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青と赤の炎 -戦え!シルバーマン-  作者: 水里勝雪
第2章 苦闘編
5/18

一つ目怪獣マザリー

「言うことを聞きなさい!」

 美登里は大声を上げた。それを聞いた直人の泣き声が更に大きくなる。


「早く保育園に行かないと、先生方が困るでしょ」

 直人は黄色い鞄をタスキ掛けにし、水色のスモックを着たまま立ちすくんでいる。

 泣きわめく目からは涙が流れていない、

泣いていると言うよりは叫んでいる、

と言った方が正確な表現なのかもしれない。


「行ってきます」

 その横を夫がすり抜けて行く。


「ちょっと、あなたからも直人に言いきかせてよ」

 怒り立つ美登里に夫は冷めた口調で


「直人のことはお前に任せた」

 その言葉を聞いた瞬間、美登里は夫が街で他の女と手を繋いで歩いている姿を思い出した。


「その怖い目、お前のお母さんにそっくりだなぁ」

 夫はそれ以上何もいわずに家を出て言った。


「母と同じ?」

 美登里はしばらく茫然とした。嫌な気分だけが心に残る。

 そんな時、直人の言葉が彼女の耳に飛び込んで来る。


「行きたくない! 保育園行がない!」

 ハッと我に返り時計を見る。七時四十五分。

 もう家を出なければ間に合わない。


「ほら、行くよ!」

 彼の腕を引っ張る。

 しかし彼も腕を解こうと必死で抵抗する。

 子どもの力なので支障はないがそれでも引っ張るのは大変である。


「行きたくない!」

 と甲高い声を上げて直人は座り込んだ。

 さすがに座りこまれると動かなくなる。


「どうしてママの言うこと聞いてくれないの!」

「ママと一緒にいる、保育園休むの!」


 美登里はカッとなった。

 「パン!」

 という破裂音に似た音が響く。


 気付くと直人の頭を叩いていた。

 鳴き声は一瞬止んだ、がまたすぐに大声が響きわたる。


 美登里は眉間にしわを寄せ我慢した、歯を食いしばった。

 彼女は自分が着ていたスーツが皺になるのも構わず彼を抱きかかえた。

 腕に思わず力が入る。


「どうして言うこと聞かないの。何が不満なの、どうして私を悩ませるの、私はあなたをこんなに愛しているのに」


 美登里は心の中で叫んだ。

 そして直人を抱き抱えたまま家を出た。


   ×   ×   ×


 勇一が住むこの町にも雪が降る季節になった。

 紀伊半島は温暖な気候だがさすがにこの季節になると雪が舞い散る。


 昼食時から夜の開店準備までの短い時間、海辺を散歩するのが勇一の日課になっていた。

 波の音を聞いていると不思議と心が落ち着く。

 なので、散歩と言いながら砂浜でただ立っているだけのことも多かった。


 去年この雪をどこで見ていたのだろう、

それとも雪の降らないような暖かい地方に住んでいたのだろうか、

勇一は海を見ながら思いを巡らせてみる。


 雪は勇一の思いに関係なく降り続く。

 積もるほどではないが枯木の枝が少しずつ白くなって行く。

 ただでさえ静かな町がより静に感じられた。


 砂浜に辿り着いた時、小さな子供がしゃがんで何かをしている。

 勇一の見知らぬ子どもだった。

 周りを見回したが大人は見当たらない。


「どこの子だろう、親はいないのかなぁ」

 勇一はその子に近付いてみた。

 年は幼稚園児ぐらいだろうか、薄手のセーターに綿のズボン姿で、今日の天気を考えると少し薄着な気がする。


 ふいにその子が立ちあがり波打ち際まで走って行く。

「海に入っちゃダメだよ、寒いから」


 勇一の声に彼が振り返った。

 そして不審そうに勇一を見つめる。

 彼は勇一の言うことを守ったのか元いた場所まで戻って来た。


 その子の足元を見ると、小さな貝殻がきれいに二列で整列している。

 一列ずつ、色も形も似た物だけが整列を許されているのか、ただ整然と並んでいる。

 

