山の中④
「まあいい、俺の面倒ごとはどうやらなくなったようだ。
食事は俺が作るからあとは一人にしてくれっ」
リィーセに食事を作ってもらうのは難しい以上、一人になってこの世界に関する情報集め(基本的には本を読むことだが)をしたかった。
基本的には今のところ世界を滅ぼす戦略的には、まずは情報集めから始めようと思っていた。
そして、そのことを知っているリィーセは、俺がやりたいことを察して、静かに部屋から出て行ってくれるものだと思った。
だが、実際には違い、俺の服をつまみ、
「それで、お兄様のお名前についてなのですが……、」
「んっ……? 俺の名前は『お兄様』ではないのか?」
「そうそう、そうです。お兄様のお名前はお兄様でしたぁーー……、って、そんなことがあるわけないじゃないですか!
お兄様が変なことを言うので、思わずノリツッコミしてしまったじゃないですか」
「リィーセは、ノリツッコミをするような奴だったんだな、」
「そうですよ、ここにくる前にいたジッグラト帝国にいた頃、同僚からはノリツッコミ役でいつもいたのですから」
えっへん、といつも通りない胸を張るリィーセ。
いつも通り、リィーセの胸に全然興味が湧かなかったのだが、ジッグラト帝国にリィーセがいたという話にとても興味が湧いた。
ジッグラト帝国といえば、この世界で5本の指に入るほどの力を持っている帝国だ。
「それで、リィーセはジッグラト帝国では何をやっていたんだ?」
「んっ、私が何やっていたか知りたいですか?」
こいつはなんだかうざいなっ、と思いながらも本では知り得ない生の情報だから聞いて起きたい。
「ああぁ、知りたい」
「じゃあぁ〜ぁ、お兄様、私のことを抱っこしてください」
と言いながら、リィーセは両手を広げ、ベットにいる俺に向かって飛び込んでくる。
別にリィーセが可愛くないから嫌っていうわけではない。
なんだかかこの流れで抱きつかれようとするのは、嫌だ。
それに、そもそも俺は異世界からこっちの世界に来たばかりで、体がものすごくダルい。一週間ぐらいずっと外に出ずにいるにもかかわらずいっこうに良くならない。常に39度近い熱のある風邪をひいているかのようだ。
だから、俺は手を前に出し、リィーセの頭を抑え、くっついて来られないようにする。
それに対して、もがくリィーセ。なぜそんな必死なのだろか。どうしようとしてるのか。わからないが、ヤナ予感がする。