第1話 アステル王国の決まり
初投稿です。
致らない点が多々あると思いますが、温かい目で見て頂けると幸いです。
誤字脱字等ございましたらご指摘下さい。
宜しくお願い致します。
今回は主人公視点です。
漢字に直していない箇所があるのはわざとです。読みにくかったら申し訳ありません。
「レイ、本を読みましょう」
そう言いながらやってきたのは、この国、アステル王国の第一王女であるリリ。
きれいな銀ぱつに、目と同じ紅色のかみかざりをつけてる。あれはリリのお気に入りなんだ。
そして、整っていてきれいな顔つき。初代女王のしょうぞう画から飛び出してきてちっちゃくなったみたいだ。かみとか目の色が同じだからよけいにそう見える。
年はもうすぐ十才。ぼくと同じだ。同じ、はずなんだ。なのにぼくよりもせが高い。早くぬきたいなあ。
「はい、でんか」
リリは王女さまで、ぼくはその従者なんだ。あと、ごえいもかねてるかな。ししょーには勝てないけど、一応戦えるから。
でも、リリは自分と相手にさがあることをいやがる。大人たちのたいどを変えさせるのはあきらめたみたいだけど。
「話し方、くずして」
「だれもついてきてない?」
「大丈夫よ。ちゃんとかくにんしたもの!」
だれが聞いてるかわからないから、毎回このやりとりをする。
リリが気をはらないでいられるのは、たぶん二人でいるときだけ。ほかでは王女さまとしてふるまわなきゃいけない。
そのせいかもしれない。
ぼくといるときのリリは子どもっぽくなる。
なかよしってかんじがしてうれしいのは、ここだけのひみつ。
「どの本を読みたいの?」
ぼくが聞くと、リリは後ろにかくして持っていた本を出した。
「建国神話よ。
明日から私の十才の誕生パーティーがあるでしょ? みんないそがしくて、かまってくれないの。
そしたらお父様が、レイと神話でも読んだらって」
リリのお父さん、つまり王のパテラは、ぼくをきらっている。
ぼくが神話が大っきらいなのを知って、いやがらせをしてきたんだ、きっと。
神話……読みたくないなあ……
「レイ、神話、きらいなの? ……ほかの本でもいいわよ?」
何も言わないぼくを心配して、リリがのぞきこんできた。
どうやら、気づかないうちにうつむいていたらしい。
「ううん。大丈夫だよ。
神話はリリにたくさん解説しないといけないからね。
大変だなぁ~と思ったんだよ」
そう言って笑うと、リリは安心したようにえがおになった。
よかった。リリにあんな顔はさせたくない。気をつけないと。
「それならよかった……
って! 私、神話ならレイに負けないくらいくわしいのよ!」
リリは神話が好きだから、きっと、ぼくが解説される側だろうな。大みこさまにもなついてるし。
「わかってるって。言ってみただけ。ほら、読もう?」
本を開くと、リリは楽しそうに説明しはじめた。
*
昔々、ウィルラという神と、ムカという神がいました。
二人は仲の良い双子の神で、ウィルラが兄、ム力が妹でした。
ムカは、エバ島、ウォバ島、動植物、人間を創りました。
ウィルラがエバ島を、ムカがウォバ島を、それぞれ治めていました。
ある時、ムカは人間に島を治めさせることを思いつき、ウィルラに提案しました。
疲れていた二人は、早速自分達の後継者を選び、権限を譲りました。そして、更なる島の発展を願い、それぞれの島の人間に魔法という祝福を与えたのです。
力を使った二人は深く、長い眠りにつきました。
人間違は、始めは良い政治をしていましたが、段々と自分勝手にするようになりました。
自分達こそが島の王だと、驕るようになったのです。何度も代替わりをするうちに、始めの頃の王達の教えは廃れていきました。
当然、人々の生活は苦しくなっていきました。
そしてとうとう、二つの島は戦争を始めました。
発展を願って与えられた祝福。いつしかそれは、相手を傷付けるための暴力として使われるようになりました。
土地は荒れ、水は濁り、人々の心は荒んでいきました。
豊かだった島の面影は、段々と消えていきました。
そんな時代でしたが、全ての人が悪というわけではありませんでした。
ウォバ島に、ゾエと言う、とても優しく美しい王女がいました。
エバ島の王族特有の、透き通った紅色の瞳。
ウォバ島の王族特有の、美しい銀の髪。
その姿は気品に溢れ、優雅な動きは人々をうっとりとさせました。
ゾエは、エバ島・ウォバ島の王族の両方の血を引いていました。
戦争が始まってすぐに、外交の切り札として彼女は両親とともに幽閉されてしまいました。
このままではいつか殺される。そう考えた両親と乳母は、ゾエを逃がすことを決めました。
乳母はゾエを連れて山の奥深くへ逃げ延びました。
そこには、ムカを祀った小さな祠と小屋がありました。
