馬車の修理中に異世界のことを教えてもらう
前回のあらすじ:狼の群れから人を救う
「見知らぬ僕達を助けてくださり、本当にありがとうございました!!あなたたちは命の恩人です!!今は手持ちが少ないため大したお礼は出来ませんが、僕の住んでいる町に戻ったら、たくさんお礼をさせてください!!」
私と愛が馬車に近付くと少年はぺこぺこと頭を下げ、何度もお礼を言ってきた。年下にこうも感謝されると気まずい…。
「いや、私たちだけじゃブラックウルフへの決め手にかけていたわ。あなたの弓矢と助言のおかげ!ありがとうね!こっちも助けられたんだから、そんなに感謝しないでいいよ。」
少年の感謝攻撃を静めるため、努めて明るい声でそう言い少年の頭を撫でる。少年は一瞬びくっとする。おや、怖がらせてしまったかな。どうやら私の目つきは怖いらしいからね…。大丈夫だよー、怖くないよー。おずおずと私の顔色を伺ってきた少年に、安心させるための笑顔を向ける。その瞬間、少年は顔を赤くし、下を向いてしまう。
チッ
メイドの方から舌打ちが聞こえる。確認すると、美人だった顔を驚くほど歪ませ、すごい睨んでいる。え、私何かしました?
「助けられた恩がありますが、あなた坊ちゃまに対して馴れ馴れしくありませんか?坊ちゃまと年齢がそんなに変わらないのに、年上目線と言いますか、お姉ちゃんぶってると言いますか。それに、坊ちゃまは貴族なのですよ?言葉遣いを改めていただけないでしょうか?」
メイドの発言に、忘れかけていたあることを思い出す。私は転生時に年齢を16歳まで下げていたのだ。少年より少し年上くらいなのに、ついお姉さんぶってしまった。メイドが気分を害しても仕方ないだろう。更に少年は貴族だった。メイドさんを連れているし偉いのかなとは思っていたが貴族だったとは。というかこの世界にも貴族階級が存在するのね。
「私はまだあなたを信じていません。その目つきは一般人のものではございませんので。ブラウンウルフの群れをけしかけて、助けたフリをして報酬をもらおうとしたのですよね?いわゆるマッチポンプというやつですか?そうなのでしょう?」
メイドが怒りの形相で詰め寄ってくる。知らなかったとはいえ、貴族を子供扱いしたのだから仕方ない。少年も赤い顔で下を向いているし、私の行為は貴族を辱めるには充分だったのだろう。無知だったからじゃ許されない。
「さっきから黙って聞いてれば、美雪を悪者扱いしてー!助けたのに、それはどうかと思うよー!」
メイドの怒りにどう謝罪しようと悩んでいたところ、愛がいつもの構えでメイドに逆ギレする。ほんとに喧嘩っ早いなこの子は…。狼を一撃で倒す正拳突きが炸裂しても困るので、愛を止める。
「ごめんなさい、貴族とは知らず無礼を働いたことをお許しください。」
素直に頭を下げる私。なんで美雪が謝るのー?って顔で愛が私を見てくるが、生前に読んだ小説や漫画では、貴族に逆らって一族路頭に迷うという悲劇は多くあった。ここは素直に謝るのが正解だろう。
「頭を下げれば良いってものじゃな
「メイコ、話がややこしくなるから少し黙ってて。」
腕まくりをして喧嘩の体勢をしていたメイドを少年が言葉で止める。メイドは少年の表情を確認し、やってしまったーという顔をした後にしゅんとする。
「メイコが大変失礼いたしました。申し訳ございません。助けられたのは僕達の方なのですから、貴族相手とか気にせず、先ほどのように接してください。あ、自己紹介がまだでしたね。僕の名前はホワイト、メイドはメイコ、馬車にいるのはダースです。よろしくお願いいたします。」
「坊ちゃま、本名を明かしてしまうのは、さすがに無用心ですよ!!」
落ち込んでいたメイドが調子を取り戻して注意してくる。どうやら少年にはあまり本名を明かせない事情があるようだ。さっき貴族と言ってたから、その辺が関係しているのかもしれない。
「僭越ながら私から提案!ホワイトというのは私の国では、白という意味を持つので、シロ君と呼んでいいでしょうか?そうすれば本名呼びを回避できると思うけど、どうかな?」
少年がこくこくと首を縦に振る。肯定してくれるし、嬉しそうにしているなら良かった。
「ではお言葉に甘えて、シロ君と呼ばせていただくね!私の名前は弓弦 美雪。こっちは鬼火 愛。よろしくね!」
「シロ君、よろしくー!」
愛は元気いっぱい手を上げて自己紹介する。
「あ、そういえば弓矢を借りっ放しだったね。さっきも言ったけど、改めてありがとう!この弓のおかげでブラックウルフにも勝てたわ!」
借りていた弓矢をシロ君に差し出す。しかし、シロ君は片手でそれを制す。
「そちらの弓矢は今回のお礼のひとつとして差し上げます。今回の旅で偶然ドロップしたものだし、僕は装備できませんので、遠慮せずもらってください!その方が弓矢も喜ぶと思います!」
「そこまで言われたら、もらわないのは逆に失礼ね。それでは遠慮せずもらいます!ありがとう!」
感謝の気持ちを伝えるため、ついシロ君の頭を撫でてしまう。あ、またやってしまった。シロ君も顔を赤くして俯いてしまったし、また恥ずかしがらせてしまった。そしてメイドさんが睨んでくる。すいませんでしたー!!
