ガチャという名の悪い文明が私達の異世界にも現れる
前回のあらすじ:トラップタワー跡地に原初の鍛冶屋こと武姫さんが作った施設の中には、転生前の日本にあったガチャポンが置かれていた。
突然目の目に現れたガチャポンを前に、混乱を極める私とユウジに、武姫さんは思惑通りって感じで、にこーっと笑う。
「みゃっはっはっは!!やっぱり転生者は気付いちゃうみゃーね!これは、転生者から昔懐かしいって評判になる予定のレトロモデルのガチャポンみゃー!!他にも、新旧さまざまなガチャポンマシンを準備してあるみゃ!!我はガチャポンが普及するよりも昔の人だから、創にもらった書物を基に、がんばって新旧さまざまな日本のガチャポンを再現したんみゃーよ!褒めてほしいみゃー!!」
「日本のガチャポンを再現って…。え?いや、このガチャポンって何のための物なんですか?」
「何のため?そんなの説明するよりも、実際にやってみるのが良いみゃーよ!初回は特別に無料で、ひとり1回ガチャポンを回させてあげるみゃー!初回無料みゃー!!」
「ソシャゲの初回無料ガチャみたいな制度だな…。」
ソシャゲ?ユウジの謎のツッコミに首を傾げていると、武姫さんは大きな胸の間から、四枚のコインを取り出す。
ははは、大きな胸を持つ人はそんなところに収納があるのかー。すっごーい!
大きく見積もっても手の平サイズの私には真似できない技だー。あははははー!!…ちくせう。
少し悲しい気持ちになりながら、武姫さんからコインを受け取る。少し温かい。
「それじゃ、そのコインで好きなガチャポンを回してみるみゃー!!」
「回す?どうやって?」
「このコインはどうすれば…?」
「あー、愛ちゃんとサっちゃんはガチャポン初めてみゃーね!我が教えてあげるみゃーって…、ま、まさか!?二人の初めては我の物ってこと…!?みゃは~!!」
武姫さんはハァハァと息を荒げながら、愛とサっちゃんにガチャポンの使い方を優しくレクチャーする。武姫さんが良からぬことをしないように横目で警戒しながらも、私は目の前のガチャポンについて考える。
何だろう?このガチャポンは、すごく大事な物のような気がする。直感めいた何かを感じていたところで、愛が大きな声を上げる。
「ここにコインを入れてハンドルを回せば良いんだね!オッケー!!理解したー!!それじゃあ、いっくよー!!」
「待ってください、愛さん!!どうせなら、四人揃って回しましょう!!美雪さん!!ユウジ!!はやくはやく!!」
早くガチャポンを回したくて仕方がないって感じの愛とサっちゃんの大声に、私は正気に戻る。
日本出身の私とユウジにとっては、子供の頃に何度も回したガチャポンだが、愛とサっちゃんにとっては未知との遭遇だったのだろう。
二人とも目をキラキラさせて、楽しさ爆発って感じだ。サっちゃんは私の手を、愛はユウジの手を引っ張り、ガチャポンの前に立たせる。
まさかこの歳になってガチャポンを回すことにあるとは…。少し恥ずかしい気持ちになりながらも、目の前のガチャポンにコインを入れる。
「美雪!!サっちゃん!!ついでにユウジ!!コイン入れた!?入れた!?」
「まだ回さないでくださいよ!!せーのっ!です!!せーのっ!!で回すんですよ!!」
「何だろう、元気な子供二人を見守る母親の気持ちになる…。」
「ん!?美雪さんが母親って…!!じゃあ、父親は…!?」
ユウジじゃないよ。顔を赤くするな。
睨んでユウジを黙らせたところで、サっちゃんが大きな声を上げる。
「せーのっ!!」
サっちゃんの掛け声に合わせて、私はガチャポンのハンドルを回す。あー…、懐かしいこの感触…。
ガチャガチャコロンという音の後、取り出し口からカプセルが出てくる。出てきたカプセルを手に取ったところで、愛の大きな声が聞こえてくる。
「うわー!!カプセルが出てきた!!楽しい!!ねぇ、このカプセル開けていい!?」
「待ってください!!愛さん!!ガチャガチャって音と感触が楽しかったのは否定できませんが、どうせなら、みんなで一緒に…、せーのっ!で開けましょう!!」
「開ける前に、四人のカプセルの色を確認しようぜ。多分、このカプセルの色は中身のレア度に比例してるぜ。俺の知ってるガチャならな…。」
ユウジの言葉に、私達の後ろに立っていた武姫さんがニヤリと笑う。両腕を上げた武姫さんは、得意気にカプセルの色について説明を始める。
