硬めに炊かれた白米、といった日本人垂涎の定食。
既視感のある一品だけど、安定した美味しさが疲れた体に染み渡る。大盛りのご飯を何度もおかわりする愛を横目に、私はほっと一息を吐きながら熱いお茶を飲んで、落ち着いた時間を過ごす。あー、疲れが波のように押し寄せてくるー…。
夕食を食べ終えたまったり空間の中で、疲れ切っていたシロ君が頭を左右に揺らし始めたため、早めに男女分かれて各部屋に移動して、長旅の疲れを取ることにする。
「ごめん、ユウジ。シロ君を頼んだ。でも…、…襲っちゃダメよ。」
「美雪さんが俺のことをどう思ってるかが実感させられる忠告だな…。大丈夫、俺は女にしか興味無い。シロのことは、ちゃんとベットに寝かせるよ。それに、さすがの俺も長旅で疲れたから、早めに今日は寝る…。正直、フラフラ…。」
シロ君のことをお姫様抱っこするユウジにシロ君の貞操の危機を感じるが、ユウジの言葉を信じるなら、大丈夫だ。ユウジはくそナンパ野郎だから、女性にしか興味無いだろう。
いくら、シロ君が儚い系の、異国美少年だとしても、大丈夫…。うん、大丈夫。
大丈夫か…?あれ、大丈夫か…?なんだか、不安になってくるぞ…。本当に大丈夫か…?
「美雪ー。なに扉ガチャガチャしてるのー?疲れてるでしょー?早く休もうよー。」
ユウジへの安心できない感情から、男部屋のことをちらちら観察してた私は、愛の注意で我に返る。
賢いシロ君なら大丈夫、と自分に言い聞かせ、愛の待つ女部屋に入る。女部屋の中では、愛が窓を開けてぼんやりと外を眺めていた。ひんやりとした夜風に、さらさらと髪を揺らす愛の横に並び、私も一緒に外を眺める。
「どうしたの、珍しくぼんやりと黄昏ちゃって。」
「なんだか、知らないとこに来たんだなーって感じがして。見て、昨日とは全く違う景色だよ!夜なのに、明るい!人もいっぱい!」
「そうだね、王都は明るいね。」
きらきらと光る街灯が、王都を行き交う人々を明るく照らす。家族が待っている家に向かって、笑みを浮かべながら帰路に着く人、酒に酔っているのか仲間と一緒に大声で笑う人、クエストか何かで失敗したのか悔しい表情を浮かべる人。
様々な表情を浮かべる人々を、宿屋 金字塔の二階から愛と一緒にぼんやりと眺める。
こうやって、落ち着いて眺めてみると、異世界には多くの種族の人がいることが実感させられる。転生前の日本では見ることのない、赤い髪や青い髪といったカラフルな髪の人々はファストの町で見慣れたけど、二足歩行の大きな犬っぽい狼人族や、長い耳の白肌痩身のエルフ、ずんぐりむっくりの髭面ドワーフなど、亜人族も多くいる。
さすが王都、世界中の色々な種族な人が集まるんだな、なんて考えていると愛がぼそりと呟く。
「美雪、ありがとう、ごめんね。そして、よろしく。」
「ん?急にどうした?」
急な愛の感謝、謝罪、挨拶に、私は驚いて愛の言葉の意味を確認する。愛の表情は、普段見ない真面目なものだった。そんな表情に驚いた私に対し、にこっと微笑んだ愛は、先ほどの言葉の意味の説明を始める。
「ありがとうは、出会ってばかりの私を黒い熊から救ってくれた上に、ここまで一緒に戦ってきてくれたことに対する、ありがとう。ごめんねは、黒熊との一騎打ちで心配をかけただけじゃなく、ファストの町のダンジョンで、考えずに突っ走って、いっぱい迷惑をかけたことに対する、ごめんね。美雪には、ありがとうと、ごめんねの気持ちでいっぱいだよ!だから、ありがとう、ごめんね!」
いつもと違う真面目な表情で、今までの感謝と謝罪を伝えた愛に、なんだか頬が熱くなるのを感じながら、愛の言葉の続きを待つ。
「そして、最後のよろしくねは、これからもいっぱい迷惑かけるけど、これまで同様によろしくねのよろしく!美雪から見たら問題児な私だけど、よろしくね!」
謝罪と感謝に対し、これからも同じく迷惑をかけていくよーと、堂々と宣言する愛。そして、愛は私に対して、ゆっくりと拳をまっすぐ伸ばす。
ふふっ、愛はやっぱり変わらないな。
この真っ直ぐで、向こう見ずで突っ走る愛の性格が、先のことを悩んで足踏みばかりの私に無い行動力を与えてくれる。愛がいたから、ここまで走ってこれたんだろうな。
私も愛に負けないくらい、感謝と謝罪があるんだよ。喉から出かかった言葉だけど、口に出したりはしない。だって、なんだか恥ずかしいもん。
頬が赤くなり、涙腺が緩むのを感じながらも、弱いところは見せないため、全力で様々な感情を封印した私は、愛の言葉に対して短い言葉で応える。
「よろしく。」
大きな感謝と、少しばかりの謝罪を込めての言葉を、短く一言にまとめて伝えた後、愛の突き出した拳に、私は自分の拳をこつんとぶつける。