戦争が激しくなる中、二人は、木の実を採ったり、小さな獣を狩ったりと、静かに、慎ましやかに暮らしていました。
ゾエは乳母を、本当の母親のように慕い、支えていました。
しかし、数年経ち、とうとう、二人は見つかってしまいました。
兵士達はゾエを捕らえようと、小屋を襲いました。
二人は懸命に戦いましたが、兵士相手に力及ばず、乳母が自らの身を犠牲にすることで、ゾエを逃がしました。
ゾエは悲しみ、戦争が終わるよう、一心にムカに祈りました。
ムカは、その強い祈りに驚き、目を覚ましました。
そして、戦争を終わらせるよう人々に告げたのです。
ムカを信仰していたウォバ島の人々は、すぐに戦争をやめました。
しかしエバ島の人々はそうではありませんでした。
ムカは怒り、エバ島の人々に罰を与えました。
行使された神の力に驚き、ウィルラは目覚めました。
そして、ムカがエバ島の人々に罰を与えた事を怒り、暴れました。
その力により、多くの命が消え、地形が変わりました。
エバ島は消え、ウォバ島の人間は、魔法を使えなくなるという呪いをかけられました。
ムカは人間を守るため、涙をこらえてウィルラを封印しました。
その後、ゾエを新しい女王に据え、国が盛えるよう加護を授けました。
こうしてできたのがアステル王国です。国は代々、女王が治める事となりました。
ゾエは亡くなった乳母を偲び、ゾエ・クリュム・アステルと改名しました。
以来、直系の王族は第二の名前を持つようになりました。
そしてムカは、兄を封印した悲しみを癒すため、また、その時に使った力を回復するため、神々の世界に帰りました。
*
こんなばかげた話、ぼくはみとめない。
読んでてすっごくイライラする。
どうしてかわからない。それでよけいにイライラする。
「ねえ、やっぱり、レイは神話がきらいよね?」
ちょっとちがうけど、リリにかくせると思えなくなってきた……
おとなしくみとめるか。
「そうだよ。リリはするどいね」
「それぐらい分かるわよ! ずーっといっしょにいるんだから」
そう言って、ほこらし気にわらう。
成長したなぁ。少し前までなら、きっと気づかれなかったのに。
「でも、なんで神話がきらいなの?」
「なんか、もやもやする。あと、神話からできたきまりがきらい。おかしな決まりがあるでしょ? あれが大っきらいなんだ」
「ああ、双子の男子は悪だー! っていうやつ?」
「そう、それ」
この国、アステル王国では、双子の男子は悪とされる。
なんでも、ウィルラのいかりがこめられてるんだとか。
リリは教えられていないけど、双子の兄妹、その兄へのあつかいはかなりひどい。
親に殺されるか、国から追いだされるか。
この国はまわりを海にかこまれてるから、べつの国、つまり大陸に行くには船にのらなきゃいけない。でも、そんな大金を平民が
用意できるわけないから、ほとんどの子が殺される。
港まで行くのも大変だ。とうぞくが出る荒れ地をぬけなければならない。
海をわたってにげられるのは、どれいとして自分を売れた子だけだ。
だれも幸せにならないきまり。これさえなければ、ぼくは──
「私も、あれはまちがえてると思うわ」
リリがつぶやいた。
「リリはやさしいから、そうかな~とは思ってたけど…… よかった」
直接聞けて、安心した。
さすが、ぼくの妺。
*
明日はリリの、十才の誕生日だ。今日、明日、明後日の3日間、王宮でパーティーが開かれる。
王家やりょう主、かんりの子どもは、十才で社交界に出る。つまり明日はリリのおひろめの日だ。
それに、リリの銀色のかみはムカさまに愛されているあかしだから、なにかないかぎり次の女王はリリになる。
絶対、はなやかなパーティーになる。
ごちそうが出るんだろうなぁ……
「……行きたいなぁ、パーティー」
思わずつぶやく。
ぼくは三日間、自分の部屋から出る事をゆるされていない。
部屋と言っても、ここにあるのはベッドと小さなつくえとイス、すがた見、四着くらいしか入らないクローゼットだけ。
しかも、建物の中じゃなくて、外にある。部屋っていうより、小屋? まあ、そこは気にしてないけど。
ぼく、リリの従者なのに……
かがみの前に立つ。
はちみつのような色をしたかみ。
エメラルドのような目。
ちゅうせいてきな顔立ち。
自分の見た目が、ぼくは大っっきらいだ。
ぼくが大きらいな王と同じ色のかみ。
冷たくて、王と同じ色の目。
かわいいと言われる女の子のような顔。
……せが低いのも、きらいだ。あと、なでがたも。
たいくつだ。こうしてベッドの上でね転がっているだけで二時間 たった。でも、まだ朝の八時。
パーティーが始まるのは十時。まだ先は長い。
「つまんないなぁ~。早起きしなければよかったかな」
なんて、ひとりごとをつぶやくくらいにはひま。
──コンコン
ノック音? だれか来てる?
