初めてのダンジョン挑戦!⑦
前回のあらすじ:物理攻撃も魔法攻撃も無力化し、無敵と思われた大悪魔グラットン。魔法吸収時の体の膨張に気付いた美雪は、限界まで魔法を吸収させることで大悪魔グラットンを爆発させることに成功した。
大悪魔グラットンをなんとか討ち取った私達を祝福かの如く、大悪魔グラットンの残滓である光の粒が頭上から降り注ぐ。そんな幻想的な光景に見惚れながら、私は勝利の余韻に浸っていた。
そんな私の頭の中に、異世界転生してから何度目かの聞き馴染みのある機械音声が響く。
「ミユキはレベル20に上がった!HPとMPが全回復した!
攻撃が4上がった!防御が7上がった!魔力が16上がった!魔法防御が7上がった!速さが10上がった!スタミナが6上がった!状態異常耐性が3上がった!」
大悪魔グラットンの討伐によって無事にレベル20の壁を超えることが出来た。ほっと一息ついていると、私達の戦いを見守っていたトウカさんが笑顔で駆け寄ってくる。
「へいへーい、美雪ちゃん達ー!戦い終わって呆けちゃうのは分かるけど、お楽しみのボスモンスターのドロップアイテムと、ダンジョン踏破の宝箱の確認をしなきゃー!」
満面の笑みを浮かべるトウカさんが指差す部屋の真ん中では、ぐるぐる回る光の粒の中から金色の宝箱が出現していた。
「あれがダンジョン踏破の宝箱ですか?」
「あぁ、そうだ!ボスモンスターを倒した後に、ああやって出現するのさ!って、金色の宝箱じゃねぇか!初級ダンジョンにしては珍しい!運が良いな、美雪!おめでとう!」
「ありがとうございます。って、宝箱の色も中身に関係あるんですか?」
「関係あるどころか、めちゃくちゃ重要だぜ!ダンジョン踏破の宝箱には、星四確定の金色、星三以上確定の銀色、星二以上確定の銅色って感じで、中身の期待値が変わるんだ!そして、全冒険者の憧れ、もはや伝説クラスの星五確定の虹色宝箱ってのもある!冒険者は苦労の末にボスモンスターを討伐したら、良い宝箱来いー良い宝箱来いーって祈るもんだぜ!」
トウカさんの話を聞きながら、目の前に現れた金色の宝箱を確認する。星四装備が中に入ってることが確定の金色宝箱。この宝箱から手に入る装備品は、これからの私達の旅に大きな戦力となることだろう。
表情を引き締めながら、きらきらと光る金色の宝箱に近付く。愛とシロ君とユウジも、私と同じように宝箱の前に立つ。
「皆さーん!少しだけ良いですかー!私の話を聞いてくださーい!」
宝箱を前に目をきらめかせる私達に向かって、トウカさんと一緒に私達のボスモンスター戦を観察していたフィーネさんが、華麗な笑顔を浮かべながら声を上げる。
「金色宝箱っていう楽しみは後にして、ボスモンスターのドロップアイテムを先に確認しませんか!私が観察していたところ、ボスモンスターを倒した後、ホワイト君にレアドロップがありましたよ!白い光だったため、星三のドロップアイテムだと思います!そちらを先に確認しましょう!」
「僕にレアドロップですか?全然気づきませんでした。確認してみます!」
シロ君はマグカを取り出し、ボスモンスターから手に入れたというレアドロップを確認する。
そんなシロ君の様子を見守りながら、私はこのダンジョンでの目的の一つを思い出す。それは、シロ君への恩返し。
転生したばかりで、異世界の常識をまったく知らなかった愛と私に、始まりの草原で出会ってから今日まで、数多くのことをシロ君は教えてくれた。そんなシロ君に私はまだ何も恩返しを出来ていない。
恩返しの一歩目として、何かしらシロ君が喜ぶ物を贈りたいのだが、町の領主の息子であるシロ君には、店で買える物じゃ喜ばせることは出来ないだろう。
そこで、モンスターのドロップアイテム等から、冒険者をしているシロ君が喜びそうな特殊な装備品を狙う、という贈り物作戦を密かに狙っているのだが、ことごとくシロ君が喜びそうな装備品は手に入れることが出来なかった。
クイーングラスホッパーとコボルドキャッスルのドロップアイテムは両方ともシロ君が装備出来ない重防具で、贈り物作戦は空振りに終わった。空振りどころか、姫甲飛虫の盾と狼将軍の鎧を装備するユウジに、頬を膨らませて怒っていたくらいだ。
嬉々とした表情でマグカを確認するシロ君に、私は両手を重ねて祈りを捧げる。良い装備品来いー、良い装備品来いー!!
