私と能天気バカ
「失敗の言い訳をすれば、その失敗がどんどん目立って行くだけだ。そう、今のお前のようになぁ!!」
かの有名な劇作家であり詩人の作品を、自分の名言かのように言った事を許してほしい。だが、それだけ怒りのボルテージが怒濤の如く吹き上げていた。
かっこよく発言したものの、最近ハマッている作家の名言をただ言いたかっただけなのだと、この幼馴染にはバレているだろう。本を読み出したのも、つい最近のことだし。所詮、にわかファンである。
「わ、わかった!ちゃんと謝るから!だからその拳をどうぞ、お納めください。」
「うむ。よかろう、面を上げよ。」
床に正座して頭を下げていたこの男は、名を高梨千賀という。顔面偏差値は中の上という所だろう。髪を金色に染めて、いつも周囲に笑顔を振り撒いている能天気バカ。
幼稚園の頃から一緒で、家も隣同士という関係だが皆が期待するようなラブロマンスなど一切ない。顔と愛想は良いため、彼女ができる事は多々あるけど大体が「千賀君て彼氏というより、弟みたい」という風にフラれて終わるのだ。
しかしそんな事はどうでもいい、
「お前が私のお弁当食ったんだろ!!てめーの口周りにご飯粒ついてんだよ!なにベタな失敗してんだ、全っ然面白くねんだよ!」
「純ちゃん口悪いわよ~。お昼なら購買で買えばいいじゃん~もちろん高梨の金で」
「いや、強子も大概口悪いよね。名が体を表すって本当その通りだと思うわ。」
「は?」
「何でもないです。とっても素敵な名前です。」
てゆうか本当バカだね高梨~。と言いながら、芯が出てるシャーペンを持って、満面の笑みで千賀の頬をつつく強子。さすが白浜強子、強すぎる。千賀涙目じゃん。
あ、泣いた。ウケる。
「痛っ!!いっ!ごめんなさい!お昼買いますから!うぅ…じゅん、嘘ついてごめんな。腹を空かせた犬に弁当食わしたなんて嘘もう二度と言わないから、な?怒んなよ。」
「ちっげえええよ!!!そんな下手くそな嘘ついた事にキレてるわけじゃねぇよ!いや、そんな嘘で私を騙せると思ってたなら腹立つけど!」
「じゅん落ち着いて。ほら、これでも飲んで」
「えっ?あぁ…ありが…っててめえ!!これ私が昨日買ったココアじゃねーか!!その金髪モミアゲ剃り落としてやろうか?!あぁん?!」
「明兄が朝、弁当と一緒に持って行きなさい。ってくれたんだよお」
「クソ兄貴めーーー!!!」
「あ~今日も今日とて平和な朝だわ~。」