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和志と茉奈との対話 1

 その頃、和志は桑原の娘、茉奈の家へと向かっていた。和志は、彼女が買い物から帰宅するのを見計らい、彼女を車の中へと連れ去る。

 茉奈が大声をあげる前に、和志は茉奈の口元に薬品をあてて、眠らせた。

 翌日の8月21日、和志は東京の自宅アパートに茉奈を軟禁した。和志は声をあげようとする茉奈の口を優しく塞ぐ。

「茉奈さん、あなたは今から反戦グループのデモに参戦しようとしていますね」

 和志の優しく落ち着いた口振りに、茉奈は何かを察したのか、勝気に口を開く。

「そうよ。私も父さんと一緒にデモに参加するの。そして高橋首相を止めてみせ……!」

 その茉奈の言葉を和志は遮る。

「そのアイデア、破棄してください。あなたが動けばお父さん、つまり桑原さんが犠牲になるシナリオが始まるからです」

「どうして、そんなことが!」

 反発して足をバタつかせる茉奈の唇に、和志は指先をそっと触れて、口を塞ぐ。

「理由がどうかは訊かないで。あなたが出来る最大で最後の、祖国への献身が、この家で8月23日まで留まることなんです」

「そ、んなこと!」

 和志の瞳が一際、大きく見開かれる。

「でないと僕はあなたに何をするか分かりません。ややもすれば、あなたをも手に掛けてしまうかもしれない。あなたはじっとしていること。それが最大の国への貢献です」

 和志の影の差したアドバイスに、茉奈は抵抗を感じながらも、裏での何かの動きを察したのか、息を飲む。

「8月23日まで私が、動かなければ、いいのね」

「はい、そうです」

 和志が茉奈の手に、一度手をポンッと置くと、茉奈は頷く。

 これで、この瞬間に、桑原が裏切るシナリオが回避されたのを和志は知った。あとは8月23日のネットでの情報拡散と一斉蜂起を待つのみとなった。


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