「あ、これですね!マジックコート!受けた魔法攻撃の一部を吸収して、装備者のMPに変換することが出来るコートだそうです!」
コート!ということは、軽防具!それなら、シロ君でも装備できるはず!!待望の軽防具に、心の中でバンザイする。しばらくの間、マジックコートの説明を確認していたシロ君は、笑顔でとことこと私の下へと駆け寄ってくる。新しい装備品の披露かなと笑顔で迎えると、シロ君は私に向けてマグカを差し出す。
「はい!美雪さん!強力な防具おめでとうございます!」
アイテム受け渡しモードのマグカを私の前に差し出し、にこにこと笑いながら見上げるシロ君。あれ?もしかしなくても、シロ君はマジックコートを私に贈ろうとしてる?
「え…?シロ君が手に入れたんだから、シロ君が装備しなよ!コートってことは軽装備でしょ?」
「いえ、このマジックコートは美雪さんが装備するべきです!というか、僕たちのパーティの中では美雪さんしか装備できません!」
「軽装備だから、シロ君でも装備できるでしょ!私は青水晶の指輪を貰ったばかりだから、マジックコートはシロ君が装備してよ!」
シロ君と、どうぞどうぞ、いやいや、を数回繰り返したところで、シロ君の表情に諦めが浮かぶ。
「ふふっ、これを見ても同じことが言えますか…?」
シロ君は装備していたローブを脱いだ後、マグカからマジックコートを取り出し、バサッと羽織る。黒色を基調とし、金色の金具がきらりと光るシックでお洒落な細身のマジックコート。
そんなマジックコートを装備したシロ君を見て、私は言葉を失う。
「このマジックコート…。コートと言いつつ、ロングコートなんですよ…。成長期を迎えていない僕が装備すると、こんな有様になってしまうのです…。」
マジックコートを装備したシロ君は、指先が少し見えるくらい袖を余すだけでなく、コートの裾が地面を引きずっていた。まるで、大人用のコートを子供が着たような見た目。完全にサイズ違いである。
「あ…、うん、ごめん…。マジックコートはありがたく私が装備するよ。ほんと、ごめんね。」
「そんなに謝らないでください!」
悲しみを押し殺した表情で、シロ君はマジックコートを脱ぎ、私へ差し出す。
申し訳ないと謝りながら、シロ君からマジックコートを受け取り、私は装備していたレザーコートをマグカにしまった後、マジックコートを装備する。身長百六十センチ超えの私。女性の中でも背が高い方に属する私に、マジックコートはぴったりだった。
「やっぱり美雪さんにはぴったりでしたね!すごい似合っています!付与されている効果も強力ですので、これからの冒険で力になること間違い無しです!」
シロ君の賞賛の言葉に、私は首を傾げる。あれ、元の目論見とだいぶ違うぞ?
