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魔王退治は要件定義から!  作者: 荒井清次
王都滞在編 -新しい仲間と共に王都での生活基盤を整え強くなる-
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剣のダンジョン挑戦②

前回のあらすじ:サっちゃん作成のパーティシンボルのエンブレムと、それに込められた想いを胸に、私達は剣のダンジョンへ挑む。


危険な人を前にした警戒の視線と、奇異な者を見るような視線を周囲の冒険者達から向けられる中、私達は剣のダンジョンの入り口を前に、ダンジョン挑戦に向けての覚悟を決めていた。


ダンジョン名:剣の試練

難易度:中級

推奨挑戦レベル:51

ボス階層:地下30階

中間転移ポイント:15階


ダンジョンの入り口に置かれた石板で、ダンジョン情報を確認する。何事にも情報は大事だからね。

ボス階層はファストの町のダンジョンが10階層だったのに対して、剣のダンジョンは三倍の30階層かー…。なるほどー…。これは長期戦になるぞ…。


「ん…?中間転移ポイント?何これ、シロ君?」


ダンジョン情報の中に見つけた初見の情報を、隣に立つシロ君に確認する。私の質問を聞いたシロ君は、にこりと笑って解説を始める。


「中間転移ポイントは、中級以上のダンジョンに設置される部屋のことです。ダンジョンの攻略途中でも、中間転移ポイントを使うことで外に出ることが出来ます。基本的には、ダンジョンの中ボスを倒した後の部屋に作成されます。」


「中間転移ポイント使ってダンジョンから脱出した場合、またその中間転移ポイントから復帰できる?」


「残念ながらそれは出来ません。」


「なるほど…。中ボスを倒した段階でダンジョンから脱出するか、そのまま挑戦を続ける判断が必要ってわけね。」


「そのとおりです。」


状況によっては、ダンジョン挑戦を中止して、中ボスを倒した段階でダンジョンから脱出…。状況判断が大事なんだね…。

でも、状況に応じた最適な判断が私に出来るか…。私達のパーティには大きな戦力だけど暴走する愛もいるし判断が難しいな…と不安になっていたところで、銀髪の先輩冒険者が得意気な表情を浮かべる。


「大丈夫、大丈夫!その辺は、先輩冒険者である私とササラが、ちゃんと判断してやるから!」


「…!?そ、そうやんな!トウカはんとササラが判断したるからなー!!」


「ありがとうございます!」


頼りになり過ぎる先輩冒険者のトウカさんと、どことなく不安気な返答をするにササラさんにお礼をする。

トウカさんは師匠である老騎士(ろうきし)ローグが生前の頃に、二人でパーティーを組んで剣のダンジョンを踏破したことがあるらしく、ササラさんもユリスキーさん、レッズメッグァナーイさん、ユリと四人パーティーで剣のダンジョンを踏破したことがあるらしい。

全階層の経験と情報を有したトウカさんとササラさんがサポートをしてくれることに安心感を抱いたところで、冒険者に喧嘩を吹っ掛けようとする愛を羽交い締めにしていたユウジがシロ君に話しかける。


「今回はファストの町のダンジョンみたいに、ダンジョン挑戦前の謎解きは無いんだな。」


「あれはダンジョンが発見されたばかりで未踏の場合だけです。剣のダンジョンは古いダンジョンのため、数百年前に謎解きは完了しています。このダンジョンはもう何千回、何万回と王都の冒険者パーティに踏破されていますからね。」


ファストの町のダンジョンでは、私のような日本からの転生者にしか解けない、日本語の暗号文が描かれており、その暗号文に沿って封印を解除したことでダンジョンの中に進行することが出来た。

一月前くらいのことだけど、懐かしい。

初めて挑戦したファストの町のダンジョンを懐かしく思っていたところで、ふと疑問が浮かんでくる。


ん…?ちょっと待てよ…。

ファストの町のダンジョンで落とし穴トラップに落ちて、仲間達と攻略していた一つ先の階層に孤立した私が、なんでベルセルクタイガーに襲われていたところをトウカさんとフィーネさんに助けられたんだ?