「嬢ちゃん達、助けてくれてありがとうなー!俺も参戦できれば良かったんだが、ポーションがぶ飲みしてる間に終わっちまった!おかげで傷はふさがったがな!俺の名前はダース!よろしくな!」
馬車から先ほどまで怪我をしていた大男が降りてくる。頭を見ると血を拭った跡があるが、傷は確かにふさがっている。そんな大男のダースさんは笑いながら私に握手を求めてくる。
「私は美雪。ダースさん、よろしくお願いします!」
私も笑顔で握手に応じる。私が握手に応じたことで、ダースさんは豪快に笑う。愛とダースさんも握手を交わした後、シロ君とダースさんは馬車を確認する。その間もメイドさんは睨んでくる。気まずいし怖い。
「いやー、馬車もそこそこダメージを受けてるな。メイコの魔法のおかげで馬が二頭とも無事だったのは不幸中の幸いだが、帰るためには修理が必要だな。」
おや、これはチャンスじゃないか?私はダースさんに確認する。
「あのー、帰るというのは町か村にでしょうか?」
「おう!王都での用事を済ませて、坊ちゃんのりょ、じゃなくて俺たちが住んでるファストの町に戻るとこなのさ!」
きたー!チャンスきたー!私はダースさんとシロ君にお願いする。
「ダースさん、シロ君!!実は私たちもその町に用事があったのですが、途中で地図を失くしてしまって…。出来ればで良いので、私たちも一緒にその町に連れて行ってくれませんか?お願いします!」
私は両手を合わせてお願いする。異世界から転生したことは内緒にしておく。魔族と戦争中だから、強力な転生者は戦力として戦争に連れて行かれてしまうかもしれない。この世界で転生者がどういう扱いか分からないから、秘密にするのだ。愛にもその辺の事情を昨日の夕食時に共有済み。
「恩人の頼みだ!断れるわけないだろう!良いよな、坊ちゃん?」
ダースさんは快諾してくれた。ダースさんがシロ君に確認するということは、三人の中での決定権はシロ君にあるようだ。私はシロ君に合わせた両手を向け、お願いする。
「もちろん良いですよ!ただ、あの馬車は4人乗りですので、少し窮屈になってしまいますね…。」
「それなら、坊ちゃまは私の膝の上に座りましょう!そうすれば四人分のスペースで充分です!!」
メイドさんが颯爽とシロ君の傍に立つ。そして私にどうだと言わんばかりの顔を向ける。
「いやいや、さすがにそれは狭いだろう。俺が馬に乗るから4人は馬車の中でゆったり帰ってくれ!乗馬スキルがあるから問題ないぜ!」
メイドさんは「余計なことを…!!」といった表情でダースさんを睨む。メイドさんとシロ君は仲良しだねー。それよりも、シロ君たちが町に連れて行ってくれる!助かった!愛を見ると、やったねといった表情でピースしてくる。
少し愛と話をしていると、ダースさんが馬車の修理を始める。私たちは手持ち無沙汰になってしまったので、ボーッとダースさんの修理光景を眺める。どう直しているか素人目では分からないが、なかなか手際が良い。
「ねぇねぇ美雪、馬車の修理見てるのも飽きたから、狼いっぱい倒した時のアイテム回収しよー?」
周囲を見渡すとブラウンウルフのドロップアイテムがあちこちに落ちている。素材は売れるらしく、回収しても無駄にならないので愛の提案を受け入れる。
「そうしましょうか。このショルダーバッグに入りきるか分からないけど、一応回収しましょう!」
ノアに強い敵ほどドロップアイテムは良くなると聞いていので、とりあえずブラックウルフを倒した場所を見に行く。シロ君も暇だったのか私の少し後を着いてくる。メイドさんはシロ君の後をついてくるので結局三人が連れ歩く形になっている。ブラックウルフを倒した場所には、私が放った矢、愛が折った角、手のひら三つ分くらいの毛皮、黒い槍が落ちていた。