 足元にそれと同じ貝殻が落ちていることに勇一は気付いた。

 彼はそれを拾い上げ、その子のところに運んで行く。


「はい、これ集めてるんでしょ」

 その子はやはり不審げに勇一を見上げた。

 そして黙って勇一の手から貝殻を受け取った。


「君、名前は?」

「知らない人に名前を言ってはダメってママが言ってた」

 彼は勇一から手渡された貝殻を整列している最後尾に置いた。


「僕の名前は朽木勇一、この先の食堂で働いているんだ」

 勇一は微笑んだ。

 その子は不思議そうに勇一を眺めた。


「食堂? そこってハンバーグある?」

「あるよ、他に君は何が好きかなぁ」

「えーと、海老フライ、カレーも好きだよ」

 彼は笑った。勇一は少し安心した。


「僕の名前は水野直人です!」

 彼は胸を張り堂々とした声で答えた。

「いいの、名前教えてもらっても」


「だって、お兄ちゃん食堂の人でしょ」

 直人はニコニコしながら勇一を見ている。

 食堂で働いていることが免罪符になるとは思わなかったが、取りあえず彼が自分に心を開いてくれたことがとても嬉しかった。

 ついでにこの子は食いしん坊であることも、そのことで、もっと友達になれるかもしれない、そう言う期待も持てた。


「この列は何なの」

「こっちの列がラーメン屋さんに並んでいる人の列、こっちはケーキ屋さんに並んでいる列、で、ラーメン屋さんの方が人気あるの」

 確かにラーメン屋に並ぶ白い貝殻の方が、ケーキ屋の列の方よりも少し長い。


 勇一はもう一度周りを見回した。やはり母親らしき人影はなかった。


「直人君、お母さんはどこにいるの?」

 直人の顔から笑顔が消えた。


「ママはお家にいるよ」

 直人は勇一から視線を外す。そして今度は貝殻を円形に並び変え出した。

 何か様子がおかしい。


「直人君のお家はどこ?」

 直人は二列の形が違う貝殻を今度は交互に並べ変えて円形を完成させた。


「僕の家から電車に乗って、で、違う駅で特急に乗り換えてここまで来るの」

「えっ、それってここから遠いってこと!」

 勇一の驚いた声で直人が少し泣きそうになった。


「でも、お婆ちゃんがいるもん」

 勇一は安心した。

 そうか、祖母の家に遊びに来た子供だったのか、それにしても誰も側にいないのは不用心だな、と思った。


「直人君のおばぁちゃんの家はどこ?」

 勇一の優しい呼びかけに直人は答えようとしない。

 彼の機嫌を損ねたのかも知れないと思い話題を変えてみた。


「直人君、今度お兄ちゃんの店にハンバーグ食べにくる?」

「うん、行く! あのね、ハンバーグの横にニンジンは付けないでね」

「そうか、直人君はニンジン嫌いか」


 直人の顔に再び笑顔が戻った。

 取りあえず交番にでも彼を連れて行こうかと思った時、海岸べりの道路の方から二人の人影が砂浜に降りてきた。

 一人は魚屋の玄さん、もう一人は勇一の知らない老女だった。


「直人! どこ行ってたの、お婆ちゃん探したじゃないの!」

 老女は砂に足を取られて歩みが覚束ない、それでもようやく直人のところまで辿り着いた。


「駄目じゃないの、勝手に家を出たら!」

 老女は直人のお尻を少し音が出る程度に叩いた。直人は泣かなかった。


「まぁ昌子さんも、直人君が無事だったからいいじゃないですか、そんなに怒らなくても」

 玄さんはその老女をなだめた。


「すみません、家の孫がなにか御迷惑でも」

 昌子は頭を下げた。


「いえいえ。少しだけ直人君と遊んでいただけですから」

「そうですか、お兄ちゃんと遊んでもらってたの」

 直人は不服そうな顔で黙って頷いた。


「さあ、そんな恰好じゃ風邪ひくから帰るよ」

 昌子はもう一度頭を下げて、直人の手を引っ張って町の方へ歩いて行った。


「バイバイ!」

 直人が振り返って勇一に手を振った。


「バイバイ!」

 勇一も彼に手を振った。

 直人と昌子の姿が小さくなったところで玄さんが口を開いた。


「あの子、もしかしたら母親に虐待されてたかも知れないんだって」

「虐待?」

 勇一は母親のことを聞かれた時の直人の表情を思い出した。


「高橋のところの婆さん、つまりさっきの昌子さんの話だと、あの子の体に青あざが幾つもあったらしい」

 玄さんはさも気の毒そうに説明した。


「じゃぁ彼のお母さんは」

「都会で働いてる。今、旦那が浮気したことが原因で離婚調停中らしい。

 女手独りで育てるつもりだったみたいだけど、

 近所でどうも様子がおかしいって言うんで、児童相談所の人が調査したら、

 あの子の体に青あざがあったんで、一時保護ってことで昌子さんが引き受けることになったらしい」


