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魔王退治は要件定義から!  作者: 荒井清次
王都滞在編 -新しい仲間と共に王都での生活基盤を整え強くなる-
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剣のダンジョン挑戦①

前回のあらすじ:ガチャで散在したり、夢の中で戦い方を学んだり、束の間の日常を楽しんだり、王都最強の冒険者パーティに警戒をされたり…。色々なことがありながらも、平和への旅路(ピースロード)のメンバーである美雪(みゆき)(あい)、シロ、トウカ、ササラ、ついでにユウジの六人は剣のダンジョンに挑戦する。


ガチャ散財事件から数日が経過し、剣のダンジョン挑戦の準備が完了した私達は、ユリお手製の朝食を取りながら準備状況の最終確認をしていた。


「HP、MP回復ポーションが60本ずつに、品質の良いHP回復ハイポーションとMP回復ポーションが20本ずつ、状態異常回復ポーションも20本…。回復アイテムはこれで充分かな?」


「僕が回復魔法も使えるので、それくらいあれば充分だと思います!回復アイテムの他には、ダンジョンで寝泊まりするための寝袋と毛布に携帯テント…、ランタンと焚き火用の薪木…、簡易砥石に充分な量の食料と水…。あと、その他の細々(こまごま)とした物…。はい、大丈夫ですね!道具は問題無いかと思います!」


他メンバーに比べて比較的小食のため、先にご馳走様をして道具の確認をしていたシロ君と私は、二人で頷き合い、目の前に並べた道具の確認を終える。


「しかしすごい量ね…。普通に持ったらみんな大型リュックを持つことになるわよ…。」


「この量のアイテムを簡単にしまえるマグカに感謝ですね。それでは、みんなのマグカに均等に仕舞えるように、一人分ずつに分けていきましょう!」


確認した道具を、ダンジョンに挑戦する六人に均等にいきわたるように六等分にする。こうすることで、ダンジョン内の罠などで孤立しても、生存率を上げることが出来る。

…と博識なシロ君と経験豊かなトウカさんが言っていた。うん、私の知恵じゃないです。

博識で経験豊かな二人に感謝をしながら、それぞれの荷物に分けるために寝袋を力をこめて持ち上げたところで、食事中の他メンバーの賑やかな声が聞こえてくる。


「ユリー!!ご飯おかわりー!!大盛りでー!!あと、このワイルドポークの生姜焼きもおかわりー!!」


「ユリ!!こっちにもご飯おかわり!!大盛りでー!!私はワイルドポークの生姜焼きじゃなくて、スープをおかわりー!!」


「分かりましたー!!いっぱい食べて、いっぱいスタミナをつけてくださいねー!!」


大食いの愛とトウカさんが大声で朝食おかわりをし、ユリが嬉しそうにおかわりの用意をしている声が聞こえてくる。

スタミナが機動力の愛には、たくさんご飯を食べてスタミナ満タン状態でダンジョンに挑んでほしい。それに、愛はまだまだ成長期なんだから、いっぱい食べていっぱい成長するんだよ。

両頬をいっぱいにしてモグモグ食べる愛に、にっこり微笑んでいたところで、ちゃかりトウカさんの隣の席を確保していたササラさんが、ため息交じりに呟く。


「愛はんとトウカはんはよく食うなー。あんなに食べて、ダンジョンでお腹壊さんやろな?」


「そういうフラグ立てないでくださいよ、ササラさん…。でも、ダンジョン挑戦前にスタミナ付けるのは大事ですよね…。そんなわけで、俺にもおかわりお願い!」


愛とトウカさんにおかわりのご飯を手渡していたユリは、ユウジの声に振り返る。にこにこと笑っていたユリの表情が、瞬間的に凍り付く。


「おかわり?男は自分でやってください。私は忙しいのです。」


ケッと吐き捨てたユリはキッチンの奥へと消える。ユリは女性にはとても優しいが、男性にはとても厳しい。ユウジ、どんまい。

背中を丸めて小さく落ち込むユウジは、普段の大柄な体格も相まって何とも言えない哀愁を漂わせる。なんとなく可哀そうに思えた私は、ユウジに助け舟を出すことにする。


「シロ君、ちょっとごめんね。ユリー。道具の準備してたら、お腹空いたー。おかわりちょうだーい。」


「分かりました!!お姉様!!はい、どうぞ!!」


分かりました!!から、どうぞ!!でおかわりが出てくるの速くない?