シロ君へ贈り物をするどころか、私が贈り物を受け取ることになってしまった。なぜこうなった?目論見と外れた結果に首を傾げていると、私の視界が突如暗くなる。
まるでサングラスをかけたような光景。
いや、かけたようなではない。まさに、私はサングラスをかけられていた。私にサングラスをかけさせるという謎の行動を行った張本人、銀琴のヤクモことトウカさんは笑う。
「ぶはははは!!美雪が黒のロングコートに、黒のサングラスを装備してっと、まんま殺し屋だな!!あえて凶悪な目つきをサングラスで隠してるのに、怖さは倍増だ!!殺気がすげぇ!!ぶはははは!!すげー!!こえー!!ぶはははは!!」
「美雪!!すごい!!すごいよー!!サングラスの奥にぎらりと光る眼光が、尋常じゃない殺気!!只者じゃないよ!!まさに、殺眼!!美雪の異名はやっぱり殺眼で決まりだね!!」
「トウカさん、突然サングラスをかけた上に、大爆笑するのは失礼ですよ…。愛ちゃんも無邪気な賞賛は、時に人を傷つけるのですよ…!」
愛とトウカさんを注意しながらも、赤い顔で震えるフィーネさん。フィーネさんのその様子には見覚えがある。具体的に言うと、愛がアフロになった時。どう見ても笑いを堪えるのに必死である。
爆笑するトウカさん、キラキラした目で殺眼を連呼する愛、二人を注意しながらも真っ赤な顔でプルプル震えるフィーネさん。
そんな三人に対し、私はゆっくりとサングラスを外し、怒りを少しも隠すことなく目の前の三人を睨む。私の睨みに、一瞬の内に表情を凍らせ、ぷるぷると怯える三人を目の前に、私はゆっくりと今為すべきことを告げる。
「おいこら、てめぇら。今は私で遊んでる場合じゃないだろ?違うか?」
「「「いいえ!!違います!!」」」
三人はこくこくと首を縦に振りながら、大きな声で片手を上げる。
「そうだな、私で遊んでる場合じゃないな。それじゃ、ダンジョン踏破の宝箱を確認しにいくぞ?あ、このサングラスは返しますよ、トウカさん?」
震えるトウカさんの手を取り、優しくサングラスを握り締めさせる。青い顔のトウカさんを横目に、宝箱へと歩を進める。
大人しく私の後ろを歩く三人と一緒に金色の宝箱の前に立つ。そして、シロ君が装備可能な装備品が出ることを願いながら、宝箱の蓋に手を置く。
「じゃあ、開けるよ。」
私の言葉に、全員がごくりと息を呑むのを感じる。視線が集まるのを感じながら、ゆっくりと宝箱の蓋を開く。
「こ、これは!やったー!」
宝箱の中を確認した私は、思わず歓喜の声を上げる。
「美雪さんがそんなに喜ぶなんて珍しいな!一体、なにが入ってたんだ?」
ユウジがにやけながら、私の横から宝箱の中を覗き込む。ユウジは自分にとって嬉しいものではなかったためか、疑問に満ちた表情で私の顔を見てくる。そりゃそうだ。宝箱の中身はユウジが望むようなギャルのパンティーじゃない。残念だったな、ユウジ。
ユウジに負けじと、愛とシロ君も期待に満ちた表情で宝箱の中を覗き込む。私の願いが届いたのか、宝箱の中には独特な形をした一本の杖が保管されていた。
「杖!これなら、シロ君でも装備可能だよね!はい、シロ君!おめでとう!」
宝箱から取り出した杖を、シロ君の前に差し出す。シロ君は驚いた表情を浮かべながら、私が差し出した杖に対して両手を伸ばす。しかし、指先は上を向いている。
「いや、受け取れませんよ!このダンジョンのクリア報酬ですよ!!星四装備ですよ!!僕なんかには勿体ないです!!美雪さんも魔法を使うんですから、美雪さんが使ってください!!」
「いや、私の主武器は弓。だから、これは主武器が杖のシロ君が使って!」
