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魔王退治は要件定義から!  作者: 荒井清次
王都滞在編 -新しい仲間と共に王都での生活基盤を整え強くなる-
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ホームへの引っ越しを完了し、今後の予定を決める

前回のあらすじ:パーティのホームを決め、今までお世話になっていた宿屋金字塔を後にする。


「あ、シロ君。お疲れ様!」


「お疲れ様です。その様子だと、ホームは決まりました?」


宿屋金字塔でラクレさんとレトチさんと別れ、新しいホームへ向かう途中、ダンジョン帰りのシロ君たちと合流した。


「うん!お疲れのところ悪いけど、引っ越しをお願いね!」


「大丈夫です!朝の内に荷作り完了してますので!」


さすがシロ君、出来る子。

私達がホームを決めることを前もって見越しておき、事前に荷作りを完了していたシロ君に感心していたところで、右腕が柔らかい何かに包まれるのを感じる。

ん?と右腕に絡みつくものを確認すると、蕩け切った表情のユリが、私の右腕にぎゅうっと抱きついていた。


「お姉様ー!!ユリ、昨日今日とお姉様と全然過ごせてなかったので、寂しかったですー!!お姉様成分を吸収させてくださーい!!クンカクンカ!!スーハースーハー!!」


いや、スキル気配感知でユリってのは知ってたけども、表情筋を緩め切った、だらしない顔をしているとは思わなかったので、思わず驚いてしまう。

ユリは私の驚きを少しも気にすることなく、私の右肘あたりに顔を埋めて、息を荒くしながらにおいをかいでいる。


「ユリ、正直恥ずかしいからやめてほしいのだけど…。」


「たまんねぇ…。濃厚なお姉様の香りが、鼻腔を伝って脳天を揺さぶってきやがる…!!ふんーっ!!ふんーっ!!」


私の右ひじに顔を埋め、すーっと深く息を吸った後に、ぷるぷると震えたユリは恍惚の表情を浮かべる。

完全にきまってしまっている。


「え?そんなに?もしかして私って臭う?」


「最高に良い香りです…!!あぁ…、たまらない…!!」


「最高に良い香り?良い香りでそんなにぷるぷるする!?え?本当に良い香りなの!?匂いなの!?残念な臭いの方じゃないの!?」


私の質問に答えることなく、ユリはぷるぷるしながら尋常じゃない様子で私のにおいをかぎ続けている。


「やばい、ちょっと不安になってきた…。シロ君、ちょっと確かめてもらって良い!?」


「え!?」


ユリが絡みつく右手と逆の左手を、なぜか真っ赤な顔で驚いているシロ君に、ぐいっと突き出す。


「え!?え!?」


「シロ君、早く!躊躇されると、ドンドン不安になってくる!」


「あ、え?良いのかな…?それじゃ…。」


躊躇いながらもシロ君は、遠慮気味にスンスンと私の二の腕あたりのにおいをかぐ。

んー。よく考えると少し恥ずかしいな…。でも、女性として良い匂いか悪い臭いかはとても気になる。ドキドキしながらシロ君の答えを待つ。


「大丈夫です。」


「大丈夫!?曖昧!!もっと具体的に!?」


「えーっと…、石鹸の良い匂いです…。すごく良い匂いです…、はい…。」


シロ君も恥ずかしかったのか、真っ赤な顔でポツリと呟く。シロ君に申し訳ないと思いながらも、臭くなかったことに一安心。

溜息を吐いて落ち着いていたところで、ユリが抱きついている右腕に違和感を感じる。


「んぬむぅー!!シロさんに負けてられねぇ…!!私も、もっと、もーっと、濃厚なお姉様成分を、我が身にぃ…!!今なら、油断してる今なら、いけるぅ…!!ユリ・シンジョウ、いきます!!」


もぞもぞと顔を少しずつ上に移動するユリ。まさか…!?