なんで封印されていたファストの町のダンジョンに、初めてダンジョンに踏み入る私達より先の階層に、トウカさんとフィーネさんは先に進んでいたんだ…?

多くの疑問と不信感が浮かんできたところで、トウカさんが私の心の中の疑問に答えるように、何気ない感じで呟く。


「ファストの町のダンジョンの謎解きなー…。冒険者フィーネが謎解きを無視して、無理矢理に聖剣で封印された扉をぶった切ってダンジョン内に侵入したのが、懐かしく感じるなー…。」


「フィーネさんが謎解きを無視して、無理矢理に聖剣で封印された扉をぶった切った!?そんなことしたんですか!?」


今になって明かされるフィーネさんの驚きの行動に、私が声を大きくして思わずトウカさんに聞き返す。


「うぉ!?どうした、美雪!?急に大声を出しやがって!?」


「いや、そんなことより、フィーネさんが封印された扉を無理矢理にぶった切ってダンジョンを進行したというのは本当ですか!?」


「あ、あぁ…、本当だ。お前らと出会ってからのフィーネは、なぜか弱っちい清楚な女性を振る舞ってだけどよー…。本来のあいつは、愛ちゃんとタメ張るくらい猪突猛進で、ダンジョンの封印を聖剣でぶった切るなんて神をも恐れない無茶をしちまうんだよ。」


私の質問をトウカさんはうんざりって感じの表情で肯定する。どうやらフィーネさんの奇行は真実で間違い無いようだ。


「本当に無茶な方ですが…、そんなフィーネさんの無茶が無かったら私はトウカさんに出会うことなく、落とし穴に落ちた先でベルセルクタイガーに殺されてたかもしれないんですよね…。」


「うん、まぁそうなるよな…。確かにな…。そういう意味だと、フィーネの破天荒な強さにも感謝しなきゃいけないな…。」


私の言葉に、トウカさんは柔らかい表情で笑顔を浮かべ、そんなトウカさんの笑顔にササラさんは嫉妬心からか悔しそうな表情を浮かべる。


そんな中、トウカさんから得たフィーネさん情報で、私はひとつの推察を確信へと変える。

その推察とは、フィーネさんが実はトウカさんより実力が上だが、その実力を何かしらの理由で隠している、というもの。トウカさんが破天荒な強さと表現したことで、私が立てていた推察は、より現実味を帯びてくる。

やっぱりフィーネさんは異様な実力を持っているんだな…。

だから、私のオリジナル武技であるロケットアローは、フィーネさんに素手で簡単に受け止められたんだ…。

納得していたところで、私達のパーティの中で一番こういう話題が好きな愛がニヤリと笑う。


「やっぱりフィーネは強かったんだな…!!今度、会った時は戦うぞ…!!」


やっぱり愛さんは愛さん。腕をボキボキ鳴らしながら、打倒フィーネさんに向けて、くっくっくと不敵に笑っている。

そんな戦意を漲らせる愛さんに、トウカさんは真剣な表情で忠告をする。


「やめとけ、愛ちゃん。フィーネは王都…どころか、北大陸最強の金等級冒険者なんだぞ。返り討ちにあうだけだから、やめておけ。」


「「「え!?」」」


トウカさんの発言に、私とササラさん、ついでにユウジが同時に驚きの声を上げる。シロ君が、「あ、ついに言ってしまいましたね…。」と呟く中、トウカさんはササラさんにじとーっとした視線を送る。


「いや、なんでササラまで驚いてるんだ…?お前、この王都に長いこと住んでて、まさか知らなかったのか…?嘘だろ…?」


「トウカはん…、ひとつ確認させてな…。王都の金等級冒険者言うたら、王属騎士団の四騎士ん中の姫騎士(ひめきし)はんやないの…?」


「いや、その姫騎士がフィーネだよ。あいつは王属騎士団にも所属してて、姫騎士ってのはフィーネの別名だよ。まぁ…、冒険者フィーネっていうのもあいつの別名だけどな…。」


