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魔王退治は要件定義から!  作者: 荒井清次
王都挑戦編 -所持金すべて失い歌姫を護衛する-
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騒々しい朝

前回のあらすじ:ファストの町にて冒険者として経験を積んだ美雪(みゆき)。新たな仲間、ホワイト・ヒューガルド(シロ君)とユウジと共に、王都セカド・エーデルワイスに向けて人引き車を進める。


「そろそろ夜になるねー。シロ君、残りどのくらい?」


「まだ三分の一も進めてないですね。このスピードなら二日か三日はかかると思います。」


まだまだ元気いっぱいで人引き車を漕ぐ(あい)と、その声に答えるシロ君の声を聞き、周囲を見回す。始まりの草原の空は朱色に染まり、夜の訪れが近づいていた。


「それじゃ、今日はこの辺のセーフティストーンの近くで、夜営としましょう!」


まだまだ王都までの道筋も遠いため、今日は近くのセーフティストーンで夜営をすることに決める。簡単な食事を済ませた私達は、安全な始まりの草原を信用し、監視よりも体力の回復を優先し、全員でファストの町で購入した寝袋にくるまる。

宿屋のベッドに比べたら快適と言えない睡眠環境だが、旅立ちの疲れもあってか、私達はあっという間に眠りについた。


そして、私は夢を見る。


「美雪、其方には様々な取り計らいをしてもらったのにすまない。だが、此度の人族の横暴、魔族の怒りを鎮めるのも限界だし…、なにより我も我慢の限界だ。悪いが、我々魔族の怒りの前に、人族諸共沈んでもらうぞ!!」


見たことのない禍々しい装飾が飾られた部屋。目の前の黒いドレスを着た***は、額の三本角に赤いオーラを纏い、怒りを露わにする。私達を睨みながら、手に持つ杖を頭上に掲げる。


「地の精霊よ、我が呼び声に応じて、目の前の敵を重力による檻にて地に縛り付け給え!!グラビティバインド!!」


魔族の王である***との最終決戦は、膨大な魔力と、それ以上の殺気を込められた***の大地魔法グラビティバインドによって開幕される。私達の体は、不可視の重力によって地に縛り付けられる。


「ここは僕が防ぎます!!光の精霊よ、我が声に応じて、我らに降りかかる災厄を防ぎ給え!!スフィアシールド!!」


私達に降り注ぐ重力は、シロ君の光魔法スフィアシールドによって防がれる。周囲に発生した球状の透明な壁は、ギシギシと鈍い音を響かせながらも、降り注ぐ大地魔法による異常な重力から、私達を守ってくれる。この数年で成長したシロ君は、心身だけでなく光魔法も成長していた。


「我が大地魔法を封じたくらいで良い気になるでないぞ!!ブレイズストーム!!」


大地魔法を防がれても、***は怯むことなく、火炎魔法と嵐魔法の複合技であるブレイズストームを詠唱破棄で放ってくる。燃え盛る炎の渦が、凄まじい熱気と共に私達に迫る。


「シロにだけ活躍させねぇぞ!!デュランダルよ、魔力ごと断ち切れ!!断魔剣(だんまけん)!!!」


***の放ったブレイズストームは、ユウジの神話級大剣デュランダルによって断ち切られ消滅する。


「おい、ユウジ!!魔法ぶった斬れるなら、さっきの体が重くなる魔法もぶった斬れよなー。」


「あんな広範囲魔法を全て斬れなんて無茶言うなよ…。」


断魔剣に対して不服そうな愛に向けて、ユウジが溜息を吐く。そんなユウジに、愛はやれやれといった仕草をした後、***を指差す。


「おい、***!!私達だって、強くなったんだぞー!!前みたいに、簡単に倒せると思うんじゃないぞ!!」


「愛さんの言う通りです!!美雪さん!!僕らは、度重なるダンジョン攻略によって、***にも負けない実力を身につけました!!」


「今の俺達なら***にだって負けねぇ!!いくぞ!!」


愛、シロ君、ユウジ。三人の勢いの良い声が周囲に響く。私は覚悟を決めて手に持つ弓に、矢を番える。


「**********!!!」


がばっ!!

