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吸血鬼犯罪捜査官 美紅  作者: 城島 剣騎
第5章<吸血鬼医院殺人事件>
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第五章<大風呂敷>


「それってどういう…。」

「どういう事なんですか、藤田さん!」

私が春樹が言った事に対しての疑問をぶつける前に、智弘くんが春樹に突っかかって行った。

ちょっとなんだか…、私が所在ない気がする。

すると今迄、偉そうに椅子に腰かけて机に足を投げ出していた春樹が立ちあがった。

「簡単な事だ。

今迄の事件のあらましと詳細な説明は、全て渡瀬 恵子さんと工藤 美咲さんサイドから見た話の内容ではないか。

という事は、逆にこの二人が犯人もしくは協力者であった場合はどうなる?

院長のアリバイも、また、この第一発見者である二人ですら犯人の可能性があるという事だろう。

野川警部補もジョナサン警部補も、この二人の裏はとれているのか?

もしも確たるアリバイも確証もなく二人の看護師さんの言う事を鵜呑みにして事件を探っているのだとしたら、貴様達は基礎からやり直しという事だ。

無論、美紅。

お前もな!」

くっくぅぅ。

くっ悔しいっ!

それに言い方ってもんがあるじゃないのよぉ。

何もそんな厳しい言い方しなくったって良いじゃない…。

だってこの二人が嘘をついているとはとても思えないし、でも春樹の言うとおり確証もなければアリバイもないのよねぇ。

言い返したいけど、返す言葉がない。

どうも、それは智弘くんもシンディーも同じみたい。

二人とも項垂れて俯いたまま、黙秘を決め込んでいる。


「冗談じゃないわ!

わたし達が犯人だってぇ?

やってらんない、わたしはもう帰るわよ。

こんなふざけたヘボ刑事に事件なんか、解けるはずもないわ。

帰ろう?恵子。」

そうよね、美咲さんがキレるのも当然よね。

夜勤明けで疲れてるのに、その上に長々と説明を求められた挙句に犯人扱いされたんだものね。

でも申し訳ないけど犯人がわからないし二人の容疑も晴れた訳じゃないから、今は帰してあげる訳にはいかない。

「わかったわ。

智弘くん、シンディー。

貴方達って、ずっと先の事件からの引き続きでしょ?

後は私達がなんとかするから、二人は一旦署に帰って休息して頂戴。

今回のこの事件、私が必ず真犯人をあげてみせる!」

はぁぁ。

まぁた…、やっちゃった。

大風呂敷を敷いても、事件を解く鍵すら見えてないのに…。

でもさ。

春樹にこんな大見栄きった以上、ここは私がなんとかするしかない。

そんな私に恵子さんと美咲さんは大きな歓声をあげた。

「格好良いわ、女刑事さん。」

あぁ、恵子さんが両手を合わせて祈ってるしぃ。

「じゃあ、わたしも女刑事さんの為なら協力を惜しまないわ!」

美咲さんなんか、腕まくりまでしてやる気満々だしぃぃ。

今更なんだけど、私は我が身の不幸と自分の性格に嫌気がさしていた。

はっ!

恐る恐る春樹の方に振りかえると、春樹ったら恐ろしいくらいに爽やかでかつ、妖艶で陰険な顔つきでうすら笑っていた。

「ほぅ!

美紅も見上げたものだな。

まさか、こんな難事件に自分1人で立ち向かおうとはな。

それに、いくら後輩とはいえ野川警部補やジョナサン警部補まで必要ないとは!

なら当然、俺も必要ないって事だよなぁ。

まぁ、あれだけの大見栄を切ってみせたんだ。

野川警部補、ジョナサン警部補。

後は、美紅に任せて俺達は署に帰るとしようか。」

ちちち、ちょっとちょっとぉ!

春樹までがいなくなるだなんて、話が違うじゃない。

はぁ、後悔先に立たず。

うーん。

もう後にはひけないし、覚悟を決めるしかないよね。

どうにかなるでしょ。

人生、万事塞翁が馬っていうしねぇ。

「ここはアバウティー・美紅の腕の見せどころデース。」

シンディーったら気軽に言ってくれるんだから…。

「藤田先輩、僕がこんな事を言うのも僭越ですが本当に上条先輩だけで大丈夫なんですか?」

うっ。

ちらっと智弘君が、私に白い目を向けてる。

しかし春樹は、そんな智弘くんの杞憂を軽く肩を叩いて諭した。

「あぁ。

こいつはな、こう見えても一度は警視総監章を貰った事もある。

それにファイバー製薬の一連の事件も解決させている。

ま。

ジョナサン警部補の言うとおり、ここはアバウティー美紅ちゃんに一任するとしよう。」

えぇぇぇぇぇぇぇーっ?

なんでなんでよぉ。

いっつも人[吸血鬼]を小馬鹿にするくせに、こんな時だけ持ちあげるのよぉ。

そうやってプレッシャーを与えて私を困らせて楽しむだなんて、ほんっっとうに春樹は意地悪で陰険で可愛いくないんだからぁ。

は、春樹のくせにぃ…。

いいわよいいわよ。

そうやって私をいじめてれば良いんだわ。

「わかったわよ、やってやろうじゃないの!

言っとくけど本当の本当に私が1人で事件を解決しちゃうんだからぁ。

そうなったら、春樹は職務怠慢でクビかもよ?」

と、私は苦し紛れに反撃した。





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