「そうですか、彼はそんな悲しい思いをしていたんですか」

 勇一の心が痛んだ。

 あんな小さいのに、彼は自分より、もっと悲しい思いをしているのかもしれない。

 切なさが彼の心を覆った。そんな勇一の思いとは関係なく雪は降り続いた。


   ×   ×   ×


 比呂子は砂浜で遊ぶ勇一と直人の姿を見て微笑んだ。

 日曜日の午後、今日は快晴で、気温はここ最近では一番暖かい。


 勇一が浜辺に転がっているペットボトルや木の枝を拾ってくる。

 直人は集まった色々な形の物を分類し並べている。やはり列は整然としていた。


「勇一さんは子供が好きみたいだね」

 昌子が比呂子に声を掛けた。


「彼は優しい人ですから、直人君も安心できるんでしょう」

 比呂子は目で直人と勇一を追いかけた。


 勇一のここ最近の日課は散歩ではなく直人と遊ぶことになっている。

 昌子も勇一と遊びたいと言う孫の願いを聞いて、必ずこの時間には砂浜に来るようになった。


 比呂子は玄さんから勇一と直人が毎日楽しそうに遊んでいる、という話を聞いて少し様子を見に来ていた。

 今まで勇一が楽しそうにしている姿を見たことがなかったからである。


「あの子の父親は子供嫌いでね、ああやって大人の男の人と遊んだことがなかったのに、本当に勇一さんに懐いてるね」


「離婚調停中て聞きましたが」

「昨日離婚が成立したんだって、電話があったよ。あの子の母親から」

 昌子はふっと息を一つ吐いた。


「なんでそうなったかね。娘には私の二の舞になって欲しくなかったのに……」

 比呂子は二の舞と言う言葉が引っ掛かった。

 があえてその言葉には触れないことにした。


「娘の父親もね、女作って家を出て行ったんだよ。

 女手一つで大学まで出してやって良い会社に入ったのにろくな男捕まえなかったねぇ」

 比呂子が話題に触れなくても昌子の方から詳しく説明されてしまった。


「あんたも気を付けなよ」

 比呂子はお構いなく、と心でそう言った。


「まぁ、あの人なら大丈夫そうだけど」

「えっ」

 比呂子はあの人とは付き合っていません、と言いかけて止めた。

 言うのを止めたお陰で何か妙な気持ちになった。


「ガオー、怪獣だぞ!」

 直人が並べてあるペットボトルを倒し始めた。


 勇一の動きが止まった。

 直人の行動にどうして良いのか分からない様子で立ちすくんでいる様にも見えるが、何かそれ以上の戸惑いを感じているようにも見えた。


 でもすぐに直人と同じようにペットボトルを倒し始める。

「ガオー、もっと大きな怪獣だぞ!」

 その言葉を聞いた瞬間、直人は左手を思い切り上に挙げた。


「シルバーマンだ! 怪獣やっつけるぞ」

 直人は勇一に突進してきた。勇一は彼を受け止めて付き放す。直人は砂の上に尻もちをついた。


「どうした、シルバーマン。もう降参か!」

 直人は立ち上がり再び勇一に突進してくる。


「わぁ、やられた!」

 勇一はわざと倒れた。直人はそれでも馬乗りになって勇一に襲いかかる。


「どうだ、怪獣、参ったか!」

 ポコポコと叩かれる勇一は


「参りました、勘弁して下さい」

 と謝っている。


 比呂子は可笑しくて笑った。

 すごく心地いい気分である。

 こんな未来も在りかなと思う。


 ふと兄、坂田の言葉を思い出した。

『奴の正体が分からない以上は好きにならない方がいいぞ』

 比呂子は溜息を吐いた。そして心の中で自分に言いきかせる。


「そう、誰があんな元気のない男好きになるもんですか」

 さっきまでの心地よさが薄らいできた。


 その時、ふと背後に人の気配を感じた。

 比呂子が振り向く、少し遅れて昌子も振り向いた。


「美登里、お前どうして!」

 美登里は比呂子に軽く会釈をした。

 そして昌子を無視して直人に近づいて行く。

 勇一と絡み合っていた直人が彼女を見つけた。


「あっ、ママ!」

 直人は勇一から放れ美登里の方へと走って行く。

 勇一は立ちあがって体に付いた砂を払った。

 そんな彼にも美登里は軽く会釈した。


「直人がお世話になってたようで」

 彼女の表情があまり動かない、まさに氷のように冷たいとはこう言うことを言うのだろうか。

 わが子に久しぶりに会ったのに口元の笑みとは正反対に目は笑っていない。


「いえ、僕の方こそ直人君に遊んでもらってただけなんで」

「お兄ちゃん、食堂の人なんだよ。このあいだもハンバーグ食べに行ったんだ」

 直人は美登里の体に自分の体を擦りつけるように甘えている。

 彼女はそんな息子をチラッと見て少し微笑んだ。


「どうするつもりなんだい」

 近づいて来た昌子が美登里に問い詰めた。

「連れて帰ります」