「槍?武器がドロップするとは聞いてたけど、これがそうなのかな?」
落ちていた黒い槍を拾ってみる。ずしっと重みを感じる。
「それは黒狼の槍ですね!ブラックウルフが30%くらいでドロップする黒狼シリーズの武器の一つです。少し重いけど、鉄より硬く星二の装備品の中でも上位に属する武器ですよ!」
シロ君が後から解説をしてくれる。
「解説ありがとう!ブラックウルフと戦っている時に弱点を教えてくれた時もそうだったけど、シロ君の知識すごいね!」
「坊ちゃまは町で有名な博識少年なのです。一度読んだ本は忘れませんし、一度聞いた話は忘れません。噂では生まれた時の記憶もあるそうです。」
腕を組んで自分のことのように誇らしげなメイドさん。
「さすがに生まれたばかりのことは覚えていないよ。博識ってのも言い過ぎで、昔から記憶力が良いだけです。忘れたくても忘れられないんです。あと、メイコがいると話がややこしくなるからダースの馬車の修理を手伝ってきて。お願いね。」
メイドさんは「え!?」という顔をしたが、シロ君の笑顔の威圧に押されたのか、馬車の方へふらふらと歩いていく。それにしても、シロ君の記憶力のような能力は、地球にもあったな。確か超記憶だったかな?そんな能力が私にあったら学生の頃のテスト対策も簡単だったんだろう、シロ君ずるい。
あ、ちょっと待って。そんな博識少年にここで出会えたのは、すごく幸運だったんじゃない?異世界知識が、ノアと創さんに聞いた分と一日の体験分しかない私にとって、色々聞けるチャンスじゃない?私はチャンスに対して喜びを抑えることが出来ず、シロ君ににこっと微笑む。
「そんなシロ君に質問!黒狼の槍が星二って言ってたけど、装備品の星って何?」
「あ、はい!質問ですか?良いですよ!何でも答えます!星は武器のランクですね!星一~星五まで五段階あり、星の数が多いほど強く数が少なくなると言われています。」
そういえばノアの転生者特典の説明では、伝説級の珍しい装備品があると言ってた。どうやらマグノキスでは装備品の珍しさを星で表現するらしい。開始早々、星二の装備品を入手出来たのはラッキーだ!槍なんて使ったことないし、この重さじゃ私の筋力量では扱うのが難しいことを除けばね…。
「愛ー!強い槍あるけど、使うー?」
ということでパワフル少女の愛に確認する。愛ならこの槍も装備できるだろう。
「槍ー?私は武器を使うなんて軟弱なことはしないよー!信じるのはこの拳のみ!」
パワフル少女の考え方は、もっとパワフルだった。そんな愛は両手でたくさんの毛皮を抱え込むように持っている。あの状態でどうやって拾ってるんだろう?
「さすが愛さん、普通ならあんなにいっぱい持てないですよ。でも、なぜドロップアイテムをしまわないんですかね?」
「愛はカバンとか物をしまうものを持ってないからね。私がショルダーバッグを持ってるから素材をしまえないんだ…。ちょっと行って来るね。」
「え?マグカにしまえば良いじゃないですか?」
まずい。異世界では物をしまう時の常識的なアイテム、マグカなるものがあったようだ。そんな常識的なアイテムを知らないとなれば、転生者ということがバレてしまう。表情を崩さず内心慌てていると、賢いシロ君は結論を導く。
「そういえば地図を失くしたと言っていましたね!マグカもその時、逃げてしまったのですか?マグカは小さいし、首輪をつないでいないと収納魔法で逃げてしまいますからね!」
逃げる?首輪?収納魔法?どうやらマグカは生き物のようだ。異世界ではマグカという生物に荷物とかを収納してもらってるってところかな?