「いやいや、僕なんかが使うより、爆発魔法や風魔法、炎氷双嵐を美雪さんが使う時に使った方が絶対に良いです!!」
手を振り、必死に首を振るシロ君。痺れを切らした私は、是が非でも受け取らないシロ君の手を取り、強引に杖を握らせる。それでも、押し返そうとするシロ君。こうなっては仕方がない。
「シロ君!ちょっと話を聞いて!」
「は、はい!!」
私の言葉に、シロ君の動きが止まる。本当は言うつもりなかったけど、どうしてもシロ君に杖を受け取ってほしい理由を、私は話し始める。
「私は異世界に転生した時、右も左も分からなくてすごい不安だったの。情報を持ってないことがあんなに不安だったなんて、異世界転生してなかったら分からなかった。気丈に振る舞ってたけど、実はシロ君と初めて出会った時、不明点だらけの異世界に対して私はすっごい不安だったんだよ!」
急に昔語りを始めた私に、シロ君は不思議がるかなと思ったけど、静かに私の話を聞いてくれている。シロ君に感謝をしながら、私は言葉を続ける。
「そんな不安いっぱいの私に、異世界のことを優しく教えてくれたのは、博識なシロ君!シロ君の教えてくれる情報のおかげで、今日まで危なげなく戦ってこれた!本当に、いっぱい助けられた!!」
「いや、僕はみんなが知ってるような情報をお伝えしただけで…。美雪さんに感謝されるようなことは何も…、してません…。」
私の言葉にシロ君は小さく呟き、固まって動かなくなってしまう。
「普通だったら、こんな常識も知らないの…、ってイライラしてもおかしくないよ。でも、シロ君は異世界の情報を、マグカの使い方を、様々なモンスターの特性を、スキルのことを、冒険者という生き方を…。ほんとにいっぱいのことを嫌な顔ひとつせずに愛と私に優しく教えてくれた。そんなシロ君に、私は言葉に出来ないほど感謝してる!だから、この杖はそんな今までの感謝の品!みんなで協力してダンジョン攻略をした報酬品だから、私個人からと少し言いづらくて申し訳ないけど、遠慮せずに受け取ってほしい!」
感謝の言葉を言い尽くしたが、それでも杖を受け取ろうとしないシロ君に、私はダメ押しの一言を私は告げる。
「それでも受け取ってくれないなら、こうしましょう!私は手に持ってる槍を投げ放つ武技を持ってる!私がこの杖を装備したら、間違って敵に投げちゃう可能性が高い!だから、シロ君は私からこの杖を守るために、この杖を装備する!それなら、どうかな?」
私の言葉に、シロ君はキョトンとした表情を浮かべるが、すぐに耐えきれないといった様子で大口を開けて笑い出す。
「ふふっ、なんですか!その理由は!あははは!!」
おどけて槍投げのポーズをする私に、固まっていたシロ君は大きく口を開けて笑い出す。今まで見たことがないシロ君の爆笑。なんだか少し恥ずかしくなってくる。
「もう可笑しなことを言わないでくださいよー!涙まで出ちゃったじゃないですか!分かりました!この杖は美雪さんが敵に向かって投げちゃうのを防ぐために僕が装備させてもらいます!」
何がそこまでシロ君の笑いのツボに入ったのか分からないが、目に浮かぶ涙をローブの袖で拭いつつシロ君はあはははと笑う。恥ずかしい思いをした甲斐あって、シロ君は宝箱から出現した杖を受け取ってくれた。目的が達成できて嬉しい私は、シロ君と一緒に笑い合う。
「おい、ユウジ。美雪とシロ君のあの顔。どう思う?」
「あ?言わなくても分かるだろ。」
不満げな表情を浮かべながら、愛とユウジは言葉を合わせる。
「「嫉妬する。」」
腕組み、頬を膨らませる愛とユウジ。シロ君と笑い合う私は気付くことない。
そんな私達の様子を遠くから眺めながら、トウカさんは近くに立つフィーネさんに話しかける。
