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魔王退治は要件定義から!  作者: 荒井清次
始まりの草原編 -新しい仲間と共に-
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【幕間】一人の大剣使いが託した思い

私の名前はノリス・アスカルド。身の丈もあるアイアンブレードを操り、どんな強い敵にもひるむことなく果敢に挑み、勝利を掴み取る冒険者だ。私が倒してきたモンスターは数多く、町でも少し有名な冒険者だ。レベル16にもなり、力がついてきたことを実感してきた私は、王都へ挑戦する前の腕試しとして、単身で一つのクエストを受けた。


それは、ブラウンベアの討伐。危険度3の緊急クエストだ。


ブラウンベアは、始まりの草原に時折出現する中ボス級のモンスター。魔法攻撃こそ使えないが、鋭い爪による重い攻撃と、茶色の毛による堅牢な防御を兼ね備えた強力なモンスターだ。初級冒険者が集まる始まりの草原では危険な存在であり、こうして緊急クエストとして中級冒険者が討伐を依頼される。適正討伐レベルは10で、私なら単身でも難なく討伐することが出来るだろう。


始まりの草原の青々とした草を踏みしめながら討伐対象のブラウンベアを探す。目の前を白マルモコが通り過ぎていく。初級冒険者の頃はレベル上げにお世話になったが、今回は倒している暇はない。白マルモコは何かから逃げるように走っている。周辺を見回すと白マルモコだけでなく、他のモンスターも同じ方向に逃げている。目当てのモンスターはこの先にいるようだ。背に構えていた大剣を両手に持ち、私はモンスターの流れに逆らって歩いていく。


しかし、私が目的のブラウンベアに出会うことはなかった。


「進化してやがる…!!」


そこにいたのは、黒い毛を持つブラックベアだった。進化により、ブラウンベアより一回り大きくなり、鋭い爪はより鋭く、堅い毛はより堅くなる。

ブラックベアを目にした私は緊張から大剣を握る力を強くする。ブラックベアの適正討伐レベルは15。今の私のレベルなら倒せるか…?


強敵を目の前にし、ひるんでいた私にブラックベアが気付く。鋭い眼光で睨んでくる。逃げたい衝動に駆られながらも、私が逃げた場合を考えたことで踏みとどまる。ブラックベアを野放しにした場合、何人の初級冒険者がその爪の餌食になるだろうか。犠牲を減らすためにも、ここで私が倒さなければいけない。


「ぐがぁぁぁあああ!!!!」


覚悟を決めた私にブラックベアは鳴き声で牽制をしてくる。初級冒険者ならこの鳴き声だけで恐怖状態に陥ることもあるが、私は中級冒険者。ひるむことなく、先制攻撃に向けて魔力を練り上げる。


「鋭く尖りし土の槍よ、敵を貫くため飛翔せよ!ストーンランス!!」


地属性魔法のストーンランスをブラックベアに向けて発動する。接近してくる土の槍をブラックベアは難なく右手の鋭い爪で打ち砕く。しかし、私がストーンランスを放った狙いはダメージではない。右手を振り上げたことで、がら空きになった右側に移動する。


(かぶと)割り!!」


ブラックベアの頭を目掛けて武技を発動し、アイアンブレードを振り下ろす。ブラックベアは私の放つ闘気を感知したのか、体を右にひねることで頭の位置をずらし肩で私の斬撃を受ける。狙いは逸らされたが、手に斬撃による反動が返ってくる。十分な手応えがあった。しかし、黒い毛の間から血が滲む程度のダメージであった。


「くっ、堅い!!」


ブラックベアの堅い毛に驚いている私に、ブラックベアは体をひねり、左手の鋭い爪を振るってくる。私は間一髪のところ、大剣でブラックベアの爪の攻撃を防いだが、ブラックベアは右手も振るってくる。私は防ぐことが出来ず右腹でその爪を受けてしまう。


「ぐっ…!!ストーンランス!!」


痛烈なダメージに意識を失いかけたが、大剣から右手を離し詠唱破棄にてストーンランスを放つ。不意打ちの地属性魔法を顔に受けたブラックベアは後跳びで距離を取る。ストーンランスによるダメージは鼻先を少し傷つける程度であった。やはり詠唱破棄の地属性魔法では威力不足か!!


自分の傷の状態を確認する。内臓にまでは爪が達していないようだが、深く傷ついた右の脇腹からは、耐えず血が流れている。ポーションでの回復も考えたが、相手へ与えられるダメージが少ない現状では、このままの方が良い。私はスキル背水を発動する。体が赤い闘気で包まれる。


このスキルは自分のHPが低ければ低いほど攻撃と速さが上がるのだ。何度も私の危機を救ってくれたスキルの使用により、手に持っていたアイアンブレードが軽くなったように感じる。


「一閃!!」


武技の一閃を発動する。武技の発動による加速を受け、ブラックベアに向かい突進し、アイアンブレードを横薙ぎに振り切る。ブラックベアは右手を前に出し、私の斬撃から頭を守る。ブラックベアは弱点を守ることが出来たが、右手に深い傷を負う。

スキル背水の効果が切れたのか、私の体を包んでいた赤い闘気が消える。しかし、確実なダメージを与えることが出来た。あの右腕の傷なら今までのような鋭い攻撃を繰り出すことは出来ないだろう。右側から少しずつダメージを与えていけば倒すことが出来る。私は腰のベルトから赤いポーションを取り出し、HPを回復する。右の脇腹の痛みが和らぐ。


続けざまに青いポーションを飲もうとしたところで、目の前のブラックベアの変化に気付く。ブラックベアの体が赤い闘気に包まれていたのだ。


「なに…!?お前も背水を使えたのか!?」


強いモンスターは魔法攻撃だけでなく、スキルや武技を使うことが出来る。どうやらブラックベアもスキル背水を取得していたようだ。赤い闘気に包まれたブラックベアが接近してくる。ポーションで回復し、背水を発動することが出来ない私は、背水により強化されたブラックベアの猛烈な攻撃を防ぐことは出来なかった。


自分の血で赤く染まっていく視界。薄れゆく意識の中で、私はアイアンブレードを遠くに投げる。こうすればアイアンブレードはドロップアイテムと見なされ、私と一緒に光の粒にならなくて済むのだ。私は武器を残すことで、この無念の気持ちを残すことに決めた。アイアンブレードは王都から来た商人から購入したそこそこ上等な武器。

誰かがこの武器で私の仇を取ってくれることを願いながら、光の粒になった。


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