「そうなんだよねー、マグカ逃げちゃって!だから、こうしてショルダーバックに荷物いれてるんだよ!重くて肩疲れて大変!」
私はシロ君から聞いた情報を使って話を合わせる。こうすれば転生者とバレないだろう。今後は少しくらい常識を知らないとこも田舎出身ってことで誤魔化そう。
「じゃあこの妖精探しカードを使って、美雪さんのマグカを探してあげますよ!特徴を教えてください!」
そう言ってシロ君はテレホンカードより二回りほど大きく厚い黒いカードを取り出した。まずい、いかに異世界の魔法でも私のマグカを見つけることは出来ないだろう。
「いや、良いよ!私のマグカのために、そのカード使っちゃうのは勿体無いよ!」
私がシロ君の提案を断ると、シロ君は残念そうな顔をする。そして、意を決したように私に確認する。
「美雪さんと愛さんって転生者ですよね?」
なぜバレたー!?と考えている場合じゃない!否定しなければ!
「え!?あ、いや、ちがいますよー。私たちは田舎出身のちょっと世間に疎い冒険者で、転生者なんかじゃないですよー!」
私が必死に否定していると、シロ君は呆れたように微笑み、転生者と気付いた理由を説明する。
「マグカを知らない人なんて、この世界では転生者くらいですよ!どんな田舎町出身でも、マグカを見たこともないのは有り得ません!そのくらい、マグカはこの世界では認知度が高いです!ちなみに、マグカはこのカードのことで、首輪をつないでいないと逃げるなんて有り得ませんよ!」
そう言ってマグカと紹介したのは、先ほど妖精探しカードと言っていた黒いカードだ。くっ、シロ君にかまをかけられ、まんまと私は引っかかってしまった…。まだまだ若いのに、私達の発言を怪しく思い、流れるようにかまをかけるとは…。シロ君、恐ろしい子…!!
これ以上取り繕っても仕方ないので、隠そうと思った理由を含めて私たちのことを説明した。
「というわけで、転生者であることを隠そうとしました。ごめんなさい。」
頭を下げ誠心誠意の謝罪をする。理由があったとはいえ、貴族を騙そうとしたってことで罪になるかな…と怖くなる。
「美雪さん、頭を上げてください!僕たちも貴族であることを隠そうとしておりましたし、おあいこですよ!気にしないでください!むしろ、転生したばかりの混乱の中で、僕達を助けてくださりありがとうございます。重ねてお礼を言わせていただきます。」
怯えている私に、シロ君はむしろお礼を言ってくる。え、この子ほんとに私より年下?さらにシロ君は言葉を重ねる。
「転生したばかりですと、この世界について分からないことがいっぱいだと思います。僕で良ければですが、色々お教えしましょうか?」
さらに気遣いも出来るなんて、この子ほんと優秀すぎない?