しまった、ぼんやりしていたから気づけなかった。
あわてて立ち、ドアをあける。
短くかった紺色のかみ。紺色のつり目。りりしい顔立ち。
せが高く、一目できたえているとわかる体。ぼくとは大ちがいだね。うらやましい……
ピシッと着こなしたきし服。こしに差した、大陸産だという美しいレイピア。
このえふくたい長のポニリアさんだ。王とぼくの連らく係らしい。たしか、そこそこ格の高い家の出身だったはず。
「おはようございます、ポニリアさま」
「おはよう、レイ君。その……陛下からの伝言だ。
『ミュルゲの領主、アルノーを消せ。』
だそうだ。貧しい人々を誘拐しているという噂があってね……
いつもこんな仕事を回してしまってすまない。おやめになるべきだと、進言しているのだけどね」
「いえ、ポニリアさまのせいではありませんから。
へいかには、承知いたしました、とお伝え下さい」
ぼくが言うと、「本当にすまないね」と言いながらポニリアさんは出て行った。
いつももうしわけなさそうにしていて、ぼくのことを心配してくれるやさしい人、なんだと思う。
ぼくが素直に人を信じられないせいかくだからか、どこかうさんくさくかんじてしまう。でもね、ふくたい長なのに王との連らく係をやってるなんて、うたがって下さいって言ってるようなものだと思うんだ。けっしてぼくがひねくれているわけじゃない。
それはそうと……
「消せ、か」
これが仕事でなかったら、口にするのさえためらう言葉だ。
だいたい、うわさだけでりょう主を殺して大丈夫なのか?大問題になりそうだけど。
りょう主暗殺なんてことを、まだ九才のぼくにやらせようと思う王の気が知れない。
いや、ぼくにやらせるからこそできるのか。外道だな。
まあ、王宮で生きるため、なんて自分勝手な理由で人を殺すぼくも、ほかの人からみたら外道なんだろうけど。
*
所変わって、ここはミュルゲりょう。
ぼくは今、うすぎたない格好をして、右手でパンを食べ、左手を女の人とつなぎながら歩いてる。かみは炭で黒く見せ、オノマと名のっている。あと、ひたすらニコニコしている。つりそう……
ざつな変装だけど、まあ、大丈夫でしょ。
女の人っていうのは、なんと今回のターゲットのひしょだって自しょうしているアリスさん。これがほんとなら、すぐにターゲットのもとへ近づけるかもしれない。
路地うらをうろついていたぼくを見つけて、“保護”してくれた。二十才くらいで、後ろで一つにまとめた茶ぱつにトパーズ色の目をした、かわいい顔の人。
小柄で動きがせわしないからか、リスを連想させる。しっぽ、じゃない、かみが右に左にブンブン動いてる。元気な人だなぁ。
路地うらに行けばひん民にまぎれこめるかな、と思ったんだけど、全然いなかった。
始めは、ミュルゲがゆたかだから少ないんだと思ってたんだけど……
まさか、うわさは本当で、たくさんの人がさらわれた後だったのかな……? なんておそろしい。早く仕事しなきゃ。
「お屋敷には沢山の人がいるのよ。アル君は領主だけど、貧しい人達を助けるために、保護したり、お仕事をあげたり、働き方を教えたりしてるのよ! 優しいでしょう? そうやって屋敷に来た人達は、みんな助け合って生きているの! そうそう、一番最初にお屋敷に来たフィル君とカイ君は特に面倒見が良いから、困った事があれば二人に頼るのがオススメ! それにねっ……」
うん……? 聞いてた話とちがう……?
アリスさんがだまされてる、とか?
……いや、アリスさんがぼくをだましてるのかも。ゆだんならない。つかれるから、さっさと終わらせて帰ろう。
「まあ、とにかく、屋敷に来たらみんなと仲良くしてね?」
「うん! 分かった! オレ、みんなと仲よくする! あっ、します!」
ぼくは今、『素直な貧しい少年オノマ』を演じている。
上手くなりきれてるかな?
「敬語じゃなくていいんだよ? あっ、そろそろ着くね~。ほら、あそこ! 見える?」
アリスさんが指したのは、ゆたかなりょうどを治めているにしては小さな屋しきだった。
石造りなのに、何だかかわいらしい。
「うわ~! 大きいおうちだ!」
ぼくが言うと、アリスさんがクスクスと、楽しそうにわらった。
「今日から君が住む所よ。ミュルゲ家へようこそ! オノマ君!」
にっこり笑ったアリスさんのえがおに、むねのあたりがギュッといたんだ。
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