最大限まで魔力を込めた矢を***に向かって放ったところで、夢から覚める。やけにはっきりとした夢だったため、寝ぼけまなこの私は思わず周囲を見渡してしまう。禍々しい装飾の壁はなく、眠りに着く前と同じ草原。ひとつ違うのは、空が明るくなり始めていたこと。草原には朝が訪れていた。


「んー。また不思議な夢かー。なんだか、どこかでいつか見たような夢のような気が…?前は愛が仲間になった時だったはず…。今回は、シロ君とユウジが仲間になったからかな?まぁ、良いか。」


異世界に来てから度々見る不思議な夢。成長した三人の姿から、もしかしたら未来予知かもしれないと思いつつも、気にしても仕方ない。覚えておこうくらいの感覚で、記憶の片隅へと追いやる。

周囲を見回すと、他の三人はぐっすりと眠りについていた。すやすやと眠りにつく三人の顔を見た時、私の中の悪戯好きな悪魔がにやりと笑う。マグカから黒影剛弓(くろかげごうきゅう)-(きわみ)-を取り出しながら、片手でマイクを持っているようなポーズをする。準備完了ってことで、私は小声で話しはじめる。


「はい、それでは今日はこちらの鬼火 愛さん、ホワイト・ヒューガルドくん、苗字は何だったっけ?まぁ、良いか。なんとか・ユウジの三人に寝起きドッキリを仕掛けたいと思います!いや~、しっかし、ぐっすり寝てますね~。ダンジョン攻略から少ししか休まずに進軍してるから、仕方ありません。仕方ありませんが、ここはモンスターが出るフィールド!いつモンスターに襲われてもおかしくない状況での、爆睡!!これはいけません!というわけで…、お仕置きを実行したいと思います!!」


ドッキリ番組のような雰囲気作りをした私は、弓を真上に構え、ロケットアローの準備をする。ちょうど大きな鳥のようなモンスターが飛んでいたため、そのモンスターに狙いをつける。少し遠いけど、私には転生特典スキルの必中(ひっちゅう)がある。この距離でも問題なく当てられるだろう。


「起きろー!!ロケットアロー!!」


ドゴォォオオン!!!と轟音を響かせ、真上に矢が飛んでいく。愛に対して以前行った寝起きドッキリの時に比べ、レベルと武器の性能が上がったためか、ロケットアローの爆発音も大きくなっている。


「ミユキはレベル21に上がった!HPとMPが全回復した!攻撃が3上がった!防御が6上がった!魔力が15上がった!魔法防御が6上がった!速さが15上がった!スタミナが9上がった!状態異常耐性が3上がった!」


大きな鳥のようなモンスターに当たったためか、レベルが上がった。ラッキー!羽や肉が降って来た前回と違って、ドロップアイテムはマグカに回収されるため、今回は何も降って来ない。その代わりに白い光の粒が私の周囲をぐるっと回る。

あ、レアドロップまで手に入った。ラッキー!レアドロップは後で確認することにして、三人の様子を確認する。


「ふーっ!!ふーっ!!」


「わわわわわー!!わわ、わわ…?わー!!」


「お姉ちゃん、俺の後ろに隠れるんだ!!俺が守る!!って、あれ?」


突然の爆音に対し、愛は猫の威嚇のようなポーズで周囲をキョロキョロ警戒し、パニックのシロ君は大きく口を開けて「わ」しか言わなくなり、寝惚けたまま盾を構えたユウジはお姉ちゃんを守っている。

ユウジに姉がいたというどうでも良い情報が増えたことより、突然の危機に真っ先に姉を守ったことに驚きを隠せない。ユウジに新属性シスコンが追加された。


「美雪、今すごい音が!!敵襲!?敵襲!?って、なんだか前にもこんなことがあったような…?って、あー!!理解したよー!!また、寝起きドッキリってのをやったねー!!」