ユリの俊敏さに驚きながらも、目の前に置かれた大盛りのご飯をそっとユウジの前に置く。

ユリが「せっかく私が準備したお替りご飯を男なんかに!?…あ、でも、こう無下に扱われるのも悪くない…」と嬉しそうに顔を赤らめているので、放置してユウジに優しく声をかける。


「ほら、たくさん食べるんだよ。これ以上は大きく成長しないと思うけど、いっぱい食べるのは良いことだからね…。たーんとお食べ…。」


「お母さん…?」


「お母さんちゃうわ。お母さんって年齢じゃないだろ。どっちかと言うと、お姉ちゃん…。いや、お姉ちゃんでも無いわ。」


私のツッコミに、ユウジは力無く笑う。あれ?少し落ち込んだ?

なんだか、私のお姉ちゃんでも無いって言葉で落ち込んだようなー…って、そういうことかー。だいぶ前に、ユウジは寝言でお姉ちゃんって言ってたわね…。

…なるほど。ホームシックか。私が言ったお姉ちゃんって単語に、自分の姉のことを思い出してホームシックを発動しちゃったかー。

そりゃあ異世界転生してから結構経つから、ホームシックになったりもするよね。私もお父さん、お母さん、妹のことを思い出して、たまに寂しい気持ちになるから、ユウジの気持ちも分かるよ、うんうん。

ホームシックに共感した私は、落ち込むユウジの背中をポンポンと叩く。


「私達のパーティのメイン盾がホームシックになってるんじゃない。こうして、一緒のホームで、一緒のご飯を食べてるんだから、私達は家族みたいなものでしょ?その大きな体と、私があげた神盾(しんたて)アイギスで、私達家族を守りなさい。良い?ユウジ?出来るかな、ユウジ?」


「…あぁ、ごめん。お母さん。」


「だから、お母さんちゃうわ。」


ユウジが再び私をお母さん扱いしてくる。子供を優しく言って聞かせるお母さんみたいになってたかな?

少し恥ずかしくなってくるが、ユウジが元気を取り戻して大盛りのご飯を食べ始めたので、まぁ良しとする。


「お母さーん、私にもおかわりー!!」


「いや、トウカさん悪乗りしないでくださいよ…。」


こういう面白そうな展開に、すぐにやにや顔で乗っかってくるトウカさん。

とりあえず、スキル眼光威圧(がんこういあつ)で黙らせる…って、ダメだ。飄々とした様子で、ニヤニヤ笑っている。私の眼光に耐性が付いたのかトウカさん最近怯えないんだよな…。くっそー…。