「お前、独りで育てられるのかい」

 美登里は昌子を睨んだ。そして直人を抱きあげた。


「大丈夫です。お母さんの娘ですから。でもこの子には同じような寂しい思いはさせない。必ず……」

 彼女はまた勇一に会釈するとそのまま直人を抱いて町の方へと戻って行った。


   ×   ×   ×


「直人大丈夫!」

 保育園に駆けつけた美登里はベッドに眠っている直人を見てホッとした。


「熱が38.5℃あります。近頃はインフルエンザが流行ってるんでもしかしたらそうかもしれません」

 短大を出たてであろう、若い保育士が時計をチラッと見た。

 時刻は午後五時を少し回っている。


「すみません、遅くなりました」

 美登里は保育士の怪訝そうな顔が気になった。


 若い先生は直人を抱きかかえて美登里に手渡す。

 美登里の手に『たかはしなおと』と書かれた名札が触れた。

 抱っこすると直人の体が熱い。


「今日はこの近所のお医者さんは休みのところが多いから、もし熱が下がらないようでしたら大きな病院の緊急外来に行かれた方が良いかもしれません」

 先生が黄色い鞄を美登里に渡した。


「ありがとうございました」

 美登里は何か気が引ける感じがした。

 なので早々に挨拶を済ませて保育園を出ようとした。


 保育園の門に差し掛かった時、建物の影から保育士らしい二人の声が聞こえた。

 姿はこちらからは見えない。


「高橋さんのところの直人君、熱があるって十二時過ぎに連絡したのに、お母さんが来たの、五時回ってたよ。本当に困るよね」

「親なんだから仕事早く切り上げて帰ってくればいいのに」


「それでもし子供に何かあったら絶対文句言ってくるよ、そう言う親は」

 里美は居た堪れなくなり、その場を急いで離れた。


 帰って来ても熱は思ったより下がらなかった。

 翌朝には医者に連れて行く、でもそうすると会社を休まなければいけない。


 本当なら明日は××商事が来社する予定だから後輩のあの娘に電話して対応をお願いしないといけない。


 離婚して子供を独りで育てないといけなくなって、会社側は配慮と言う理由で仕事内容を変更した。

 本当は最後までやりたかったプロジェクトだったのに外された。


 それでも新しい仕事を頑張ろうと思ったが、その内容は雑用みたいな仕事ばかり。

 でも直人がいる。頑張れる、だから大丈夫、そう考えた。


 でも直人は言うことを聞かない。

 特に自分がイライラしている時にぐずる。

 必ずと言ってもいい。まるで嫌がらせのように。


 二週間も昌子のところに置いておいたのが悪かったのだろうか。

 こんな時に夫がいてくれれば…… いや、いない方が良いに決まっている。

 私は自分独りで生きて行くことに決めたのだから。


 美登里はパソコンで【熱】【子供】【緊急処置】と打ち込み検索してみた。

 検索結果は四万件、ページをめくって行くが「冷せ」と書いてあったり「温めろ」と書いてあったり、

「大人の薬は飲ますな」「インフルエンザなら×時間以内に医者に連れて行け」などなど。


「どれが答えなの!」

 病院の緊急外来に行くべきか、それとも38.5℃だから行く必要がないのか。

 インターネットの記事は明確に答えを教えてくれない。


「もう、どうしたらいいの!」

 彼女は泣いていた。涙が止まらない。

 その瞬間、美登里の心に思い出した光景がある。


 直人ぐらいの年齢だっただろうか、自分は母の手伝いをするつもりで食器を台所へ運ぼうとしていた時、皿を一枚割ってしまった。

 母は鬼のような形相で自分を叱りつけ、そして大好きだった人形を奪い取ると壁に投げつけた。

 人形は手足がバラバラになった。


 そんな悲しい思いを直人にさせてはいけない。

 自分は母のようにはならない。

 そう決めたはず。それに自分ならばできる。

 今まで頑張って色んなことをやり遂げてきたではないか。


「大丈夫、私は直人を愛してる。

 母親なのだからこの子の為なら死ねる。親としてこの子を守り通す」

 美登里は直人の氷枕を交換した。


 そして直人の顔を眺めながら呟いた。

「大丈夫、旨く行く、きっと」


   ×   ×   ×


 二日後、美登里は帰路に付いていた。

 今日は仕事が思いのほか早く片付いた。

 時間は六時、いつもの保育園へのお迎え時間より一時間早い。

 でもなぜか足取りが重かった。


『疲れていませんか?』


 と書かれた看板を見つけたのはそんな時だった。


『疲れていませんか、? もしあなたの心が疲れていたら現代心理サロンへ。あなたの心、癒します』


 下手なセリフではあるが何か気になる。ここは何屋さん? エステか何か?