「本当に!?ありがとう!!すっごい助かるよ!!それでは、差し当たりマグカのことから教えてください!」
「良いですよ!マグカは、物を収納するだけじゃなく、身分を証明したり、ダンジョンの入館証になったりと冒険者必須品です!実際に、マグカの画面を見ながら説明した方が早いですね!」
「あ、ちょっと待って!愛にも教えたいから、呼ぶね!愛ー!ちょっと来てー!」
冒険者の必須品なら愛も使い方を覚えた方が良いだろう。私は近くにいるであろう愛を呼ぶ。
「なに美雪ー?ちょうどアイテム拾いも終わったから持ってくねー!」
愛が毛皮、爪、牙と狼のドロップアイテムと思われるものを持ってくる。愛は、ブラックウルフのドロップアイテムの脇にそれらを置く。ちょっとした山が作られる。
「これからマグノキスの必須品であるマグカの使い方をシロ君が教えてくれるわ!一緒に見ましょ!」
「マグカ?何それー?教えてー!」
素直に聞く体制になる愛。なんとなくウキウキとした顔をしている気がする。
「それでは、マグカの収集モードについてお教えします!」
そう言ってシロ君は黒いカードを横にして、右下の金色の丸を押す。何が始まるんだろうと愛と私はシロ君の手元を覗き込むと、テレビのような画面が黒いカードに浮かび上がる。愛と私はお互いに驚愕の顔で見つめ合う。
私達の驚きなど露知らず、シロ君の操作説明は続く。私達は聞き逃さないよう視線を戻すと、シロ君は慣れた手つきで黒いカードを指で軽く叩いたり、横にずらしたりする。シロ君の指の動きに合わせてカードに浮かんでいる画面も切り替わっていく。何をやっているのだろう。機械音痴な母に家電機器の使い方を教えていた時は、なんでこんなことも分からないと思ったが、今は母の気持ちが分かる。
※マグカはスマホのような使い方だが、美雪が転生したのは1990年代。スマホどころか携帯電話もあまり普及していなかったため、タップ操作、スワイプ操作に馴染みが無い。
何か設定を終えたようなシロ君は私の方を振り向く。黒いカードを覗き込んでいたため、危うくぶつかりそうになる。赤くなったシロ君と、すみません、こちらこそを一通りやった後、本題に入る。
「これでマグカは収集モードになります。この状態でドロップアイテムをポンッとすると…。」
山になっていたドロップアイテムが一瞬で消える。目の前で起きた不思議な出来事に愛と私はポカーン、きょとーんとなる。混乱から回復した私達は一斉にシロ君に詰め寄る。
「え、あの大量のアイテムをどこにやっちゃったのー!?せっかく集めたのにー!!」
「愛、私知ってるよ!マジックだよ、これ!!シロ君はマジシャンなんだよ!!」
「あー!マジシャンかー!なるほどーお…?お?美雪ー!!マジシャンって何ー!?鬼火の里にマジシャンなんていないから結局分からないだよー!!」
そんな感じで混乱してる私達に、少し引きつった笑いを浮かべながらシロ君が補足する。
「マジックやマジシャンっていうのが分からないですけど、多分違いますよ!!今のがマグカの収集モードです!マグカは収集モードにすると、こうしてアイテムを一瞬で保存することが出来ます。保存したアイテムは、このように一覧で確認できますよ!」
シロ君はマグカの画面を私達二人に見せる。そこには、以下のアイテムを保存しました。というメッセージと共にアイテム名が記載されている。
黒狼の槍×1
黒狼の角×1
黒狼の毛皮×1
茶狼の爪×3
茶狼の牙×4
茶狼の毛皮×8
木の剣×1
「そして、一度保存したアイテムもこうやって取り出すことが出来ます。」
シロ君がマグカを操作すると、先ほど消えた黒狼の槍がシロ君の手の中に現れる。
「なるほど…!」
愛はよく分かっていなさそうな顔だが、私は一連の現象を見て納得する。ノアが地球のゲームを参考にマグノキスを作ったと言っていたが、シロ君がドロップアイテムをしまった時にマグカに表示された画面はまさにゲームのドロップ画面だった。異世界にゲームの要素を入れるためには、こういうアイテムが必要だったんだろう。その後にシロ君に教えてもらったアイテム確認、ステータス確認もまさにゲームのメニュー画面で出来る内容だった。
「うん、私は使いこなすのに時間がかかりそうだけど、美雪なら使いこなせそうだね!美雪、その辺は任せたよ!」
せっかく説明してくれたシロ君もこれには苦笑い。マグカは発券機という機械で、その人専用のマグカを作るそうなので、私はシロ君のマグカを操作できないらしい。自分のマグカを手に入れたら使いながら操作を覚えていこう。そして根気強く愛に教えていこう。
シロ君が教えてくれたのは、マグカの機能のほんの一部ということだけど、残りは馬車で移動中に教えてくれるそうだ。シロ君の優しさに感謝しながら、修理状況を確認しようと馬車に戻ると、馬車の屋根の上に見慣れない一人の男が立っていた。
着物、袴、羽織といかにも侍といった服装に、マフラーを身につけた30歳くらいの細身の男が腕を組みながら立っている。長い黒髪を後で束ね、腰には二本の刀のような物が下げられている。その侍は細い目だが、愛と私をまっすぐ見ている気がする。
一体、この男は何者なのか。