「脇はダメ!!さすがにそこはダメ!!恥ずかしいのレベルを超えてる!!こら、無理矢理かごうとするな…って、力強いな!!」


「お姉様!!抵抗は無駄です!!ふんーっ!!ふんーっ!!」


力任せに必死に抗うが、ユリのレベルは私より高いためか、彼女の力から逃れることが出来ない。

ベアクローのように彼女の顔を掴んで押さえるが、喜びの表情を強くしながら私の肘から脇へと少しずつ移動していく。


「ふんーっ!!ふんーっ!!ふみゅぎゅ!?」


鼻息荒く、私の脇の匂いを嗅ごうとしていたユリは、急に変な声を上げる。声のする方を確認すると、ユリの頭に大きな石の塊が命中していた。

白目を剥いて気絶するユリの後ろに立っていたのは、杖を両手に持つシロ君。

どうやら、地属性魔法を背後から使ったようだ。

両手に杖を持ったシロ君は、何も無かったかのように、笑顔で首を傾げる。


「美雪さん、無用心な行動は控えてくださいね?」


「はい、すみませんでした…。って、このやり取り面接の時以来の、二回目?」


「美雪さん、無用心な行動は、本当に、控えてくださいね?」


「あ、はい…。」


シロ君の顔は笑っているが、目の奥は笑っていない。明らかに怒りの表情だ。本当に、という言葉に不思議な重みを感じる。

普段怒らないシロ君の抗議の目に、私は大人しく頭を下げる。


「はぁ…。それじゃ、ホームに移動しますよ…。ユリスキーさん、ユリさんのことをお願いしますね。」


「はい、分かりました!!シロの兄貴!!」


シロの兄貴?

突然の呼び名に驚いたけど、ダンジョンでのパワーレベリングの中で何かあったのだろう。

笑顔のシロ君、ユリを背負うユリスキーさん、尊いと呟いているレズメッグァナーイさんと一緒に、ダンジョンの成果を聞きながら、ホームに移動する。

私達のパーティの良心であるシロ君を怒らせてはいけない。



ホームに全員集合した私達は、部屋割りで揉めたり、誰が一番風呂をもらうかで揉めたり、食事や掃除当番で揉めたり…、といった大忙しな引っ越しの一日を過ごした。

各々の部屋も決まり、引っ越しもある程度落ち着いたところで、私室の窓からオレンジ色の光が差し込んでいることに気付く。

もう夕方かー…。あっという間に一日が過ぎてったなー…。そんなことを考えていたところで、私の部屋の扉がコンコンと叩かれる。


「美雪さん、相談したいことがあるんですが、良いですか?」


「その声はサっちゃん?相談したいこと?なになに?」


扉を開くと、やっぱり立っていたのはサっちゃんだった。ソワソワ困った表情を浮かべながら、大事そうに一枚の板を両手に抱えている。


「相談したいことって、サっちゃんが手に持ってるその板のこと?」


「はい、そうです!私達のパーティである平和への旅路(ピースロード)のホームが決まりましたので、パーティシンボルを考えてみたんです!これなんですけど…、どうですか!?」


サっちゃんが私に向けて突き出した板には、葉っぱで作られた大きな円のような図形に、漢字の八のような二本の線が引かれたマークが彫られている。


「平和を表すピースリーフの葉で作った輪っかに、道を表す二本の線を描いたシンプルなマークです。平和を目指して旅をする、っていう私達の理念とパーティ名を表すシンボルとして考えたのですが、どうでしょう?」


「パーティシンボルって、そのマークを見たらすぐに所属するパーティが分かるマークってことよね?」


「はい!美雪さんも冒険者ギルドで他のパーティのシンボルを目にしたことがあるはずです!」


そういえば冒険者ギルドにいる強そうな冒険者は、みんな胸か肩に何かしらのマークを付けていたな。

王属騎士団を表す盾に馬のようなマークや、どこの冒険者ギルドかは分からないけど、コウモリの羽に剣のマーク、大きなフクロウに槍のマーク、一輪の花のマークといった、所属パーティを示すシンボルを掲げた冒険者を何度も目にしたことがある。