「ユウジの言う通りみゃーよ!カプセルの色は、その中身の最低レア度を表しているみゃー!白なら星1以上…、これはハズレみゃーね。黒なら星2以上、これが標準みゃーね。銀なら星3以上、当たりみゃー!中級冒険者なら確実に戦力増しになる装備品が入ってるみゃー!金なら星4以上、大当たりみゃー!我お手製のユニーク装備品や、高性能な装備品が手に入るみゃー!虹色なら星5以上みゃけどー…、これは激レア中の激レアみゃー。確率的には宝くじの一等を当てるようなもんみゃー!!小数点以下の確率で出てくる奇跡の一品みゃー!!こんな感じで、カプセルの色は中身の期待値を示してるみゃーよ!」
「まじでソシャゲのガチャみたいだな…。」
ユウジが何かツッコミをしているが、無視をすることにする。
しかし、このガチャポンの中からは、白、黒、銀、金、虹の順番でレア度の高い装備品が入るのか。
突然置かれていたリサイクルボックスで鍛冶屋から集めた装備品を、こうして冒険者に提供するのがこの施設の全容ってことか。なるほど。
「いや、どうやって装備品がこの小さなカプセルに入ってるんですか?」
「我の秘密技術で圧縮して入ってるみゃー!カプセルを開けると、元の武器の大きさに戻るみゃー!マグカが一枚のカードにたくさんの物をしまえるのと同じ原理みゃーよ!」
「なるほど。」
武姫さんの説明に納得をしながら、私達は各々の手の中のカプセルを確認する。私のカプセルの色は…、黒。星二装備品以上が確定か…。微妙ね。
「私は白でしたが…、美雪さんはどうですか?」
「私は黒。サっちゃんは白か…。やっぱり幸薄いわね…。」
「うぅ…。でも、ユウジも白です!!私だけが薄幸じゃないです!!」
「ユウジはそういうキャラだから。」
「そういうキャラって言わないでくれよ…。否定できないけどさ…。」
「落ち込むんじゃみゃーよ!ほとんど白か黒だから、こんなものみゃーよ!銀や金なんて、たまにしか出ないんだからみゃー!その上の虹色カプセルなんて、噂では出るらしいクラスの一品!百年もこの施設を稼働してれば出るかも…」
「見て!!美雪!!これ!!キラキラー!!虹色だよー!!」
「「「「!?」」」」
先ほど武姫さんが百年に一度、みたいな言い方をしていた虹色のカプセルを、満面の笑みの愛が両手に掲げている。
目をこすってみたが、見間違いじゃない。光を七色に反射してキラキラ光るカプセルは虹色だ。
「愛ちゃん、豪運…いや、剛運!?恐ろしい子!!」
武姫さんの驚きの言葉に、愛は得意気な表情でふっふーん!と胸を張る。
「星五装備品!!愛さん、早く開けましょう!!早く!!早く!!」
「おいおい、サっちゃーん!そんな慌てなさんなー!虹色カプセルは逃げないよー!」
子供のように目をキラキラさせるサっちゃんと、得意気な表情でもったいぶる愛。二人の少女(片方は200歳超え)のやり取りを微笑ましく見守っていたところで、突然頭の中に声が聞こえてくる。
「原初の鍛冶屋に仕返しをするため、愛さんのカプセルに少し干渉をさせてもらいました。カプセルの中身は操作できませんでしたが、奴の悔し気な表情を見れて私は大満足です。」
聞こえてきた声は、転生時にお世話になった創さんのもの。そういえば、創さんは原初の鍛冶屋のことを相当嫌っていたな…。
すごく懐かしい創さんの登場に感謝をしながら、虹色カプセルの中身が気になってきたため、愛にカプセルを開けてもらうようにお願いする。
「オッケーオッケー!それじゃ、開けるよー!!それー!!」
虹色カプセルの中から、キラキラとした光に包まれた弓が出現する。精巧な細工が施された弓は、人間が作った物とは思えない、見事な逸品である。
まさか登場する装備品が、私がメイン武器として使う弓だなんて…!!焦る気持ちを落ち着けながら、マグカで性能を確認することにする。
名:妖精王の弓
分類:弓
ランク:5
性能:攻撃+120、魔力+120、風属性魔法強化、飛距離上昇、命中精度上昇、魔吸収
重量:23
説明:妖精王オベロンが神獣との戦いで使っていた神話級の弓。放った矢は雲を切り裂き、月にまで届いたという逸話を持つ。
「うわ、基本性能が高い上に、攻撃した相手のMPを吸収するスキル魔吸収まで付いてるなんて…。さすが星五装備品です…。すごい性能です。」
サっちゃんが星五装備品である妖精王の弓を目の前に、感嘆の声を漏らす。