「別名…?本名は何て言うの…?」


「知らないのかよ…。知らないなら、知らないままの方が良いぞ…。」


トウカさんの真面目な表情の言葉に、ササラさんは「そうなんか…。」と呟いて、真面目な表情で黙る。フィーネさんの正体を知ってる様子のシロ君もうんうんと頷く。場に沈黙が訪れる。


いや、フィーネさん何者…?金等級冒険者ってだけでも驚きだけど…、まだ隠された何かがあるっていうの?沈黙の中で私に、疑問が浮かぶ。

この時の私はその場の沈黙と雰囲気でそれ以上聞かなかったが、後にフィーネさんの正体を知った私は、彼女にロケットアローを放ったことを後悔することになる。でも、それはもう少し先の話。



色々と余談に華を咲かせていたところで、本来の目的を思い出した私達はダンジョンの中へと足を踏み入れる。

ダンジョン特有の薄暗い洞窟のような通路を歩く中、シロ君とトウカさんが剣のダンジョンの浅い層で出現するモンスターを解説してくれる。


「剣のダンジョンの一層から三層に出てくるモンスターは、基本的にはサンダーキャット、ハーピー、ミノタウロス、ソードビートルの四種類です。」


たしかミノタウロスは闘技場でペトラさんが従魔モンスターとして繰り出してきた牛の頭をした巨大な人型モンスター。愛が戦った相手ね。

あの時は一対一でもそこそこ楽しめたって愛が言ってたけど、それってなかなかの強敵ってことよね?

そんな強力なモンスターがこのダンジョンでは、浅い層のモンスターとして登場するのか…。


「浅い層で出てくるモンスターの中だと、サンダーキャットが要注意だな。黒と青い毛の猫みたいなモンスターだけど、雷魔法を使ってくる。あいつ自体は弱っちいけど、雷魔法で麻痺になったら、ミノタウロスやソードビートルの大振りの手痛い攻撃を受けるから要注意。あと、ハーピーも上空から風魔法を打ってくるから注意が必要だ。つまり、全員要注意だから油断するな。」


「「「了解。」」」


どのモンスターも強敵ばかり。しかも、シロ君さっき基本的に四種類って言ったよね?それって例外があるってことよね…?

剣のダンジョンが一筋ではいかないことを実感した私に、野生の勘からかスキル気配感知の有効範囲の外にいるモンスターの群れを見つけた愛が声をかけてくる。


「美雪!!あそこ!!モンスター!!」


「…って、話をしてたらお出ましだ!!サンダーキャット一匹に、ミノタウロス二匹!!面倒な組み合わせだな!!美雪、指示を!!」


「シロ君と私が遠距離攻撃でサンダーキャットを攻撃するから、愛はミノタウロスに攻撃!!ユウジは反撃から愛を守って!!トウカさんとササラさんはサポートをお願いします!!」


「「「了解!!」」」


トウカさんのギター音が背後から聞こえてくる中、体が軽くなるのを感じる。トウカさんの能力向上の支援魔法が発動したようだ。


「これがトウカの支援か!!体が軽い!!良いぞ、トウカ!!よくやった!!褒めてやる!!」


「褒めてやるってのが、偉そうでムカつくけど…、まぁ、良いや!!やっちまえ、愛ちゃん!!」


普段よりキレが増した動きで、愛が豪快にミノタウロスの顔をぶん殴る。

突然の先制攻撃に怒りの表情を浮かべるミノタウロスに、ユウジが大声をかける。


「反撃は気にするな、愛!!俺が守ってやる!!スキル挑発!!」


愛の攻撃による大きな打撃音が響く中、ユウジがスキル挑発でモンスターの標的を自分に向ける。ミノタウロス二匹の攻撃がユウジに集中するが、神盾(しんたて)アイギスの防御力で見事に受け切っている。


「ロックウォール!!」


肝心のサンダーキャットには、シロ君が岩魔法で壁を作って雷魔法の発動を妨害する。得意の雷魔法を妨害されて、サンダーキャットは悔し気な表情を浮かべる。その隙を私は突く。