私の短い言葉と拳へのこつんに、愛はにっこりと微笑んだ後、開いた窓から外に向かって大声を上げる。
「来たぞ、王都ー!!待ってろよー、まだ見ぬ強敵たちー!!私の剛が、鬼火流の剛が、お前ら全員ぶっ倒してやるー!!鬼火流の剛は最強なんだー!!魔法なんて、よく分からない力に甘えてるお前らには、私の剛は負けない!!私は鬼火流の剛で王都最強…、いや、世界最強になるぞー!!うおー!!」
拳を突き出しながらの愛の大声の目標発表に少し驚いたが、テンションが上がっていた私は、負けじと大きく息を吸った後、大声で愛と同じく王都での目標発表をする。
「それじゃ、私は最強を目指す愛を最大限フォローする!!猪突猛進で、バカでアホな愛だもーん!!私がフォローしなきゃ最強になる前に、ころっと騙されるか、罠を踏んでぽっくりだー!!だから、私が冷静沈着、知的にフォローする!!でも、私だって愛に負けないくらい、強くなりたーい!!だって、この異世界じゃ、力は必要不可欠だー!!待ってろ、魔王ー!!お前が思い描く戦争は、私が絶対に止めてやるー!!うおー!」
突然の二人の大声に、宿の前を行き交う人々が驚いた表情で私達のことを見てくるが、テンションの上がった私は気にしない。むしろドヤ顔で応える。
そんな私の表情を見た愛は、腹を抱えて笑い出す。
「…ぷふっ!!あははははは!!美雪が大声あげてる!!感情爆破じゃーん!!キリッ、眼鏡くいっな美雪には珍しい!!あははははは!!」
「いやいや、そんなに眼鏡くいってしてないし、愛の目標も大概よ!!相変わらずの猪突猛進、後先考えずの直進っぷりじゃない!!ふふっ、たまには私の苦労も推し量って、大人しくしてよ!!…ふふっ!」
「あはは、私が大人しくー?私の中の剛が、鬼火流の剛が、そんな甘っちょろいこと許さないよー!!あははははは!!」
「出たっ!!愛の得意の剛!!剛でなんでも解決できると思ったら、大間違いなんだからー!!たまには、知的陣のシロ君と私の苦労も考えてよねー!!」
「美雪とシロ君が、私の代わりに考えてくれる。だから、私は鬼火流の剛を押し通せる!モンスターも倒せて、お金と経験値が増える上に、レベルアップもして一石二鳥!まさに、ウィンウィン!!やったね、美雪!あはははは!!」
「ぷふっ!!、まさに、剛の棚上げね!!って、剛の棚上げ?ことわざみたいに言ってみたけど、そんな言葉は存在しないな。私も愛の剛に洗脳されたか?」
「美雪が剛!?…ダメだよ!!美雪が剛を言い始めたら、私達のブレーンがいなくなって、大変なことになっちゃうよー!!って、ブレーンって何?プルーン?」
「ブレーンってのは、頭脳役って意味だけど…。…ぷふっ、あはははは!!だめだ、愛とは真面目な話なんか出来ない!あはははは!!こんなに性格が違うのに、こんなに一緒に話してて楽しいのは初めて!!だめだ、面白い!!笑いが止まらない!!あははははは!!」
「あははははは!!美雪が涙を浮かべて爆笑してるー!!鬼の目にも涙ー!!あははははは!!」
「鬼の目にも涙ー!?あははははは!!鬼火流が私のことを鬼って言うかー!?あははははは!!」
「ほんとだー!!でも、美雪は鬼みたいに目つき悪いもん!!あははははは!!」
「目つきが悪いの、気にしてるんだぞー!!あははははは!!」
両目に涙を浮かべながら、愛と私は大声で笑い合う。なにがそんなに面白いのかと聞かれても、当の本人である私達も分からない。とにかく、面白い。笑わずにはいられない。
私達の大きな笑い声は、王都の夜の闇の中に消えていく。
「あはははは!!」
「あはははは!!」
「うるせー!!何時だと思ってんだー!!美雪さん、愛さん、夜中にうるさくするってんなら、金字塔から追い出すよー!!」
私達の大声での爆笑に負けないくらいの大声で、下の階からラクレさんの注意の声が響く。
「「すみませんでしたー!!」」
大きく謝罪した私達は、自分のベットへと飛び込む。
先ほどまで大声で笑い合っていた私達だが、ファストの町から王都セカド・エーデルワイスまでの道のりで疲れていたためか、あっという間に睡魔の誘惑に負けてしまう。
瞼が重くなるのを感じながら、明日以降のことを考えてみる。きっと、明日からは多くのハプニングが私達を待っているだろう。目を瞑った私に、様々な不安が波のように押し寄せてくる。
でも、そんな不安は疲れと睡魔の誘惑に押し負ける。明日のことは、明日なんとかなるだろう。明日の私、がんばれーってことで、面倒なこと、不安なことは明日の私に託して、今日の私は眠りに着く。
こうして、目立ったハプニングも無く、私達は王都での一日目を終えた。




