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山の中③

「そもそも人間の姿なのに魔導書って……、何言ってんだこいつ。

 魔導書って普通、本だろっ」

「思っていることが言葉に出てしまってますよ、お兄様」

「おおぉっと、本音が口に出てしまった。気おつけなければ……、」

「でも、まあ、お兄様の言っていることはごもっともだと思います。

『魔導書』という言葉から普通は『本』を想像されるかと思います。

 ですが、この世界では力を持っている『生命ではない何か』を指している総称なのです」

「つまり、お前は生き物ではないと……、」

「ふぅ〜、またこいつは訳のわからないことを言いやがって。

『生命』=『生き物』でなければ、こうやって話せる訳ないじゃん」

「またお兄様は思っていることを口に出してしまっていますよ」

「それは仕方がない。

 お前が意味不明なことを言いだすんだから」

「確かに混乱させてしまってるかもしれませんね。

 ちょっと言い方が悪かったかもしれません。

 この世界では力を持っている『生命ではない何か』が魔導書になったあと、力が巨大になると生命が宿り人とコミュニケーションを取れる者が出てくるのです」

「なるほど、それがお前ってわけかぁ、」

「そうなのです」


 自信満々な声で言いながら、ない胸を張る少女。

 そして、顔を近づけて来て、


「だから、お兄様。

 可愛い妹である私のことを『お前』って呼ぶのではなく、愛情を込めて名前で読んで欲しいのです」

「名前?」

「ええ、そうです。名前で呼んでください」

「……、名前って……、お前が最初にあった時に『私の名前はありません』って言っていただろ。

 だから、俺は仕方がなく『お前』呼んでるのに、俺が悪いかのようにいうなんて、」


 やれやれ、といった風に言う俺。


「いいえ、お兄様。私が言った言葉を正確におっしゃってませんね。

 正確には、『私の名前はありません。だから、名前をつけてください』って言ったはずです」

「いや、ほおを膨らませながら言われたって、俺に名前をつけろってなかなか難しいと言うか……。

 そもそも、名前があるんじゃないのか?」

「ありません。なので、お兄様に名前をつけて欲しいのです」

「困ったな……」


(人に名前を付けるって、その人が一生その名前で呼ばれるようになるから重要なことだから、安易に決めることはできないし……、一体どうすれば……、)


 と俺が困った顔をして考えてると、


「私の名前は『リィーセ』がいいです」

「『リィーセ』?」

「はい」

「『リィーセ』とは?

 さっきまで俺に決めて欲しいと言っていたにもかかわらず、急にどうした?」

「はい、この一週間、お兄様と一緒に寝ていたら、私の夢の中でそう呼ばれているような気がしたからです」


 なぜか顔を赤らめながら、俯いてリィーセはそう言った。

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