「確かに、私達のパーティも、こうして10名以上のパーティになった上に、ホームも手に入れて、立派な冒険者パーティの仲間入りをしたんだもんね…。パーティシンボルも必要か…。」


サっちゃんがデザインしてくれたパーティシンボルを目の前に、私は少し悩む。

正直、美術センスの無い私は、このパーティシンボルが良いものかどうか分からない。美術的な価値は分からないけど、サっちゃんの想いがつまった良いシンボルってのは伝わってくる。


「サっちゃん!作ってくれてありがとう!これを私達パーティのシンボルマークにしましょう!」


「ありがとうございます!それじゃ、皆様の装備品につける装飾品や、ホームの入り口に掲げるエンブレムの作成に移りますね!!ありがとうございましたー!!」


キラキラと目を輝かせるサっちゃんは、私の返答を聞いた後、ビューンと裏庭に移動する。

正式な鍛冶スペースが出来るまでの間に使う、簡易的な鍛冶をするための即席簡易炉を、サっちゃんは自室の準備もほどほどに、裏庭のスペースに作り始めていた。


「あと半月もしたら正式な鍛冶スペースが出来るってのに…。あんなにキラキラな目をして、仮の炉なんか作っちゃって…。サっちゃんは、本当に鍛冶が好きなんだな。」


裏庭が見える窓からサっちゃんを確認すると、ゴーレムのゴーちゃんと一緒に大きな岩の塊をコの字型に並べて、隙間にドロドロとした泥を流し込んでいる。

あれは石像の荒野で入手したゴーレム素材のゴーレムブロックに、泥人形から手に入れた粘土ね。

大きな岩の塊であるゴーレムブロックの隙間を、泥人形の粘土で埋めて、炉の壁にするんだ。なるほど。

普段は大人しいサっちゃんが、テキパキとゴーちゃんに指示を出しながら炉を作っていく様子を微笑みながら見守る。


「皆さーん!!夜ご飯が出来上がりましたよー!!」


サっちゃんが最後のゴーレムブロックを置き、ドーム状の炉の原型のような物が出来たところで、一階からユリの声が聞こえてくる。

こんな風にご飯で呼ばれるのっていつ以来だろう。

なんだか懐かしい気分になりながら、ユリの待つ一階を目指す。一階に続く階段に向かって歩き始めようとすると、ちょうど部屋から出てきた愛とすれ違う。


「美雪、どこ行くの?階段こっちだよ?」


あれ?こっち階段じゃなかった?という方向音痴な言葉を飲み込み、思わず強がって誤魔化してしまう。


「え?あぁ、食事前にトイレに行こうと思って。」


「トイレ?トイレはそっちだよ?もしかして方向音痴?」


私の強がりの言葉に笑いながら、愛は私が行こうとした方向と逆を指差す。顔が赤くなるのを感じながら、愛と一階に移動する。



程なくして新しいホームでの初めての食事が始まる。

ユリが作ってくれたトウカさんの好物のブルシチューに、ラクレさんが差し入れてくれたオオベニジャケのマリネを中心にした、彩り豊かな夕食に舌鼓を打っていたところで、愛が勢いよく立ち上がる。


「美雪!!明日は何をするの!?ダンジョン!?ダンジョンだよねー!?」


さっきの私の言葉を覚えていた愛は、ウキウキとした表情で私に確認をしてくる。


「食事中に大声出して立ち上がっちゃダメでしょ。行儀悪いわよ。」


「はーい、ごめんなさーい。それで、明日からダンジョン!?ダンジョンだよね!?」


椅子に座ったけれど、机をバンバンと叩きながら体を揺らす愛。

行儀悪いのは変わらないな…。今度、ちゃんとテーブルマナーについて教えましょう…。

決意を固めつつ、愛の質問に回答をする。


「ん、まぁそうだけど…。愛の言うとおり、こうしてホームも手に入ったことだし、当初の予定に沿って、私達は王都のダンジョンに挑戦しようと思うけど…、みんなは良いかな?」


