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吸血鬼犯罪捜査官 美紅  作者: 城島 剣騎
第5章<吸血鬼医院殺人事件>
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第五章〈新たな凶器〉


私は努めて冷静を装い、被害者である工藤 美咲さんの遺体に触れようとしたが

恵子さんはそれを拒んだ。

「触らないで!

わたしの親友に貴女なんかが触らないで!」

気持ちはわかる。

勿論、大切な親友なんだもん。

でも今の私は刑事であり、吸血鬼捜査官であり、アブジーの一員。

だから、私は心を鬼にする事にした。

「現場保存の為です。

例えどのようなお付き合いがあっても遺体には手を触れないで下さい。」

と言っているにも関わらず恵子さんは駆け寄って美咲さんの遺体を抱きしめようとした。

「御願いです!

本当に美咲さんの死を痛むのでしたら離れて下さい。」

私はそういって泣きじゃくる恵子さんを制して、アブジー本部に電話を入れた。

「すみません、上条 美紅です。

藤田警部補に変わって頂けませんか?」

そりゃ怒られるだろうなぁ。

捜査に来ていて殺人事件が発生し、しかも犯人確保すらままならないんだもん。

これは、懲戒処分にされちゃうかしら?

と自分の保身に一瞬思いを馳せてみたが、今の状況を鑑みて冷静に戻る事にした。

「やっぱり貴様に事件を委ねるんじゃなかったな。」

電話に代わった春樹が第一声を漏らした。

「ちょっと電話なんてどうでも良いでしょ?

それより美咲に会わせてよ!触らせてよ!!」

凄む恵子さんにたじろいだが、やっと喧騒に気が付いたのか院長が恵子さんを抱きかかえて

院長室へと連れていってくれた。

「ともかく、だ。

すぐに智弘とシンディーを現場に向かわせる。

俺も行くから動くなよ?」

そういって電話は切れた。


いろいろ思案にくれたんだけど、このまま動くなですって?

冗談じゃない!

遺体は吸血鬼、それも死徒なのよ?

ぼやぼやしていたら、それこそ状況が刻一刻と悪化するじゃない。

私は砂に変わりつつある美咲さんの遺体に注視した。

すると、どうにも奇妙な点が見つかった。

まず一点。

吸血鬼は白樺の杭に限らず胸に刺突物を打ちつけられると絶命する。

と、勿論これは死徒に限るんだけど。

その杭が、何故か胸に対してやや上を向いている点。

そしてもう一点。

これこそ私たちが見落としていた犯人の真の凶器に他ならないと確信した点。

今まで杭と思っていたものが違うものである事に気が付いたの。

ううん、この言い方は正しくないわ。

正確に言うと、当初事件が発生して駆けつけた時に見たものは紛れも無く白樺の杭だった。

でも今の被害者に刺さっている凶器は白樺の杭なんかじゃない!

平たく言うと匂いから察するに巨大な虫の棘とでも言えば良いかしら。

蜂かムカデか・・・。

私は鼻が利くから、こういった匂いには敏感なのよ。

この匂いは間違いなく虫の組織の一部。

それに白樺なら年輪もあるし木の独特の匂いだってする。

となると・・・、犯人は最初の事件でわざわざこの棘を白樺の杭にすり替える必要があったんだ。

そう、犯人にとってこの剣のような棘を私達に発見されるのはまずいんだ。

でも、残念ながらこれだけで犯人を特定するのは無理。

どこかにヒントがあれば良いんだけど。

って、待って待って?

もう一つの不審な点はどう?

そもそも吸血鬼を殺すのに白樺の杭を胸に突き立てるなら胸に対して正面から突き刺すのが

一番効率が良いじゃない?

でも遺体に刺さっていた剣のような棘は胸に対してやや上向きに刺さっていた。

つまり、美咲さんは正面から刺されたのでもなければ後ろから刺された訳でもない。

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