うん、私もサっちゃんの言う通り、性能はすごいと思う。性能は。
妖精王の弓を手にした愛は、表情を引き締めて私の前に立つ。ふるふる震えながら、妖精王の弓を私に手渡してくる。
「弓は私、使えないから、美雪にあげぷふっ。」
「あげぷふっ?今、笑った?ねぇ、今笑った?」
私の質問に、愛は震えながら目を逸らす。絶対に笑っている。妖精王の弓を見て絶対に笑っている。
周囲の様子を確認すると、武姫さんとユウジも笑っている。
でも、三人が笑うのも仕方ない。私は手の平の上の妖精王の弓をもう一度確認する。
星五装備品である妖精王の弓は、私の広げた片手の中に収まっていた。
「妖精王の弓、小さいわね…。」
「あはははははははは!!」
「小さい…、どうやって使うのレベルで…、小さい…!!ぶふっ…!!」
私の呟きに耐え切れなくなったのか、愛が大声で笑い始める。ユウジも笑いを堪えている。
うん、確かに星五装備品である妖精王の弓は、今まで装備していた弓とは比べ物にならない程の性能よ。
でも、この大きさだと、私には使えないわよね?この大きさだと、爪楊枝くらいしか飛ばせないんじゃないの?
試しに両手の親指と人差し指でつまんで、引っ張って離してみると、ビーンという音が周囲に響く。
うん、小さいけどちゃんとした弓ね。本当に小さいけど…。
手の中の妖精王の弓の大きさに困惑をしていたところで、武姫さんがニヤニヤ笑いながら解説を始める。
「みゃははははははは!!オベロンは普通の妖精より大きい妖精の王と言っても、手の平サイズみゃから、使う弓も手の平サイズみゃー!性能は間違いない上に、弓は美雪ちゃんのメイン装備だから、確実に戦力アップみゃーねー!!使えればだけどー!!みゃははははははは!!」
「あはははははははは!!」
ここぞとばかりに煽ってくる武姫さんと、大口を開けて笑う愛。
ぐぬぬぬぬと歯を食いしばりながら、手の中の妖精王の弓を見ていたところで名案を思いつく。
「サっちゃん、ちょっとこっちおいで。」
「何ですか?」
「詳細はホームに戻ってから相談するけど…。ごにょごにょ。」
私の隣に立ったサっちゃんへ、秘密の相談をする。内緒でサっちゃんだけに相談したのは、他三名が妖精王の弓を見て笑ったからだ。私は少し怒っている。
私の相談を受けたサっちゃんは最初驚いた表情を浮かべたが、出来そうかな?という私の問いに力強く頷いてくれる。
「美雪ー!サっちゃんと何を話してたのー?」
「ふふふ、内緒!」
さっき散々笑った愛には、教えてあげない。私は少し怒っている。
使い方に工夫が必要だが、強力な性能の妖精王の弓を手に入れた私は、思わず頬が緩んでしまう。
ちなみに、私とサっちゃんとユウジのハズレカプセルの中身は、本当に微妙な装備品だったため、詳細は割愛する。
虹色カプセルの出現の熱も下がってきたところで、武姫さんが声を上げる。
「この施設の説明が途中になってしまったみゃーね!この施設は、鍛冶屋が作った装備品を広く冒険者に届けるためのものみゃー!ランダム性はあるけど、低等級冒険者でも我が作った高性能な装備品を手に入れる可能性が増えるんみゃーよ!ほら、今の王都は良い装備品は、高等級な冒険者が独占するみゃーろ?それじゃあ、低等級冒険者が育たなくてダメみゃー!だから、我はこの施設を作ったんみゃー!」
「なるほど。」
私達も王都に来たばかりの頃は、黒等級冒険者ってことだけで侮られることがあったな。
ファストの町じゃ一番強いと言っても過言じゃない冒険者だったのに、青等級になって初めて一人前と呼ばれる王都では、黒等級ってだけで下に見られていた。
装備品を買いに行っても、黒等級冒険者が使えるような物は無いって門前払いをされることもあった。
どうやらこの施設は、黒等級以下の低等級冒険者にも、平等に装備品を手に入れるチャンスを与えるものらしい。
王都の抱えている水面下の問題にメスを入れるための施設なんて…。私の中で、普段みゃーみゃー言ってるだけと思っていた武姫さんの株が上がる。
「まぁ、我にたくさん来る装備品の作成依頼を、この施設で手に入れてーって断るためのものでもあるんみゃーけどねー!我は作りたい物を好きに作りたいみゃー!みゃーはっはっはっは!!」
せっかく上がった株も、すぐに自分で下げる残念美人二号こと武姫さん。ちなみに、残念美人一号はササラさんである。
