犯罪組織にとらわれた名探偵の末路
〜国際犯罪組織アジト内部〜
「ここまでの侵入を許したのは君が初めてだよ。さすがは名探偵君。
しかし、残念だったね。我々の勝ちだ。」
「くっ。捕まってしまうとは何たる不覚。
...おい、これから私をどうするつもりだ?」
「我々には、今夜【世界一の名画】を盗むという仕事が待っている。
邪魔されるわけには行かないからね。仕事が終わるまで君には眠っていてもらおう。
やれ。」
「何をするつもりだ? やめろ。近づくな!」
「これを食べるんだ。」コト
「...なんだこれは?」
「チョコレートとホットミルクだ。セロトニンが出てよく眠れる。」
「...うん?」
「うん?」
「...普通こういう時は麻酔薬を注射したり、クロロホルムを嗅がせたりするのではないか?」
「医師でも無いのに注射は危ないじゃないか。
クロロホルムは嗅がせたところで簡単には眠れないし、人体に害がある。常識だぞ?」
「あ、ああ。」モグモグゴクゴク
「食べたら歯磨きをしろ。虫歯になるからな。その後トイレに行け。夜中トイレに起きては良質な睡眠は得られない。」
「わ、分かった。」
ジャー...ゴボゴボ
「終わったぞ。」
「よし。それではパジャマに着替えて、そこの最高級羽毛布団に入るんだ。
そしてコレを装着しろ。」ガシャコ
「!!? 何だその呼吸器みたいな機械は!? 麻酔でも吸入させる気か...っ! まさか毒ガス!?」
「【CPAP】だ。
睡眠中に気道が塞がるのを防ぐ目的で空気を送り込む装置だ。【睡眠時無呼吸症候群】の治療に使う。」
「しぃ〜? ...何だって?」
「【シーパップ】だ。
君が重度の睡眠時無呼吸症候群を患っていることは組織が調査済みだ。
睡眠時無呼吸症候群は心筋梗塞や様々な脳血管疾患、糖尿病などの要因となる。重度になると、放置すれば10年後生存率が70%を切る侮れない病気だ。」
「そんな病気に罹っているなんて初めて知ったぞ。道理で最近いくら寝ても疲れが取れなかったわけだ。」
「短期的にも眠りが浅くなったり夢見が悪くなる。放置しても百害あって一利なしだ。
...装着したか。ではこうだ。
『♪ねーむれー、ねーむれー、』」ポンポン
「!? や、止めろ! 子守唄を歌うな! 布団をポンポンするんじゃない!! ぐ、ぐあぁぁ...。」
すぴー、すぴー。
• • •
あくる日、12時間以上眠り続けた探偵が目覚めるとアジトは既にも抜けの殻。世界一の名画は盗まれた後だった。
探偵はとりあえず呼吸器科を受診することにした。
おしまい