「逆巻け荒れ狂う風!!弾けろ暴風!!ゲイルボム!!」


ダンジョン挑戦に向けて、レベル40の時のスキルポイントを使って取得した風魔法の進化魔法である暴風魔法と、爆発魔法を合体させたゲイルボムでサンダーキャットを攻撃する。

暴風の爆発に、サンダーキャットは雷魔法の発動を中断する。相手の妨害をしつつ、HPも大きく減らせてる…。うん、魔法攻撃の底上げとして取得した暴風魔法だけど、効果は大きかったわね!シロ君のアドバイスで暴風魔法を取得して良かった!


新魔法の暴風魔法の威力と効果に満足をしつつ、周囲の状況を確認する。

敵の攻撃を妨害しつつ、確実にダメージを与えてられてる。うん、剣のダンジョンの強敵モンスターに対しても、私達は十二分以上に戦えてるな。手応えを感じていたところで、背後からササラさんの声が聞こえてくる。


「ササラも負けてられんなぁ!!出でよ!!竹製要塞(たけせいようさい)バンブー・フォートレス!!って、あぁ…!!あかーん!!」


背後からバキバキメシメシという嫌な音が聞こえてくる。嫌な予感が湧き上がってくるが、今は目の前のモンスターから目を離すわけにはいかない。

ミノタウロスに牽制を込めてゲイルアローを放ったところで、私の嫌な予感を証明するように、背後からササラさんの焦った声が聞こえてくる。


「あかーん!!天井にぶつかってもうて、バンブー・フォートレスが出せてへん!!周囲の壁にガリガリいうとる!!こん狭さの通路じゃ、バンブー・フォートレスは出せん!!い、痛い!!ささくれた竹がササラに刺さってくる!!や、やってもうた!!完全に失敗や!!」


あの人は、一体なにをやっているのだろう…。

残念美人ことササラさんに憐憫の感情を抱いていたところで、それどころじゃない問題が起こる。

先輩冒険者のササラさんが背後で上げる悲痛な声に動揺した私達の隙をついて、一匹のミノタウロスがユウジの横を抜いて、私達後衛に攻撃を仕掛けてくる。


「んにゃろう!!私を無視すんじゃねぇ!!」


「スキル挑発!!…ダメだ!!間に合わない!!」


愛が豪快な正拳突きで一匹のミノタウロスを光の粒に変えた後に助太刀をしようとし、ユウジがスキル挑発を発動するも間に合わなかった。

前衛を抜き去ったミノタウロスは、混乱する後衛の中でも一番混乱しているササラさんに向けて、大きな斧を振りかぶる。


「あ、あぁ…。あかーん…。」


目の前に迫る巨大な斧に、ササラさんの動きが止まる。

仲間の絶体絶命のピンチに、思わず目を瞑る中、ササラさんの悲鳴と共にバキバキミシミシという骨を砕くような嫌な音が聞こえてくる。

ササラさん…!?と目を開いた私の横に、先ほどササラさんに攻撃をしたはずのミノタウロスが吹き飛んでくる。あれ?このミノタウロス、さっきササラさんに攻撃してなかった?

私の質問に答えるように、銀の髪を揺らしながら一人の少女がため息交じりに呟く。


「おいこら、ササラ。お前、なに後輩の足を引っ張ってるんだよ…。」


「はえ…?トウカはん…?」


トウカさんの声に、横のミノタウロスを確認すると胸に大きな打撃を受けた痕が残っていた。

なんでこんな打撃痕がミノタウロスに…?まさか、さっきのバキバキミシミシってこのミノタウロスから…?という私の質問に答えるように、トウカさんは手に持つシルバーグリフォンをブンッと振り払って、ミノタウロスの返り血を地面に落とす。


あ、そういうこと…?どうやら、トウカさんがシルバーグリフォンで力いっぱい殴ったらしい。

トウカさん、自分のこと支援キャラって言ってたけど、充分以上に戦えるじゃないですかー…。レベルの違い…?シルバーグリフォンって、弦楽器じゃなくて打楽器だったの…?