「少年の涙は、美雪の言葉が面白可笑しくてのものか。それとも、突然感謝の言葉を言われて感極まってのものか。」
「そんなの後者に決まってるじゃないですか!言わないのが華ってやつです!さぁ、ダンジョン脱出用の魔法陣が現れましたよ!ダンジョン初挑戦の美雪さん達にレクチャーしますよ!」
「あぁ、そうだな!おい、美雪ー!!少年と戯れてないで、ダンジョンから脱出するぞー!!」
二人の会話にも、シロ君の涙の意味にも気付かないまま、私はトウカさんの指示のもと、部屋の奥に現れた魔法陣の上にのる。
魔法陣の光に包まれながら、色々あった初めてのダンジョン攻略を振り返る。
睡眠ガスや噴き出す炎といった、色々なトラップに苦戦させられた序盤の階層。
落とし穴トラップに落ちて孤立し、ベルセルクタイガーの爪と牙によって殺されかけるも、上級冒険者のトウカさんとフィーネさんに救われた中盤階層。
救われた二人に、圧倒的な力の差を見せつけられ、悔しさから獅子奮迅で攻略した中ボス、コボルドキャッスル。
苦戦しながらもアフロと共に突破した終盤階層。
最後は、物理攻撃を無効化するどころか、魔法攻撃も吸収する厄介さに心が折れかけながらも、なんとか討伐したボスモンスター、大悪魔グラットン。
初めてのダンジョン攻略振り返ってみると、最初から中身が濃すぎる気がする。それに、反省点もいっぱいだった。ファストの町に戻ったら、今後のダンジョンをどう効率的に、効果的に攻略するかを考えよう。
そして、次に目指すのは王都!!
今まで何度も話題に出てきた王都だが、私達がいる北大陸の中央都市ということもあり、たくさんの人が集まるらしい。つまり、北大陸中のさまざまな情報が手に入る。強い冒険者もいっぱいいるそうだから、戦力アップのための助言もいただけるかもしれない。さらに、王都の地下には中難易度のダンジョンもあり、魔王を説得するための実力を身につける上では、最適な環境と言える。強敵が待っているだろうが、それを差し引いてもメリットがいっぱい。
そんなわけで、次に目指すのは王都!ファストの町で準備が完了し次第、私達は更なる能力向上のために王都へ向かうことにする。
決意を新たにしながら、きらきらと光る魔法陣の光と共に、ダンジョンから脱出するのであった。
魔法陣の光が収まると、そこはダンジョンの入り口だった。
魔法を吸収する前の痩せ細った姿の大悪魔グラットンを模した石像が、ダンジョンを攻略した私達を出迎える。
ダンジョンに入る時は悪趣味だなくらいにしか感じなかった石像だが、ダンジョンを攻略した今は別の感情が湧いてくる。
「なんだかこの石像を見るとイラッとしてくるね。壊して良い?」
「大悪魔グラットンのにやり顔を思い出すからだろうな。うん、デュランダルで真っ二つにしてやろうかな?」
「ダメですよ!!ダンジョンのボスモンスターの情報にも繋がる大事な石像なんですから、壊さないでください!!」
石像を睨む愛とユウジに、ダンジョン攻略の証である杖を大事そうに抱えたシロ君が、石像と二人に間に入って注意する。ちなみに、杖の名前は「素敵なステッキ」というダジャレのような名前だった。あまりにも嬉しそうなシロ君を目の前に言えなかったが、ふざけた名前の武器だと思う。
そんな素敵なステッキを大事そうに抱えるシロ君を目にした愛とユウジは、悔しそうな表情を浮かべる。
「なぁ、ユウジ。やっぱりこの石像ぶっ壊そう。」
「あぁ、そうだな。叩っ切っちまおう。」
「だからダメですってー!!」
今にも攻撃を繰り出そうとする二人を必死で止めるシロ君。愛とユウジはボスモンスターから自分の装備が手に入らなくて怒ってるのかな?