どうやったらトウカさんにからかわれた時に対処できるか…。そんなことを考えていた私に、元気いっぱいな声が聞こえてくる。


「美雪がお母さん?確かにそんな感じするー!!お母さーん、私にもおかわりー!!」


「…!?」


愛の元気いっぱいの声に、私の頭はフリーズし体は硬直する。愛の先ほどの言葉を思い返しながら、そばにいるユウジに話しかける。


「どうしよう、ユウジ…。私、愛のお母さんみたい…。あぁ…、愛の純真無垢な言葉で、私の中で何かが目覚めた…。まさか、これが母性…!?」


「美雪さんの愛に対するそれ…。親バカみたいなの…?それ、なんとかした方が良いっすよ…。」


おい、ユウジ。親バカとは何事だ。バカは愛がいた鬼火(おにび)の里だと褒め言葉なんだぞ。だから、愛に対して親バカと言われた私は、少し嬉しくなっちゃってるんだぞ。

私の中の母性の目覚めを感じていたところで、横からトウカさんがニヤつきながら茶々を入れてくる。


「美雪が愛のお母さんなら、誰がお父さんだー?キャラ的に私かー?あはははは!!」


トウカさん、そういう冗談はやめてください。トウカさんの後ろの和服の残念美人が、んなーんなー言いながら、ものすごい表情で私のことを睨んでいるので…。

そんな私の気苦労など知らず、トウカさんは愛をからかいはじめ、言い合いを始める。


「おー、我が娘よー。今日も相変わらずアホ丸出しな顔してるなー!」


「我が娘ー!?アホ丸出しー!?おい、トウカ!!いつ、私がお前の娘になってアホ丸出しにしたー!?ふざけんなー!!」


「よっしゃー、かかってこーい!!ダンジョン挑戦前の肩慣らしだー!!」


あれ?おかしい。朝食を食べていたはずなのに愛とトウカさんの掴み合いの喧嘩が始まっている。

あー、またいつもの喧嘩が始まったー…やれやれと思いながら、二人の喧嘩を止めようとしたところで、私のスーツの袖をくいくいと誰かが引っ張る。

振り返ると、意中の男性を体育館裏に呼び出した控えめ少女、といった表情をしたサっちゃんが、背中に何かを隠しながら私を見上げていた。

ん?告白かな?背中にバレンタインデーのチョコを隠してるのかな?と錯覚してしまいそうなサっちゃんの表情に内心ドキドキしながら、その理由を確認することにする。


「サっちゃん、どうしたの?そんな思い詰めたような表情をして?」


「み、美雪さん!!こ、これを受け取ってください!!」


「ん?」


サっちゃんが両手で差し出してきたのは、真心詰まったラブレターとかではなく、私の手の平サイズの青色の金属で作られた薄い板だった。

こういうのって、エンブレムっていうんだったかな?野球のホームベースのような形の薄い板は、材質はミスリルで、真ん中に私達のパーティシンボルが刻まれていた。


「これは?サっちゃんが作ったの?」


「は、はい!!私が、私が作りました!!はい!!これは、ぱ、パーティシンボルの、ぅエンブレムです!!」


「おっけー。サっちゃん、落ち着いて。」


気が動転しているのか、サっちゃんはいつもより大きな声になっている。真っ赤な顔で慌てるサっちゃんの頭を撫でながら落ち着くまで待っていると、喧嘩をやめた愛とトウカさんが声をかけてくる。


「どったの、サっちゃん?そんな大声出してー?ダメだよ、美雪ー。サっちゃんは臆病なんだからー。」


「美雪が怖かったねー、サっちゃん。温かいお茶でも飲んで、気持ちを落ち着けるんだよー。」


「なんで私が何かしたみたいになってるんですか?何もしてないですよ。」


愛とトウカさんと言い合いをしている中、温かいお茶を飲んで落ち着いたサっちゃんが深く頭を下げる。


「すみません、こういう風に自分の作った物を大事な人に渡すのは初めてだったので、気が動転してしまいました…。ごめんなさい…。」


サっちゃんの大事な人という単語に、胸がキュンと高鳴る。

私が気恥ずかしさから後ろ髪をかいていたところで、サっちゃんはパーティシンボルのエンブレムについての説明を始める。


「少し無骨な感じになってしまったので、恥ずかしいのですが…、私達パーティのシンボルを(かたど)ったエンブレムです!!皆様のダンジョンでの無事を祈って、想いを込めて作りました!!ダンジョンに挑戦できない私たちの代わりにこのエンブレムを武器や防具に付けていただければと思います!!お守りだと思ってください!!」


「はう、サっちゃん、健気…!!」


サっちゃん手作りのエンブレムに、さらに私の胸がキュンと高鳴る。

確かにサっちゃんが作ってくれたパーティシンボルのエンブレムは、少し形が歪んでいる。でも、そのエンブレムからは不思議と、ダンジョンに挑戦する私達の無事を祈るサっちゃんの想いのような物が感じられる。