 看板の先には小さく小洒落た家が建っている。

 周りは灰色のビルばかり、明らかに場違いな建物である。


 美登里はなぜか『疲れていませんか?』の文字が気になった。

 ふと泣きわめく直人の顔が浮かんだ。


「少しだけなら」

 美登里は店の扉を開いた。

 中は間接照明で薄暗い、部屋の隅に置かれた高級そうな椅子だけが目に入った。


「いらっしゃいませ」

 目を見張る美少年が彼女に微笑みかけた。


「あの、此処は何をして頂けるんでしょう」

 美登里は恐る恐る聞いてみる。


「何でも、あなたのお望みのままに」

「?」


「大丈夫です。ここはホストクラブでも高級エステサロンでもありません。さぁこちらにお座りください」

 美登里は彼が言うがまま椅子に座った。


「さぁ、目を閉じてください」

 彼女は目を閉じた。

 そこには甘い香りが漂ってくる。

 そして静かな音楽が聞こえてくる。どちらも自分の好きな香りと音楽。


 美登里の肩に男の手を感じた。

 肩を揉む訳でもなくさする訳でもなく、ただそこに手があるだけ。

 温もりが伝わってくる。心地良い。

 なぜだか分からないが頭の中が空っぽになる。


「何もしないで私に身を委ねてください」

 男の言葉に美登里は逆らえなかった。

 ただ手の温もりが凍てついた心を溶かして行く。

 そして何もかもが頭の中から消えて行った。


   ×   ×   ×


 美登里達が家に着いたのは夜の八時を超えていた。

 保育園では七時までにお迎えに行かなければいけない。

 でも彼女が到着したのは七時十五分。保育士から


「気をつけてくださいね」

 と冷たく言われた。

 美登里には後ろめたさもあり適当に謝ってそそくさと帰って来た。


 帰るとすぐ直人は自分の部屋からおもちゃのロボットを出してきた。

 このあいだ昌子のところで買ってもらったらしい。彼はそれを手に

「ビュン、ビュン」

 と空を飛ぶ音を声に出しながら遊んだ。


「すぐ御飯だからおもちゃ片付けなさい」

「僕カレーが良い!」

「ダメ。まだ風邪が治ったばっかりだから、今日は消化の良いシチューにするね。直人も好きでしょう」


「いや! カレーが食べたい」

 直人は泣きだした。美登里は少しイライラしてきた。

 何で言うことを聞かないの。

 そう言えば、夫もカレーが好きだった。

 彼女の頭の中に夫と手をつないで歩く女性の姿が頭に浮かんだ。


「いい加減にしなさい!」

 彼女は自分の頭の中の映像を振り払うかのように大声を上げた。

 そして右手が上がりかけた。


「駄目、この子は私の宝物のはず。ただ駄々を捏ねているだけ。

 子供だからしょうがない。落ち着くの、落ち着きなさい」


 彼女は心でそう呟いた。

 直人は母の形相を見て泣き出した。それは癇に障るほどの大声で。


「泣かないで」

 美登里の声を直人は聞こうともしない。


「泣かないで」

 を繰り返して行くうちに彼女自身もどうしていいか分からなくなってきた。


「泣かないで…… 泣かない、泣きやみなさい!」

 語気が荒くなってくる。


「いい加減にして!」

 彼女は直人の持っていたロボットを取り上げ壁に投げつけた。

 ロボットは高くて鋭い音を立ててバラバラになった。


 その光景を見た時、美登里に子供の頃の記憶が蘇った。

 バラバラになった人形、母に対して泣く自分。

 彼女はたじろいだ。直人はまだ泣いている。


「こんなはずが、こんなはずじゃない」

 彼女は逃げた。何も考えず家を飛び出した。

 ただ逃げたかった。そして走った、ただ走った。

 どこをどう走ったか覚えていない。


 気がつくとあの現代心理サロンの建物の前まで来ていた。


   ×   ×   ×


 勇一は部屋にいた。

 店が終わって独り何もせず、いつも通り天井を眺めて同じことをぐるぐると考えている。


「これからも怪獣と戦い続けなければならないのか?

 いつ戦いは終わるんだろう?

 どうすれば記憶が戻るんだろう?

 いつも頭に浮かぶ赤い屋根と富士山、そして温室のような所はどこだろう?

 なぜその温室の緑は赤に染まるのか?

 里子はなぜ真実を教えてくれない?

