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吸血鬼犯罪捜査官 美紅  作者: 城島 剣騎
<第4章>悪の華は夜に咲く
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第四章<血の交配>


「なるほどね。

言いたい事はわかるつもりだし、共感も出来る。

ただし一つ、気に入らない事があるわ。

何故そこまでの決意があって、闇組織程度のレベルにとどめ置いているのか?

本当に今の世界を転覆させ、吸血鬼を本来の闇と恐怖の支配者とするつもりであるのなら、一国を丸ごと手中にして、吸血鬼世界連合政府に戦争を仕掛けるべきではないの?」

この疑問は妥当だと思うわ。

マフィアだの、ブローカーだの、死の商人などというもので地味に組織を大きくするぐらいなら、現有勢力をもってそれぐらいの事をしないと信憑性が持てない。

「美夜。

貴女の仰る事は正論ではあると思う。

でもね?

残念ながら今は人類吸血鬼連合世界政府と正面から戦う準備は出来ていない。

それに、真祖を数多く抱える吸血鬼世界連合を侮ってはいけない。

わたくしと同等か、もしくはそれに近い力を持った実力者は決して希有ではないの。

それに人間の組織力と知能も、馬鹿には出来ないわ。

おわかりかしら?

今はゲリラ的に活動して力を蓄える内需が重要なのよ。

そして、吸血鬼世界連合の有数の実力者を強襲テロによってその数を減らし、確実に力を削いでいく。

簡単ではないし、すぐに理想が実現するものでもない。

けれど、今はその選択肢しか取れないのが実情なの。」

そう。

随分とまだるっこしいのね。

「あたしが闇組織ブラッディマリアでするべき事はなにかしら?」

これも妥当な質問だと思う。

「それなら、明確にお答えするわ。

先程言ったように、闇組織ブラッディマリアは世界中に点在するの。

勿論、いずれは依るべき場所を見つけて、徐々に統合していくつもりなのだけれど…。

今はまだ、その時じゃないのよ。

でも先程、貴女が言ったように世界を徐々に闇へと浸透させていくには時間を必要とする。

また、依るべき場所も早期に押さえておきたい。

もう、おわかりかしら?

そう。

わたくしは、この日本を依るべき場所とするつもりなの。

日本にはまだ、わたくし達と事を構える態勢が出来てはいない。

ならば貴女の支配する京都を手始めに、やがては日本全てを闇組織ブラッディマリアとする。

わたくしが日本に来た本来の目的は、そこにあるのよ。

美夜。

貴女は、今からわたくしの血を受けて新たな能力、感染を得る事。

そして死徒を生み出しつつ、わたくしの理想実現に向けて行動を開始して頂けるかしら。

とりあえずは、西日本を。

そして東日本を手中に収める事。

お願いするわね。」

また随分と、矢継ぎ早に細かい注文をしてくれるわね。

でもまぁ、いいわ。

これで退屈な毎日に、ピリオドを打てる。

「さぁ、とっととなさい。

あたしの気が変わらないうちに、ね。」

あたしは急かすように首を斜めに向けたまま、ブレザーの襟首を引っ張った。

そして、鎖骨が見えるように肩を露わにした。

同性とはいえ、流石にこんなポーズを取るのは羞恥心があたしを苛む。

「素敵ね。

貴女の綺麗なやわ肌を、なるべく傷つけないようにして差し上げなくては。」

女吸血鬼…、シモーヌは口を大きく開けると、その鋭い牙をあたしの首筋に当て、そして深く刺し込んできた。

「っ痛ぅ!」

牙を突き立てる事には慣れたけど、まさか吸血姫であるあたしが牙を突き立てられる事になるなど、誰も予想しえないでしょうね。

「美味しい。

あんまりにも甘くてとろけそうな血だから、思わず全て飲み干してしまいそう。

…。

冗談よ。

そんな怖い顔、美夜には似合わなくてよ?」

恐らく、あたしの体内の血の半数は奪われたと思う。

徐々に、意識を失いそうになるもの。

「大丈夫?

流石に半分もの血を失っては、立っているのもやっとでしょうね。

なら、次はわたくしの番。」

シモーヌはそう言ってブラウスの襟首を乱暴に引きちぎると、まるであたしを誘うように妖艶なポーズをとりながらwinkしてみせた。

「随分とまた、ワイルドなアプローチね。

もしもあたしが、逆に貴女の体内の血を全て吸い取ったらどうするのかしら?」

飢えもあって、あたしは先程とは逆の立場で意地悪く言ってみた。

が、シモーヌは全く動揺を見せるどころか余裕の笑みを浮かべていた。

「そんな心配はしていないわ。

貴女は極めてプライドの高い女性。

そんな貴女が、わたくしの血と力を奪って復讐を果たすなど有り得ない。

それに万が一、そうしたとしても貴女に待っているのは絶え間ないブラッディマリアからの刺客による死闘の末の死。

美夜。

貴女がそんな愚を犯す事はない。」

ふん、面白くないわね。

あたしはふて腐れながらシモーヌの首筋に牙を突き立てて、奪われた半分の血を取り戻した。




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