搾取
SはZ社から高額な給与でヘッドハンティングを受けており、転職を考えていた。
そんな時、インフルエンサーが会社員を否定している動画が流れていた。
「会社員は搾取されている。一生低賃金で働かされる。」
「なぜ自分で起業しないのかわからない。」
「一生奴隷だ。」
「そういう見方もあるのか。」
Sは仕事が好きだった。
会議では常に自分の考えを発言し、積極的に仕事を取りに行く。
周りからの評価も高かった。
会社員だが、十分な稼ぎがあり、仕事でいろいろな人と繋がり、自分の好きなことができている。
Sは奴隷ではなかった。
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SはZ社への転職を決意した。
さっそく海外市場を開拓する新規プロジェクトに参画することになった。
Sはプロジェクトで大活躍し、大成功を収めたのだった。
そして、ボーナスや成果報酬により多額の金額を得ることになった。
しばらくして、前職の部下のAから連絡がきた。
なんでも、転職しようか迷っているみたいなのだ。
二人は昔よく行った居酒屋で久しぶりに会った。
Aは真剣なまなざしでSに聞いた。
「転職先、どうですか?」
Sは満足そうな顔をして答えた。
「すごく良いところだよ。正直、転職は大成功だと思う。この前のプロジェクトもうまくいったんだ。」
それからは転職のコツについてAに教えた。
Aに足りないもの、それは主体性だった。
「もっと主体性を持って働いて、とにかく実績を作るんだ。そうすればいろんな要求ができるようになる。」
解散するころにはAは吹っ切れたように言った。
「自分はまず、実績を作るところから始めようと思います。今日はありがとうございました。」
Aはとてもまじめで能力もある。
SはこれからのAの成長が密かに楽しみだった。
Sが帰宅途中、ある求人広告が流れてきた。
-- 職歴・学歴不問
仕事内容はよくわからなかったが、工事現場の作業員のようだった。
給料はあまり高くないが、寮に住めるため家賃は格安だった。
社長らしき男の写真と共に、メッセージが添えられていた。
「今まで何も続かなかった人間でも、必ず面倒を見て、一人前にする!」
Sは違和感を抱いた。
大した給料も得られず、会社の用意した家に住み、社長に面倒を見てもらわないと働けないような人間にはなりたくなかったからだ。
自分で考え、自分の意志で道を切り開く。
これがSの信念だった。
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数年経ったころ、Sは自分の会社を持っていた。
自分のやりたいビジネスを追求するためには、これが最善の選択だった。
最初は簡単ではなかった。
何から何まで自分でやらなければいけなかったからだ。
会社で働いていた時のように給料が約束されているわけでもなく、優秀な人材を採用できるわけでもなかった。
ある時、Sの会社のX事業部が収益を3割増やすことに成功した。
さらに市場拡大の兆しが見え、新たな人材を3人採用することになった。
そこへ、かつての部下Aがやってきた。
「ぜひまたSさんと一緒に仕事がしたくて、応募しました。」
まっすぐなAのまなざしに、Sはとてもうれしかった。
しかし、Aの要求する給与は高かった。
この事業で見込める利益を考えると、Aにこれだけの金額を出すことは難しかった。
さらに、他に採用予定の二人の給与が払えなくなってしまう。
SはAの履歴書を眺めた。
素晴らしい実績だ。
Aと一緒に働いていた頃を思い出し、決断を下した。
3人採用する当初の計画をあきらめ、Aだけにオファーを出すことにしたのだ。
SはAに言った。
「この金額でうちで働いてもらえないか?」
提示された給与には届かないが、平均給与よりもかなり高い金額を提案した。
Aはそれを承諾し、二人はまた一緒に働くことになった。
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SはさっそくAに詳細な事業Xの計画や顧客についての説明をした。
Aにやってほしいことも伝えて認識合わせをした。
Aが入社してしばらくして、事業Xは大きな成長を果たした。
Aの仕事ぶりはすさまじく、A抜きではここまでの事業にはなっていなかっただろう。
そんな時、Aが言った。
「Sさん。僕はこれだけ結果を出しています。そろそろもう少し給与を上げていただきたいです。」
利益は過去最高を記録していた。
しかし、事業Xのこれ以上の将来性を考えると給与を上げることはできなかった。
Sは少し考えていった。
「すまないが、今の業績ではそれはできない。その代わり、新しく始める事業Yで事業部長をやってもらえないか?」
Sは既にビジネスプランを考えていた。
いろいろな準備も進めたので、Aには計画通りに進めてもらいたかった。
Aはさっそく新しい事業への計画を聞き、指示通り準備を始めた。
「自分で考え、自分の意志で道を切り開く。」
Aはそんな人材だからだ。