なんで正式な炉が出来るのに、わざわざ簡易炉を作成したんだろう…と疑問に思っていたけど、このエンブレムをお守り代わりに作るためだったんだね…。

目の下に深いクマを作った健気なサっちゃんに、涙がこぼれそうになるのを必死に抑えながら、グッと親指を立てた右手をサっちゃんに向ける。


「ありがとう、サっちゃん!ダンジョンで辛い時に、これを見てサっちゃんのことを思い出して、ほっこりとするよ!」


私の言葉に、サっちゃんの表情がパァッと明るくなる。

嬉しさいっぱいの様子のサっちゃんに対し、愛とトウカさんがむすーっとした表情を浮かべている。

そんな二人の様子に気付いた、サっちゃんはにこにこ顔で明るくフォローをする。


「大丈夫です!愛さん、トウカさん、ササラさん、シロさんの分もありますよ!」


「やったー!!ありがとー!!青鉄熊剛拳(せいてつくまごうけん)のここに付けてー!!」


「それじゃ、私も武器のシルバーグリフォンのここに付けて!振り回しても取れないように、しっかり固定してくれよな!!」


「…トウカはんとお揃いの…ごにょごにょ…。」


「ありがとうございます、サっちゃん!僕はローブの肩にお願いします!」


サっちゃんからお手製のパーティシンボルを受け取った私を含めた五人は、自分のどこに付けるかをサっちゃんに相談する。そんな中、一人の男が大声を上げる。


「サっちゃん!!俺のは!?」


ユウジの声に、サっちゃんは「あ、しまった!!」という感じの表情を浮かべる。ユウジがガーンとショックを受ける中、サっちゃんはふふっと笑う。


「冗談ですよ、ユウジさん!ちゃんとユウジさんの分もありますよ!はい、これです!」


「サっちゃん…!!」


「サっちゃんは優しいな、ついでのユウジの分も、ついでに、作ってくれるなんて!」


「おい、愛。ついでにを強調するな。」


「ユウジ、お前はデコに付けようぜ。多分似合ってると思うぜ!」


「急に何を言ってるんですか、トウカさん!!おでこに付ける訳ないじゃないですか!!」


「と、トウカはんがどうしてもって言うなら、ササラ、おでこにつけるで…?」


「いや、やめとけササラ。お前は顔が良いとこだけが取り柄なんだから…。頼むから、これ以上残念な人になるな…。もっと自分を大事にしような?な?」


「そうかえ!トウカはんがそう言うなら、ササラはおでこにつけるんをやめるわ!」


「ササラさん…、顔が良いとこだけが取り柄とか…、これ以上残念な人になるなって言葉の意味を考えた方が良いですよ…。」


「顔が良いとこだけが取り柄の残念な人…?ユウジはん…、急に失礼やないか…?さすがのササラも落ち込むで…。しくしく…。」


「なんで俺が悪いことになってるんすか!?トウカさんの言葉ですよね!?」


こんな感じでユウジをからかっている間も、サっちゃんは私達の希望のところにパーティシンボルのエンブレムを付けてくれる。

ちなみに、私はスーツの右胸、愛とトウカさんは自分の武器、シロ君はローブの肩、ササラさんは和服の腰帯、ユウジはおでこ…ではなく神盾(しんたて)アイギスに取り付ける。

神盾にそんなことして効果下がったりしない?とサっちゃんに確認したが、特に問題は無いらしい。


青鉄熊剛拳の手首辺りに付けたエンブレムを確認していた愛は、ん?ん?と首を傾げている。付け心地が悪かったかな?と確認しようとしたところで、愛はボソッと呟く。


幸薄(さちうす)なサっちゃんのお守りって不き…むぐぅ…。」


「こら、愛!!言っちゃいけないことがあるでしょ!!」


不吉って言おうとした愛の口を塞ぐ。ダメだよ、愛。私も一瞬そう思っちゃったけど、それを口に出してしまったら、せっかく作ってくれたサっちゃんに失礼よ。

サっちゃんの幸薄(さちうす)に内心で不安を感じていた私に、そのサっちゃんがトコトコと近付いてくる。あ、まずい…。さっきの不吉発言が聞こえていたかな…?と思ったが、予想は外れた。


「あ、美雪さん!妖精王(ようせいおう)の弓の方は間に合いませんでしたが…、別に頼まれていた、こちらはなんとか作ることが出来ました!ぜひ、使ってください!」


「お!ありがとう!」


サっちゃんが手渡してくるのは、私がとあるモンスターの素材を渡して作成の依頼をしていた一本の。

私が依頼した素材を矢先に、軸はミスリル鉱石で作られている。軽く硬いミスリルを使っていても、他の矢に比べるとズシリと重い一本の矢。でも、このくらいの重さならなんとか私でも射ることが出来るわね。

