表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/31

遺書

 正直に言おうか。君に懺悔したい。したいけど、聞かされても困るだろうから、しない。とにかく、あの時あんなことを言わなければ、君は死んでいなかっただろうから、それについて申し訳ないと思っている。

 それともこれは僕の思い上がりで、僕の言動なんて君にさほどの影響は与えてなくて、君が死んだのは僕以外の何かが原因だったのかもしれないし、そうだったらどんなによかったのにとも思う。でも、君が死んでしまったんだからもうこれはわからないし、わかることはこれからもない。

 自己分析、そう君は言ったね。ネットや雑誌に転がっている簡単な方法で自分のことが本当にわかるとしたら、どんなにいいだろうか。結局あんなものはまがい物にすぎないとか、自己分析のやりすぎは鬱につながる可能性があると言われているとか、そういう言葉をかけるべきだったんだと思う。もう遅いか。

 四つの窓がどうとか、他人から見た自分ではわかってない部分とか、とにかくそんな理屈で、君が自分の印象を教えてくれと言った時に、僕は軽率に言ってしまったわけだ。

「目標に向かって実直に努力できる真面目な人間」

 一言一句覚えている。そして、君が死んだのは八月の三十一日だった。なるほど「学生」的な「夏休み」が終わったということだったのかもしれない。君はそこから先になれなかった。なるほど。

 「もう努力できません」と書きつつも、遺書を書く努力はしたあたりが実に君らしい。

 僕がどうして君の遺書を読んでいるのかって?さあどうしてだろうか。とにかく読んだのは事実だから致し方ない。

 さて、遺書でこれだけ、友人一人に対して枠を割いたのだから、家族についてはもっと割かなくては嘘だろう。

 親愛なる母上、こうして自殺に至ること、まことに申し訳なく存じます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