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エピローグ

 今起こっていることって、どれくらい予想できたおと思う?


 数時間前までは実技試験にびくびくしていた僕が、まさか自分が世界を作り替えるほどの魔力を持っているなんて!


 あの一大事件の後、創世の魔法陣は書き換えられ、世界の歪みは取り払われた。

 魔法は失われなかったが、これまでのように人の手によって魔法を行使することは出来なくなった。魔法は、物や植物や、目に見えないものに宿るようになったんだ。


「ルー君、何やってるんですか、遅れますよ」

 ただのカメレオンになってしまったレプティリアを抱えて、ジルが僕を急かす。大事な日に寝坊した僕は、まだわたわたと靴下をはいていた。「クライドゥング・ヴェクセルン」とはもう言わない。

「もーそんなノロノロしてたらクロエが待ちきれなくて乗り込んで……」

 ゴンゴンゴンゴンッ!!!

 言い終わる前に、暴力的なノックが聞こえた。

「ちょっと二人とも! あたくしをそれだけ待たせるつもりなの?! 式に遅れてしまうのだわ!!」

 もうトイレが女子寮とつながる心配はなくなったけれど、そのうちドアを蹴破られそうだ。

 僕らは今日、晴れて魔法魔術学校を卒業する。僕らが最後の卒業生だ。

 最後の授業の時、「もう魔法は行使するものではない。ともに生きていくものだ」とマダム・メリアベルは言った。だからこの学校も閉めると。だから僕らは、最後の卒業生、最後の魔法使いだ。

 ようやく準備を終えて、三人で校舎へ向かう。

「卒業したら、君はどうするんだい?」

「あたくし? 実家の後始末でしばらくは大変になるのだわ。血統に意味がなくなったのだもの。今までのように貴族気取りではいられないのだわ」

 城も倒壊してしまったしね、なんて肩をすくめている。

「母の再教育もしなくてはね。あの女、魔力を失ったら本当に何もできないのだもの! 料理も、掃除も、着替えも!! 信じられないのだわ!」

 ぷりぷりと怒るクロエに僕は少しほっとした。

「僕は田舎の屋敷に帰って、兄様たちとお守りづくりの事業を始めます」

「お守りづくり?」

「そうです。屋敷の周り森には魔法が宿った植物がたくさん自生していますから、それを使って魔法のお守りを製作販売するのです!!」

 なるほど、ジルらしい考えだ。

 ルー君は? ときかれて、ドキッとした。自分の進路のこと、悩んでいたけど、僕にもできることがある。

「僕は……父さんの鍵屋を継ぐよ」

 父さんの受け継いできた鍵が、僕を「棘の庭」から連れ出してくれた。マルグリートにも会えた。ジルやクロエにも会えた。

 大切なものと思い出を守る鍵。僕も作りたいと思ったんだ。

 ジルは、ルー君らしいよといって笑った。クロエも、地味な仕事ね! なんて言いつつ笑ってくれた。

 僕らは今日から離れ離れだけど、切れない魔法でつながっている気がした。




   ◇




 金色の稲穂が揺れる。

 小さな洋館には、マロン色の毛並みをした馬が一頭と、雌牛、それから枯れないバラの温室。

 温室の白いテーブルには、バラの香りに包まれて、黒髪の少女が寝息を立てていた。

 その近くには、まじないの刻まれた紅い剣。


 <Sanft sehr freundlich>


 やさしい、優しい、いばらの魔法。







 おわり

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