 自分は本当に人間なんだろうか?」


 答えのない問いを延々と繰り返している。と、その時、


「お腹すいたよ」

 と、か細い声が聞こえたような気がした。


「? 直人君?」

 答えが返ってこない。勇一は目を閉じた。

 どこか暗い所で蹲る直人の姿が見えた。


 直人の身に何か起こっている。

 勇一は更に意識を集中させた。体が軽くなる。


 暫くして感覚が元に戻った時、彼は見知らぬ街の、見知らぬマンションの見知らぬ部屋の前にいた。

 表札には高橋と書かれている。


 彼はチャイムを鳴らしてみた。誰も出ない。中に人のいる気配もない。

 勇一は恐る恐る扉のノブを廻してみる。

 鍵は掛かっていない。扉は難なく開いた。


 中は暗くて様子が良く分からない。

 奥の部屋のカーテンがあいている。

 窓から月明かりが差し込む。


 その光と、目が闇に慣れてきたこともあって、部屋の様子がだんだん見えてきた。

 椅子が倒れている。戸棚や冷蔵庫までもが開いたままになっている。

 どう見ても部屋は荒れている。


「直人君、いるの?」

 勇一はできるだけ優しく声を掛けてみた。

 食卓付近、何かが動いた気がした。


 勇一がゆっくりと近づいてみる。

 するとそこに小さな影が更に小さくなろうとして足を抱えて蹲っている。


「直人君?」

「お母さん…… お腹すいたよ」

 直人は怯えているのか、それとも寒いのか、震えが止まらない。

 勇一は彼を抱きかかえた。しかし彼の震えは止まらない。


「分かる。食堂のお兄ちゃんだよ」

 直人は彼の腕にしがみ付いた。

 勇一も彼を力いっぱい抱きしめた。


「お母さん、お母さんどこ? お母さん、ごめんなさい、ごめんなさい」

 直人は母に謝り続けた。

 当然母親の答えは帰ってこない。

 勇一は、彼が母親から虐待を受けた疑いがあることを思い出した。


「大丈夫だから、お兄ちゃんがいるから」

 直人を抱きかかえたまま勇一は家を出ようと扉を開けた。


「里子!」

 目の前、唐突に里子が立っている。彼女の大きな目が二人を見つめている。

「なぜ君がここにいるんだ」


「その子をどうするつもり」

 里子は相変わらず勇一の質問には答えようとしない。

「育児放棄みたいなんだ、だから保護する」


「その子と、その子の母親に関わらない方がいい」

 その口調はいつもよりも強めである。


「その親子に関わればあなたはまた傷付く」

「どうしてそんなことが言えるんだ、なぜ君はそんなことが分かるんだ!」


「お願い、私の忠告を聞き入れて。あなたにこれ以上苦しんで欲しくないの」

 彼女はそれ以上何もいわず背を向けた。

 勇一は追いかけようかと思ったが、まずは直人のことが優先である。


 腕の中を見ると、安心したのか彼は眠っている。勇一は目を閉じて〈ほとり〉の自分の部屋を頭に浮かべた。


   ×   ×   ×


 次の日勇一は直人を病院へ連れて行った。

 彼はかなり衰弱していた。およそ四日は何も食べていないとの診断である。


 ベッドの横には昌子が付いている。

 それを廊下から見ていた勇一に比呂子が声を掛けた。


「よく彼を助けだせたね」

「え、あ、その……」

 勇一は適当な言い訳が思いつかない。


「電話がね、彼からあって」

「あれ、勇一さん携帯買ったの」

「いや、そう言う訳でもなくって」

 勇一の困っている様子に何か妙だと思いながら


「でも、よくあの時間から街へ行って帰って来られたわね」

「そうだね、終電に乗って始発で帰ってきて」

 空間移動したなど口が裂けても言えない。

 勇一はとにかく話題を変えることを試みた。


「直人君、大丈夫かな」

「うん、衰弱しているけど大丈夫みたいよ。でも彼のお母さんもひどいよね」

「そうだね」

 勇一は頷いた。直人の悲しみを思うと心が痛んだ。


「でも本当に悪いのは男よね。美登里さんって玄さんの情報によると賢くて真面目な人らしいよ。そんな美登里さんを追い詰めた旦那が悪いね」

「そうだね」


 直人の母親も泣いているのだろうか、

彼女も苦しんでいるんだろうか、

勇一の心の痛みは増して行く。


「今って真面目な人ほど損する世の中なのかぁ。なんか納得できないね」

「そうだね」

 比呂子が勇一の肩を叩いた。


「ちょっと、さっきから、そうだね、しか言ってないじゃない」

「ごめん」


 比呂子はしょうがないな、と言う顔で勇一を見た。

 しかし勇一は直人を見続けている。

 直人の心の傷が癒えるだろうか、彼の母親を見つけて直人に会わせれば彼は元気になるだろうか、そう考えた時、里子の声が彼の心の中に響く。


「その親子に関わればあなたはまた傷付く」


   ×   ×   ×


「ありがとうございました」

 美少年が丁寧に挨拶をする。美登里は気分良く店の扉を開けた。


 ここ最近、毎日仕事帰りはここに通っている。

 兎にかく癒されたい。自分を満足させてくれるここに来たい。


 彼女はイヤリングの片方がないことに気が付いた。

 さっき店で落としたのかと引き返して扉を開けた。


 そこにはあの美少年ではなく黒衣の男が立っていた。

 美登里はこんな従業員もいたのかとさほど気にもせずにその男に問いかけた。


「すみません、イヤリング落ちてませんでしたか」

「これですか」

 男は手に持っていたイヤリングを渡した。

「ありがとうございます。これです」


「では……」

 男は奥の方へと下がって行った。

 美登里も特に気にすることもなく扉を閉めた。


 店から放れると彼女の足は家ではなく、街の繁華街へと向いた。

 ここ数日家には帰ってはいない。

 いつもビジネスホテルで一夜を過ごしている。


 直人のことはできるだけ考えないようにしている。

 もう限界、あの辛い家に戻るよりこうして自由でいたい。


 そう思いながら彼女は人通りの少ない道を歩いていた。

 その先、若い男が彼女をじっと見つめている。勇一である。


「あなたは!」

 驚いた美登里は一歩後ずさりをする。


「美登里さん、探しました」

 勇一は美登里に歩み寄った。


「直人君が待っています。彼は今、病院にいます」

 美登里の顔が曇った。病院?