私の残念な人を見る視線など少しも気にすることも無く、武姫さんは説明を続ける。
「今回は初回無料だったけど、次回以降はコインを購入してみゃー!ガチャポンを引くためのコインは、そこの機械で300Gで1枚購入できるみゃー!」
武姫さんが指差す先には、ゲームセンターにあった100円玉の両替機のような機械があった。どうやら、あの機械にマグカを使うと、ガチャポンを引くためのコインが出てくるようだ。
しかし、一回300Gとは…。300Gと言ったら、星二装備品の相場である。
その金額で星三以上の装備品が手に入る可能性があるなら、これは冒険者にとって嬉しい施設かもしれない。ランダム性があるのも面白い。
私がうんうんと頷いていたところで、ユウジがじとーっとした目線で武姫さんのことを見ている。どうした?発情したか?
「一回300ってのが、ソシャゲのガチャっぽい…。いや、全部のソシャゲが300ってわけでもないけど…。俺が昔やってたソシャゲが300だったから、そう感じるのか…?考えすぎか?」
ユウジは何か訳の分からないことを呟いている。どうしたんだろ、今日のユウジ?様子が変なのはいつものことだけど、いつにも増して変だ。武姫さんに発情してなかっただけ良いけれど。
「ちなみにー、10回分を購入すると、サービスで一回分をおまけして11回分引けるみゃーよ!お得みゃー!!」
「いや、やっぱりソシャゲのガチャじゃねぇか!!」
「ガチャ?何言ってるみゃー?」
ユウジの突然のツッコミに、んー?と首を傾げる武姫さん。納得いかないって感じのユウジを無視して、武姫さんは説明を続ける。
「ちなみにー、おみゃー達と歩いてきた通路に、何枚か装備品の描かれたポスターがあっただろうみゃー?あれはピックアップな一品みゃー!他の装備品に比べて出やすくなってるみゃー!!」
「ピックアップ!?やっぱりソシャゲのガチャじゃねぇか!!」
「ガチャ?何言ってるみゃー?」
ユウジの突然のツッコミに、再びんー?と首を傾げる武姫さん。ピックアップは怖いと呟くユウジを無視して、武姫さんは説明を続ける。
「ちなみにー、今みんなに回してもらった昔ながらのガチャポンから出てくるパターンの他にも、色々なパターンを用意してるみゃーよ!そこの黒い画面が付いたガチャポンは、ハンドルを回す代わりに、様々な演出をしてくれるみゃー!!」
「演出?」
「青い結晶が砕けて武器の画像が出てくるパターンや、魔法陣の光がぐるぐるーって回転するパターンや、可愛らしいドラゴンの腹からポコポコ武器が入ってる卵が出てくるパターンや、眼鏡をかけた緑髪の女性が装備品の絵が描かれた紙を持ってくるパターン等々、様々な演出があるみゃー!」
「どれも有名ソシャゲのガチャ演出じゃねぇか!!」
「ガチャ?さっきから何言ってるみゃー?」
ユウジのツッコミに、三回目のんー?と首を傾げる武姫さん。あの表情は間違いなく、分かっていてやってる顔だ。確信犯だ。
「ちなみにこの施設の名前は、ガチで、あり得ない程の、チート級で、ハイクオリティな、あるものを提供する施設、略してガチャ屋みゃー!!」
「やっぱりガチャじゃねぇか!!あるものって無理矢理な単語を使ってまで、略してガチャにしてるじゃねぇか!!確信犯だろ!?」
いやー、今日のユウジは元気だな。水を得た魚のようにツッコミを発動している。
元気なユウジを横目に、私はマグカで10回分のガチャコインを購入する。ちゃんと1回おまけをもらえるお得な買い方だ。
ジャラジャラーというガチャコインの払い出しの音が周囲に響いた瞬間、ユウジが大声を上げる。
「美雪さん!?なんで、ガチャコイン買ってるんですか!?」
「え?だって、愛とサっちゃんがまだまだ回したりないって顔してるんだよ?そりゃ追加で買うでしょ。無料分だけ回して帰るってのも申し訳ないし。」
「もっとガチャガチャしたい!!」
「お恥ずかしながら…私ももう少しお願いします。」
「いや、ガチャは悪い文明なんす!!早くこの凶悪施設から逃げましょう!!」
「凶悪施設ってことはないでしょ。お得に装備品を手に入れられるんだし、1回300Gだよ?ウィンドワイバーン相手に稼いだお金があるんだから大丈夫よ。少し回したら、すぐ止めるし!」
「その感覚で、何人の廃人が地獄を見てきたか…。」
ユウジがぷるぷる震え始める。どうしたんだろ?何か過去にガチャに苦しめられたのかな?