巻き込まれたら無事に済まなそうなので、シロ君に申し訳ないと思いながらも、殺気立ってわぁわぁぎゃあぎゃあと騒ぐ愛とユウジから離れる。そんな私の目の前には、トウカさんとフィーネさん。ひそひそと何かを相談する二人に、私は頭を下げる。
「トウカさんとフィーネさん!二人のおかげでダンジョン攻略を無事に完遂することが出来ました!ありがとうございます!」
危ないところを救ってくれた上に、様々なダンジョン情報を与えてくれたトウカさんとフィーネさん。二人に感謝の気持ちを告げる。
「気にするな!困った時はお互い助け合うっていう、人として当然のことを全うしただけさ!」
「えぇ、そうです!美雪さん達も、他に困ってる人が助けてあげてくださいね!」
トウカさんは堂々と腕を組みながら笑い、フィーネさんは口元をおさえながら優雅に笑う。本当に素敵な二人だ。
ダンジョン内での危機から救ってくれたことと、多くのダンジョン情報を教えてくれた二人へ、心の中でもう一度お礼の言葉を述べながら、私は質問をする。
「お二人はこの後、どうするんですか?お二人の時間が許すのであれば、助けていただいたお礼にご飯をご馳走させてほしいのですが…。」
私の言葉に、トウカさんは嬉々とした表情を浮かべるが、すぐに申し訳ない表情へと変わる。
「一緒にご飯かー!!くっそー。美雪の申し出はとっても嬉しいことだけどな、本当に残念だー。私とフィーネはまだこのダンジョンに用事があるんだ…。」
「私もトウカさんと同じく、美雪さんと食事をご一緒したいところですが、残念ながら私たちのダンジョン調査はまだ終わってません!美雪さん達のおかげでデータは多く集まりましたが、やはり最後は自分の手と足で調査をしなければいけません!さぁ、トウカさん!サクッと三周ほど、このダンジョンを攻略しちゃいましょう!」
三周?
私達が苦労して攻略したダンジョンを、サクッと三周攻略?
にこりと微笑んだフィーネさんに、トウカさんは諦めの微笑を浮かべる。フィーネさんはそんなトウカさんの手を取りながら、ダンジョンの入り口に歩を進める。
二人に食事を断れたしまったが、ダンジョン調査があるなら仕方ない。私達もダンジョンの外に出ようと一歩を踏み出したところで、背後からトウカさんの大きな声が聞こえる。
「美雪ー!次に目指すのは、王都だろ?私は王都に居を構えてるから、立ち寄った時にはぜひ声をかけてくれー!今日はダメだったけど、お礼のご飯はそん時にー!」
「それは名案ですね、トウカさん!美雪さーん!私もトウカさんと同じく王都に居を構えています!王都に立ち寄りの際には、ぜひ私の家を訪れてくださいね!その時は王都を案内させていただきまーす!」
最後の最後までどころか、次の私達の目的地である王都でも、私達に優しくすることを約束してくれる二人。感謝の気持ちを込め、私も声を張り上げる。
「ありがとうございまーす!!王都に行ったら、絶対に会いに行きますねー!!その時はよろしくお願いしまーす!!先輩方ー!!」
「絶対ですよー!!約束しましたからねー!!絶対ですよー!!待ってますからねー!!絶っ対ですよー!!」
私の言葉に、フィーネさんは満面の笑みを浮かべ、絶対という単語を強調する。遠く離れているため、はっきりとは見えないが、フィーネさんの言葉に、なんとなくトウカさんが表情を引きつらせたような気がする。
そんなトウカさんの手をぐいぐい引っ張り、フィーネさんはダンジョンの中へ潜っていく。
トウカさんとフィーネさんを見送った私達は、ダンジョンを攻略した達成感と共に、一日ぶりの太陽の下へと向かう。太陽は大きく傾き、すでに夕方近くであった。そんな夕日を指差し、私は力強く宣言する。
「ダンジョンは無事にクリアした!!次に目指すのは王都だ!!」
私の言葉に、愛とユウジは力強く頷く。少しの間があいてからシロ君も頷く。