前に私の寝起きドッキリを受けたことのある愛が、大きな声で爆発音の正体を明かす。


「寝起きドッキリ!?美雪さん、どういうことっすか!?」


「わ?わー。わ、わー!!わー!!」


盾を下ろしたユウジ、まだ「わ」しか言えないシロ君。そして、にっこり笑顔ながらも怒気のオーラを背負って私の両肩を掴む愛。


「これは三人ともだいぶ怒ってるね。ごめーんね!じゃ、許されない雰囲気…だね。よろしい、素直に非を認めましょう。さぁ、大人しくしてるから、私を怒るが良い。」


「なんで怒られる側が偉そうなんだよ!!」


ユウジのツッコミから始まった三人からの説教は、約一時間続いた。


三人からしこたま怒られた私は、罰として朝食担当を命じられた。三人の怒りを鎮められる良い食材は無いかなとマグカを確認していると、一つの食材に目が留まる。


ワイバーンのモモ肉:ワイバーンから取れるモモ肉。毒は無く、鶏モモ肉に似た食感である。美味だが、生で食べるとお腹を壊すため注意。


「あー。もしかしなくても、さっきの寝起きドッキリの時に倒したのは、ワイバーンね…?シロ君、ワイバーンの情報を頂戴!」


少し離れたとこにいたシロ君に声をかける。先ほどまでは私の狼藉に怒っていたシロ君だが、心の広い少年はすでに許してくれている。


「ワイバーンですか?普通のワイバーンでしたら、適正討伐レベル20ですね。この始まりの草原にもいますが、数が少なく高い空を飛んでいるため、狙って倒すのは難しいです。平均適正討伐レベル6の始まりの草原の中で一番高い適正討伐レベルな上に、よっぽどのことが無い限り人を襲わないため、わざわざ狙って倒そうとする方も少ないですが…。そんなワイバーンがどうかされました?」


「寝起きドッキリの時のロケットアローが、ちょうどワイバーンに当たったみたいで…、運良くモモ肉が手に入ったのよね。寝起きドッキリのお詫びに、この肉を献上したいのだけど、朝からお肉って重いかな?」


「いえ、冒険者にとって朝からお肉を食べることは普通なので大丈夫ですが…、寝起きドッキリのついでにワイバーン討伐ですか…。相変わらずの規格外ですね…。」


溜息を吐くシロ君を横目に、私はマグカからワイバーンのモモ肉を取り出す。綺麗な桃色に、程よく脂身の入った立派なお肉である。近くで見ることが出来なかったが、ワイバーンは相当大きいモンスターだったらしく、ワイバーンのモモ肉はちょっとした丸太ほどの大きさがあった。


「おっと…、思ってたよりも大きいな…。これは切り分けないと中まで火が通らないかな…。マグカの説明に生で食べるとお腹を壊すって書いてあったから、しっかりと火を通すために切り分けなきゃ…。包丁、包丁っと…。」


「わー!!その大きい肉なにー!?朝からそんな大きなお肉を食べても良いのー!?すっごーい!!」


ワイバーンのモモ肉を目にした愛は、嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねながら、私へ近づいてくる。


「美雪、丸焼きにしよー!!丸焼きー!!でっかいお肉は豪快に丸焼きだよー!!」


さっきまでもう口利かないと怒っていた愛だが、目の前の大きなお肉に、愛の機嫌は最高潮に達する。


「いや、こんな大きな肉、切り分けないと中まで火が通せないだろ。ワイバーンの肉は中まで熱を通さないと危険だぞ。」


「えー!!丸焼きが良い!!丸焼きの大きな肉にかぶりつきたいー!!」


「愛さん、ワイバーンの肉はしっかり熱を通さないと危険ですよ。目に見えない細菌が含まれているらしく、生で食べたら確実に三日三晩お腹を壊しますよ。」


「でも、でっかいお肉の丸焼きは夢なんだよー!!剛を極めれば細菌を制すだよー!!少しくらいお腹が痛くなっても大丈夫!!剛を極めてるから!!だから、丸焼きしよー!!」


「いやいや、普通にダメだろ。って、俺を殴っても許可できないぞ!!だから、殴るのをやめろ!!痛いっ、痛い!!美雪さんからも愛を注意してくれ!!」


「ユウジはこんなこと言ってるけど、良いでしょ?丸焼きだよ?美雪?ね?ね?」


両手を合わせ、下から覗き込んでお願いしてくる愛。くりっとした瞳で真っ直ぐ私を見つめ、小さく首を傾げる。控えめに言っても、最高に可愛い。そんな愛のお願いに、私は結論を告げる。