「美雪たちにとって、レベルアップは急務だから、ダンジョン挑戦は順当だけど…。人数を分けないか?」


「人数を分ける?」


「10人全員で、通路が狭いダンジョンに挑戦するは効率が悪い上に、まだパーティ新設やホーム関係の手続きが結構残ってるからな…。」


トウカさんの言葉に、シロ君とレッズメッグァナーイさんに聞いた、様々な手続きを思い出す。

王族騎士団、冒険者ギルド、商業ギルドへのパーティの登録と報告に、王都内の有力冒険者パーティと有力貴族への挨拶周り、戦力や規模によっては王族への顔通しが必要らしい。

正直、面倒で仕方がない。でも、この辺をないがしろにすると、後々の活動で妨害されたり、いわれのない不利益を被るらしい。

んー…と両腕を組んでいたところで、レッズメッグァナーイさんが手を上げる。


「様々な手続きは、私とユリスキーとユリの三人で対応いたします。美雪様たちは、面倒なことを気にせずに、ダンジョンにて精進いただければと思います。」


深々とお辞儀をしながらのレッズメッグァナーイさんの言葉はすごく有難いが、簡単に甘えるわけにはいかない。ちゃんと確認をする。


「まだ認めてないけど…、いつの間にかパーティのリーダーになっていた私は、挨拶周りに一緒しなくても大丈夫?こういうのって、リーダーが率先して挨拶周りするものじゃないの?」


私の質問にレズメッグァナーイさんはにこりと微笑んでから、落ち着いた口調で答える。


「むしろ、こういう挨拶周りはパーティのメンバーのみで行くものです。リーダーが挨拶周りをしていたら、人材不足かと侮られてしまいます。パーティの威厳を保つためにも、美雪さんはここぞという時まで、待機をお願いいたします。」


「なるほど…。分かりました。」


レズメッグァナーイの言葉で、転生前の世界での年末年始の挨拶を思い出す。

協力会社の方が、来年もお願いします、今年もよろしくお願いします、と挨拶に来てくれていたが、来ても部長や支店長クラスだった。社長が直々に挨拶周りということはあり得ない。そんなことがあったら、何か大事な話があるんじゃないかと身構えてしまう。

レズメッグァナーイさんの先ほどの話は、それと同じなのだろう。こくりと頷いて納得をする。


「わりぃ。それじゃ、ユリスキー、レッズメッグァナーイ、ユリはホームやパーティ新設に関するあれやこれやの手続きとかお願いするわ。」


「分かりました。」


「任せろ、姉御!!」


「お任せください、お姉様!!」


レッズメッグァナーイさん、ユリスキーさん、ユリに感謝の気持ちを込めて頭を下げていたところで、サっちゃんも小さく手を上げる。


「私もダンジョンでは戦力になりませんので、ホームに残りますね。微力ながら、レッズメッグァナーイさん達のお手伝いをさせてもらいながら、鍛冶スペース建造の確認をしますね!」


「鍛冶スペースを使うのはサっちゃんなんだから、いっぱい我が儘を言って、最高の鍛冶スペースを作ってもらってね!もしお金が足りなくなっても、なんとかするから妥協はしちゃダメよ!」


「分かりました!ありがとうございます!」


ダンジョン挑戦組と、ホームに残る組で役割分担が完了したところで、トウカさんが締めとばかりに声を上げる。


「それじゃ、ダンジョン挑戦は、私、美雪、愛ちゃん、シロ坊、ユウジの五人で良いかな?」


「異議なー…」


「トウカはーん!?美雪はーん!?」


トウカさんの声に賛同しようとしていたところで、澄んだ女性の抗議の声が聞こえてくる。


「ササラー!!ササラもおるー!!なーんで、ササラのこと忘れてまうん!?あと、美雪はんも異議なしって言おうとせぇへんかった!?異議ありまくりや!!許さんで!!ササラ抜きでダンジョン挑戦とか、許さんで!!あほう!!」


