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吸血鬼犯罪捜査官 美紅  作者: 城島 剣騎
第5章<吸血鬼医院殺人事件>
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第五章<アリバイ>


「今回の殺人事件が人間じゃないからって、そんなふざけた態度でいいんですか?

そんな職務怠慢な刑事さん達には、わたしだって何も話す事はないです。

好きに調べて勝手に結論でも出したらいかが?

その変わり、当然わたし達もしかるべき対応を取らせて頂きますから。」

あぁもう!

せっかく二人の看護師さんが再度の事情聴取に応じてくれてるっていうのにぃ。

しょうがないわね。

ここは、私がどうにかするしかないか。

「申し訳ありません。

渡瀬 恵子さん、工藤美咲さん。

どうか、そうおっしゃらないでご協力を願えませんか?

春樹、智弘君、シンディー…じゃなくって!

ここにいる三人の刑事も、ちょっと個性が強すぎるだけで決して悪気がある訳ではないので。」

私はとにかく場を納めたかったので、思わず必死に身ぶり手ぶりで弁明した。

すると、そんな私の必死さが伝わったのか先程は恵子さんよりも不機嫌だった美咲さんがクスリと笑ってくれた。

「クスッ。

なんだか良いわ、そっちの女刑事さん。

そういう必死に説明する所なんて、昔の恵子そっくりなんだもの。

恵子も看護師になりたての時って、ドジばっかやっててさ。

でも患者さんに対する愛情や思いやりは本気だった。

ね?」

と美咲さんが笑いながら同意を求めると、恵子さんは照れ隠しにはにかんでみせた。

「どうやら話はまとまったようだな。

じゃあ改めて立川院長のアリバイを拝聴させて頂くとしようか。」

く、くくっ。

まぁったく、調子がいいわね春樹ってば。

「そうですね、早く話を先に進めないとですね。」

智弘君、貴方だって二人の看護師さん達の機嫌を損ねた一因でしょうが!

「そうデース!

とっとと、話やが…むぐぐ…。」

ちょっとちょっとぉ。

やっと和やか穏やかムードになったんだから、また話をややこしくしないでよねシンディーってば!

「あの、お話の続きをどうぞ。」

私は思わずシンディーの口を抑えながら冷や汗を流した。

「仲が宜しいのですね。」

そんな私達のやり取りを見た恵子さんは、女の私でさえドキッとするほどの笑みを浮かべた。

「じゃあ、わたしが立川院長のアリバイを話しますね。」

早く帰って疲れを癒したいからか、美咲さんは軽く咳払いをした。

それにしても…。

この二人の看護師さんって対照的よねぇ。

渡瀬 恵子さんは若干幼さを残した、たおやかで優美な感じの美女…というより美少女かな。

ソバージュと笑顔がとても似合う、思わず守ってあげたくなるタイプって感じ。

可愛らしい花柄の、ひらひらしたワンピースが物凄く愛らしい。

一方、工藤 美咲さんはシャキッとしたスーツにスタイリッシュなレイヤーの短髪がよく似合う利発そうな女性。

最初は気のきつそうな女性なのかしら?とか思ったけど、話をしてみると意外と穏やかで優しい女性なんだなぁってわかる。

特に恵子さんを見る目つきがとても穏やかで、まるでお母さんみたい。

ってこんな事言ったら怒られちゃうわよね。

キリッとした目つきの中に、深い情愛が隠されてると思う。

「事件の詳細は先程お話させて頂きましたが、院長はその当時には病院の最下層にある遺体安置所にいたんですよ。

しかも最下層への階段は、ナースステーションから最も遠いつきあたりの奥の階段からしか行けないのです。

それにナースステーションから最下層への階段に続く廊下は、御覧の通り一本道です。

当然、絶叫を聞いてナースステーションに駆け付けるまで時間は左程かかりません。

という事は万が一、院長が犯人だったとしても私達にはまるわかりになります。

第一、あの院長に限って殺人なんて酷い事を出来るとは到底思えません。

だって…。

院長は誰よりも人命を尊び…、あ、勿論だけど私達吸血鬼もね?

そして命を救う事に本当に一生懸命だし、誰よりも優しい方ですから。

まして、ナースステーションに勤務している看護師の高山 健吾さんも準看護師の橋本 優衣ちゃんも院長を敬愛していますしね。」

うーん。

益々わかんないなぁ。

アリバイもはっきりしているし、それに動機もない。

じゃあ他に誰がナースステーションの看護師二人を殺害出来るっていうのよ。

ナースステーションから最下層の階段まで続く一本道の廊下を挟んで四つの扉があって、それぞれが歩く事さえままならない、重病人患者さんの病室がある。

さらに奥の階段の手前にも部屋があって、表札には院長室って書いてある。

はぁ。

これは確かに難問だわ。

だって院長じゃなければ、他に誰が二名の看護師を殺害したっていうのよ。

私は思わず頭を掻くと、隣で春樹が笑っていた。

「フン、アホぅが。

美紅だけならともかく、ジョナサン警部補も野川警部補までが行き詰まるとはな。

よく考えてみろ。

今の説明には大きな見落としがあるのに気付かないか?」

えぇ?

私は思わず首を傾げた。

春樹の暴言には毎度腹が立つけど、そんな事は今更なのよ。

それより私には、春樹が言った事の方がとても気がかりだった。





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