サっちゃんが作ってくれた特性の矢に満足しながら、マグカに収納する。このサっちゃん特性の矢は、大きな戦力になるのは間違いない。

うん、この矢があれば、なんとか剣のダンジョンでも戦えるわね。

ダンジョン踏破できるだろうなというなんとなくの確信と、ダンジョン内で何か起こるだろうなというなんとなくの不安を胸に、ダンジョン挑戦組の六人は身支度を整えて、剣のダンジョンへと向かうのであった。



剣のダンジョンは王都の南側にあるため、私達は歩いてダンジョンへ向かう。

すれ違う冒険者パーティが増える中、厳かな雰囲気を漂わせる石造りの巨大な門が現れる。この門をくぐった先にある地下への階段が、剣のダンジョンの入り口だ。

このダンジョンでレベルを大きく上げて、魔王と交渉できるだけの実力をつける…!!

剣のダンジョンの入り口を目の前に、目標と共に覚悟を決めていたところで、ユウジがため息交じりに呟く。


「剣のダンジョンの入り口に着いたけど…。相変わらず人いっぱいだなー…。」


「剣のダンジョンは推奨挑戦レベルが51のため、王都の中級から上級冒険者達にとって丁度良いレベルのダンジョンなんですよね。」


「だから、こんなに人がいるのかー…って、愛。強そうな冒険者に、戦いを挑もうとするんじゃない。」


「くそー!!ばれたかー!!離せー!!」


強者に向けて一目散に走り始めようとする愛を、ユウジが道着の後襟を掴んで止める。よくやった、ユウジ。


「ダンジョンん中では、他ん冒険者にも気を遣ったり注意しないとあかんで…って、どうしたん?美雪はん?そない難しそうな顔して。ダンジョン挑戦に緊張しとるん?」


「え?いや、スキル気配感知を使ってるんだけど、妙に私達に警戒色の人が多くて…。」


「なんでダンジョンの外からスキル気配感知を使ってるん…?」


「ダンジョンの外というか、いつも使ってますよ。いつ誰がどこから攻撃してくるか分からないんですから、常に警戒するのは当然でしょう?」


「さすが美雪はんやな…。」


怯えた目で私を見てくるササラさんを無視して、スキル気配感知を使う。うん、やっぱり警戒している冒険者が何人もいる。

剣のダンジョン前で準備をする周囲の冒険者の中に、私達に警戒する三人組の冒険者パーティがいくつか。四、五、六…。全部で七パーティってところか…、うん、多い…。

警戒しているパーティは一定の距離を保ちながら、なんとなく私達を観察してるような…と思ったところで、一気に警戒色の冒険者達が増えていく。中には私達に敵対色を向ける冒険者も…。


「おい、ユウジ!!離せよー!!あそこにいる、あいつー!!戦わせろー!!って、逃げるなー!!私の剛と戦えー!!そこのお前でも良い!!準備運動がてら、私の剛と戦えー!!」


あ、うん…。周囲の冒険者が向ける警戒と敵対色の理由は、ユウジに抑えられながらも、強者に挑もうとする愛さんだった。

ダンジョンを前に、愛の中の剛が高ぶっちゃったんだろうな…。私はため息をひとつ吐いてから、手足をジタバタ動かして暴れる愛に近付く。


「これからダンジョンで強いモンスターといっぱい戦うんだから、落ち着きなさい。」


「痛っ!!」


ユウジに羽交い締めにされても冒険者に戦いを挑もうとする愛の頭をぺしっと叩いて、私達は剣のダンジョンの中へと移動する。

この時の私は、周囲の冒険者が警戒する理由を、愛の暴走が原因だと思っていた。

しかし、実際には王都最大の勢力を誇る冒険者パーティ、黒夜翼集(ブラック・ウィング)が私達のパーティを監視していたのが原因だった。そのことに私達が気付くのは、もう少し先の出来事。

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