山の中②
「そもそもだ、お前は俺の身の回りの世話をするために来たのではなかったのか?」
「いったいなぜそんな風に確認するようなことを言いだすのですか? お兄様ぁ〜」
「それはだな、なぜかいつも俺の方が労働力を毎日、毎日提供しているからだ!」
「ほ、ほへっ?」
「なぜ、そんな不思議そうな顔をする?
じゃあ、今日はいったいどんなおもしろオモチャを作った?」
「えっ、ひどいお兄様。いつも私が一生懸命お兄様に作った料理をそんな風にバカにしてぇ〜〜」
「そう言うんだったら、その料理をここに今すぐ持ってこい」
「いいですよ。今日こそこの私ができる妹だってわからせてあげます」
そういって、無い胸を突き出して、そこに軽く手を添える自称妹。
「待っててくださいね」とドタバタと一回部屋を出てから、料理を台車に乗せて持ってくる。
いや、料理と書いたが、何度もこの自称妹から料理なんだと説得を受けなければ、得体の知らない物体としか思わないだろう。
「おう、今日もおもしろ物体を作り上げたんだな?
料理(仮)とすら表現しずらい気がするのだが……」
と素直に感想を述べる俺。
いや、自称妹が一生懸命に俺のために作ったと真剣に言うから、少しオブラートに表現してしまってるかもしれない。
なんせ出て来た物体は、馬の下半身をこんがりと焼き上げたところに昆虫や魚、野菜などを串刺しにされたものが刺さっているという仕様だった。中にはピチピチと動いているから生きている奴もあるのだろう。
ちょっと見ただけでも気持ち悪くなりそうだ。どんどん酷くなっていってる気がする。頭が痛くなりそうだ。
「今日のは一段と傑作だな、」
「えへへぇ〜〜、今回のは自信作なので、お兄様に褒めてもらってとっても嬉しいです
それでは、取り皿に小分けいたしますね」
「じゃあ、お願いしようか……、、、じゃなぁ〜い。
頭が混乱してしまって、ついノリツッコミをしてしまったじゃんかよ。
この物体はいったいナニかな?」
頭を押さえながら怒りを込めつつ言う俺。
「えぇ〜〜と、これはですねぇ〜〜、性欲の強いオス馬が様々な者から愛を受けているという激しい愛の営みを表してみました」
満足そうに言う自称妹。
俺は、はぁ〜、とため息をつき、
「なぜオス馬である男が疲れているんだ?」
「それは、私の趣味の世界も合わさってまして……、」
(ダメだ。こいつは腐っていやがる。
こんな奴と一緒に暮らしてたら、どうにかなってしまいそうだ。
最初は、こんなかわいい女の子と一緒に暮らせるようになってラッキーと思っていたのに、どんどんボロが出て来やがる。
そもそも料理をを知らないのだろうか? いや、そんなわけがないだろう。この自称妹だってメシくらい食べるだろう。だって、生きている者は飯を食べないと生きていけないのだからな。
だが、一応、ここまで料理とかけ離れた物を作ってくるのだから、聞いてみよう)
「料理というものを知っているか?」
「えぇっと、今まで黙っていてすみません。
実は知らないのです。
なぜなら私はいわゆる人間の食べ物を必要としないからなのです」
おそるべき事実が発覚してしまった。
料理という生きて行く上で最低限必要な知識なのに知らないだなんて……。んっ……。
「今なんて言った?」
料理を知らないという以外に予想外の、信じられない情報が混じっていたので、聞き返す。
「す、すみません。実は料理を知らないのです」
怒られていると思っているのだろう。申し訳なさそうに言う自称妹。
だが、今知りたい情報はそれ以外の部分なのだ。
「いや、他に何か重要なことを言わなかったか?」
「……じゅうようなこと?」
不思議そうに復唱する自称妹。
「いや、食事を摂らないみたいな内容のことを言わなかったか?」
「あっ、言いました。食事を摂らないというのが当たり前すぎて、そこを聞かれているとは思いませんでした」
えっへん、と自慢げに言う自称妹。
なんだか、イラっとくる。が、話を進めよう。
結構、重要な話をしている気がする。
「食事を摂らないって、栄養とかどうしているの?」
「そうですね。食事を摂る習慣があるお兄様からだと不思議かもしれませんが……。
実は……、私は魔道書なのです。なので、お兄様からの魔力の供給をいただければずっと活動できるのです」
「俺っていつの間にか魔力を供給してたの?
そもそも、どうやって……」