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第二章 ~ 訃報 ~ 第六話

 ルシルベアイスが戻って来て、ミルクマードたちはすぐに教会を出た。

 ルシルベアイスはトロンという者がどのような人物かを見定めてからミルクマードに引き合わせようと考えていたのだが、ミルクマードが「それでは失礼になるわ」と言って一緒に訪問することにしたのだ。


 商店や家屋が集中している村の中心部を過ぎ、民家の軒先で飼われているニワトリを避けながら、村の外側に来た。

 このサンタオルラの村はどの民家も山羊やニワトリを放し飼いにしているため、野生動物が村の中に侵入しないように村全体が腰ほどの高さの柵で囲われている。

 村の中で家畜を飼っていると言うよりも、大きな飼育地の中に村があるような感じだ。


 村の境界の柵を過ぎると、収穫が終わっている麦畑が延々と広がっていて、そこを突っ切るように平らかな農道が丘の向こうへと続いていた。この先にクルドとクルドの弟子たちが住居していた屋敷があるらしい。

 ミルクマードは路傍に生えていたネコジャラシを一本引き抜いて手の中で弄びながらルシルベアイスの前を歩いている。


 すでにブルジュ・ローリエが敷いている捜索網の外に出ているので、夜中を選んで外出する不便さはなくなっているものの、ミルクマードの手配書は広範囲に出回っているので用心のために彼女は修道女に変装した姿でいる。

 修道服を着た娘の後ろを凛とした浪人風の女が畏まって付き従っている光景は、一見奇妙に見えるが珍しい事ではない。

 貴族の子弟が修身修行の一環として一人旅をすることは『グランドツアー』と呼ばれている風習で、世情が不安定になり国内の治安が悪くなって以降、同性の護衛が付くのが最近のスタイルだ。


 ルシルベアイスが食料品店の店主から聞き出したという情報の報告を聞きながら、言葉の節々にクルドが何者だったのかを匂わせるような言い方をしているのに気付いたミルクマードが、クルドについて話すように促した。


「そもそもクルドってどんな人だったの? 今の話を聞いている限りじゃルーシーには見当がついているようだけど」


 ちなみに、ミルクマードはこの逃避行の途中からルシルベアイスのことをルーシーと呼ぶようになっている。

 ミルクマードは自分の事を友人っぽくミマードと呼んで欲しいとルシルベアイスに言ってあるのだが、彼女はは「光栄です」と礼は述べたものの、臣下としてのけじめにこだわっているのか一度もその愛称で呼んだことはない。


「なんの証拠もない私の憶測でのお話になりますが、それでよろしければ」

「いいわ。聞かせて」

「それでは、姫様は六十年ほど前にイースト大陸グラウンドを統一したアニタ女王の事をご存じでしょうか?」

「当然知ってるわ。大昔の王族の末裔だったけれど数世代前に領地を失っていて、一人の平民として宿屋で働いていた女の子が、四人の英雄に支えられて瞬く間に東の大陸の主になった。まるでお伽話のようなサクセス・ストーリーだけれど、実際にあった話なのよね。そんなの子供でも知っている有名な話じゃない」

「では、その四人の英雄の名は覚えていらっしゃいますか?」

「えっと……。双刀シルバ、魔女カーリン、聖女シシリ、隠者ク……」


 ミルクマードはネコジャラシを振り振りそこまで答え、不意に足を止めた。


「隠者クルド! まさか!?」

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