「分かった。丸焼きにしましょう。」


「「え!?」」


「やったー!!さっすが、美雪ー!!」


喜びいっぱいで飛び跳ねる愛と、驚きから目を見開くシロ君とユウジ。そんな三人を横目に、私はワイバーンのモモ肉の丸焼きの準備を進める。


「いやいやいや!!僕とユウジの話を聞いてましたかー!?ワイバーンのモモ肉は生で食べたら危険です!!冗談とかではないですよ!?」


「愛の可愛いお願いに籠絡されてる場合じゃないぞ!!周りに何も無い草原で、お腹を壊したら一大事だぞ!?」


「そんなに慌てなくても大丈夫よ。愛の可愛いお願いに籠絡されたってのは否定しないけど、さすがの私だって、こんなところでお腹を壊したくないわ。ちゃんと考えがあるから、シロ君とユウジは安心して火を起こす準備をお願い。」


シロ君とユウジは、美雪さんがそう言うなら…と焚き火をするための木を集めに行く。

丸焼きにするため、突き刺して焼くのにちょうど良い棒とかあったかなとマグカを確認していると、竜槍(りゅうそう)という槍が増えていることに気付く。

これは、ワイバーンを倒した時のレアドロップアイテムね。マグカから竜槍を取り出すと、先が尖った長い鉄の棒のような武骨な槍だった。


「これならワイバーンのモモ肉を突き刺して焼けるわね。愛、私一人の力じゃ突き刺せないからお願い!この槍持って、構えててー!」


「槍持って構える?これで良い?」


「オッケー!それじゃ、私がワイバーンのモモ肉を持ってと…。これでオッケー!愛、ゆっくり力を入れて肉を刺していってー!」


「なるほどー!」


私の言葉に、なぜか表情を引き締める愛。

ん?どうしたんだろうって思う私を置き去りにし、愛は神妙な表情で槍を構える。愛の奇行に、最初は首を傾げるだけだった私だが、約一か月の付き合いからくる経験値が、愛が何を考えているかを教えてくれる。愛の考えに答えるため、私も表情を引き締める。

私の表情が変わったことを確認した愛は、にやりと笑った後、大きな声を上げる。


「なぜ、私の父を殺した!!貴殿と父は仲が良かったはずだ!!」


「くっくっく。お前の父は賢い男だったが、真っ直ぐ過ぎたのだ。王殺しという我が策謀に気付いてしまったお前の父は、生意気にも私に歯向かってのう。邪魔だったから、殺してしまったわ!お前の母と一緒にな!!」


「ぐっ…!!父だけでなく、母を殺したのも貴殿だったのか…!!両親の仇!!うぉー!!」


真っ直ぐに駆け出した愛が手にする竜槍は、私の持つワイバーンのモモ肉へと突き刺さる。鋭い槍の先は、徐々に肉の奥深くへと飲み込みまれていく。


「な、何…!?我が封印術を受けても、動けるだと…!?」


「剛を極めれば、この程度の妨害なんて、どうってことはない!!両親の受けた痛みと同じ痛みを抱いて死ねー!!」


突き刺さった竜槍の先が、ついに肉の奥から飛び出す。しかし、愛の勢いは止まらない。手にした竜槍に更に力を込める。


「ぐわぁぁぁあああ!!こうなっては、貴様も道連れだぁ!!我が奥義をくらえ、ソルトあんどペッパー!!」


「な、なに!?ここでソルトあんどペッパーだと!?これでは、お肉に塩コショウの下味がついて…、美味しく仕上がってしまう!!」


「くっくっく。これだけだと思うなよ…。我が倒れた後には、岩塩、おろしソース、オニオンソースに、特性甘辛ソースが貴様を待っている…!!覚悟するんだな…!!」


「なにっ!?肉を丸焼きにするだけじゃなく、焼いた後に美味しく食べるための準備も怠らないだと…!?死して尚、こんな術を残すなんて…!!くっ、暗黒将軍キルアイズ…、なんて恐ろしい敵だったんだ…!!」


「いや、美雪さんと愛は何やってんだ…?」


愛と戯れの小芝居を楽しんでいた私達に、冷静なユウジのツッコミが入る。


「よーしっ!!丸焼き肉の準備はオッケーだね!シロ君、焚き火の準備はどうー?」


「バッチリですよー!お肉を乗っけて焼くための支えも準備してあります!」


「さっすがシロ君!それじゃ、焼いていきましょー!」


「俺のツッコミは無視!?」


シロ君の用意してくれた支えの上に、竜槍を刺したワイバーンのモモ肉を乗せる。ちょうど火の位置にお肉が来るように調整し、じゅうじゅうと焼ける音を聞きながら、お肉の焼き上がりを待つ。