「大丈夫、命に別条はないです。あなたのお母さんが看病していますよ」

「母が!」

 それは美登里が一番聞きたくなかった言葉である。

 自分が置き去りにした息子を母が看ている。

 自分は母以下である、そう言われた気がした。


「直人君はお母さんに会いたがっています。行きましよう、今すぐに」

 勇一は真っすぐ美登里を見て語りかける。

 美登里は彼の視線を外した。


「私は母親失格なの。直人のことも愛していない」

 彼女は相変わらず勇一を見ようとしない。


「分かる? 直人が寝ている時、私は彼の首を絞めようかと思ったこともあるのよ。

 彼さえいなければ、彼がいなくなってくれればって。私は母親になる資格なんかなかったのよ」


 彼女の目から涙が溢れ出た。


「そんなことないですよ、直人君はお母さんが一番好きです。

 彼に会いに行きましょう。彼は待ってますよ」

 その言葉に美登里は勇一を睨みつけた。


「あなたに何が分かるっていうの。私は知ってしまったのよ。

 あの子がいなければどれだけ幸せかを」


「嘘です! あなたは直人が病院にいると聞いた瞬間、悲痛な顔をしました。

 あなたは直人君を心配している。

 なによりもあなたは直人君を愛しているはずです」


 勇一の言葉に美登里はじっと目を閉じたまま大きく首を横に振った。


「私は、私は自分を癒してくれるそんな場所を知ってしまった。

 人間は一度欲望に取りつかれるともう二度とは戻れない。

 私は子供を捨てて快楽を優先するダメな人間なの!」


 彼女は勇一に背を向けた。そして彼から逃げるように走り出した。


「美登里さん!」

 追いかけようとする彼の目の前に女が立ち塞がった。


「もうこれ以上、彼女に関わってはダメ!」

 里子は叫んだ。勇一は怯んだ。彼女はなぜまた現れたのか、彼女が忠告する時、確かに自分は傷付いている。


「なぜだ、なぜ君は僕が傷付くことを知っているんだ!」

 彼女はなのも答えようとはしない。

 いつものように悲しい目で勇一を見ているだけである。


 二人が睨みあっている時、遠くから人々の叫び声が聞こえた。


「怪獣だ、逃げろ!」


 勇一は見上げた。

 そこには、まるで女性の髪の毛のような幾本もの触手を持つ、一つ目怪獣がビルの上に顔を覗かせている。


「あの怪獣は、もしかして美登里さん?」

 里子は静かに頷いた。


「なぜ君は怪獣の正体をいつも知っているんだ」

「あなたが戦えば、怪獣マザリーを倒せば、彼女は死ぬかもしれない。直人君はもうお母さんに会えないのよ」


 マザリーは街を破壊し始めた。

 ビルが崩れ、家が踏みつぶされる。

 人々はその足元で逃げ惑っている。


「彼女を救う方法は無いのか」

 里子は首を横に振った。


「教えてくれ、里子。

 僕は変身したくてシルバーマンになる訳ではないんだ。ひとりでに変わってしまっているんだ。どうしたら良い。どうすれば戦わなくて済む」


 勇一は彼女に訴えかけた。

 このままいけば変身してしまう。もうすでに左手が熱い。


「そう、あなたは怪獣を倒そうとする気持ちが強いのね。もしかすると罪の意識があるのかも……」

「罪?」

 勇一の疑問に答えず里子は言った。


「戦いなさい。そして心に傷を受けて、そんな自分を呪いなさい。そうすればあなたは蘇るかもしれない」


 そう言うと彼に背を向けた。

 勇一はどうすることもできず、戸惑うままに左手を天に突き出した。


 彼は姿を変えた。

 シルバーマンの姿を認識したマザリーは怒り狂ったように周辺のビルを壊して行く。


「どうすれば美登里さんを元の姿にできる」

 そう考える勇一とは関係なく、彼女は彼に襲いかかる。

 長い触手がシルバーマンの首に巻きつく。


「苦しい……」

 彼はなんとか触手を振り払おうとするが外れない。

 それどころがじりじりと絞まって行く。


 シルバーマンは触手を力の限り引っ張った。

 マザリーはその力で前のめりによろける。

 その瞬間触手の力が弱まった。