「冗談だよ。ったく、そんな騒ぐなよ。愛ちゃんより、行儀悪いぞ。」


「ササラが悪いんかえ!?納得いかんのやけどー!?」


んなーんなー騒ぎ始めるササラさんに、愛が得意気に肩を叩いて笑いかけている。


「やーい、ササラ怒られてるー!!私より行儀悪いー!!アホササラー!!」


「愛はん!!ここぞとばかりに、煽ってくるのはやめてくれへんかえ!?アホってなんやの!?愛はんには言われたくないんやけどー!!あほう!!あほう!!」


私の方が大人ー♪って感じの余裕たっぷりな愛の表情に、ササラさんは悔しそうにあほうあほうと大声を上げる。

普段の儚い博麗美人系の雰囲気はどこへ…。あー…、ほんと残念美人…。

ほろりと涙がこぼれる感覚になりながら、二人の様子に爆笑していたトウカさんに、シロ君が確認をする。


「王都挑戦前の予定から考えると…、挑戦するのは推奨挑戦レベル36の盾のダンジョンですか?」


「美雪さんが王都に来る前に言ってくれた計画だとそうだな。俺達のレベルもちょうど良いし、明日は盾のダンジョンに挑戦してみるか?」


シロ君に賛同するユウジの言葉に、私はファストの町から王都へ向かう道中で立てた計画を思い返す。


王都の近くには推奨挑戦レベル36、51、79の三つのダンジョンがあり、この三つのダンジョンを、レベルの低いダンジョンから順に挑戦していって、魔王と対等に会談するくらいの実力をつけたい。


私ですら忘れかけていた計画を憶えていてくれたシロ君に感謝をしながら、ユウジの言葉に返答をする。

ちなみに、愛とササラさんはお互いの両肩をがっしり掴み合いながら、アホアホあほうあほう言い合っている。


「そう!王都の地下ダンジョンのひとつ、盾のダンジョンに挑戦したいと…」


「いや、ダメだ。」


当初の計画に沿った私の提案は、トウカさんの冷たい声によってバッサリ切り捨てられる。

ん?なんで?と首を傾げる私に、トウカさんはため息を吐いた後に説明を始める。

ちなみに、愛はササラさんをコブラツイストのような技で関節を締め始めている。んなー!?んなー!?という声が響くが、トウカさんの声に集中しているため、ササラさんの声は闇に消える。


「お前ら、全員がレベル40近くなのに、今さら推奨挑戦レベル36の盾のダンジョンを攻略しようってのか!?私とササラの銅等級冒険者が支援するってのにー?そんな激アマな考え、私は許さねぇぞ。」


「え?それじゃあ…?」


私の嫌な予感を証明するように、ニヤリと笑ったトウカさんは衝撃的なことを呟く。


「私達が挑戦するのは、推奨挑戦レベル51の剣のダンジョンの方!普通は銅等級冒険者四人でなんとか…、ってレベルの難易度のダンジョンだけど、こっちは六人だし、銅等級冒険者の私とササラもいるから余裕だろ!」


私の嫌な予感は的中してしまう。

ちなみに、その銅等級冒険者の一人は、そこで愛に倒されてますよ…?


王都の南にある剣のダンジョン。

シロ君に事前に教えてもらった情報では、剣のダンジョンは推奨挑戦レベルが51で、私のレベルは40。

いや、厳しくない?私、推奨挑戦レベル15のファストの町のダンジョンで、レベル15くらいの時にベルセルクタイガー相手に殺されかけたんだけど…?