買ってしまったガチャコインは、使うしかない。ユウジが何か言いたそうな表情で睨んでくるが、無視して愛とサっちゃんが楽しそうにガチャを回すのを見守る。
数回のガチャガチャですっかり飽きてしまった愛が、鬼火流剛術の型の練習を始める中、サっちゃんが大きな歓喜の声を上げる。
「美雪さん!!愛さん!!出ました!!銀色のカプセル!!幸薄な私でも、銀色のカプセルを手に入れることが出来ました!!」
「ついに!?おめでとう、サっちゃん!!」
「やっと!?…んんぅ!!おめでとう、サっちゃん!!さぁ、サっちゃんが実力で掴んだ銀色のカプセルを開けて中身を確認しましょう!!」
「…。」
愛と私が歓喜の声を上げ、ユウジが黙って見守る中、サっちゃんは震える手で、銀色のカプセルを開ける。
すると、カプセルの中から一本の緑色のハンマーが現れる。
名:緑鉄蟹の槌
分類:ハンマー
ランク:3
性能:攻撃+79
重量:86
説明:グリーンデッドクラブの鋏を使ったハンマー。特殊な能力は無いが、重量に見合った攻撃力を持つ。
「やりました!!星三武器です!!」
「は、ハンマーね!!私達のパーティの中で誰も使ってる人がいないけど…、立派な星三武器ね!!」
「大丈夫、サっちゃん!!ユウジ、はすごい剣をすでに持ってるから…、ササラ!!ササラに装備させよう!!ササラならきっとやれるよ!!」
「ありがとうございます!!美雪さん!愛さん!!ササラさんへの良い土産になりました!!」
「よーしっ、そろそろツッコミの出番だな。一つずついくぞ。」
フルマラソンを完走した後のような感動が愛とサっちゃんと私に押し寄せている中、ユウジが大きな溜息を吐きながら大声でツッコミを入れ始める。
「いや、ガチャ引き過ぎだから!!サっちゃんが銀色のカプセルを出すまでに、どれだけの回数ガチャを引いた!?サっちゃんが後ろに隠してる白黒のハズレカプセルはどれだけあるってんだ!?」
ユウジの言葉に、サっちゃんと私はハズレカプセルを背に隠す。えーっと…と言い訳を探していたところで、武姫さんがホクホクといった表情で答える。
「165回みゃー!!毎度ありみゃー!!」
「おまけを考慮しても10連を15回じゃん!!45,000G!!ウィンドワイバーンの乱獲で手に入れたお金なんて余裕で吹き飛んだだろ!?散財じゃん!!」
喜びムードな私達三人の雰囲気をぶち壊すユウジ。いや、確かに持ち金としてはなかなかなピンチになってるよ。でも、こういうのってプライドや矜持の問題じゃん。勝利を掴んだんだから、良いじゃない!
