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吸血鬼犯罪捜査官 美紅  作者: 城島 剣騎
第5章<吸血鬼医院殺人事件>
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第五章<外部犯の可能性>


「さて。

それじゃあこいつが蟷螂の斧[とうろうのおの]を以て事件にあたってくれるようだから、安心して退散するとしようか。」

ん?

蟷螂の斧[とうろうのおの]って言ったわね、春樹。

諺の意味は、弱者[もしくは力及ばぬ者が]が強者[もしくは難問など]に立ち向かって行くって意味だったはず。

あぁ、これって春樹がまた事件解決のヒントをくれたって事なのね。

ってか!

春樹ってば頭良いんだから犯人の目星がついてるんなら、自分でやれっていうのよ。

って喉まで出かかったけど、春樹には春樹の考えがあるんだろうなぁ。

「アバウティー、頼んだデース!」

いや、いやいや。

すでに本名が一文字も入ってないし。

「どうも僕は、上条先輩に全てを委ねるなんて容認出来ないけど。

まぁ、藤田先輩がそう言うんなら、仕方ないです。」

はぁ。

やっぱ私って信用されてないのねぇ。

いいわよいいわよ。

だったらここで見直させて見せるんだから!

とここで無人パトカーが到着したので、私は皆を急かして見送った。

「あの、本当に大丈夫なんですよね?」

恵子さんは、不安げな表情を隠せないみたい。

まぁね。

あんだけ仲間から散々な事言われてるの聞いたら、そりゃ不安にもなるわよね。

「任せて下さい。

とりあえず順を追って、調査させて頂きますね。

まずは、ここ玄関から事件が発生したので調べて行きます。」

うん。

今回はファイバー製薬の時より関係者が少ない分、そう難しい事件にはならないはず。

などと気軽に考えていたのだけれど、だからといって何もめどがある訳でもない。

「で、わたし達はナースステーションで殺害された二人の看護師に挨拶をして、玄関で家路につこうとしていた。

すると、ナースステーションの方から絶叫が聞こえてきたんだよね。」

美咲さん、凄い積極的だなぁ。

つまりそれだけ立川院長って、皆から慕われてるって事かぁ。

「えっと、その絶叫って男女両方の叫び声でした?

というのも、殺害された看護師の二人は看護師の高山 健吾さんと準看護師の橋本 優衣さん。

つまり男性と女性。」

しかし恵子さんも美咲さんも、お互いに顔を向きあって首を傾げた。

「どうだったかなぁ。」

恵子さんは人さし指を頬にあてて思い返してみたが、どうも覚えていないようね。

「あの時は何があったのかわからなかったけど、とにかく病院で非常識な叫び声をあげていたので恵子もわたしも慌てていたから。」

まぁ、そうよね。

誰も自分達が勤務している病院で、殺人事件が起こるだなんて思いもしないものね。

ましてや、自分の信頼している同僚や尊敬している院長しかいない訳だし。

「じゃあ、とにかく階段を下りてナースステーションに行ってみましょうか。

何か思い出したら、教えて下さいね?」

というと恵子さんはにこやかに微笑み、美咲さんは意気込んでガッツポーズをみせた。

「あの。

立川院長をそこまで両手放しに庇うなんて、よっぽど慕われておられるのですね。」

そう、これは探りよ。

私だって第一発見者の二人を疑いたくはないのよ。

でもだからといって、この二人を完全に容疑者の枠から除外する事も出来ない。

散々春樹に反発しておいて、こういうのもなんだけどね。

でも二人が立川院長を庇う理由は、意外なほど明確にあった。

「当然じゃない!

勿論、立川院長は医者としても人間としても信頼しているわよ?

でも一番は、親友のフィアンセなんだもの。」

と言って、美咲さんは恵子さんの方に振りかえって平謝りしていた。

一方、恵子さんはしょうがないなぁ。といった顔で美咲さんを窘めている。

ふぅ~ん。

恵子さんと立川院長の件って、秘密にしてたんだ。

まぁ、そうよね。

職場恋愛なんて、あまり他の人に知られたくはないものかもしれないし。

とりあえずナースステーションに入って、私は調査を続ける事にした。

「で、恵子さんと美咲さん。

ここでお二人は二手に別れたんですよね?

美咲さんはナースステーションの奥の仮眠室へ。

そして恵子さんは病室へ。

それで、恵子さん。

病室は特に異常はありませんでした?

何か、特に気になる違和感とか。」

私が聞くと、恵子さんはしばらく黙りこんで思い起こしていたみたいだけど首を横に振った。

「美咲さん。

お二人が病院に舞い戻ってから私達警察が駆けつけるまで、他には誰も人の出入りはありませんでしたか?」

と聞いたら、美咲さんはすぐに首を横に振った。

うーん。

それじゃあ益々、立川院長が怪しいって事になっちゃうわね。

「ねぇ、刑事さん。

あなたまさか、やっぱりわたし達や立川院長を疑ってるんじゃないでしょうね。」

ちょっとちょっと、威嚇しないでよ美咲さんってば。

「疑ってる訳じゃないけど。

でもだからって、両手放しでお二人と立川院長を容疑者から除外するって事も出来ないのよ。

でもまだ他に犯人がいる可能性がなくなった訳じゃないし。」

って私が言うと、冷たい視線を送っていた美咲さんはきょとんとした。

「えっと、どういう事ですか刑事さん。」

私は美咲さんに説明しようとすると、先に恵子さんが説明をしてくれた。

「つまり。

もしわたし達や院長以外の外部の者が犯行を行うとすると、事件以前に犯人が病院に潜り込んで犯行を窺っていたんじゃないかって事ですよね。

そしてもし外部犯が隠れていたとすれば、考えられるのは病室。

ここには動く事も話す事さえ出来ない重病患者が殆ど。

中でも意識のない患者の病室のベッドの下などに犯人が隠れて機会を窺っていたという事も考えられる。

そして人の出入りがないという事は、その外部犯は今現在も病室のどこかに息を潜めている可能性があるって事ですよね。」

ふわぁ。

恵子さんって、ひょっとして私よりも刑事に向いているかもしれない。

「だとしたら、一番可能性が高いのは東雲さんじゃない?」

話を聞いた美咲さんも、思わず生唾を飲み込んだ。

「とりあえずね、私はまだ立川院長を見ていないんだけど面会をお願いしてもいいかな?

さっきは春樹達が院長室に行っていたけど、私はトイレで結局会ってないし。

あぁ、それと!

念のために美咲さんはナースステーションに残留しててほしいの。

もしも犯人が脱出を試みるとしたら、ここ以外に出口はないみたいだから。

でも決して無理はなさらないで?

何かあれば、すぐに駆け付けますので。」

すると美咲さんはニンマリと笑って、OKサインを作ってみせてくれた。





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