 シルバーマンは両腕を触手と首の間に入れ、力一杯両腕を開く。

 その力で触手は引きちぎれた。


 怒るマザリー、そのマザリーの腹を目がけてシルバーマンが蹴り上げる。

 後方に吹っ飛ばされるマザリー、倒れた先の大きなビルが轟音と共に崩れる。


 シルバーマンは倒れたマザリーに飛び乗り、何度も大きな一つ目に目がけて殴りつけた。

 勇一はマザリーが気絶してくれれば、人間の意識を取り戻して元の美登里に返ってくれないかと考えた。


 だから必要に攻撃するシルバーマン。

 しかしマザリーは動きを止めない、逆に両足で巴投げの形でシルバーマンを弾き飛ばした。

 轟音と共に地面に叩きつけられるシルバーマン。


 そこに今度はマザリーが突進してくる。

 立ちあがったシルバーマンが何とか受け止めるもその足をすくわれ再び倒されてしまう。

 倒れたシルバーマンに覆いかぶさろうとするマザリー、しかしシルバーマンは立ちあがりながらマザリーの腕を取り、一本背負いで投げ飛ばす。

 倒れたマザリーに再び拳を振り下ろすシルバーマン。


「お願いだから、気絶して、元の姿に戻ってくれ!」


 何度も振り下ろす拳に願いを込めて勇一がそう叫んだ。

 攻撃に苦しむマザリー。更に力を込めて殴りつけようとしたその瞬間、シルバーマンの首にマザリーの触手がからみつく。


 触手を解こうと腕を首の方向に持っていこうとした時、別の触手がその両腕に絡みつく。

 触手の力でシルバーマンはマザリーから引き離された。

 そして立ちあがったマザリーが今度は動けないシルバーマンの腹を殴る、そして蹴る。


 シルバーマンは蹲った。

 相変わらず触手が絡まって身動きが出来ない。

 そして容赦なく襲いかかるマザリー。


「動けない、ダメだ。このままだと殺られる」


 勇一の意識が朦朧とする、その時、また心の中であの声が聞こえた。


「マザリーの弱点は耳」


 シルバーマンはマザリーからできるだけ距離が放れるように後向きに体重を掛けた。

 そしてその反動を使って突進、マザリーに体当たりをする。


 マザリーはバランスを崩した。

 よろめきながら、近くのビルを崩壊させながら倒れて行く。

 倒れた拍子に触手の力が緩んだ、そしてその触手の隙間から耳が見えた。


 シルバーマンは無意識に左手を前に付き出す。

 そして光線が耳に当たる。


 シルバーマンに巻きついていた触手が力なく離れて行った。

 マザリーがもがく、そして触手が一本、また一本と抜けて行く。


 やがて全ての触手が抜け落ちた時、その姿が音もなく消えて行った。


   ×   ×   ×


 勇一はテトラポットの影で直人を見ていた。

 彼はいつものように貝殻を集めている。今日は側に昌子がいる。


「声かけなくっていいの」

 後ろから声がした。比呂子である。


「うん」

 としか勇一は返事をしなかった。

 彼はとても、直人の前に姿を見せる気になれなかった。

 彼の母を救えないどころか…… そんな自分が彼に何が言えるのだろう。


「直人君、施設に行くんだって。昌子さんも年だから彼を養育できないってことになったみたい。可哀想だよね」

「そうだね」

 彼の声には力がない。

 比呂子も今日のところは勇一をそっとしてあげようと思った。


 また雪がちらちらと降って来た。

 初めて直人を見かけた時と同じように。


 勇一は自分を責め続けた。

「戦いなさい。そして心に傷を受けて、そんな自分を呪いなさい」

里子の言葉が思い起こされる。


 これからも自分を呪い続けるのか、この呪縛からは解き放たれないのか。

 

 彼の思いと関係なく雪は降り続いた。


※保護者が明確な場合は、よほどのことがない限り子供を施設が預かることはないらしいです。今回の事例では、昌子さんがいる限り、直人君が施設に預けられることはないようです。指摘はあったのですが、落ちが見つからず 今のままの話になっています。

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