「ユウジ、こういうのは苦労して手に入れたっていう思い出が大事なの。だから、無粋なことを言わないでよ。」
「ごめんなさい、ユウジさん…。私が運が無いばかりに…。こんなにいっぱいのお金を費やしてしまって…。つい夢中になってしまいました…。」
「サっちゃんは悪くない!!悪いのはユウジ!!」
私達三人の言葉を黙って頷きながら聞いていたユウジは、大きな溜息を吐いた後、後頭部をわしゃわしゃと掻きながら諭すように説明をし始める。
「確かにガチャの怖さを身をもって知ってもらおうと思って、ここまで止めなかった俺も悪いけどよー…。現状どうする?ダンジョン挑戦のための準備資金を散財して手に入れたのって、誰も満足に使えないハンマーじゃん。ササラさんにハンマーを無理矢理装備させようとしてるけど、たぶん無理だからな?どう見ても、あの人はパワー系じゃないだろ?ガチャで散在するくらいだったら、俺達でも使える星三武器を買った方が安く済んだじゃないか?」
「ユウジが正論で責めてくる…!!正論だから、否定できないのが悔しい!!」
「うー…、ごめんなさーい!!」
「サっちゃん、大丈夫!!問題無いよ!!」
「問題無い?問題あるだろ?バカ愛。」
「問題無い!!失ったなら、その分だけ稼げば良いんだよ!さぁ、ダンジョンに行こう!!」
「お前はモンスターと戦いたいだけじゃねぇか…。」
「でも、他に策は無いわね…。行こうか、ダンジョン。でも、盾のダンジョンの低階層ね。私達四人だと、その辺が適正だから。」
「やったー!!ダンジョンー!!」
こうして私達は、いつの間にか私達から所持金を吸い上げたガチャ屋の怖さを感じながら、金策のために盾のダンジョンへと向かう。
王都に来てから、なんかいつも所持金に困ってるな…?それもこれも、発端のガイドさんのせいか…。ガイドさん許すまじ。
ガチャで散在したことをガイドさんのせいにしていたこの時の私は、ひとつ大事なことを忘れていた。
盾のダンジョンで、私達の仲間が何をしているのかを。
「やってきたぞー!!久しぶりのダンジョーン!!私は気分がウッキウキー!!モンスターみんな、ボッコボコー!!」
「ボコボコにしちゃうと、せっかく手に入れた素材の質が落ちてしまうので、やり過ぎないようにお願いします!!」
「オッケー、サっちゃん!ウッキウキな気分でもー、やり過ぎない程度にボッコボコー!!ついでにユウジも一緒にボッコボコー!!」
「なんでだよ…。マジでやめてくれよ…。」
簡単なお昼ご飯をはさみ、推奨挑戦レベル36の盾のダンジョンへと着いた私達。三人の表情を確認しながら、私は気合いを入れるために片手を上げる。
「よーっし!!それじゃ、今日の負け分を取り返すわよー!!おー!!」
「おー!!」
久しぶりのダンジョンにテンション上がる愛が、掛け声と同時に目の前の鶏型のモンスターに向かって走り出そうとした瞬間、背後から突然声をかけられる。
「おいこら、美雪。なんでお前がここにいるんだ?」
「「「!?」」」
この声はトウカさん!?あ、そうだった!!トウカさんはシロ君とササラさんと一緒に盾のダンジョンでパワーレベリングしてるんだった!!まずい!!散財がバレて怒られる!!
咄嗟に逃げ出そうとした私の肩を、誰かがガッと掴む。
「美雪はん?なんで逃げるんかえ?人の顔見てすぐ逃げるんは失礼やと思うで。」
くっ!!このはんなりとした声はササラさんか!!残念美人でも、さすが銅級冒険者!!あっという間に私の背後を取っている!!
「美雪さん。なんで逃げようとしたんですか?ダンジョンにいる理由と、負け分を取り返すという聞き捨てならない先ほどの言葉の意味を、説明してください。」
両手に杖を抱えて、私の前に立つのはシロ君。
あれ?ニコッと笑ってるけど、なんだか背筋に寒気がするぞ?
「ユウジ、シロ君の背中にオーラのような物が見えるよ…。」
「愛…。心なしかゴゴゴゴって地面が震える音も聞こえるぞ…。」
このゴゴゴゴは地属性魔法を発動して…はいないわね…。怒りのあまりのゴゴゴゴね…。
「怒らないので…、ゆっくりと説明をしてください?ね?」
ガチャは悪い文明。
ユウジがさっき言っていたことを思い返しながら、シロ君とトウカさんの説教を受けるのであった。