「肉が焼ける匂い~。たまらないー!!もう食べて良い?良いよね!?」


「いやいや、まだまだ焼き始めたばかりだろ!生で食べちゃだめって言われただろ!!」


今にも肉にかぶりつそうな愛を注意するユウジ。愛の無邪気な様子に溜息を吐きながら、ユウジは私に疑問をぶつける。


「それで、こうして焼き始めたわけだけど…、どうやって中まで熱を通すんだ?」


「ん?どうやってって…、今もこうして肉の中に熱を通してるけど…?」


「え?普通に焚き火で肉を焼いてるだけじゃん?シロ、どういうこと?」


「ユウジさんには分かりませんか…?美雪さんを取り巻く、この異常な魔力を…!!美雪さんは固有魔法である温度操作魔法を使って、焚き火の熱エネルギーをワイバーンのモモ肉の中心へ移動させて、内側からじっくり熱を加えているのです…!!これなら、表面にしか熱が伝わらない丸焼きでも、内側からしっかり熱を通せます…!!」


シロ君の解説に、私は額の汗を拭いながら、得意気な表情を浮かべ親指を立てる。忘れがちだが、私の異世界転生特典であるレア魔法は、温度操作魔法。熱エネルギーを操作する私の温度操作魔法なら、肉の内側から加熱することなど、造作もない。すっごい勢いでMPが減っていくけど、造作もない。


「どうだ、ユウジ…。これなら、内側から熱を通せるから、愛だってお肉に丸かじり出来るだろ…?MPをふんだんに使って行われる異世界的調理…。さしずめ私は、元の世界の家電製品も顔面真っ青な高機能調理器具ってとこね…。」


「いや、顔面真っ青は美雪さんじゃねぇか!!けっこう無理して調理してるよな!?実は辛いだろ!?」


「魔力耐性の高いワイバーンの肉に対して、こういう調理をしてるんです…!!普段の温度操作魔法とは異なる抵抗感のはず…。美雪さんにとって、限界を超えての魔力操作ってことが伺えます…。それでも!!美雪さんは決して温度操作魔法を止めません…!!高濃度の魔力が、美雪さんの周囲で渦巻いております…!!」


「くっ…!!私のMPががりがりと減っていく…。肉が焼けるのが先か、私のMPが尽きるのが先か…。ここが正念場…。でも、私は負けない!!愛の笑顔を取り戻せられるなら…!!」


「美雪…。私のために、そこまで…!!」


「朝食を作ってるだけで、ラスボスとの戦闘並みの臨場感を出すんじゃねぇよ!!肉を切り分けちまえば解決じゃねぇか!!」


「「「うわー、無粋…。」」」


「声を合わせるんじゃねぇ!!」


ユウジのツッコミが始まりの草原に響く。

騒がしく朝食の準備を終えた私達は、出来上がった丸焼き肉に、肉と一緒に焼いていたパンを合わせる。私の奮闘によって、無事にこんがり焼けた肉は、愛が六割、ユウジ二割、シロ君と私は一割ずつって感じで切り分ける。

一割でもちょっとしたステーキより大きいサイズがあったが、昨晩の食事が簡単なものだったことと、朝のドタバタでお腹を空かせていた私達にはちょうど良い。


「んー!!ジューシーな肉汁が口の中で弾けるー!!これぞ肉って感じ…。んまーい!!」


「愛は、まさに満面の笑みって感じですな…。そんなに喜んでくれるなら、私も魔力を振り絞ったかいがあったってもんですよ…。あー、薬草臭いMP回復ポーションですら美味しく感じる…。失われたMPが回復するこの感じ…。やり切った達成感が堪らないわね…。」


「いや、MPすっからかんじゃないっすか…。朝食作るだけで満身創痍じゃないっすか…。」


ユウジがジト目で何か言ってるけど、私は気にしない。愛の嬉しそうな笑顔に、私は満足。朝食で体力をつけた私達は、王都に向けての進行を再開する。


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