いや、危ない危ない危ない!!確かに、レベル72のトウカさんとレベル61のササラさんがいるから、いけそうな雰囲気あるけど、ダンジョンではトラップで孤立する可能性だってあるんだから、一人一人が推奨挑戦レベルを超えていないと危険がいっぱいよ!!前回の私みたいに!!前回の私みたいに!!


心の中でトウカさんの言葉に反論していたところで、シロ君とユウジと目が合う。二人とも、静かに首を横に振っている。良かった、二人とも私と同じ考えだ。

なんとか盾のダンジョンへの挑戦で妥協してもらおうと思っていた私達の耳に、今日一番の喜びの歓声が聞こえてくる。


「さっすがトウカー!!分かってるー!!強敵上等ー!!剣のダンジョン最高!!美雪ー!!剣のダンジョンへの挑戦で良いよねー!?ね!?」


「もっちろーん!剣のダンジョン最高!」


愛の歓喜いっぱいの質問に、思わず私は右手の親指を立てて答えてしまう。

シロ君とユウジが目を見開いて、信じられないといった表情で私のことを見てくる。ふぅ…と一息吐いた私は、説明を始める。


「想像してみて。もしここで私が剣のダンジョンじゃなくて、盾のダンジョンに挑戦しようなんて言ったら、愛はすっごい悲しそうな表情を浮かべながら、うん、分かったよ…。美雪がそう言うなら…。って、寂しそうに呟くんだよ。我慢を押し殺しながらね…。そんなの私、耐えられない。だから、無理をしてでも剣のダンジョンに挑戦する。」


「美雪…!!」


感動した表情の愛とぎゅっと抱きあう。

あー落ち着くー…なんて考えていたところで、背後から冷たい視線と共に、三者三様の言葉が聞こえてくる。


「いや、堂々と言ってるけど、ただの親バカ発言じゃん…。」


「相変わらず愛ちゃんに激アマじゃねぇか…。」


「美雪さんらしいですけどね…。」


ユウジ、トウカさん、シロ君の順で冷たい言葉が聞こえてきた後、背中にじとーっとした視線を感じる。

でも、仕方ないじゃん。愛のキラキラの瞳には私は弱いんだよ。

抱きしめていた愛を離して、トウカさんに人差し指を向けて力強く宣言する。


「その代わり、剣のダンジョンへの挑戦は数日後!!各々ダンジョン挑戦に向けての準備が完了してから!!トウカさん、問題ないですよね!?」


「問題ないぞー。」


あれ?意外とすんなり受け入れられた?

目がテンになっている私を放置して、トウカさんは話を続ける。


「確かに、あそこのダンジョンを踏破しようと思ったら、最低一週間はダンジョン内に滞在することになるから、準備は大切だよな!さっすが、美雪!分かってるー!!」


え?そんな長旅になるの?ホーム入手したばかりなのに?

私の疑問に気付くことなく、愛は歓喜の声を上げる。


「やったー!!ダンジョン挑戦、強敵やったー!!」


「愛ちゃーん、まだ見ぬ強敵にテンションが上がっちまうのは分かっけど、剣のダンジョンは注意すべきモンスターがいっぱいだぜ。まずは…」


私の心の声は、ダンジョン挑戦に喜ぶ愛の歓喜の声と、トウカさんの剣のダンジョンに出現するモンスターの解説でかき消える。

こうして、私達は推奨挑戦レベル51の剣のダンジョンに挑戦することになった。

あー、私の計画がドンドン崩れていく…。そう思っていたところで、トウカさんの声が聞こえてくる。


「なんだったら、王都の南にある推奨挑戦レベル79の蟲毒(こどく)のダンジョンに挑戦するか?」


「「「剣のダンジョンで!!」」」


シロ君と私、ついでにユウジの声が重なる。こうして、私達は推奨挑戦レベル51の剣のダンジョンに挑戦することになった。

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