変な疑問が浮かびながらも、私は瀕死のミノタウロスにトドメを刺す。残りのサンダーキャットも愛が豪快な蹴りで光の粒に変えたところで、トウカさんはニヤニヤと笑いながら、呆然としているササラさんに声をかける。


「あ?何だ、お前。泣いてるのか?」


挑発たっぷりのにやーっとした表情で呟くトウカさんに、ササラさんの顔が真っ赤になる。

一瞬、ぽやーっとした表情を浮かべたササラさんだが、すぐにキッとした表情を浮かべて、トウカさんの言葉に返答する。


「な、泣いてまへん!!」


「お、おう、そうか!わりぃわりぃ!…って、このやり取り前にもあったか…?」


今もなお真っ赤な顔のササラさんの返答に、トウカさんは首を傾げる。

でも、すぐにどうても良くなったのか、トウカさんはため息をつきながら腰砕け状態になっていたササラさんに片手を伸ばす。


「まぁ、良いや…。ほら、立てよ!そんな腑抜けた顔してないで、ちゃんと先輩冒険者として、後輩に威厳を見せてやれ。」


「そ、そうやな…!!今のは偶然、ちょーっと取り乱してもうたけど、す、すぐに、本来の調子を取り戻したるからなー!!き、期待しとくんやで!!」


真っ赤な顔のササラさんは、トウカさんの差し出した手に恐る恐る掴まる。

ぽんやーと頬を染めながら恍惚の笑みを浮かべるササラさんだが、ぐんっとトウカさんに引っ張られたことで、よろっと体制を崩す。

しかし、その不安定な体制もトウカさんの大きな双丘によって、優しく受け止められる。

ぽにょんと大きな双丘で受け止められたササラさんが、茹でたワイルドクラブのように真っ赤な顔になる中、トウカさんはため息交じりに呟く。


「おい、ササラ…。お前、ほんとに大丈夫か?」


「大丈夫じゃないどすー…。」


幸せいっぱーいといった感じの表情を少しも隠そうとしないササラさんは、トウカさんの胸の中でほにゃほにゃーとした笑みを浮かべる。


「ダメだササラさん…。早くなんとかしないと…。」


危機を救ってくれたトウカはんに惚れ直したわーって感じの表情のササラさんに、私は思わず真顔で呟いてしまう。

ほにゃほにゃのササラさんに対し、しょうがねぇなぁって感じでトウカさんは頭を撫でる。ダメよ、トウカさん…。トウカさんのそういうところが、ササラさんをダメにするんだから…!!


先輩冒険者であるトウカさんの頼りになり過ぎる感じに力強さを感じるのと同時に、先輩冒険者なのに足を引っ張るササラさんのポンコツさに何とも言えない不安を感じる。


「大丈夫かな…、シロ君…。」


「ササラさんのバンブー・フォートレスは、中ボスが出る大部屋や、モンスターパニックが起こるモンスタートラップ部屋じゃ大きな効果をもたらす…。…と思いますので、長い目で見て彼女のことを信じましょう…。」


ふんにゃふんにゃの笑顔を浮かべるササラさんに、何とも言えない不安が押し寄せて来る。


「ササラ、アホ丸出しの顔してるなー。ほんと軟弱。」


「否定できないけど…、言ってやるな。ササラさんだって、頑張ってるんだ…。多分…。」


愛とユウジも頼りにならな過ぎるササラさんに不安を感じているようだ…。

目の前でだらしない表情を浮かべる先輩冒険者ササラさんを見ながら、私達は覚悟を決める。


「うん、とりあえず浅い層でレベル上げをしようか…。」


「そうですね…。僕達も地力をつけましょう…。」


残念なササラさんに付きっきりになるトウカさん…、という未来が見えた私とシロ君は、二人の支援魔法を頼りにするのをやめ、自分達のレベル上げに集中することを決める。

不安いっぱい混乱いっぱいの剣のダンジョン挑戦は、こうして始まった。

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